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「胎動音(胎内音)」とは、お腹の中の赤ちゃんに聞こえている音のことで、お母さんの心臓や血流、腸の音、お母さんの声、外の音が混ざったものです。赤ちゃんの耳は妊娠19週ごろから低い音に反応しはじめ、妊娠27週ごろにはほとんどの赤ちゃんが音に反応するようになります。ただし、外の音は高い音ほど小さくなって届くため、言葉の中身までは伝わりません。なお、「胎動の音」をお母さんの耳で聞きたい場合、胎動そのものは音としてはほとんど聞こえません。この記事では、赤ちゃんが聞いている胎動音、胎教の効果、生まれたあとの胎動音の使い方を解説します。
Q. お腹の赤ちゃんには、どんな音がいつから聞こえていますか?
A. いちばん大きく聞こえているのは、お母さんの心臓・血流・腸の音と、お母さんの声です。音への反応は妊娠19週ごろに低い音から始まり、27週ごろにはほとんどの赤ちゃんで見られます。外の声は、母音や抑揚は届きますが、子音のような高い音は大きく弱まるため、話の中身まではわかりません。
- ➤胎動音の中身 → お母さんの体内の音+お母さんの声+外の音
- ➤聞こえはじめ → 妊娠19週ごろ低い音から、27週ごろにはほぼ全員
- ➤胎教 → 赤ちゃんへの効果ははっきりしないが、お母さんがリラックスできることに意味がある
- ➤生まれたあと → 胎動音やホワイトノイズで寝つきやすくなる赤ちゃんもいるが、音量と距離に注意
胎動音とは

お腹の赤ちゃんに話しかけて、ポコッと反応が返ってくると、お母さんも家族もうれしいものです。お腹の中と外とのこうしたやりとりは、生まれるまでの間だけの貴重な時間です。
お腹の赤ちゃんは、お母さんや家族の声だけでなく、お母さんの体の中のさまざまな音を聞きながら育っています。赤ちゃんに聞こえているこれらの音をまとめて「胎動音」と呼ぶことがあり、「胎内音」ともいいます。名前に「胎動」と入っていますが、赤ちゃんが動く音のことではありません。
反対に、お母さんの側から「胎動の音」を聞くことは、ほとんどできません。胎動は「ポコッ」「グニュッ」という感触として感じるもので、外に聞こえる音にはなりにくいからです。健診で使うドップラー装置では、赤ちゃんが動いたときに「ザッ」という雑音のように聞こえることがあります。家庭用のドップラー心音計については、米国食品医薬品局(FDA)が、医療者が使う処方用の機器であり一般向けに販売・使用するものではないとして、家庭での使用を勧めていません[7]。胎動がどんな感じか、いつから感じるかは胎動はどんな感じ?で、規則的にピクピクする動きは胎児のしゃっくりで解説しています。
どんな音が聞こえるの?
お腹の赤ちゃんには、主に次の3種類の音が届いていると考えられています。
(1)お母さんの体内の音
赤ちゃんのいちばん近くにあるのは、お母さんの体の中の音です。心臓が脈を打つ音、血液が流れる音、腸が動く音などが、いつも聞こえている環境です。
(2)外の音
人の声のほか、料理をするときの包丁の音や音楽なども、赤ちゃんに届いています。ただし外の音は、お腹の皮膚や脂肪、子宮の壁、羊水を通るうちに弱まります。羊を使った子宮内の録音研究などをまとめた総説によると、赤ちゃんに届く音は低い音が中心で、500Hzより高い音は40〜50dBほど弱まります[2]。そのため、声の母音や抑揚、音楽のリズムは届きやすい一方、高くて小さい子音や、楽器の倍音はほとんど届かないとされています[2]。
(3)お母さんの声
赤ちゃんにとっていちばん身近な声は、お母さんの声です。お母さんの声は、空気を通る音に加えて、体の振動や骨を伝わって届くため、ほかの人の声とは違う特別な音です。外の音が胎児の内耳に届くときも、主に骨を伝わる経路(骨導)を通ると考えられています[2]。
胎内でお母さんの声を聞いていた経験は、生まれたあとにも表れます。生後間もない新生児が、おしゃぶりの吸い方によって母親の声か別の女性の声かを選べるようにした実験では、赤ちゃんは吸い方を覚えて、母親の声をより多く聞こうとしました[3]。また、妊娠後期の胎児にお母さんの朗読の録音を聞かせると心拍数が上がり、知らない女性の声では下がったという研究もあります[4]。
「夫婦げんかの声を赤ちゃんに聞かせないほうがよい」といわれますが、赤ちゃんが話の内容を理解しているわけではありません。それよりも、強い怒りやストレスが続く状態は、お母さん自身の心と体の負担になります。大きな声に赤ちゃんがびっくりして動くこともあるので、話しかけるときは穏やかな声がよいでしょう。
まとめると、胎動音とはお母さんの体内の音と声、外の音が合わさった音です。外の音は、厚い壁の向こうから聞こえる音や、プールに潜ったときに誰かが話しているのはわかるけれど言葉は聞き取れない、という感じに近いと考えられます。
👂 赤ちゃんに届く3つの音
| 音の種類 | 例 | 届き方 |
|---|---|---|
| お母さんの体内の音 | 心臓の拍動、血流、腸の動き | いちばん近く、いつも聞こえている |
| お母さんの声 | 話し声、歌声 | 空気に加えて体の振動・骨を伝わって届く |
| 外の音 | 家族の声、音楽、生活音 | 低い音とリズムは届くが、高い音は大きく弱まる |
※外の音の届き方は Gerhardt & Abrams(2000)[2]による。
いつ頃から聞こえるの?
赤ちゃんの耳や目、口などの形は、妊娠の早い時期にできていきます。けれども、音を聞く働きが始まるのはもう少しあとです。妊娠19〜35週の胎児に、さまざまな高さの純音を聞かせて反応を調べた研究では、次のような順番がわかっています[1]。
📅 妊娠週数と音への反応
| 妊娠週数 | わかっていること |
|---|---|
| 19週ごろ | 低い音(500Hz)への反応が最初に見られる |
| 27週ごろ | 低い音には、ほとんど(96%)の胎児が反応する |
| 33〜35週ごろ | 高い音(1000Hz・3000Hz)にも反応するようになる |
| 妊娠後期 | お母さんの声と知らない人の声で、心拍の反応が変わる |
※19〜35週の反応はHepper & Shahidullah(1994)[1]、声の聞き分けはKisilevskyら(2003)[4]による。
つまり、耳はまず低い音から聞こえるようになり、週数が進むにつれて高い音まで聞こえる範囲が広がっていきます[1]。お腹の中の音が低い音中心であることと合わせると、赤ちゃんが最初になじむのは、お母さんの心音や血流の音、お母さんの声の低い成分だと考えられます。週数ごとの赤ちゃんの体の成長は胎児の成長過程で解説しています。
胎教の効果

胎教というと、お腹の中から始める早期教育のようなものを思い浮かべる方も多いかもしれません。けれども本来の胎教は、お母さんがリラックスして過ごせるようにして、赤ちゃんにとってよい環境を整えることを指す言葉です。
ここでは、胎教のメリットと、始める時期についてお伝えします。
胎教を行うメリット
胎教としてよく行われるのは、お腹の赤ちゃんに話しかけたり、音楽を聞かせたりすることです。
赤ちゃんが胎内でお母さんの声を覚え、生まれたあとにその声を好むことは、先ほどの研究で示されています[3][4]。一方で、胎教について一般によくいわれる次のような効果は、しっかりした科学的根拠があるわけではありません。
- 頭のよい子に育つ・脳の発達がよくなる
- 安産になる
- 生まれたあとの性格が穏やかになる
「クラシック音楽を聞かせるとよい」という話もありますが、前に書いたとおり、お腹の中に届くのはリズムや低い音が中心で、音楽の細かな響きまでは届きません[2]。音楽の意味は、赤ちゃんの脳を鍛えることよりも、お母さんが心地よく過ごせることにあると考えるのが自然です。
それでも、話しかけたり音楽を聞いたりしてお母さんがリラックスでき、家族で赤ちゃんのことを話す時間が増えるなら、それ自体に十分な価値があります。
🩺 院長コラム【胎教は「しなければならないもの」ではない】
胎教に科学的な効果がはっきりしないと聞いて、がっかりする方もいるかもしれません。けれども私は、胎教の価値は「赤ちゃんを賢くする方法」にあるのではなく、お母さんと家族が赤ちゃんの存在を感じながら、穏やかに過ごす時間をつくることにあると考えています。
逆に、「毎日○分聞かせないと」と義務のようになって負担を感じるなら、やめてしまってかまいません。お母さんが無理なく過ごせることのほうが、ずっと大切です。
理想的な時期
赤ちゃんの音への反応という点では、多くの赤ちゃんが音に反応するようになる妊娠27週以降が、話しかけや音楽が届きやすい時期といえます[1]。
ただし、胎教はお母さん自身の気持ちを落ち着ける意味も大きいので、基本的にはいつ始めてもかまいません。胎教についてはわかっていないことも多いので、できることから気楽に始めてみましょう。
「これをやらなければいけない」「これはやってはいけない」と情報を集めすぎて、かえって気持ちが疲れてしまっては本末転倒です。心配しすぎず、リラックスして過ごすことを心がけましょう。
胎動音の利用

生まれたばかりの赤ちゃんにとって、お腹の中で聞いていた低く続く音は、なじみのある環境の音です。そこで、胎動音やそれに近い音を流して、赤ちゃんを落ち着かせる方法が使われています。
子守唄として
胎動音を収録した音源や、胎動音が流れるぬいぐるみなどが販売されており、泣きやんだり寝つきがよくなったりすると感じる家庭もあります。
テレビの砂嵐のような「ザーッ」というホワイトノイズも、お腹の中の音に近いといわれます。生後2〜7日の新生児40人を対象にした小規模なランダム化試験では、ホワイトノイズを聞かせた20人のうち16人(80%)が5分以内に眠り、聞かせなかった20人では5人(25%)でした[5]。ただし対象が少なく、生後数日の赤ちゃんに限った結果なので、どの赤ちゃんにも効くとはいえません。
💡 音量と置き場所に注意
市販の乳児用スリープマシン14機種を最大音量で測定した研究では、ベビーベッドのそば(30cm)に置くと、すべての機種が新生児室の推奨上限とされる50dBを超え、3機種は大人でも8時間続けば聴力を損なうおそれがある85dBを超えました[6]。使う場合は、ベッドからできるだけ離して置く、音量を小さくする、タイマーで時間を区切ることが勧められています[6]。スマートフォンを赤ちゃんの耳元に置いて鳴らし続けるのも避けましょう。
赤ちゃんの検査
生まれて間もない赤ちゃんは、新生児聴覚スクリーニングをはじめ、必要に応じて脳波などの検査を受けることがあります。こうした検査は、赤ちゃんが静かに眠っているほうが正確に行えるため、授乳後の自然な眠りを利用するのが基本です。
落ち着かせる工夫のひとつとして、なじみのある音が役立つ場面はあります。ただし、胎動音を流せば検査用の鎮静薬がいらなくなる、というものではありません。検査の進め方は施設や検査の種類によって異なるので、担当の医療機関の説明に従ってください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 胎動の音は外から聞こえますか?
胎動は「ポコッ」という感触として感じるもので、外から音として聞こえることはほとんどありません。健診のドップラー装置では、赤ちゃんが動いたときに雑音のように聞こえることがあります。家庭用ドップラー心音計は、米国FDAが家庭での使用を勧めていません。
Q2. お腹の赤ちゃんには、いつから音が聞こえますか?
妊娠19週ごろに低い音への反応が見られはじめ、27週ごろにはほとんどの赤ちゃんが低い音に反応します。高い音に反応するようになるのは33〜35週ごろです。
Q3. パパの声はお腹の赤ちゃんに届きますか?
届いてはいますが、外から届く声は高い成分が弱まるため、話の中身まではわかりません。お母さんの声は体の振動や骨を伝わって届くので、ほかの人の声より特別な音になります。パートナーが話しかけることは、お母さんの気持ちが和らぐという意味でも価値があります。
Q4. ホワイトノイズは赤ちゃんに使っても大丈夫ですか?
寝つきがよくなる赤ちゃんもいますが、機器によっては近くで最大音量にすると大きすぎる音になります。ベッドから離して置き、音量を小さくし、タイマーで時間を区切って使いましょう。
まとめ
お腹の赤ちゃんは、妊娠19週ごろから低い音に反応しはじめ、27週ごろにはほとんどの赤ちゃんが音に反応するようになります[1]。赤ちゃんが聞いている胎動音は、お母さんの心臓や血流の音、お母さんの声、外の音が合わさった音で、外の音は低い音とリズムが中心です[2]。
胎内で聞いていたお母さんの声は、生まれたあとも赤ちゃんにとって特別な声になります[3]。お母さん以外の声は届きにくいものの、パートナーや家族と一緒に話しかけることで、お母さんが幸せを感じたりリラックスできたりするなら、それが胎教のいちばんの意味だといえます。胎教は義務ではないので、無理のない範囲で楽しみましょう。
生まれたあとに胎動音やホワイトノイズを使うときは、音量と置き場所に気をつけてください[6]。
🧬 赤ちゃんの染色体について知りたい方へ
ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられるNIPT(新型出生前診断)を行っています。常駐する臨床遺伝専門医が、検査の前後に結果の意味や次の選択肢を一緒に考えます。陽性だった場合の確定検査まで院内で対応しています。妊娠中の不安や疑問があれば、お気軽にご相談ください。
参考文献
- [1] Hepper PG, Shahidullah BS. Development of fetal hearing. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. 1994;71(2):F81-F87. [DOI]
- [2] Gerhardt KJ, Abrams RM. Fetal exposures to sound and vibroacoustic stimulation. J Perinatol. 2000;20(8 Pt 2):S21-S30. [PubMed 11190697]
- [3] DeCasper AJ, Fifer WP. Of human bonding: newborns prefer their mothers’ voices. Science. 1980;208(4448):1174-1176. [PubMed 7375928]
- [4] Kisilevsky BS, Hains SM, Lee K, et al. Effects of experience on fetal voice recognition. Psychol Sci. 2003;14(3):220-224. [PubMed 12741744]
- [5] Spencer JA, Moran DJ, Lee A, Talbert D. White noise and sleep induction. Arch Dis Child. 1990;65(1):135-137. [PubMed 2405784]
- [6] Hugh SC, Wolter NE, Propst EJ, et al. Infant sleep machines and hazardous sound pressure levels. Pediatrics. 2014;133(4):677-681. [PubMed 24590753]
- [7] U.S. Food and Drug Administration. Avoid Fetal “Keepsake” Images, Heartbeat Monitors. [FDA]





