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破水の種類は時期や程度で違う!それぞれの特徴や原因、注意点を解説

羊水は、子宮の収縮などにより胎児にかかる圧力を分散したり、外界の温度変化が胎児に影響を及ぼさないようにしたりするため緩衝材のように胎児を守っています。

そのような重要な役割を担う羊水を包む卵膜が破れ、羊水が外に漏れ出るのが破水です。

分娩に対して早いタイミングで起きる破水や、分かりにくい少量の破水など、実は破水には時期や程度による様々な種類があります。

どのような破水があるのか、放置してよいのかなど、妊婦さんにぜひ知って欲しい異常な破水について、詳しく解説します。

破水の時期による種類

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分娩が近くなると、胎児を外に押し出すための子宮の収縮が始まりますが、それには陣痛と呼ばれる痛みが伴います。

陣痛が始まって、子宮口が全開大になるまでを分娩第一期といい、子宮口全開大から胎児の娩出までが分娩第二期です。

妊娠週数や、分娩の流れの中など、どんなタイミングで破水するかによって、種類が分かれます。

適時(てきじ)破水

時間間隔を定期的にあけて陣痛を繰り返すことで、子宮内の圧力が徐々に上がっていき、それに従って子宮口も開いていきます。

やがて子宮口が全開大(10cm開大)になる頃には、子宮内圧も分娩に相応しい程度まで高くなり、その圧力で破水する、というのが一般的な破水の流れです。

この、分娩第一期から第二期にかけて起きるのが、適時破水です。

遅延破水

遅延破水は遅滞破水ともいい、子宮口全開大になり、胎児の一番低い部分(先進部)が骨盤腔内に入ってきているにもかかわらず、まだ破水していない状態のことです。

とても薄い卵膜が破れずに、そのまま膜に包まれて分娩される、被膜児という非常に稀なケースがあります。

滅多にないケースなので幸運に恵まれるといわれ、日本では幸帽児とも呼ばれています。

羊水に包まれての出産になるため、安心できる環境の中にいる形での分娩というのがメリットです。

しかし、破水せずに外に出た時点で赤ちゃんは呼吸ができないので、一刻も早く破膜する必要があり、また、子宮収縮による急激な内圧変化などの不測の事態に対応するため、人工破膜(人の手で膜を破る)を介助する場合が多くなります。

早期破水

もう分娩が始まっている分娩第一期の、子宮口全開大になる前に起こる破水を早期破水といい、後述する前期破水と同様のリスクが発生する可能性があるので、リスク回避の処置が行われます。

分娩の進行が遅れなければ、処置を行いながらそのまま分娩になります。

前期破水

陣痛が来る前に破水してしまう前期破水は、破水する妊娠週数によりその後の経過が違います。

週数が早い程早産や流産の危険度が上がりますが、尿漏れやおりものと見分けが付きづらい場合もあるために発見できないケースもあり、対応が遅れる場合が多くあります。

また、破水した後に来るはずの陣痛がなかなか来ない場合もあり、病院への報告や早めの来院が必要です。

破水の程度による種類

バスルームの便器に座っている女性を混乱させる

破水と聞くと大量の羊水が一気に流出するイメージがありますが、その流出量でも種類が分かれます。

低位破水(完全破水)

通常、胎児は頭が下方向を向いている「胎位」が一般的で、分娩の際、頭から娩出されます。

その場合でいう処の胎児の先進部、つまり頭より低い場所である子宮口近くで起きた破水を低位破水、または完全破水といいます。

卵膜の低い場所が破れ、上からの圧力もかかるので、当然大量に流れ出ます。

通常は子宮口全開大になって分娩台に上がり、妊婦さんが陣痛に苦しむ中で、身体の分娩に対する準備が整った上で起きる破水となります。

しかし陣痛が来る前の前期破水がこの低位破水の場合、一刻も早く病院で処置を受けなければいけません。

高位(こうい)破水

低位破水に対して、胎児の先進部がある子宮口から離れた、高い位置の卵膜が破れて破水が起きることを高位破水といいます。

同じ破水でも、低位破水とは違って少しずつチョロチョロと羊水が流れ出るため、尿漏れやおりものと見分けが付けにくく発見が遅れることも少なくありません。

そして高位破水が発覚した場合の処置も、低位破水とは違うものになります。

異常な破水の原因

マタニティと喫煙の象徴としてのタバコと赤ちゃんのおしゃぶり

子宮口全開大になってからの低位破水(完全破水)は正常な分娩となるので問題はありませんが、それ以外の異常な破水は、どんなことが原因で起こるのでしょうか?

感染症や炎症

卵膜が感染症に罹っていたり炎症を起こしていたりすると、その部分が脆くなり、破れやすくなります。

女性の通常の膣内は、常在菌が弱酸性に保っていて、他の菌が繁殖しないように防ぐ自浄作用がありますが、妊娠中はそのバランスが崩れやすく、普段罹らない感染症になる可能性が高くなります。

膣炎などに感染すると、その菌が上に向かって(上行性という)感染を広げ悪化し、絨毛膜羊膜炎という厄介な感染症を引き起こします。

そんな様々な感染症や炎症で破れやすくなった卵膜が、子宮口近くで破れると前期破水になったり、上の方で破れると高位破水です。

多胎や高齢出産・羊水過多

多胎妊娠や羊水過多などは、腹圧が高くなりやすいので、それが原因となって卵膜が破れてしまう場合があります。

通常の妊娠以上に、腹圧がかかるような動作をしないように注意する必要があります。、

急激な圧力や圧迫

破水の原因としてよく耳にすると思いますが、強いくしゃみや咳をしたり、重い物を持ったりすることで、腹圧が瞬間的に高くなり、破水してしまう場合があります。

性行為もそのひとつとして考えられ、あまり深くまで挿入したり、危険な体位などで行為に及ばないよう、気を配る必要があります。

性行為については子宮内圧の問題の他にも、感染症対策としてコンドームの使用が必須です。

喫煙や生活習慣

どんな病気でも言えることですが、健康に害のある習慣を控え、栄養バランスの良い食事と睡眠をしっかりとるのは当然です。

特に喫煙については、ニコチンを接種することで血管が収縮し血流が悪くなり、母体だけでなく胎児にとっても酸欠の原因となります。

高齢出産や子宮奇形

高齢出産に関しては様々な問題を内包しているので、破水だけが悩みとはいえませんが、年齢が高い程感染症に対する抵抗力も低いので、通常の妊娠よりは破水に繋がりやすいといえます。

子宮奇形に関しても、高齢出産と同様本人に非がある訳ではない原因になりますが、例えば骨盤内が狭いと胎児が外に出辛かったり、卵膜内での発育に問題が生じたりする場合があります。

異常な破水が起きた時のリスクと、必要な処置

キューブを保持している妊娠 37 週の妊婦

適時破水以外の、異常な破水が起きた場合、その妊娠週数や破水の種類によって、処置方法が変わってきます。

そして異常な破水を複数紹介しましたが、ほとんどが前期破水のくくりになります。

陣痛前の破水は必ず入院になるので、どんな処置になっても対応できるよう、移動の手段をあらかじめ確保し、入院の用意はできるときになるべく早く済ませておきましょう。

ありがちな例として、入院が決定したとき「しばらくお風呂に入れなくなるから、シャワー浴びてから」と考える人が多いようですけど、シャワーは雑菌が入り込む可能性があるので絶対ダメです。

妊娠37週以降の破水

週数から考えて、胎児は分娩をするためのある程度の成長をほとんど終えていますので、そのまま分娩へ繋げます。

前期破水の場合どのタイミングで破水しても、感染のリスクは避けられないので抗生剤を投与し、感染を予防しながら様子をみることになります。

陣痛前に破水した場合は、破水後80%以上の妊婦さんが24時間以内に陣痛が来るといわれていますが、なかなか来ない場合はその間に感染する危険性が高くなっていくので、陣痛誘発剤などを使用する場合があります。

高位破水の場合も、この週数であれば陣痛を待ちながら同じ対応をすることになります。発見が遅れて感染が発覚した場合、胎児に感染するのを防ぐため陣痛を待たずに誘発剤を使用して、早めに分娩へと入ります。

妊娠37週未満の破水

破水したときに問題なのは、胎児がまだしっかりと育っていない週数で破水した場合です。

低位破水でも高位破水でも、まずは感染を防ぐ処置をしますが、週数によって対応は少し違います。

検査をして、感染が認められない場合は前期破水と同じように、感染防止の処置をしながら分娩に適した時期が来るまで入院管理する形になるので、長期入院になるケースもあるのです。

もし感染が判明した場合、胎児に感染するのを防ぐため、胎児が成熟していない場合でも、分娩を誘発する処置がとられます。

感染防止のための抗生剤投与はもちろんですが、その他にも早産や流産防止のために子宮収縮抑制剤を投与する、胎児も様子を見ながら合わせて管理するなどがあります。

まとめ

破水には様々な種類があること、何が原因になるのか、破水の時期別対処法など、考えられる異常破水についてひと通り解説しました。

どの破水にも共通して言えることは、感染症の対策をしっかりと行う必要があり、普段どれだけ羊水に守られているのかが分かって頂けたかと思います。

破水に関しては、判断しやすい破水とそうでない破水があり、発見が遅れやすい高位破水は特に、普段から注意して観察する必要があります。

いざという時に必要以上に慌てずに済むように、破水についてある程度の参考にして頂ければ幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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