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胎児に障害があるか調べるためには、出生前診断の受診が必要です。
妊娠10~15週にかけて検査を受けられるため、その時期に障害が判明することが多いでしょう。
なお、障害の種類によっては、出産のときまで判明しないものもあります。
本記事では、胎児の障害がわかる時期や、妊娠中に受けられる検査の種類を解説します。
胎児の障害がわかる時期
生まれる前に胎児の障害や異常を診断するのが「出生前診断」です。
胎児の障害といってもさまざまで、形態異常と染色体異常、どちらを調べるかによって診断方法は異なります。
それぞれの障害がわかる時期の目安を解説します。
胎児の形態異常がわかる時期
胎児の形態異常を見つけるための超音波検査は、妊娠10~13週頃に行うことが多いです。
この時期では、頭部や内臓の異常など胎児の目に見える障害の観察が可能です。
形態異常の組み合わせから、染色体異常(ダウン症候群や13トリソミーなど)が発見できるケースもあります。
なお、妊娠15週以降では形態異常の多くが確認できるものの、口唇裂など、障害の種類によっては妊娠18週以降でないと判明しない、もしくは出産までわからないケースもあります。
胎児の染色体異常がわかる時期
染色体異常の検査は妊娠10~18週にかけて行うものが多くなります。
この時期に行う検査は非確定検査が多く、結果が陽性なら、別途、確定検査の実施が必要です。
なお、確定検査は以下のとおり、受ける検査により実施時期が異なります。
- 絨毛検査:10~13週
- 羊水検査:15週~
詳しい検査方法は後ほど解説します。
胎児の障害の種類
胎児の障害は外見で判断できるものと、染色体の異常によるものにわかれます。
それぞれ、障害の種類を解説します。
胎児の形態異常の種類
胎児の形態異常は頭部から胎盤まで、体のどの部分でも障害が起こりえます。
ここでは、代表的な障害に絞って紹介します。
- 頭部:無頭蓋症、水頭症、小脳症など
- 顔面:小眼球症、鼻腔異常、口唇裂など
- 脊髄:二分脊椎症、側弯症など
- 心臓:心室中隔欠損、大血管転位など
- 胸部:胸水貯留など
- 腹部:臍帯ヘルニアなど
- その他:多指症・少指症、巨大膀胱など
これらの異常の中には胎児の命に関わる重い症状のものから、治療の必要がない軽症のものまであります。
出生前診断で胎児の形態異常を確認する理由としては、出産後の速やかな治療により生命維持ができたり、後遺症を防止できたりするためです。
胎児の染色体異常の種類
胎児の染色体異常による障害は大きく以下の原因に分けられます。
- 染色体の本数の異常
- 染色体の構造の異常
本数の異常とは、通常2本ある染色体が1本多かったり少なかったりするものです。
また、構造の異常では一部が欠損していたり、重複・反転していたりするため障害が生じます。
染色体異常も多岐に渡るものの、ここでは代表的な障害に絞って解説します。
ダウン症候群(21トリソミー)
21番染色体が3本あることで発症する先天性疾患です。
600~800人に1人の割合で出生するとされ、身体的・知的発達の遅れを伴います。[注1]
また、心疾患など、他の合併症が起こることも多いものの、現在では医療の発達もあり、平均寿命は60年程度といわれています。
なお、ダウン症候群といっても、標準型21トリソミー型・モザイク型・転座型の3つのタイプが存在します。
[注1]厚生労働省|NIPTの対象とされるトリソミーについて
www.mhlw.go.jp/content/11908000/000587240.pdf
エドワーズ症候群(18トリソミー)
18番染色体が3本あることで発症する先天性疾患です。
3,500~8,500人に1人の割合で出生するとされ、女児に多い点も特徴です。[注1]
心身の障害の他に成長障害を伴い、出生後もさまざまな合併症を併発してしまいます。
胎児の段階で流産・死産に至ることも多く、平均寿命は数時間~数年程度です。
1歳までの生存率は10%未満とされ、病態に合わせ適切な治療を続ける必要があります。
パトー症候群(13トリソミー)
13番染色体が3本あることで発症する先天性疾患です。
5,000~12,000人に1人の割合で出生するとされ、小頭症などの重度の発達の遅れや成長障害を伴います。[注1]
出生後もさまざまな合併症が生じることから、寿命は数時間~数カ月程度です。
また、1歳までの生存率は10%未満とされています。
染色体の構造の異常による障害
「22q11.2欠失症候群」や「4p欠失症候群」など、染色体の構造異常による障害は、症状や発生頻度もそれぞれの障害により異なります。
染色体の構造異常に起因する障害の多くは指定難病となることが多くなります。
合併症に対する対処療法が基本となるものの、症状が穏やかであれば日常生活を営むことも可能です。
染色体異常が原因の障害では、染色体自体を治すことができないため、基本的には成長に合わせて対処療法を続けることとなります。
また、障害の程度に個人差がある点も特徴です。
妊娠中に胎児の障害を検査する方法
出生前診断には、先述した胎児の形態異常を調べる超音波検査と、染色体異常を調べる各種検査があります。
ここでは、染色体異常を調べる方法を非確定検査と確定検査に分けて解説します。
非確定検査
非確定検査とは、その検査だけでは障害が特定できない検査ですが、障害の疑いを事前にある程度予測できる検査です。
妊婦さんの採血のみで複数の障害を事前に予測できるため、「陽性」判定が出てから確定検査を受けることができます。
検査名 | 検査時期 | 検査できる障害の種類 |
---|---|---|
NIPT(新型出生前診断) | 妊娠9週~ | 13トリソミー(パトー症候群) 18トリソミー(エドワーズ症候群) 21トリソミー(ダウン症候群) 他、複数の遺伝検査が可能 |
母体血清マーカー検査 | 妊娠15~18週 | 18トリソミー(エドワーズ症候群) 21トリソミー(ダウン症候群) 神経管閉鎖障害 |
コンバインド検査 | 妊娠11~13週 | 13トリソミー(パトー症候群) 21トリソミー(ダウン症候群) |
非確定検査は検査精度が低い点が懸念材料であったものの、近年導入されたNIPTは陰性的中率が99%と精度が高い点が特徴です。
なお、非確定検査は障害の確立を算出する検査のため、陽性となっても、必ずしも胎児に障害がある訳ではありません。
障害の有無や病名を確定するためには次に紹介する「確定検査」を受ける必要があります。
確定検査
確定検査では、胎盤や羊水の一部を注射器で採取して、胎児の遺伝子や染色体を確認し、障害の有無を特定します。
検査名 | 検査時期 | 検査できる障害の種類 |
---|---|---|
絨毛検査 | 妊娠10~13週 | 染色体異常や微細染色体異常、遺伝子疾患の有無 |
羊水検査 | 妊娠15週~ | 染色体異常や微細染色体異常、遺伝子疾患の有無 |
実際に胎児の細胞を採取するため、確実性が高い反面、検査に伴う合併症として出血や破水、流産のリスクが少なからずあります。
また、確定検査をしても全ての障害を100%見つけられる訳ではない点にも注意が必要です。
【まとめ】
出生前診断でわからない疾患もあることを覚えておこう
出生前診断は妊娠10~15週にかけて受けられるものが多く、その時期に障害の有無が判明するケースが多いでしょう。
しかし、口唇口蓋裂のような形態異常では、出生前診断で判断できないことも多くあります。
なお、染色体異常の検査としてはNIPT(新型出生前診断)のように精度の高い非確定検査も登場しています。
最初から確定検査を受けるのでなく、非確定検査で必要性を判断してから羊水検査などを受けることで、検査に伴うリスクの軽減にも役立つでしょう。