つわりは妊婦さんの多くが経験する辛い症状です。
症状の出方や軽重、期間は個人差が大きく、先輩お母さんの話とはまったく違って困惑してしまう人も少なくありません。
そんなつわりを乗り切るには、十分な知識と正しい対処法を知ることが大切です。
本記事ではつわりの原因や対処法を解説し、出産までの日々をサポートします。
つわりとは?
つわりは多くの妊婦さんが経験するものです。上手に付き合うために、つわりがどのようなものか知っておきましょう。
つわりは妊娠初期に起こる症状
つわりは妊娠の初期段階に起こる症状です。つわりの症状で妊娠がわかる人もいるほど、早く始まることも珍しくありません。
代表的な症状は吐き気や嘔吐です。しかし、症状は個人差がとても大きく、1人目と2人目では症状がまったく違うケースもあります。
つわりは異常なものではなく、基本的には安定期に入れば落ち着く心配のないものです。しかし、症状が重い場合は「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と診断され、治療が必要になることもあります。
つわりと妊娠悪阻の違い
症状が重く、脱水症状や立てないほどの体調不良などが出ているつわりが「妊娠悪阻」です。
妊娠悪阻になった場合は、放置していると体へのダメージが大きくなり、危険な合併症を引き起こす可能性があります。
つわりと妊娠悪阻の区別は難しい部分がありますが「つわりだから仕方ない」と重い症状を我慢してしまうのはよくありません。
辛いと感じたら病院に相談し、必要な治療を受けましょう。
つわりは個人差が大きい
つわりは前述したような妊娠悪阻のように重くなってしまう人から、ほとんど症状がない人まで、個人差が大きいです。
なぜ個人差があるのか、明確にはわかっていません。そのため、つわりの症状を自分でコントロールしたり、症状の度合いを予測したりすることは難しいです。
つわりを少しでも楽にするには、適切な対処法を取ってゆっくりと過ごすことが大切です。
つわりの症状は変化する
つわりの症状は変化するものです。
「1人目のときはつわりが重くて大変だったのに、2人目のときは軽くて楽だった」というケースや、反対に2人目のときのほうがひどかったという人もいます。
個人差と同様になぜ変化するのか、原因はわかっていません。
つわりの軽重は予測がつかないものとして、症状が重くなっても対応できるように備えておきましょう。
つわりの原因
つわりのメカニズムはわかっていない部分が多く、原因も明確には判明していません。しかし、体の変化とストレスの2つが大きく関係しているといわれています。
体の変化に適応できずに起こる
つわりの原因として有力だとされているのは、妊娠による体の変化に適応できずに、さまざまな症状がでるという説です。
とくに妊娠を維持するために増えるプロゲステロンやエストロゲンというホルモンは、胃腸の働きを鈍くする作用があります。
これによって吐き気や胃腸の不快感が発生しやすくなり、つわりとして症状が出ると考えられています。
また、活性化したホルモンが脳の嘔吐中枢を刺激し、その結果急な吐き気に襲われることもあるようです。
ストレスが原因で起こる
ストレスもつわりの大きな原因だと考えられています。
妊娠がわかると、お母さんは期待だけでなく不安も抱えることがほとんどです。
安全に産めるか、仕事や生活はどうなるか、お金は大丈夫か……考えだすときりがありません。
そうしたストレスが原因で、つわりの症状がでたり、悪化したりすると考えられています。
また、妊娠中はビタミン不足になりやすいです。ビタミンが不足するとメンタル面にも影響がでるため、ストレスを抱えやすくなってつわりが重くなる可能性もあります。
つわりが発生する時期
つわりは基本的には妊娠初期に発生するものです。一般的なつわりの時期と、一度治まったつわりが再発する「後期つわり」について知っておきましょう。
一般的なつわりの時期
一般的につわりは妊娠5週目頃からはじまり、安定期に入る妊娠15週~16週には落ち着くとされています。2ヵ月~3ヵ月くらいの間、つわりの症状が続くことになります。
また、つわりの症状がひどくなるのは妊娠8週~9週頃です。
しかし、つわりの時期や期間も個人差が大きい部分です。
妊娠5週を迎える前に症状が現れる人もいれば、出産直前まで症状が残る人も少なくありません。
つわりの症状が、まったくといっていいほど出ないという人もいるため「必ずこの時期に出る」というものではないのです。
あくまでも目安として、妊娠5週目~15週目くらいまでに出るものだと考えておきましょう。
つわりが再発することもある
妊娠15週を過ぎた頃に一度落ち着くつわりですが、その後再発することがあります。これは「後期つわり」と呼ばれる症状で、妊娠初期のつわりとは性質が違うものです。
後期つわりの主な原因は、赤ちゃんが大きくなって内臓が圧迫されることです。とくに骨盤が狭い人は、赤ちゃんが上に来て内臓が押し上げられてしまうため、後期つわりが起きやすいとされています。
また、ストレスや睡眠不足で神経性の胃炎になっており、それが原因で胃に不快感が出ているケースもあります。
こうした理由から、後期つわりは胸やけや吐き気など、胃に関連するものが多いです。
後期つわりは赤ちゃんが子宮口に下がっていく妊娠36週目頃(臨月)には落ち着くことが多いです。出産間近ですので、後期つわりの症状が残っていてもゆったりと過ごすようにしましょう。
つわりの症状
つわりの症状は大きく分けると6種類です。この中から複数の症状が一度に現れたり、時期によって変化したりします。
1. 吐き気・嘔吐をする
吐き気や嘔吐はつわりの代表的な症状です。「吐きつわり」と呼ばれることもあります。
胃の不快感やムカつき、急な吐き気に襲われるなど、辛い症状が多く、後述する「においつわり」と同時に起きることも多いです。
吐き気を感じるきっかけや嘔吐するタイミングには個人差があります。自分のタイプを見極めて、できるだけ症状が出ないようにすることが大切です。
2. においに過敏になる
吐きつわりと同様につわりの代表的な症状で「においつわり」と呼ばれています。名前のとおり、特定のにおいに敏感になります。
よくあるのはごはんが炊けるにおいや、油のにおい、タバコのにおいなどに敏感になる症状ですが、これも個人差がある部分です。
できるだけ苦手なにおいを避け、アロマや香水などの落ち着く香りで上書きできるようにしておくとよいでしょう。
3. よだれが増える
よだれの分泌量が増える症状を「よだれつわり」といいます。
吐きつわりもあるとよだれを飲み込むのも辛く、よだれ自体に苦みを感じてしまうケースもあり、会話や食事の際にストレスになりやすいです。
4. 食べていないと気持ち悪くなる
口の中に何かが入っていないと吐き気を感じてしまうのも「食べつわり」というつわりの一種です。空腹状態になると強い吐き気が出るケースもあります。
また、食べ物の好みが変わることもあり、苦手だったものが好物になったり、特定のものを大量に食べたくなったりもします。
アメやチョコレートなど、すぐに食べられるものを準備しておくのが対処法になります。しかし、肥満は赤ちゃんにも悪影響であるため、十分に注意しなくてはいけません。
5. 眠気が強くなる
どんなに寝ても眠気が取れない、倦怠感が強いなどの症状は「眠りつわり」です。妊娠の緊張やストレスで睡眠不足になっていることもありますが、しっかり眠っているのに眠いのはつわりかもしれません。
眠りつわりは旦那さんに理解されず、苦しむ人が少なくありません。そのような場合はしっかりとつわりの症状であることを伝え、夫婦で乗り切るようにしましょう。
6. 頭痛やイライラを感じる
月経前症候群(PMS)のような頭痛やイライラを感じることも、つわりではよくあることです。ホルモンバランスが変化したことが原因ですが、妊娠中は神経質になってしまうため、症状が強く表れることもあります。
妊娠中は今まで使っていた薬を使えなくなるため、症状が落ち着くのを待つしかありません。
しかし、あまりにも辛い場合は病院で相談してみましょう。我慢しすぎてストレスを溜めてしまうのは、赤ちゃんにもよくありません。
つわりがひどいときの対処法
つわりがひどいときは、無理をしないことが一番大切です。以下のことを試して、少しでも症状を緩和しましょう。できることだけ、やりたいと思うことだけで大丈夫です。
症状に合わせた対処をする
つわりの症状がでるのは仕方のないことです。ですが、症状に合わせた対処法を見つけておけば、少し楽に過ごせます。
症状 | 対処法 |
---|---|
吐き気・嘔吐 | ・吐き気対策になるとされるビタミンB6を摂取する ・吐き気が強いときは無理に食べない |
においが気になる | ・苦手になったにおいを避ける ・マスクをつける ・落ち着く香りを手元に用意しておく |
よだれが増える | ・すぐに吐き出せるようにしておく ・常に手元にタオルやハンカチを用意しておく |
食べ続けてしまう | ・ローカロリーなものに置き換える ・口の中で長持ちする食べ物を選ぶ |
眠気が強い | ・無理せずに眠る ・家族につわりの症状であることを理解してもらう |
頭痛やイライラ | ・リフレッシュできる習慣を見つける ・適度な運動や散歩をする |
ポイントはつわりの症状を抑えるのではなく、楽に対処する方法を見つけることです。体に合った方法を見つけて、できるだけ負担を減らしてください。
家族に理解してもらう
「つわりは病気ではない」と昔の日本ではよく言われていました。現在もその考えは残っていますが、病気でなくとも辛い症状であることに変わりありません。
そのことを家族に理解してもらい、手伝ってもらえる部分はお願いすることも大切です。つわりはお母さん1人で乗り切るものではありませんので、抱え込まないようにしましょう。
食べ方を工夫する
吐きつわりの症状がひどいときは、無理に食べないようにしましょう。
しかし、まったく食べないのはよくありませんので、食べ方を工夫することが大切です。
野菜スープやお粥など、消化がよくて食べられそうなものを、食べられそうなときに少量ずつ食べてみてください。3食きっちり食べることにこだわる必要はありません。
何も受け付けないようなら、水や氷、ゼリーやアイスクリームなどで水分補給するだけでも大丈夫です。
いろいろな方法で負担を減らす
つわりの症状がひどいときは、とにかくゆっくり過ごすしかありません。無理をすると体への負担が大きくなって危険です。
家事もこの時期だけは減らして、可能なら家族に手伝ってもらいましょう。難しいようなら、やらなくてもよい家事は手を抜くことも大切です。
家事代行サービスや出前を利用することも考えましょう。
一番大切なことは元気な赤ちゃんを生むことですから、無理に今までの生活を維持する必要はありません。
夢中になれることを見つける
つわりが重い時期は体調不良にばかり気を取られ、不安になることが多いです。そのストレスでつわりが悪化してしまうことも多いため、気分転換をしてください。
生まれてくる赤ちゃんの洋服やおもちゃを選んだり、自分で作ったりするのもよいでしょう。読書や映画鑑賞、ゲームなど家の中でゆったりとできる趣味もおすすめです。
何かに夢中になっていれば、つわりの症状が軽くなることもあります。
辛いときは我慢せずに病院へ
あまりにもつわりがひどく、起き上がれないほどだったり、日常生活ができない状態だったりする場合は、我慢せずに病院に行きましょう。
つわりが重篤になった妊娠悪阻になっている可能性があるからです。
妊娠悪阻は、病院で適切な治療を受けないと症状が改善しにくいです。赤ちゃんにも影響がでることもあるため、我慢しすぎないようにしましょう。
【まとめ】つわりは適切な対処と無理のない生活で乗り切ろう
つわりが起きる原因ははっきりしておらず、症状や時期にも個人差があります。そのため、つわりを完全になくす治療法はありません。
ですが、辛い症状はずっと続くものではなく、安定期に入れば少しずつ落ち着きます。赤ちゃんが育っている証拠でもありますので、ゆったりとした気持ちで受け入れて、無理なく過ごすことが大切です。
家族の協力も得ながら、体を大切にすることを第一に考えて過ごしてください。