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妊娠中はうなぎを控えた方がよいといわれていますが、それを知らない方や丑の日などに食べてしまったという方もいらっしゃることでしょう。
とくに妊娠初期は、うなぎなどに多く含まれるビタミンAの過剰摂取によって、胎児に影響する可能性もあります。では、一般的に安定期といわれる妊娠中期にうなぎを一人前食べてしまった場合も、妊娠初期と同様胎児になんらかの悪影響があるのでしょうか。
結論から申し上げると、妊娠中期にうなぎを一人前食べてしまっても、連日食べなければ問題ありません。
うなぎは栄養価も高くて美味しいご馳走です。心配であれば食べないことをおすすめしますが、うなぎ一人前を食べてしまったからといって心配しすぎることはないでしょう。
この記事では、うなぎを控えた方がよい理由や妊娠中期に食べても大丈夫な量、食べるときの注意点についてご紹介します。
妊娠中期にうなぎを一人前食べても大丈夫?
うなぎはビタミンAをはじめ、多くのビタミンやカルシウム、亜鉛などさまざまな栄養素を含む食材です。夏バテにも効くといわれているため、毎年土用の丑の日には家族でうなぎを食べに行くという方も多いのではないでしょうか。
そんな優秀なスタミナ食材であるうなぎですが、妊娠中はうなぎを控えた方がよいという話を聞いたことはありませんか?
ここでは、うなぎを控えた方がよい理由や、妊娠中期に食べても大丈夫なうなぎの量などについてご紹介します。
うなぎを控えた方がよいといわれる理由
妊娠中はうなぎを控えた方がよいといわれる理由は、ビタミンAの過剰摂取が懸念されるからです。
うなぎの主な栄養は、カリウムやカルシウム、タンパク質、ビタミンAやB1、リン、亜鉛などです。うなぎはビタミンAの含有量が他の食品よりも非常に多く、免疫力をアップするため、夏バテや疲れに最適だといわれています。
しかしうなぎなどの動物性食品から摂取したビタミンAには、代謝される過程で「レチノール」という妊婦さんが過剰摂取すると危険な物質が発生することから、うなぎを控えた方がよいといわれているのです。
レチノールが赤ちゃんに及ぼす影響
ビタミンAは、お腹の赤ちゃんの発達に欠かせない栄養素です。妊婦さんも胎児も体内で合成できない栄養素なので、妊婦さんが食事から適切な量を摂取する必要があります。
しかしその一方で、妊婦さんがうなぎなどの動物性食品からビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんの身体に形成不全、機能不全が出る可能性もあるので注意が必要です。
具体的には、水頭症や口蓋裂、耳の形成不全などが起こるといわれています。
レチノールは、脂溶性の性質であるため、尿と一緒に体外へ排出されず、脂肪組織や肝臓などにそのまま蓄積されてしまいます。とくに妊娠する3か月前から妊娠3か月程度までの間は、ビタミンAの過剰摂取によって赤ちゃんの奇形率が増加する恐れも。
妊娠中期に入ってからも、ビタミンAの過剰摂取によって胎児に悪影響が出る可能性も捨てきれないので、妊娠中は常に気を付けておくべきでしょう。
また、健康な成人でも、動物性食品に含まれるビタミンAを過剰摂取すると、頭蓋内圧が高くなり脳が圧迫され、頭痛や吐き気、嘔吐、めまいなどの症状が現れたり、皮膚の表面がはげ落ちたりする可能性もあるため注意しましょう。
妊娠中期に食べても大丈夫なうなぎの量
妊娠中期の1日のビタミンA推奨量は、650〜700㎍といわれています。うなぎ一人前を100gとすると、1回の食事で1,500㎍ものビタミンAを摂取することになるため、それだけで1日の推奨量の2倍を超えてしまうことに。
ビタミンAは、うなぎだけに含まれているわけではありません。1日の他の食事でも知らず知らずのうちに摂取していることになるため、うなぎを食べた日は大きく推奨量を超えてしまうことになります。
では、妊娠中期にどうしてもうなぎを食べたい場合は、どのくらいの量であれば食べても大丈夫なのでしょうか。
実は、ビタミンAによる健康被害が出ないとされる耐容上限量は、1日2,700㎍となっています。そのため、うなぎを一人前食べると推奨量は超えてしまいますが、上限は超えていないということになるため、赤ちゃんに影響はほとんどないといえるでしょう。
ただし、これはあくまでも上限です。できればうなぎを食べる際は一人前の半分程度を目安にし、1人前食べるのであれば、1日通して上限を超えないよう十分注意しましょう。
妊娠中期にうなぎを食べるときの注意点
上記では、妊娠中期の妊婦さんがなぜうなぎを控えた方がよいのか、どのくらいの量食べてもよいのかなどについてご紹介しました。
妊娠中期にうなぎを一人前食べてもよいことはおわかりいただけたかもしれませんが、もともとうなぎが好きな方や、法事や家族内の行事などでうなぎを食べる機会がある方は、いざ食べるとなると不安に感じてしまうかもしれません。
そこでここでは、妊娠中期にうなぎを食べるときの注意点についてご紹介します。
頻繁に食べないようにする
レチノールの過剰摂取で胎児の先天奇形が起こる可能性が高まるのは、毎日5,000㎍以上を摂取し続けたときです。
毎日うなぎを一人前食べ続ける方はほとんどいませんが、うなぎが好きな方でも頻繁に食べないようにしましょう。ときどきであれば、一人前食べてしまっても問題ありません。
他のビタミンAを多く含む食べ物やうなぎ由来の食べ物にも注意
レチノールは、うなぎ由来の食べ物はもちろん、うなぎ以外の食材にも含まれています。
うなぎ由来の食べ物の中では、とくに肝に多く含まれていて、その量は身以上となっています。うなぎの肝には、100gあたり4,400㎍ものビタミンAが含まれているため、妊娠中は少量でも注意が必要です。
肝はうな丼とセットになっているお吸い物に使用されていることも多く、うな丼と同時に食べてしまうと、1回の食事でかなりの量のビタミンAを摂取することになります。
他にも、うなぎ由来の食べ物にはひつまぶしやうなぎの骨、うなぎパイなどもありますが、どれもうなぎ一人前よりはビタミンAの摂取量が少ないようです。ただし食べ過ぎてしまうと推奨量を大きく超えてしまう可能性があるので注意しましょう。
うなぎ由来の食べ物以外にも、以下のような食材にレチノールが含まれています。
- 鶏レバー
- 豚レバー
- 牛レバー
- ホタルイカ
- アナゴ
- プロセスチーズ
とくにレチノールの含有量が多いのは、鶏レバーや豚レバーです。レバーは鉄分豊富で妊婦さんにおすすめの食材だと思われがちですが、実はレチノールも多く含んでいます。
鶏レバーについては、焼き鳥の串1本ですぐに推奨量を超えてしまうほどのレチノールが含まれているので、できれば妊娠中は控えるか、1、2本にとどめておきましょう。
食べすぎてしまったときはどうすべき?
ビタミンAが胎児におよぼす影響についてよく知らず、妊娠中期にうなぎを食べ過ぎてしまったという方もいるかもしれません。
しかし、ビタミンAは、継続的に取り過ぎなければ赤ちゃんへの影響はほとんどありません。たとえ1回うなぎを食べ過ぎてしまったからといって、心配し過ぎなくても大丈夫です。
今後はビタミンAの過剰摂取に気をつけ、バランスのよい食生活を送るように心がけましょう。
食事以外で注意したいのが、サプリメントによるビタミンAの過剰摂取です。妊娠中はつわりや体調不良による食欲のなさや、栄養の偏りを気にしてサプリメントを利用している方も多くいます。
ビタミンのサプリメントを服用する際は、事前に担当の医師に相談するか、ビタミンAが含まれていないものを選ぶようにしましょう。
緑黄色野菜のβカロチンでビタミンAを摂取するのがおすすめ
動物性の食品に含まれているビタミンAは、過剰摂取に気をつけるべきです。しかし、ビタミンAをまったく摂取しなければいいのかというとそうではありません。
レチノールの悪影響を受けたくないのであれば、緑黄色野菜に含まれる植物性のビタミンA(βカロチンは体内でビタミンAと同じ働きをする)を積極的に摂取するようにしましょう。
βカロチンであれば、体内に入った時点でビタミンAが不足していればビタミンAに変換されますが、足りていれば変換されずに脂肪組織に蓄えられるか排泄されます。βカロチンを摂り過ぎたことによってビタミンAの過剰症が起こることはないため、妊娠中期でも安心して食べられるでしょう。
まとめ
うなぎを控えた方がよい理由や妊娠中期に食べても大丈夫な量、食べるときの注意点についてご紹介しました。
ビタミンAに含まれるレチノールには、赤ちゃんの先天性奇形のリスクを高めることから、とくに妊娠初期には注意が必要です。妊娠中期に入っても、赤ちゃんへの影響がないとは言い切れないため、ビタミンAの過剰摂取には十分注意すべきです。
しかし、うなぎを1回や2回一人前食べてしまったからといって、かならず赤ちゃんに影響が出るわけではありません。
うなぎが好きな方は、食べたいのに我慢しすぎるとストレスになる可能性もあるので、過剰摂取に注意しながら、うなぎを楽しんでください。