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つわりは妊娠初期に起こる消化器症状で、妊婦さんの50~80%に症状が出るといわれています。気持ち悪さが続いたり、嘔吐を繰り返したりするのが一般的な症状ですが、食べていないと気持ち悪い、どこでも眠くなってしまうなどもつわりと呼ばれます。
つわりがひどいと食べられない、水分もとれないという状態が続き、妊娠悪阻(にんしんおそ)と呼ばれ、点滴や入院が必要になります。
この記事では、妊娠悪阻の原因や症状についてと、つわりを悪化させないためにできることをご紹介します。
つらいつわりに悩んでいる妊婦さんやご家族の方は、ぜひ参考にしてみてください。
妊娠悪阻とは
妊娠悪阻はつわりと違い、治療が必要となる病気です。徐々に悪化していく妊娠悪阻とは一体どのような病気なのでしょうか。
まずは、妊娠悪阻の原因や症状、診断方法、治療方法をご紹介します。
妊娠悪阻の原因
妊娠悪阻の原因は、つわりの悪化です。つわりの原因自体は明らかになっていませんが、以下の説が有力ではないかといわれています。
- hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が嘔吐中枢を刺激している
- プロゲステロン(黄体ホルモン)の増加による消化活動の低下
- 妊娠によるストレス
hCGホルモンとは、妊娠中にのみ産生されるホルモンで、妊娠を測定する役割があり、子宮に着床したころから分泌されはじめ、妊娠10週頃をピークとして妊娠20週頃には分泌が落ち着いてくる傾向にあります。
そのhCGホルモンが脳にある嘔吐中枢を刺激することが、つわりと関係しているのではといわれています。
また、プロゲステロンの分泌によって全身の筋肉がゆるみ、消化活動を低下させることも消化器症状の悪化に影響すると考えられています。
さらに、妊娠への不安やストレスがつわりを悪化させるともいわれていて、この3つの原因がつわりを引き起こしていると推測されています。
妊娠悪阻の症状
妊娠悪阻の症状は第1期、第2期、第3期と徐々に進行していきます。それぞれの症状を詳しくご紹介します。
第1期
1日に何回も吐き気や嘔吐が起こり、食事をとれなくなるだけではなく、水分の摂取も難しくなります。
そのため体重が減少しつづけ、脱水症状や栄養失調の症状であるめまいや頭痛が発生し、日常生活を送るのが困難になります。
第2期
第1期にみられる症状が続き、極度の脱水症状を起こします。尿量が減少するためトイレの回数が減り、血圧が低下したり頻脈になったりします。
さらに、尿中に体内の脂肪が分解されてできる、ケトン体が検出されるようになります。
ケトン体が検出されることは、栄養不足の飢餓状態であるとされるため、この検査によって入院を指示されることもあります。
第3期
第2期の状態からさらに脱水症状や栄養失調が続くと、内臓や脳にダメージを受けます。
妊娠悪阻の重篤な合併症として知られるウェルニッケ脳症は、記憶機能や運動機能に異常を生じさせます。
赤ちゃんも危険な状態にさらされていて、母体の命を守るために赤ちゃんを諦めなければいけないケースもあります。
妊娠悪阻の診断方法
妊娠悪阻は明確な診断基準が定められていませんが、以下のような症状が出たら妊娠悪阻と診断されます。
- 吐き気や嘔吐がひどく食べられない、飲めない状態が続いている
- トイレの回数が減った
- 頭痛やめまいが起こる
- 体重が5%以上減少した
- ケトン体が検出された
このような症状が出ていたら、すぐに病院に行って診断を受けることをおすすめします。
さらに、血液検査で脱水症状による体内の電解質の状態や、肝臓、腎臓の機能を調べることもあります。
妊娠悪阻の治療方法
妊娠悪阻の根本的な治療法は存在しないため、脱水症状や栄養失調の度合いに合わせて治療が選択されます。
基本的に心身の安静と休養が必要となるため、入院して点滴を行うことが多く、食事摂取の指導や水分補給、電解質を補うことによって重症化を防ぎます。
症状が軽度の場合は通院によって点滴を受けたり、食事や水分のとりかたを改善したりして、症状の緩和を目指します。
治療を受けることによって症状が改善すれば、そのまま退院して通常の生活に戻ることができます。
しかし、治療を行っても症状の改善が見られないケースで、第3期の症状があらわれてしまうと、ウェルニッケ脳症になってしまう可能性があるため、人工中絶を選択することもあります。
つわりを悪化させないためにできること
つわりは悪化すると妊娠悪阻となり、母体や赤ちゃんが危険な状態に陥ってしまうこともあります。
そこで、ここからは、つわりを悪化させないためにできることをご紹介します。
水分補給
水分をとっても吐いてしまうからと、水分補給をしないことは危険です。
水分不足は脱水症状を招き、脱水症状によってさらに吐き気がひどくなることもあります。そのため、吐き気や嘔吐が続きつらいときほど水分をよく飲むようにしましょう。
吐き気がつらいときでも、炭酸水なら飲めるという方も多いため、つわりのときによいとされる柑橘系の炭酸水を選ぶのもおすすめです。
また、脱水状態になると電解質が失われるため、電解質を摂取できるスポーツドリンクやOS経口補水液もおすすめですが、つわりの症状によってはスポーツドリンクや経口補水液はさらに吐き気を催すケースもあるため、飲みやすいものを探してみるようにしましょう。
食べられるときに食べられるものを食べる
食事は食べなければいけないと思わずに、時間や回数を気にせず食べられるときに食べやすいものを食べるようにしましょう。
とくにおすすめなのは野菜と果物で、ビタミンや葉酸、カルシウムが含まれる食材を摂取することで、妊娠中の風邪予防や赤ちゃんが順調に育つための栄養となります。
工夫して食べられるようになるものも多く、上記でご紹介した柑橘系の果物を食べたり、ごはんを冷ましてから食べたりするのがおすすめです。
しかし、冷たいものを食べたり飲んだりしすぎることで体が冷えてしまわないように気をつけましょう。
冷えが気になる方は、生姜湯や梅昆布茶、白湯などを飲んで体を温めることをおすすめします。
不安やストレスを抱えないようにする
とくにはじめての妊娠で不安を抱えている妊婦さんは、些細なことにストレスを感じやすくなります。
日常生活でストレスを溜めないように、ゆっくり行動するよう心がけたり、横になって休む時間を多くとったりするようにしましょう。
また、湯船にゆっくり浸かる、つわりがやわらぐ柑橘系のにおいのアロマオイルを使って、心身ともに安らぐ時間を作るなど、リラックスできる空間や時間を作ることも重要です。
いろいろな音やものに敏感になってしまう方は、耳栓をするなど工夫して過ごすことで、ストレスを抱えないようにしましょう。
職場や家族への理解を促すことも必要
つわりがひどく働くことや家事がつらいと感じる方は、職場や家族へつわりのつらさを伝えておくようにしましょう。
つわりは個人差があり、どの程度つらいのかは他人には想像できないため、自分自身でしっかり症状を把握し、周りに理解を求めることが必要となります。
そして、もし記事内でご紹介したような妊娠悪阻の症状が出たら、すぐに病院へ行って治療を開始することをおすすめします。
つわりや妊娠悪阻は症状を抑えることはできませんが、脱水症状や栄養失調の症状は、初期段階であればすぐに改善できる可能性も高くなります。
もし、職場に自分で伝えるのが難しいと感じたら、母子手帳や厚生労働省のホームページから入手できる「母子健康管理指導事項連絡カード」を使用しましょう。
このカードは、主治医が行う指導事項の内容を会社に的確に伝えるためのもので、診断書と同じ効力をもちます。
職場や家族へつわりへの理解を求め、少しでも身体を休めることができる環境を整えましょう。
まとめ
妊娠悪阻は重症化すると母体や胎児に危険が及ぶ病気です。
つわりが重くなることが原因となるため、つわりがひどくて食事をとれない、水分をとれないという場合は注意が必要です。
脱水症状や栄養失調の症状がではじめたら、病院に行って医師の診断を受け、適切な治療を早急にはじめることが重要となります。
初期の段階で点滴や食事療法を受ければ、赤ちゃんに影響が及ぶ前に、症状を改善させることができます。
また、重症化しないように水分補給を意識的に行い気をつけることで、妊娠悪阻の症状を防ぐことも可能です。食べやすいものや気持ち悪さがやわらぐものを見つけ、ひどいつわりを乗り切りましょう。
職場や家族につわりがひどく、休養が必要なことをしっかり伝え、ストレスを溜めないようにすることも大事です。
つわりがひどく、妊娠悪阻が心配な方、そのご家族の方はぜひ参考にしてみてください。
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