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妊娠していることが判明すると、妊娠の経過に伴った赤ちゃんの成長・妊婦さんの体の変化を診察できるように、出産予定日を求めるとともに、妊娠週数を数えていくようになります。出産予定日が少しずつ近づいてくるほどに、赤ちゃんと出会える期待感も大きくなっていきますよね。
しかしながら、実際に出産予定日に生まれる赤ちゃんの割合は皆さんが思うほど多くはなく、”ずれ”が生じることの方が一般的です。
この記事では、そもそもの出産予定日がどのように決められているのか、出産予定日を修正することはあるのか、出産予定日通りに生まれる赤ちゃんの割合、出産予定日がずれる仕組みに関してご説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。
出産予定日の決め方
まず始めに、出産予定日の決め方に関して確認していきましょう。
日本産科婦人科学会から公表されている産婦人科のガイドラインでは、出産予定日の決め方を「最終月経開始日から予定日を決定するが、排卵日や受精日が特定できる場合は排卵日や受精日から起算した予定日を用いる」と定めています。
出産予定日までの妊娠の経過は7日を1週として、妊娠週数・日数を用いて数えていきます。そして、妊娠経過のスタートとなるのは”最終の月経開始日”であり、この日が0週0日となります。最終月経開始日から出産予定日を決める場合には、”0週0日にあたる日付に280日を加えた日付が出産予定日”となります。
しかしながら、ガイドラインでもまとめられているように、出産予定日を求める際に排卵日、受精日を特定できるようであれば、そちらを利用した方が出産予定日の精度は高まります。
なぜならば、最終の月経開始日に280日を足す方法は月経・排卵の周期が28日であるということが前提となっているからです。周期が28日である人は月経の開始日から排卵日までの期間が14日となるため、妊娠2週目に該当するのですが、そうでない人は月経の開始日から排卵日までの期間が14日を境に前後するようになります。
妊娠週数の数え方では、どのような場合でも排卵日が妊娠2週目に該当するように考えられているため、排卵日や受精日が特定できている人は、”排卵推定日(2週0日)に266日を加えた日付が出産予定日”となります。
出産予定日の修正
出産予定日は「最終の月経開始日+280日」または、「排卵日・受精日+266日」で求めることができますが、実際には妊娠の経過に合わせて行う妊婦健診・超音波検査などでお腹の中の赤ちゃんの成長具合を確認して妊娠経過の週数・日数に狂いがないかを確認しています。
お母さんのお腹の中にいる間でも赤ちゃんひとりひとりには個性(体重や身長など)があり、この個性は成長に伴ってより顕著に現れるようになります。しかしながら、多くの場合、妊娠初期(妊娠5週~6週あたり)には赤ちゃんの成長ペースが同じ程度であるため、妊娠初期における超音波検査が本当の妊娠の経過を確認するための数少ない修正のチャンスともなっているのです。
「無事に日数を経過しているのであれば問題ない」と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、出産予定日が正確にわかっていないと、妊娠週数が進んだときに、赤ちゃんがきちんと成長しているかどうかの評価が狂ってしまうこともあるため、出産予定日の推測は非常に大切なことなのです。
出産予定日にずれや遅れはあるのか
出産予定日の求め方、検査を通じた修正、修正の必要性を確認しましたが、結局のところ出産予定日はあくまでも”予定”であるということに変わりありません。
出産予定日は約40週と定められますが、お腹の中の赤ちゃんの成長具合から見ると、満37週~満41週は”正産期”と定められています。正産期とは、赤ちゃんの身体機能や臓器が十分に成熟し、赤ちゃんがお母さんのお腹の外でも健康に生きていけるにまで成長した状態にある期間を指しており、この期間内であれば赤ちゃんが生まれる可能性は十分に高くなってきます。
厚生労働省では、昭和55年と平成21年における赤ちゃんの出産に関する統計データを公表しており、単産(赤ちゃんを1人出産する)の場合には正産期内での出産が9割以上を占める結果であることが明らかとなっています。この正産期は出産予定日と照らし合わせると、出産予定日を挟んで35日もの幅を持っていることになるため、出産予定日通りに生まれることの方が稀なのかも知れません。
事実、湘南鎌倉総合病院が公表したデータでは、同病院で2001年から2005年までに扱った初産婦さんの自然出産1563件のうち、出産予定日通りに生まれた赤ちゃんの数は99件であったことが示されており、割合としては約20人に1人であることになります。出産予定日通りに生まれるということは、思いのほか起こらないということがこの結果から実感できるのではないでしょうか(※)?
繰り返しになりますが、出産予定日はあくまでも”予定”であり、赤ちゃんが元気に生まれてきてくれれば何も問題ありません。出産予定日よりも早く生まれてきた場合、お腹の中にいる時間が長かった場合であっても、生まれてきてくれた赤ちゃんを笑顔で迎えてあげてください。
※1563件のうち99件という結果ではありますが、正産期内における出生件数ではこの99件が最も多い数値であり、一番お産が起きていたのは出産予定日であるということにもご留意ください。
出産予定日がずれる割合
神奈川県鎌倉市にある湘南鎌倉総合病院が、2001年から2005年に自然出産した初産婦さん1563件のデータによると週ごとの出産率は以下の通りです。
37週の出産率……3.7%
38週の出産率……12.5%
39週の出産率……30.8%
40週の出産率……34.9%
41週の出産率……18.1%
(「出産率が高いのは何週?出産予定日に生まれる確率は?」より引用)
見たところほとんどが正期産の範囲内に収まっていますので多少ずれたとしても気に病む必要はありません。
出産予定日のずれは初産婦と経産婦で違うのか?
結論から申し上げると初産婦と経産婦で出産予定日のずれが変わることはありません。出産経験の有無よりも妊婦さんの状態によって変わっていきます。
詳しくは後述しますが、生理周期による遅れ、排卵日や性行為、受精日のずれによる遅れなど原因は様々です。ただし初産婦と経産婦で違いはないという点ははっきりしています。
出産予定日がずれるのはどうして?
次に、出産予定日がずれる仕組みに関して確認していきましょう。あくまでも”予定”であると繰り返してきてはいますが、出産予定日はきちんと医学的根拠に基づいて決定されています。出産予定日にずれが生じる要因には以下が挙げられます。
- ・生理周期による予定日のずれ
- ・排卵日、性交渉、受精日による予定日のずれ
- ・赤ちゃんの大きさによる予定日のずれ
それぞれに関して見ていきましょう。
生理周期による予定日のずれ
一般的に、生理周期は25日以上38日以内とされています。このように周期には個人差があることに加えて、ひとりひとりの時々の体調によっても生理周期は変化します。
しかしながら、前述したように出産予定日は生理周期を28日であると仮定し、「1か月28日×10ヶ月=妊娠期間280日」として算出されています。
そのため、周期が28日でない場合にはずれが生じてしまいます。
”生理周期が28日ではないものの、常に安定している”という方に限定されるのですが、『ご自身の生理周期-28日』を行い、その結果を出産予定日に加算することで修正が可能となっています。例えば、生理周期が32日であり、出産予定日が4月6日(最終の月経開始日から280日足した日付)となった場合には、「32-28=4」ということになるため、4月6日に4日を加えた4月10日に修正することで対応可能となっています(※)。
※最終の月経開始日から出産予定日を算出した場合に用いる修正方法であることにご留意ください。
排卵日、性交渉、受精日による予定日のずれ
卵子と精子が受精したその瞬間から、胎児の発育は始まっていきます。赤ちゃんの”もと”となる、卵子の寿命は排卵されてから24時間、精子の寿命は排卵日付近の子宮内で48~72時間とされています。
また、卵子の受精可能時間は更に短く、排卵後の6~8時間であるとされています。一方の精子は射精後5~6時間経過した後の、約36時間であるといわれています。これらの受精可能な時間を考えると、性交渉をした日=受精日となるとは限りません。
加えて、最終生理日から出産予定日を算出する場合には、月経の開始日から14日後に排卵があったということを前提としています。しかしながら、さまざまな要因によって15%前後の女性の排卵は14日よりも遅れるといわれています。
排卵日を測定する方法はさまざまあり、ある程度の予測は可能ですが、これもやはり予測に留まっていますので、出産予定日のずれの原因となることが考えられます。
赤ちゃんの大きさによる予定日のずれ
出産予定日はご自身で数えて求めることができるのですが、赤ちゃんの心拍を確認できたタイミングで、お医者さんから「次回の診察で出産予定日を決定しましょう」といわれたお母さんも多いのではないでしょうか?
心拍の確認ができるのは妊娠6週~8週あたりです。そして、妊娠8週~11週の際には超音波検査を行い、頭殿長(とうでんちょう)を測ります。頭殿長は赤ちゃんの頭骨のてっぺんからお尻の突出部の中点までの長さのことであり、妊娠初期であれば、ママの身長や体重に影響を受けることなくほとんどの赤ちゃんが同じであるため、妊娠週数を推定する目安になります。
これを最終生理日から算出した暫定の出産予定日と照らし合わせて、最終的な出産予定日が決定されます。また、最終生理日が曖昧で予定日を算出できていなかった場合にも、ここで予定日が決定されます。
頭殿長の個体差が最も少ないとされているのが妊娠8週~11週であるため、超音波検査をこの期間で行うのですが、やはり頭殿長も目安としての標準値であるため、誤差が生じることもあります。これによって出産予定日にずれが出ることがあるのです。
もし出産予定日が過ぎても生まれない場合
もし出産予定日を過ぎても出産できなかった場合、まずは40週の妊婦検診を受けてください。検診で赤ちゃんの心拍数や発育、羊水量などに問題がなければ妊娠40週目は自然分娩待機で構いません。
ただ、41週に入ると分娩誘導などの医療措置を行うかどうか検討に入ります。42週目になると「過期産」と呼ばれ、お母さんと赤ちゃんの出産リスクが高くなるので、その前に分娩誘発を行われる場合がほとんどです。分娩誘発を行っても出産が進まない場合や、赤ちゃんとママに命の危険が迫っている場合には、緊急帝王切開手術になります。
出産予定日を過ぎても出産の兆候がないと不安になりますが、リラックスしてお過ごしください。赤ちゃんの胎動に気を配り、赤ちゃんに話しかけたりするといいかもしれません。無理のない程度に歩くのもいいでしょう。パートナーと一緒に軽く散歩してみてください。
まとめ
ここまで、出産予定日がどのように決められているのか、出産予定日を修正することはあるのか、出産予定日通りに生まれる赤ちゃんの割合、出産予定日がずれる仕組みに関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
医学的な根拠に基づいて行われている出産予定日の決定ですが、”ずれ”が生じることはよくあることです。赤ちゃんが予定よりも早く生まれてしまった、予定よりも長くお腹の中にいる、ということがあるとお母さんの不安も膨らんでしまうかと思いますが、そのような際の医療体制も確立されてきています。まずは何よりも、赤ちゃんがお母さん・お父さんのもとに生まれてきてくれたことを歓迎してあげてください。
この記事が妊婦さんや妊娠を考えているカップルなどさまざまな人にとって価値あるものになれば幸いです。