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卵巣破裂に要注意!原因や治療法、予防するためにできること

卵巣腫瘍は、気づかない間に大きくなり、ときには破裂することもあります。その際は到底我慢できないほどの激しい腹痛を伴うことも多く、意識を失ってしまう可能性もあるようです。

卵巣は、卵管を通して子宮とつながっています。左右にひとつずつ存在し、卵子を成熟させたり女性ホルモンを産生したりする役割を担っていますが、骨盤の奥に位置するため腫瘍ができても気づきにくく、盲腸の疑いで受診した際に見つかることも少なくありません。

最悪の場合卵巣を摘出しなければならず、両方の卵巣を失ってしまうと妊娠できなくなることもあるので、妊娠を希望する方は普段から定期的に婦人科検診を受けることが重要です。

この記事では、卵巣が破裂する原因や症状、治療などについてご紹介します。卵巣腫瘍があると指摘された方や、卵巣付近になんらかの症状がある方はぜひ最後まで読んでみてください。

卵巣が破裂する原因や症状について

リビングでくつろいでいるときに卵巣が痛くなった女性

卵巣は、臓器の中でも腫瘍ができやすいうえにその種類もさまざまです。

腫瘍ができる原因についてはまだよくわかっていませんが、大きさが直径20cmを超えることもあります。一般的には5cmを超えると卵巣破裂や卵巣茎捻転の可能性が高まるといわれているため、なんらかの治療が必要になるでしょう。

ここではまず、卵巣が破裂する原因や症状などについてご紹介します。

卵巣腫瘍全般で破裂する可能性がある

卵巣腫瘍には、卵巣嚢腫と充実性腫瘍があります。卵巣嚢腫は卵巣腫瘍の約9割を占めるといわれており、稀に悪性に変化する恐れもあるものの、そのほとんどが良性です。一方の充実性腫瘍には良性と悪性のものがあり、悪性のものはいわゆる卵巣がんです。

また、卵巣腫瘍には境界悪性腫瘍という良性と悪性の中間のものもありますが、良性や悪性に関わらず、これらすべての卵巣腫瘍で破裂が起こる可能性があります。

以下は、破裂する可能性がある卵巣腫瘍の主な種類です。

漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)

卵巣嚢腫でもっとも多い漿液性嚢腫は、卵巣の表面を覆っている上皮に発生することが多い腫瘍です。中にはサラサラの液体がたまっており、そのほとんどは良性ですが、中には悪性に変化するものもあるので注意しなければいけません。

また、漿液性嚢腫はこぶしくらいの大きさになることも。大きくなると卵巣破裂や茎捻転が起こりやすくなります。

粘液性嚢腫(ねんえきせいのうしゅ)

粘液性嚢腫は、腫瘍の中にドロドロとした粘液がたまる腫瘍です。多房性であるケースも多く、腫瘍内部が綺麗に壁で仕切られています。

卵巣嚢腫の中でもっとも大きくなる可能性が高いタイプで、直径30cmを超えることも。大きくなりすぎると破れてしまうこともあるため注意が必要です。

皮様嚢腫(ひようのうしゅ)

嚢腫の中に髪の毛や歯、骨や皮膚、脂肪などが詰まっている皮様嚢腫は、卵巣腫瘍の約20%を占める腫瘍です。10〜20代の女性にも多くみられます。

皮様嚢腫が自然に破裂する確率は1%程度と考えられていますが、妊娠中や分娩時はその頻度が増加するため要注意です。

チョコレート嚢胞

チョコレート嚢胞は子宮内膜症の一種で、卵巣内で子宮内膜が増殖する疾患です。月経と連動して卵巣内に経血がたまってしまい、古くなった血液がチョコレートのようにみえることからこの名前がつきました。

卵巣腫瘍の中でもっとも破裂する確率が高く、破裂すると内容物がお腹の中に漏れてしまうため、婦人科疾患の中でも緊急手術が必要になる可能性が高いことで知られています。

また、チョコレート嚢胞の0.7%が卵巣がんへと変化するとの報告もあることから、定期的な検診が重要となります。

境界性悪性腫瘍

上述した通り、境界性悪性腫瘍は悪性と良性の中間的な性質をもち、近年増加傾向にあるとされている腫瘍です。充実性腫瘍の約15%がこの境界性悪性腫瘍だといわれています。

適切な治療を行えば、多くの場合治療の予後は良好ですが、稀に再発したり悪性腫瘍のように転移したりすることもあるため、悪性腫瘍と同等の治療を行うこともあります。他の腫瘍と同じように大きくなると破裂する恐れがあるため、注意が必要です。

悪性腫瘍

卵巣の悪性腫瘍とは、いわゆる卵巣がんのことです。若い世代で発生するケースが多い「卵巣胚細胞腫瘍」と中高年世代で発生するケースが多い「上皮性卵巣がん」があります。卵巣胚細胞腫瘍が発生する頻度は低く、卵巣がんの多くは上皮性卵巣がんです。

悪性腫瘍はステージが進行すると破裂する恐れもあり、そうなるとがん細胞が他の臓器に転移してしまう恐れもあるので、早急に適切な処置を受ける必要があります。

卵巣が破裂したときの症状

以下は、卵巣が破裂したときに起こる可能性のある症状です。

  • 激しい腹痛
  • 腹膜炎

卵巣腫瘍破裂による腹痛は、突然お腹の片側もしくは両側に起こる激しい痛みが特徴です。運動や性交時に発症することが多いようで、ときには意識を失ってしまうこともあります。

また、卵巣が破裂して炎症が起こると、骨盤内で腹膜炎やショック状態になることも。骨盤腹膜炎は、下腹部痛のほかに膿のようなおりものや悪寒、震えを伴う発熱、卵巣の痛み、性交痛、不正出血などの症状がみられます。

そのまま放置すると、さらに炎症が進行して敗血症を引き起こし、命に関わる事態となりますので、早急に病院を受診するようにしましょう。

卵巣腫瘍は進行するまで気づかないことも

卵巣腫瘍は良性でも悪性でも進行するまで気づかないことも多い疾患です。

腫瘍が大きくなるまで自覚症状もないため、早期に発見できないケースも多く、破裂してはじめて卵巣腫瘍があると判明することもあります。

以下のような症状がある場合は、注意が必要です。

  • 下腹部にしこりのようなふくらみがある
  • 腰痛や下腹部痛がある
  • 下腹だけ出っぱっている
  • 月経痛が強くなった
  • 経血の量が増えた
  • 頻尿や便秘がある
  • 閉経しているのに性器出血がある

上記のような症状がある場合は、卵巣になんらかの異常が発生している可能性もあります。破裂すると激しい腹痛で救急外来を受診することになるかもしれないので、早めに婦人科を受診しましょう。

卵巣が破裂したらどんな治療をするの?

子宮と卵巣の模型を使いながら症状を説明している医師

卵巣腫瘍が破裂すると、内容物がお腹の中にたまり、激しい痛みに襲われます。婦人科では、内診や経膣超音波検査により卵巣の大きさなどを調べ、さらにCTやMRIで腫瘍の種類を予測したりリンパ節の腫大の有無、他臓器との関係などを確認したりするのが一般的です。

その後、患者さんそれぞれの症状に適した治療が行われますが、卵巣破裂は腹膜炎を起こす危険もあるため、早急な対応が求められます。

では、卵巣が破裂していると診断された場合。どのような治療が行われるのでしょうか。

卵巣破裂は緊急手術が必要になることも

MRIの結果、腫瘍の周りの壁がたるんでいたりへこんでいたりするなど、虚脱感がある場合は、破裂していると判断されます。卵巣破裂は良性、悪性に関わらず激しい痛みを伴うため、緊急手術が必要になるケースがほとんどです。

手術の方法は、開腹と腹腔鏡の2種類ですが、現在では傷が小さく痛みも少ない腹腔鏡下での手術が主流となっています。

どちらの方法で手術を行うかは、腫瘍の大きさや患者さんの年齢、希望などによって選択することになるでしょう。

卵巣破裂の場合は、破裂した腫瘍を切除もしくは卵巣を全摘出し、腹腔内の洗浄を行います。卵巣の状態によっては開腹での手術が必要な場合もあるので、医師とよく話し合って決めるようにしましょう。

卵巣破裂を予防するためにできること

卵巣破裂を予防するためには、定期的に婦人科を受診して検診を受けることが重要です。婦人科の検診では、問診や内診、経膣超音波検査を行って子宮や卵巣に異常がないかチェックします。

卵巣腫瘍を早期発見できた方の多くは、普段から婦人科検診を受けています。卵巣が破裂すると、最悪の場合命に関わる事態にまで発展する恐れもあるため、最低でも1年に1度は婦人科を受診しましょう。

まとめ

卵巣が破裂する原因や症状、治療などについてご紹介しました。

卵巣破裂は、主に卵巣腫瘍が大きくなることで起こります。破裂すると立っていられないほどの激痛に見舞われたり嘔吐したりすることもあるため、救急車で緊急搬送されてそのまま手術を受けることになるケースも多いです。

卵巣腫瘍は小さなうちは無症状で気づきにくいことから、普段から婦人科検診を受けて卵巣や子宮の状態をチェックしておくことが、卵巣破裂を予防する一番の方法です。

婦人科は足を踏み入れにくいという方も多いですが、卵巣という女性にとって重要な器官を守るためにも、必ず1年に1回は検診を受けるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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