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卵巣エコーとは、その名の通り卵巣の異常などを調べるために行う超音波検査のことです。主に、婦人科検診や卵巣の疾患が疑われるときに行われます。婦人科では、内診と合わせてもっとも基本的な検査のひとつであるため、受けたことがある方も多いことでしょう。
基本的には、卵巣のみを調べるのではなく、子宮全体や卵管などと同時に検査するため、卵巣エコー単独で行われることはほとんどありません。
ただ、卵巣エコーを含む婦人科の基本的な検査は、内診台へ座ったり膣内に器具を挿入したりすることも多く抵抗感が強い方も多いため、受けたことがない方もおられるようです。
この記事では、卵巣エコーの詳細と卵巣エコーでわかること、婦人科検診を受けるべき年齢と間隔について解説します。婦人科検診を受けたことがない方や受けるかどうかお悩みの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
卵巣エコーとは
そもそも卵巣とは、子宮の両側にひとつずつある生殖器官です。卵子を生成し成熟させ、排卵を行ったり、女性ホルモンを分泌したりするため、女性の体にとって大切な存在だといえます。
しかしその反面、卵巣は体の外と直接繋がっていません。異変が起きても症状が表に出にくく、かなり進行するまでは自覚症状がほとんどないため、卵巣エコーが重要となります。ここではまず、卵巣エコーの詳細や検査方法などについてご紹介します。
婦人科で行う超音波検査のこと
卵巣エコーとは、婦人科で行う超音波検査のことで、その中でも卵巣を調べる検査のことです。
近年、超音波検査は、医療機関においてさまざまな場面で使用されるポピュラーな検査となっているため、婦人科でなくとも医療機関を受診した際に受けたことがある方も多いのではないでしょうか。
超音波検査、いわゆるエコーと呼ばれる検査は、超音波の原理を用いています。水などの液体を媒体にして体内に超音波を送り、跳ね返ってくる反射波を計測します。
卵巣や卵管などの付属器の場合、ひと昔前までは一次スクリーニング(健康な人と、なんらかの疾患がある人をふるいわけること)では、内診に頼らざるを得ませんでした。
しかし、技術の発展によって高性能かつ小型の経膣超音波装置が登場したことなどで、卵巣などの異常をリアルタイムで見られるほか、容易に診断することが可能となりました。
検査方法
卵巣エコーは、主に「経膣エコー(超音波)検査」という方法で行います。経膣エコーとは、細い棒状のプローブ(器具)に使い捨てのキャップを装着し、膣に挿入して行う検査方法です。
体内から撮影を行うことで、卵巣までの距離が近くなるため、より鮮明に写すことができます。また、卵巣だけでなく卵管や子宮の様子も見られるので、経膣で検査を行うのが一般的です。
ただし、一部のケースでは経腹(お腹の上)に潤滑ゼリーを塗ってプローブを当てたり、経直腸(肛門からプローブを挿入)エコー検査を行ったりすることもあります。
エコー検査ではモニターに卵巣の断面、つまり輪切りにされた状態で写し出されるため、プローブの位置や角度によって、卵巣の写り方や見え方が変わります。
卵巣エコーを受けるべき方
卵巣エコーを含む子宮周辺のエコー検査は、現在産婦人科で行っている検査の中でもっとも基本的なものです。
そのため、卵巣の疾患疑いで受診された方だけでなく、産婦人科を受診される方のほとんどが受けることになるでしょう。
経膣エコーが受けられない方
上記でもご紹介したように、卵巣エコーでは膣の中にプローブを挿入して検査を行います。
しかし、性交渉を経験したことのない方は、膣からプローブを入れられないため、経腹エコーもしくは経直腸エコーで検査を受けることになります。
卵巣エコーでわかること
内診台に座り、膣内にプローブを入れて検査を行う卵巣エコー。その検査方法だけでなく、そもそも婦人科を受診することに抵抗がある女性も多いようです。
しかし、卵巣エコーは卵巣の異常や周囲の臓器との位置関係、卵胞の数や大きさまでわかるので、自覚症状に乏しい卵巣の状態を知るためには欠かせない検査だといえます。
ここでは、卵巣エコーでわかることについて詳しくご紹介します。
卵巣の異常
卵巣エコーでは、卵巣が腫れていないか、腹水がたまっていないかなど、卵巣の異常をチェックします。卵巣が腫れている場合は、以下のような可能性があるので、CTやMRI、血液検査などさらに詳しい検査を行うことになるでしょう。
- 卵巣腫瘍
- 女性ホルモンの影響
- 卵巣炎
卵巣が腫れる原因でもっとも多いのは、卵巣腫瘍によるものです。
卵巣腫瘍と一言でいっても、さまざまなタイプがあります。卵巣腫瘍の9割以上は良性の腫瘍だといわれており、中でも「卵巣嚢腫」であることがほとんどです。
卵巣嚢腫はその中身によって、大体以下の種類にわけられます。
- 漿液性嚢腫:さらさらした水のようなものがたまっている。
- 粘液性嚢腫:卵の白身のような粘液がたまっている。
- 皮様嚢腫:毛髪や歯、骨、軟骨、脂肪などが詰まっている。
- チョコレート嚢腫:子宮内膜症の一種で卵巣内に子宮内膜が増殖した状態。
卵巣腫瘍の9割以上が良性であるとはいえ、悪性の可能性もあるので注意が必要です。
また、卵巣腫瘍以外では生理周期に伴うものや妊娠初期のルテイン嚢胞など、女性ホルモンの影響によって卵巣が腫れている可能性や、卵巣炎による腫れの可能性もあります。
女性ホルモンの影響による腫れの場合は、時間の経過とともに縮小するケースが多いので、経過観察で済むことも多いでしょう。
卵巣炎の場合は、抗生剤や鎮痛剤、解熱剤などによる治療を受けることになります。いずれにせよ、卵巣の異常を発見するためにも、卵巣エコーは必ず受けておくべき検査だといえます。
周囲の臓器との位置関係
卵巣エコーでは、卵巣の異常がある場合は周囲の臓器と卵巣の位置関係まで確認するのが一般的です。なぜなら、卵巣腫瘍や卵巣炎などで腫れが生じている場合、周囲の臓器を圧迫したり、時には癒着したりすることもあるからです。
また、卵巣がんが疑われる場合は、周囲の臓器へ広がっていないかどうかも確認し、MRI検査やCT検査、血液検査などを行ってから治療方針を決定します。
卵巣がんが強く疑われる場合は、多くの場合手術で卵巣や卵管、場合によっては子宮なども摘出しますが、手術が不可能な場合は抗がん剤治療を行うことになるでしょう。
卵胞の数や大きさ
卵巣エコーでは、卵巣の腫れや周囲の臓器との位置関係だけでなく、卵胞の数や大きさも確認します。
卵胞とは、卵子を包み込んでいる袋のような組織です。卵巣内で成熟した卵胞が、卵巣の表面に突出し、卵胞から卵子が飛び出して排出されることで排卵が起こります。
卵子は、卵胞を満たしている卵胞液の中にありますが、大きさが約0.1〜0.2mmと非常に小さく、エコーでは卵子の姿を直接確認できません。そのため、卵巣エコーでは卵子の数ではなく、卵子を包んでいる卵胞の数や大きさをチェックしているのです。
卵胞の数が多い場合、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」という疾患が疑われます。
多嚢胞性卵巣症候群とは、卵巣でゴナドトロピンの分泌異常や男性ホルモン過多が起こり、卵胞の成長がストップして卵巣内にとどまってしまう疾患です。卵巣エコーでみると、たくさんの小さな卵胞を認めることができます。
多嚢胞性卵巣症候群の症状は、無月経や希発月経など月経周期の異常や、毛深くなる、ニキビが増える、肥満や血糖値の上昇などです。そのまま放置すると、子宮体がんやメタボリックシンドローム、不妊の原因にもなりますので、早めの受診が大切です。
婦人科検診を受けるべき年齢と間隔
卵巣エコーは、多くの場合単独で行うわけではなく、子宮や卵管などと一緒に検査を行います。婦人科検診でも、女性特有の疾患にかかわる検査を行っているため、定期的に受けましょう。
婦人科検診は、女性特有のがんの罹患率が増加しはじめる20代から受けはじめるのがおすすめです。女性特有の疾患の中でも、卵巣の疾患は自覚症状がほとんどなく、婦人科検診で見つかることが非常に多いです。そのため、婦人科検診は20歳を超えたら1年に1回の間隔で受けるようにしましょう。
ちなみに、卵巣や子宮のエコー検査を受ける際は、尿をためて膀胱を膨らませておくことで、腫瘍などが見えやすくなります。また、これらの臓器は骨盤の深い位置にあるため、尿をためないまま検査を行うと、腸管ガスの影響で見えにくくなることも。
婦人科検診を受ける際は、検査の前にトイレへは行かず尿をためておくようにしましょう。
まとめ
卵巣エコーの詳細と卵巣エコーでわかること、婦人科検診を受けるべき年齢と間隔について解説しました。
卵巣は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、異変があっても自覚症状が現れにくい臓器です。気づいたときには、卵巣が子どもの頭くらいの大きさになっているケースもあるので、普段から婦人科検診で卵巣エコーを受けておくべきなのです。
超音波検査は、痛みもほとんどなく安全で簡単に卵巣や子宮の状態を知ることができます。放射線を使用しないことから被曝の心配もないので、妊婦さんでも安心して受けられます。
卵巣の疾患を早期発見するためにも、1年に1回は婦人科検診でエコー検査を受けるようにしましょう。