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「卵巣年齢」という言葉を聞いたことはありますか?
卵巣年齢とは、文字の通り実際の年齢ではなく、卵巣の老化がどの程度進んでいるかを測ったものです。実年齢とは必ずしも一致せず、個人差もありますが、老化してしまった卵子は元に戻すことはできません。
卵巣年齢は、「AMH」という女性ホルモンの数値を測定し、卵巣に残っている卵子の数を調べることでわかります。たとえば、30歳の女性のAMHの値が30歳相当であれば、実年齢相応の卵子をもっているということになります。
ただし、時には20代前半にもかかわらず40歳くらいの卵巣年齢という結果が出ることもあるので、「妊娠できる可能性が少ないのではないか」とショックを受けてしまう方もいるようです。
この記事では、卵巣年齢が実年齢よりも高くなる理由と、卵巣年齢がわかるAMH検査についてご紹介します。
卵巣年齢が実年齢よりも高くなる理由とは
近年、晩婚化や出産年齢の高齢化によって第一子の出産を30歳超で迎える方も多く、キャリアが一区切りついたところで妊活をはじめる方も増えていることから、卵巣年齢という言葉も徐々に浸透してきています。
卵巣年齢は、実年齢に反比例していくのが一般的です。これは、年齢を重ねるごとに卵巣内の卵子の数は減っていくためですが、個人差も大きく、卵巣年齢が実年齢よりも高い方もおられます。
では、なぜ卵巣年齢が実年齢よりも高くなってしまうのでしょうか。
卵巣年齢が実年齢よりも高くなる理由
実年齢よりも若く見える方や老けて見える方など、見た目年齢も人それぞれ異なります。それと同じように、卵巣の老化にも個人差があり、卵巣年齢が実年齢より高い方も少なくありません。
そもそも卵胞に入っている卵子のもとは、出生時は200万個ほどあり、初潮を迎えて排卵が開始する思春期には30万個、30〜40代までには数万個まで減少しています。
「なぜ生理がくる数よりも卵子の数の方が早く減るの?」と疑問に感じる方もおられるかもしれませんが、それは排卵に至るまでの間にほとんどが死滅してしまうからです。たとえ妊娠中で排卵がない時期でも定期的に減少するので、妊娠回数が多ければ卵子も多いというわけではありません。
では、なぜ実年齢よりも卵巣年齢の方が高くなるのかというと、免疫に異常があったり先天的に卵胞が少なかったりなどの理由があり、人それぞれ異なります。
卵子の数は、年齢によって少なくなることはたしかですが、個人差も大きいため、将来的に妊娠をお考えの方は自分の卵巣がもつ能力を早めに知っておくことが重要です。
閉経が早まる兆候
一般的に、女性は年齢とともに徐々に卵巣の機能が低下します。平均50歳前後で閉経を迎えるのですが、年齢が若くても気づかないうちに通常よりも早い段階で卵巣機能が低下していることも。
卵巣は卵子の生成や成熟、排卵を行うだけでなく、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンを分泌する重要な役割を担っているため、閉経するとさまざまな体の不調が現れやすくなります。また、不妊症の原因になることもあるので、以下のような兆候があるときは早めに婦人科を受診しましょう。
- 月経周期が乱れている
- 経血量が増減する
- 無排卵月経が増える
月経周期が短くなったり長くなったり、経血の量が少なくなったりその反対に多くなったりなど、月経が乱れている場合は注意が必要です。ただし、これらの変化には個人差が大きいため、必ずしも同じ経過を辿って閉経するわけではありません。
簡易卵巣年齢チェックシート
卵巣年齢が高いと、妊娠力が低下する原因になります。以下は、簡易卵巣年齢チェックシートです。簡易的なものではありますが、現在の自分の卵巣年齢をチェックしておきましょう。
□ 月経周期が不安定
□ 経血の量が徐々に減っている気がする
□ 月経周期が以前よりも短くなってきた
□ 仕事やプライベートなどでストレスを強く感じることが多い
□ 喫煙者である
□ 過度のダイエットやストレスなどが原因で急激に痩せた経験がある
□ BMI値(肥満度を表す数値)が18以下、もしくは25以上である
□ 以前から冷え性に悩んでいる
□ 最近肌にハリやツヤがない
□ 髪の毛にボリュームがなく、ツヤもなくなってきた
□ 白髪が気になるようになった
□ 何年も不規則な生活をしている
□ 健康診断でコレステロール値や中性脂肪値が高い、もしくは低いと指摘されたことがある
□ ここ半年以上性交渉がない
上記の項目のうち、3つ以上に当てはまる場合は、実年齢よりも卵巣年齢の方が高い可能性もあります。卵子が老化すると、妊娠力だけでなく肌や髪のハリやツヤ感、さらには記憶力にまで影響するといわれているため、気になる方は婦人科を受診してみるとよいでしょう。
卵巣年齢がわかる検査とは
最近、テレビや女性誌などでも話題となっている「AMH検査」は、卵巣年齢を調べる検査です。AMHと呼ばれる女性ホルモンを測定することで、卵巣内に残った卵子の量を予測します。
妊活を行っている方の間では比較的知られている検査ですが、一般的には徐々に知られてはいるものの、まだまだポピュラーだとはいえません。
そこでここでは、卵巣年齢がわかるAMH検査について詳しくご紹介します。
AMH(アンチミューラリアンホルモン)とは
AMHとは、アンチミューラリアンホルモン、もしくは抗ミュラー管ホルモンの略で、発育過程にある卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンのことです。卵巣内の卵子の数を反映しているため、年齢とともに分泌量が減少していきます。
そのため、AMHを調べることで卵巣内にどのくらいの卵子が残っているかを知る目安(卵巣予備能)になるのです。AMHの数値が高いと卵子がたくさん残っていて、低いと残っている卵子が少ないと推測できます。
AMHの測定方法とは
AMHの数値は、婦人科や不妊治療専門クリニックなどの医療機関で、血液検査を受けることで調べられます。
不妊治療の現場でよく行われるFSH検査(卵胞刺激ホルモン検査)など、月経期ホルモン採血による検査は、月経がきて3〜5日の間に行わなければいけませんが、AMHは月経周期の影響を受けないためいつでも検査が可能です。
医療機関で検査を受ける際は、他の不妊検査項目と同時に検査することがほとんどです。ただし、病院やクリニックなどによって検査を行う項目はさまざまなので、事前に確認してから受診しましょう。
ちなみに、AMHの測定にかかる費用の相場は、5,000〜10,000円程度です。比較的新しい検査なので、保険適用外となります。そのため、かかる費用は受診する医療機関によって異なることも知っておきましょう。
卵巣年齢を調べるAMH検査を受けるべき理由
妊活という言葉が浸透してきた昨今、AMH検査も徐々に知名度を上げ、多くの女性が受検を検討されています。しかしその反面、なんとなく気になってはいるものの「妊活をはじめるときでいいか」「今すぐ受けなくてもいいか」と思われている方も多いようです。
AMH検査は、卵子がどのくらい残っているか推測する検査であると同時に、妊娠できなくなる期限の目安を知るための検査でもあります。
そのため、「今妊娠できる確率が高いか」というよりも、「いつまで妊娠可能か」を知り、妊活や今後のライフプラン設計に役立てることが大切です。
妊活をする際、あと数年間はゆっくり構えていいのか、早急に不妊治療をはじめる必要があるのかなどの判断材料にもなりますので、AMH検査を受けるか迷っている方はぜひ早めに受けてみましょう。
AMH検査で誤解しないための注意点
上記では、AMHの数値が高いと卵子はたくさん残っていて低いと少ない、とご紹介しました。しかし、AMHの数値は年齢が若くても低いことも非常に多く個人差も大きいため、妊娠率に直結するわけではない点に注意しましょう。
AMH検査は、客観性が高く月経周期の影響も受けにくいという優れた点をもっていますが、その一方で測定誤差は10〜15%前後となっており、検査前のピルの使用などによって数値が低めに出ることもあります。
AMH検査を受ける際は、上記の点を十分に理解したうえで適切に活用することが重要です。妊活中の方は、AMH検査の結果を参考に、自身の年齢を考慮しつつ不妊治療も視野に入れて妊活を進めるようにしましょう。
まとめ
卵巣年齢が実年齢よりも高くなる理由と、卵巣年齢がわかるAMH検査についてご紹介しました。
卵巣年齢を調べるAMH検査は、卵巣に残っている卵子の数を推測する検査です。卵子の質や数には個人差もありますが、自分の卵巣にどのくらいの卵子が残っているかを調べることで、妊活を有利に進めることができます。
一般的には年齢が高くなるほどAMHの数値は低くなるため、残っている卵子の数が少ないと判断されることも多いですが、比較的年齢が若い方でも卵巣に卵胞成分が少なく、卵巣年齢が高くなることもあります。
ただし、この結果はあくまでも推測であるうえ、卵子の質を表すものではないので、AMHの数値が低いからといって妊娠できないわけでないことを知っておきましょう。
妊活や不妊治療を行っている方、将来的に妊娠を希望されている方は、ぜひ今現在の卵巣年齢を知るためにAMH検査を受けてみることをおすすめします。