InstagramInstagram

流産の自然排出を待つメリットとデメリットを詳しく解説

妊婦さんの100人に15人が経験するといわれている流産。

流産は赤ちゃんを授かることを夢見た妊婦さんにとって無視できない存在であり、「もし流産を経験してしまったら…」と考えてしまうと不安で夜も眠れない日もあります。

万が一流産になってしまった場合は、母体の状態を観察しながら子宮内容物の自然排出を待つか、人工的に摘出をするかという選択肢ができます。

この記事では、流産から自然排出に至るまでの流れをご説明した後、自然排出を待つメリットとデメリットを詳しくご紹介していきます。

流産の自然排出に至るまでの流れ

胎児

全ての妊娠で起こり得る流産ですが、一体なぜ流産が起こるのかを皆さんはご存知でしたか?

まずは流産から自然排出に至るまでの流れをご説明していきます。

流産になる原因

流産は妊娠したばかりの妊娠初期から起こる可能性があり、妊娠12週目未満は「早期流産」、それ以降は「後期流産」と呼ばれています。

妊婦さんの100人に15人が流産に至るといわれていますが、ほとんどが早い段階で赤ちゃんを失ってしまう早期流産になります。

流産になる原因は赤ちゃんと母親のそれぞれにあります。

赤ちゃんに原因がある場合

流産になる原因の多くは、胎児が持っている先天性の染色体異常や遺伝子異常にあります。

これらの原因は受精卵の時点で将来的に流産が起こることが決定しているため、予防や治療の施しようがありません。

母親に原因がある場合

先天性な原因以外でも流産が起こる可能性があり、その原因は子宮の異常などにあります。

子宮筋腫・双角子宮・頚管無力症・子宮内感染といった子宮の異常に加えて、内科の病気である甲状腺・糖尿病・膠原病などが流産に繋がる可能性があるとされています。

母親の感染症などから流産に繋がるケースは稀であり、ほとんどが回避することができない染色体異常によるものとなるため、流産に至っても自分を責めることのないようにしましょう。

早期流産の種類とそれぞれの特徴

「早期流産」は胎児の状態、子宮内の状態によって複数の種類に分類されます。

流産の種類 特徴
稽留流産 妊娠22週目未満に赤ちゃんが子宮内で死亡してしまい、無症状のまま子宮内に存在している状態。
進行流産 赤ちゃんをつくる組織と附属物が体外に排出され始めた状態。
完全流産 赤ちゃんをつくる組織と附属物が完全に体外に排出された状態。
不全流産 赤ちゃんをつくる組織と附属物がまだ体内に残っている状態。

流産は出血や腹痛などの兆候がみられることがあり、主にエコー検査で「進行流産」や「稽留流産」が起こっていることが診断されます。

無症状で流産に至るケースもあるため、診断で突然流産を告げられることにとても大きなショックを受けてしまう妊婦さんもいます。

流産は誰にでもリスクが伴うため、予備知識はしっかりと頭に入れておきましょう。

自然排出に至るまでの過程

流産に至った場合、子宮内の状態をエコー検査で確認した上で「自然排出」を待つという選択肢ができます。

「自然排出」とは人工的な手段ではなく胎盤の組織や附属物が自然と体外に排出されることを意味します。

自然排出を待つかどうかは医師の判断、または患者様の希望で選択する形となります。

自然排出を待つメリットとデメリット

胎児の超音波写真

流産が起こった後の選択肢となる「自然排出」ですが、手術ではなく自然排出を待つメリットとデメリットはどのようなものかをご説明していきます。

自然排出を待つメリット

自然排出を待つということは流産手術を避けるということになり、手術のリスクを回避できること自体がメリットとなります。

流産手術には主に以下のようなリスクが伴います。

流産手術のリスク 特徴
感染 流産を長時間放置することで、稀に感染が疑われる症状が発生する。
頸管裂傷 頸管拡張処置などが原因で裂傷が起こる可能性がある。
子宮穿孔 子宮内処置の過程で穴が空いてしまう可能性がある。
子宮内容遺残 術後数週間にわたって出血や腹痛が続く場合がある。
子宮収縮不全 子宮の収縮が機能せず、大量の出血が伴う可能性がある。

麻酔アレルギーなどを持っている方も自然排出を待つことに大きなメリットがあるといえます。

しかし、流産手術が怖いという方が必ず自然排出を選択できるとは限りません。流産から自然排出に至る確率は全体の7割くらいとされています。

また、自然排出を選んでも流産手術を選んでも次の流産率を下げられるわけではありません。

自然排出を待つデメリット

続いてデメリットですが、自然排出が行われている過程で痛みを感じる場合があります。

その痛みは生理痛ととても似ており、場合によっては下腹部に耐えられないほどの痛みが生じます。また、痛みだけではなく少量〜大量の出血を伴うこともあり、程度によっては緊急入院が必要になるケースもあります。

特に子宮筋腫、内膜症を持っている方は大量出血による輸血を要する場合もあるため、必ずしも自然排出を選んだ方がいいとは限らないと理解しておきましょう。

自然排出ではなく流産手術が必要になるケース

術衣の医師

流産に至った場合、7割の方に自然排出が起こりますが、残りの3割の方は子宮内容物を摘出するための流産手術を受けることになります。

胎嚢が大きい場合

流産が進むと出血の量が徐々に増えて、赤ちゃんを包む袋である胎嚢が自然と排出されるケースが多くあります。

胎嚢は腹痛が強くなった場合は胎嚢が排出される合図となりますが、胎嚢が大きい場合は上手く排出されずに出血だけが続くこともあります。この場合、エコー検査を行って状態を観察し、必要となれば流産手術で摘出することになります。

稽留流産だった場合

子宮内に赤ちゃんが存在するものの、心肺が停止している状態だった場合は稽留流産となります。

稽留流産は胎嚢の大きさが正常であっても子宮頸管は閉じている状態で、自然排出を待っても子宮内容物が排出される様子がなかった場合、流産手術(子宮内容物除去術)で摘出を行ないます。

稽留流産は流産特有の兆候がないのが特徴ですが、気づかずに放置し続けると進行流産になって大量の出血と腹痛を伴うことがあります。母体に大きな負担がかかって危険な状態になることもありますので、定期的な妊娠健診は欠かさずに行いましょう。

自然排出の体験談

最後に、流産から自然排出を経験した妊婦さんの声をご紹介します。

とても悲しいエピソードですがどの妊婦さんも体験する可能性があるのというのが現実ですので、ご覧になってみてください。

胎嚢が育たなかった流産から自然排出に至るまで

「初めての妊娠健診を受けたのは妊娠6週目の頃でした。本来であれば赤ちゃんが包まれた胎嚢が育っているはずなのですが、胎嚢がとても小さく、胎芽は見えませんでした。3回目の妊娠健診で大きく育った胎芽が確認されましたが、診察の後に数日間出血が続き、次の健診で遂に流産を言い渡されました。稽留流産だったのです。覚悟を決めてはいましたが、涙が止まりませんでした。先生の指示に従って自然排出を待ち、数日後の朝に突然の大量出血で透明な塊が排出されました。先生にその塊を見せたところ『これで全て終わりました。』という声をいただき、初めての妊娠生活は終わりました。」

心肺停止確認から自然排出に至るまで

「夫と毎日赤ちゃんの将来の話で盛り上がっていましたが、何の兆候もなく妊娠9週目で赤ちゃんの心肺停止が確認されました。まさに青天の霹靂でした。稽留流産と診断された1週間後に流産手術を予約しましたが、待っている間に茶色い出血がみられて、生理痛のような痛みも感じました。そして心肺停止を言い渡された9日後の夜に大量出血を伴って胎嚢が排出されました。手術を覚悟していましたが、自然排出の腹痛もなかなかのものでした。」

まとめ

流産が起こった場合、胎芽や胎児をつくる組織や附属物が自然に体外に排出されるか、人工的に取り除くかという選択肢があります。

自然排出はさまざまなリスクを伴う流産手術を受けずに済むというメリットがありますが、排出時には重い生理痛のような痛みと出血が伴うこともあります。

また、稽留流産で胎嚢が排出されないなどのケースでは流産手術が必須となることを覚えておきましょう。

流産になる原因は赤ちゃんと母親どちらにもありますが、ほとんどが赤ちゃんの染色体異常から発生します。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事