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不育症の原因について|発生頻度や流産・死産との関係性を詳しく解説

妊娠はするものの、流産や死産を繰り返してなかなか子どもを生むことができない不育症は、無視することができない厄介な病気です。

不育症は、一つの原因から引き起こされる病気ではなく、さまざまなリスク因子が関係しており、なかには先天的な疾患が原因となるケースもあります。

そこでこの記事では、不育症がどんな病気かご説明した後、不育症の原因や発生頻度、流産・死産との関係性などを詳しく解説していきます。

不育症はどんな病気?

赤ちゃんの足と手で作られたハートマーク
不育症とは、2回以上の流産・死産、または生後1週間以内の早期新生児死亡によって、子どもが得られない場合に診断される病気です。

単一の病気ではなく、習慣流産や反復流産などを含めて不育症と呼ばれています。

不育症の半数以上が偶発的な流産によって引き起こされ、特別な治療を行わなくても次の妊娠で正常な赤ちゃんを出産できるケースもあれば、適切な治療を行って出産率が改善されるケースもあります。

不育症に含まれる流産について

日本産科婦人科学会では、「妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されること」を流産としています。

妊娠12週未満を早期流産、妊娠12週以降を後期流産と呼びますが、早期流産が流産全体の約90%を占めています。

流産の時期に関わらず、流産を2回以上繰り返した反復流産と3回以上繰り返した習慣流産が不育症にあたり、妊娠検査で陽性と診断された後に超音波検査で胎嚢が発見されなかった生化学的妊娠は含まれません。

不育症の発生頻度

不育症に繋がる流産は妊娠最大の合併症と呼ばれ、妊娠全体の10%〜20%で発生します。

流産の頻度は歳を重ねるごとに増加するため、高齢出産では大きなリスクが伴います。実際に、40歳代の妊婦さんが流産になる確率は約50%であり、出生前診断をしっかりと受けて、赤ちゃんの健康状態に応じた準備をしなければなりません。

流産や死産を2回以上繰り返した場合に診断される不育症ですが、妊娠歴のある35歳〜79歳の女性の場合、約5%に発生するといわれています。厚生労働科学 研究班(齋藤班)が発表した情報では、不育症と診断された5%の患者の内、4.2%は反復流産、0.9%は習慣流産となっています。

日本と欧米で不育症の発生頻度はほとんど変わりませんが、日本の場合は妊婦さんの高齢化が進み、100万人以上の不育症患者がいるといわれています。

不育症の原因とは?

妊婦さんのお腹と聴診器をあてる手
流産や死産の既往歴がある妊婦さんにとって、不育症は大きな不安要素となっています。

一体なぜ不育症になってしまうのか、その原因を詳しく解説していきます。

不育症になる主な4つの原因

日本の医療は、過去数十年と比べて目まぐるしい進歩を遂げましたが、現在の医学をもってしても原因がわからない不育症が多々確認されています。

厚生労働省が発表した情報によると、偶発的流産で尚且、原因不明の不育症の割合は全体の半数以上とされています。

不育症の中でも原因がわかるものは、主に4種類に分けられます。

  1. 染色体異常
  2. 免疫学的異常(抗リン脂質抗体症候群・同種免疫異常)
  3. 内分泌学的異常(甲状腺機能異常・糖代謝異常・プロラクチン分泌異常)
  4. 子宮形態異常

これらの原因は、化学的根拠のある不育症検査で特定できるため、原因に応じた治療を受けて妊娠継続率・出産率の改善に繋げることが可能です。

【1】染色体異常

染色体は、親から子に受け継がれる遺伝情報を格納している分子で、染色体異常の多くは受精卵の時点で発生します。

胎児が染色体異常を持っている場合もあれば、夫婦のいずれかが持っている場合もあり、早期流産の原因の中でも大きな割合を占めています。流産を3回以上繰り返した習慣流産の場合、夫婦のいずれかが均衡型転座の染色体異常を持っている可能性は約5%といわれており、この状態で妊娠した場合の流産率は、約70%という高い数字になっています。

赤ちゃんに染色体異常があった場合の多くは流産に繋がってしまいますが、流産せずに生まれてくれることも少ない頻度であります。

染色体異常は複数の形態がありますが、残念ながら現在の医療では治療することができません。それでも、染色体検査で特定の染色体異常を発見することはできますので、染色体検査を受けられる時期になったら早めに医療機関に相談するようにしましょう。

【2】免疫学的異常

免疫学的異常には、抗リン脂質抗体症候群(ASP)や同種免疫異常などの疾患が含まれています。

抗リン脂質抗体症候群は、血液中の抗リン脂質抗体によって血流の流れが悪化し、血栓症が発生する疾患です。血栓症によって胎児に酸素や栄養素が運ばれなくなることで、流産や死産を招いてしまいます。

同種免疫異常は、妊娠を継続・維持するための免疫システムに異常が発生し、胎児を異種抗原とみなして攻撃してしまう疾患です。

抗リン脂質抗体症候群と診断された場合は、自己免疫反応を抑える内服薬による治療が行われ、同種免疫異常と診断された場合は、パートナーの血液から採取したリンパ球を注射する免疫療法などが行われます。

【3】内分泌学的異常

内分泌学的異常には、甲状腺機能異常や糖代謝異常、プロラクチン分泌異常などが含まれています。

喉にある甲状腺から、新陳代謝や身体の成長を促す甲状腺ホルモンが分泌されていますが、甲状腺機能低下によって甲状腺ホルモンが少なくなり、流産に繋がるケースがあります。甲状腺機能異常と診断された場合は、甲状腺ホルモン(チラーヂンS)の服用などの治療が行われます。

国民病とも呼ばれる糖尿病などの糖代謝異常も不育症の原因とされています。流産を避けるための血糖値のコントロールは欠かせないもので、妊活をする場合には食事管理に気をつける必要があります。

脳下垂体前葉から分泌されているプロラクチンというホルモンは、乳汁分泌を促す働きがあります。プロラクチン分泌に異常が起こり、高プロラクチン血症になった場合に月経不順や黄体機能不全、流産などのリスクが生じます。プロラクチン分泌異常の治療は、プロラクチン値に応じた内服薬の処方が行われます。状態によっては頭部MRI検査を行いながら、経過の観察が必要となります。

【4】子宮形態異常

子宮形態異常には、重複子宮や中隔子宮などの子宮奇形、子宮粘膜下筋腫などの後天的な疾患があります。

流産に繋がる可能性が特に高いのが中隔子宮で、子宮内腔に中隔ができることで子宮腔が左右に分かれた状態になります。中隔に対して着床する可能性はありますが、多くは流産が引き起こされてしまいます。

不育症の原因となる子宮形態異常は、状態に応じて開腹手術、もしくは内視鏡手術が行われます。現在は術後の状態回復が優れている内視鏡手術が主流となっています。

手術療法によって妊娠継続率は改善されますので、必ず医師と相談して不育症検査、そして不育症の原因に応じた適切な治療を受けるようにしましょう。

不育症だと思ったら何をすればいい?

医師と話をする妊婦さん
2度も流産を繰り返してしまった場合、とても大きな精神的ショックを受けると同時に「これから妊活をしてもいいのか?」「そもそも妊娠できるのか?」と不安になってしまうものです。

不育症だと思ったら、まずは不育症を専門に取り扱う機関に相談することを考えましょう。

注意しなければならないのが、医療機関によって不育症の認識や対応に差があり、施設によっては流産を2回繰り返しても異常だと疑われないケースもあるということです。

流産後は精神的なケアも欠かせないため、ピアカウンセラーや不育症の患者をたくさん診てきた専門医を頼ることが大事になります。

どのような機関に相談していいか迷ってしまいますが、各都道府県の自治体で不育症の相談ができる窓口が用意されていますので、まずは電話で問い合わせすることをオススメします。

東京都の場合、不育症や不妊症を相談できる「東京都 不妊・不育ホットライン」があり、毎週火曜日10時から14時まで電話で相談を受け付けています。

まとめ

流産・死産を2回以上繰り返す不育症は、過去に赤ちゃんを出産する前に亡くしてしまった妊婦さんにとって、大きな悩みのタネとなっています。

不育症の半数以上は原因不明とされていますが、検査によって原因を特定できることもあります。

原因が特定できるものとして、主に染色体異常、免疫学的異常、内分泌学的異常、子宮形態異常の4種類が挙げられ、それぞれ適切な治療を受けることで妊娠継続率や出産率を改善することが可能です。

自分が不育症だと思った場合は、すぐに不育症を専門に取り扱う医療機関や相談窓口に問い合わせをすることを心がけましょう。

また、ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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