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日本の医療は日々進歩し続けていますが、現代の医療をもってしても流産や死産を避けられないケースがあります。夢にまでみてきた妊娠を2回も経験したにもかかわらず、流産を繰り返してしまう方もおり、不育症と診断されて悩んでいる女性は国内で100万人にものぼるといわれています。
一度でも流産を経験した方は、どうしても次の妊娠でも流産を意識してしまいますが、妊娠週数や年齢によって流産率が変わることを事前に知っておくことはとても大事です。
この記事では、不育症と流産に関する基礎知識をご紹介した上で、妊娠週数や年齢に応じた流産の発生頻度を詳しくご紹介していきます。
不育症について
妊娠が判明した後は、少しずつ大きくなるお腹を見ながら産後の幸せな未来を想像するものですが、悲しいことに、避けることができない流産によって赤ちゃんが生まれる前に亡くしてしまうことも珍しくありません。
妊娠中の大きな不安要素となる流産ですが、流産を繰り返すことで不育症と診断されることがあります。
不育症の定義
不育症は、妊娠自体はするものの、流産・死産を2回以上繰り返してしまい、赤ちゃんを得られづらくなっている病気です。
毎年、数万人が不育症になるといわれており、検査を行っても半数以上は原因を突き止められません。
流産は、妊娠週数や年齢によって発生頻度が異なりますが、不育症になったからといって赤ちゃんを授かれないわけではありません。
1回の流産は偶然起こった可能性もあって不育症とは診断されませんが、2回以上繰り返した場合は何らかのリスク因子(病気を引き起こす可能性の高いもの)があるとして、化学的根拠のある検査を受けることが推奨されます。
不育症のリスク因子と治療法
不育症と診断された方には、流産が起こりやすいリスク因子が発見されることがあります。
不育症のリスク因子 | |
---|---|
リスク因子が不明の偶然起こった流産 | 65.3% |
リスク因子が不明で、抗PE抗体のみ陽性の偶然起こった流産 | 22.6% |
抗リン脂質抗体症候群 | 10.2% |
子宮形態異常(重複子宮、双角子宮、中隔子宮、単角子宮など) | 7.8% |
プロテインC欠乏 | 7.4% |
第Ⅻ因子欠乏 | 7.2% |
甲状腺異常 | 6.8% |
夫婦の染色体異常 | 4.6% |
プロテインS欠乏 | 0.2% |
不育症の原因の大半は染色体異常によるもので、不育症検査で胎児に染色体異常がみられた場合は、偶然起こったものとされて治療は必要とされません。
その他のリスク因子が不育症検査で特定できた場合は、低用量アスピリン療法やヘパリン療法、内視鏡的治療などで、妊娠継続率や出産率の改善に繋げることができます。
染色体異常の治療法はないとご説明しましたが、夫婦のどちらかに染色体異常がないかを調べる染色体検査や、妊娠週数が9週目以降になると受けられるNIPT(新型出生前診断)があります。
染色体異常に関して正しい知識を得たい場合は、染色体の専門知識を持つ臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの遺伝カウンセリングを受けましょう。
流産について
不育症に関する理解をさら深めたい方に、流産とは何かをご説明していきます。
流産の定義
流産とは、妊娠週数が22週目になる前に妊娠が継続できない状態になり、赤ちゃんが亡くなってしまうことを意味します。
やっとお腹に授かった赤ちゃんを生まれる前に亡くしてしまうのはとても悲しいことですが、先天的疾患である染色体異常による流産は、妊婦さんの行動で避けられるものではありません。
ですから、流産になっても決して自分を責めず、産婦人科の先生のアドバイスや家族、パートナーのアドバイスを受けて、次の妊娠・出産の準備をゆっくり進めていきましょう。
流産の種類
流産と診断されるのは、妊娠週数22週未満に赤ちゃんが亡くなってしまった場合ですが、流産に至った経緯で人工流産と自然流産に分けられます。
人工流産とは
人工流産は、妊娠週数21週6日目になるまでに、人の手を介して妊娠を中断させることを意味します。
人工妊娠中絶とも呼ばれ、母体保護法に基づいて人工妊娠中絶手術を行って、胎児や胎児の付属物を母体外に排出します。
母体保護法に反する場合、人工妊娠中絶手術を受けることはできないため、まずは母体保護法指定の医師に相談するようにしましょう。
自然流産とは
自然流産は、人工的な流産ではなく、胎児側の染色体異常や母親側の疾患によって引き起こされる流産を意味します。
妊娠全体の10%〜15%が自然流産になるといわれており、そのほとんどは染色体異常が原因とされています。
自然流産は、妊娠週数によってさらに早期流産と後期流産に分けられます。
早期流産|妊娠週数12週未満
流産の多くが妊娠週数12週未満で起こる早期流産です。
早期流産に至った場合、胎芽や胎児の状態によって以下のように診断されます。
- 【完全流産】胎芽や胎児、その付属物が母体外に完全に排出された状態
- 【不全流産】胎芽や胎児、その付属物が母体外に残存している状態
- 【稽留流産】胎芽や胎児が子宮内で死亡しているにもかかわらず、無症状で子宮内に停滞している状態
- 【化学流産】妊娠検査薬で陽性反応が出たにもかかわらず、初診で胎嚢が確認できない状態。化学流産は不育症には含まれません。
早期流産は状態に応じて自然排出を待つか、任意で流産手術を受けるか選択できるため、産婦人科の先生からリスクをよく聞いた上で決断をしましょう。
また、化学流産は不育症の定義である流産の回数には含まれないことを覚えておきましょう。
後期流産|妊娠週数12週〜22週未満
妊娠週数12週以降、22週未満は後期流産と呼ばれ、母親側に原因があるケースが多くなります。
不育症のリスク因子でもある、子宮形態異常や甲状腺異常などが後期流産の原因として挙げられ、中隔子宮などでは内視鏡手術による治療などが行われます。
反復流産
反復流産は2回以上流産を繰り返すことを意味し、不育症に含まれます。
反復流産は妊娠全体の2%〜5%の発生頻度といわれており、リスク因子を特定するための不育症検査と、検査結果に応じた治療を受けることがオススメされます。
習慣流産
習慣流産は3回以上流産を繰り返すことを意味し、反復流産とともに不育症に含まれています。
発生頻度は1%程度であり、両親のいずれかが流産をしやすい疾患を持っている可能性が高まります。夫婦染色体検査を受けることが推奨され、陽性反応が出た場合は、遺伝カウンセリングをしっかり受けて、次の妊娠にどのようなリスクが生じるかを理解しておく必要があります。
年齢に応じた流産の発生頻度
流産は、妊娠週数12週未満の早期流産が大きな割合を占めていますが、女性の年齢が高くなるにつれて流産の発生頻度が高まることを理解しておかなければなりません。
35歳以上の流産率
女性の加齢とともに流産の頻度は多くなり、35歳では約20%の流産率に対し、40歳では一気に約40%まで流産率が高くなります。
妊婦の年齢 | 流産率 |
---|---|
35歳〜39歳 | 約20% |
40歳〜41歳 | 約40% |
42歳〜 | 約48% |
高齢の妊娠では、胎児に染色体異常が発生する確率が高くなる他に、産科合併症が発生しやすいというリスクがあるため、十分に理解した上で妊活や出産に臨む必要があります。
高齢の妊婦さんに推奨される出生前診断
不育症検査には夫婦染色体検査がありますが、胎児が染色体異常を持っている可能性を出生前診断で調べることが可能です。
高齢の妊婦さんほどダウン症候群などを持つ赤ちゃんが生まれやすくなるため、早めに出生前診断を受け、結果に応じた出産や産後の準備を進めることはとても大事です。
出生前診断は、妊婦さんの間で需要が高まっているNIPT(新型出生前診断)を受けるのがオススメです。
NIPTは、母親の血液を注射器で採取して胎児が染色体異常症を持っている確率を調べる検査で、流産に繋がるリスクがゼロなので安心して受けることができます。
NIPTは、早くて妊娠週数9週目から検査を受けられますので、染色体異常に関して専門的な知識を持つ臨床遺伝専門医がいる医療施設で受検を検討してみましょう。
まとめ
不育症と流産に関する基礎知識、そして妊娠週数や年齢に応じた流産の発生頻度をご紹介しました。
流産を繰り返す不育症に悩まされている女性はたくさんいますが、流産をしてしまった自分を責めるのではなく、その原因を理解して今後の妊娠に前向きになることはとても大事です。
妊娠週数が12週未満の早期流産の原因は、母親側ではなく、偶然発生した胎児の染色体異常のものがほとんどとなります。
一方で、妊娠週数12週以降の後期流産では、子宮形態異常など母親側の原因が増えます。しっかりと検査を受けて不育症のリスク因子を特定し、適切な治療を受けることをオススメします。
高齢の出産になるほど胎児が染色体異常を持っている可能性も高まりますので、不育症で妊娠した際は、できるだけ出生前診断を受けて、出産に向けた準備を早めに進めることも忘れないようにしましょう。
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