InstagramInstagram

不妊治療で双子になる確率は?体外受精の1個戻し・2個戻しと排卵誘発剤で比べる多胎の仕組みとリスク

目次


仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

不妊治療で双子になる確率は、治療法によって大きく変わります。自然妊娠では双子は分娩のおよそ100件に1件ですが、日本の体外受精では妊娠のうち約3〜4%が多胎でした。排卵誘発剤の飲み薬では数%から10%前後、注射薬(ゴナドトロピン)では研究によって30%前後と報告されています。胚を1個しか戻していなくても、その胚が2つに分かれて一卵性の双子になることがあります。この記事では、治療法ごとの確率、1個戻しでも双子になる仕組み、日本で1個戻しが原則とされている理由、多胎妊娠のリスクを、一次資料にもとづいて整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
👶 体外受精・排卵誘発・多胎妊娠
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 不妊治療で双子になる確率はどのくらいですか?

A. 日本の体外受精(2023年)では、妊娠に占める多胎の割合は新鮮胚移植で3.4%、凍結胚移植で3.8%でした。排卵誘発剤では、飲み薬で数%〜10%前後、注射薬(ゴナドトロピン)で約3割という報告があります。自然妊娠の双子は分娩の約1%です。これらは集団の数字で、一人ひとりの確率をそのまま表すものではありません。

  • ➤1個戻しでも双子になる → 胚が分かれる一卵性双胎が1個戻しの妊娠の約1.4%。胚盤胞まで育てると増える
  • ➤2個戻し → 1個戻しより多胎がはっきり増える。日本では原則1個戻し
  • ➤排卵誘発剤 → 複数の卵子が排卵されて二卵性の双子になる。三つ子は主に注射薬で起こる
  • ➤双子を狙う方法 → 医学的な方法はない。多胎は母子の合併症が増える

1. 不妊治療で双子になる確率は?治療法別に比べる

不妊治療で双子になる確率は「どの治療で妊娠したか」によって大きく違い、多い順に、注射薬による排卵誘発、2個戻しの体外受精、飲み薬による排卵誘発、1個戻しの体外受精、自然妊娠となります。ただし、それぞれの数字は調べた人の条件や数え方(妊娠あたりか、出産あたりか)が違うため、単純に並べて比べられるものではありません。ここでは治療ごとに、どの資料がどういう条件で出した数字なのかを添えて説明します。

体外受精そのものの流れ(採卵・受精・胚移植)については、体外受精とはで解説しています。この記事では「双子になるかどうか」に絞って話を進めます。

自然妊娠で双子が生まれる確率

自然妊娠を含めた日本全体では、双子などの多胎の分娩は全分娩の約1%です。人口動態統計をもとにした集計では、5年ごとの多胎分娩率は1996〜2000年が0.97%、2001〜2005年が1.12%、2006〜2010年が1.07%、2011〜2015年が0.99%でした[1]。大阪大学のツインリサーチセンターも、一卵性と二卵性を合わせた双子の確率を「約100分の1」としています[2]。なお、この全体の数字には不妊治療による妊娠も含まれています。

双子には、1つの受精卵が2つに分かれてできる一卵性双胎と、2つの卵子がそれぞれ受精してできる二卵性双胎があります。一卵性の頻度は国や時代による差が小さく、出生1,000あたり3〜4組でほぼ一定です[3]。一方、二卵性は地域差が大きく、日本では1,000あたり6〜10、北欧では15〜20とされています[2]。二卵性のなりやすさには、母親の年齢、出産回数、民族的背景、家族歴などが関わると考えられています[4]。

双子の種類、性別の組み合わせ、自然妊娠での確率をもっと詳しく知りたい方は、双子妊娠の仕組みや確率の記事をご覧ください。

排卵誘発剤・人工授精で双子になる確率

排卵誘発剤で双子になる確率は、薬の種類と、治療を受ける人の背景によって変わります。多嚢胞性卵巣症候群の女性750人を対象にした米国の臨床試験では、飲み薬のレトロゾールで3.4%、クロミフェンで7.4%の双胎妊娠がみられました。この差は統計的には有意ではありませんでした[5]。

原因不明の不妊で人工授精と排卵誘発を組み合わせた別の臨床試験では、胎児の心拍が確認できた妊娠のうち多胎だった割合は、注射薬のゴナドトロピンで32%、レトロゾールで13%、クロミフェンで9%でした。レトロゾールとクロミフェンの多胎はすべて双子でしたが、ゴナドトロピンでは双子24例に加えて三つ子が10例ありました[6]。

この2つの試験は対象が違い、数字は「治療1回あたり」ではなく「妊娠した人のうち」の割合です。そのため、飲み薬なら数%〜10%前後、注射薬ではそれよりかなり高くなりうる、という幅で理解しておくのが正確です。

体外受精の1個戻しで双子になる確率

胚を1個だけ戻しても、その胚が2つに分かれて双子になることがあり、日本の大規模な調査ではその割合は1個戻しの妊娠の1.36%でした。日本産科婦人科学会に登録された2007〜2014年の単一胚移植93万7,848周期(臨床妊娠27万6,934件)を分析した研究です[7]。オーストラリアとニュージーランドの登録データでも、1個戻し後の出生の1.5%が一卵性双胎でした[8]。

日本の体外受精全体の最新の集計(2023年)では、胚移植のうち1個戻しの割合は新鮮胚で80.5%、凍結胚移植で84.7%でした。妊娠に占める多胎の割合は、新鮮胚が3.4%(5,704件中188件)、凍結胚が3.8%(10万9,799件中4,163件)です[9]。この3〜4%には、1個戻しの妊娠と2個戻しの妊娠の両方が含まれています。体外受精などの生殖補助医療では、自然妊娠と比べて一卵性双胎の頻度が2.25倍高いという報告もあります[3]。

💡 用語解説:単一胚移植(1個戻し)

単一胚移植(SET:single embryo transfer)は、体外受精で育てた胚を1回の移植で1個だけ子宮に戻す方法です。複数の胚を戻すと多胎妊娠が増えるため、日本では原則としてこの方法がとられています。移植しなかった胚は凍結しておき、次の周期に1個ずつ戻すことができます。

体外受精の2個戻しで双子になる確率

2個戻しでは、1個戻しよりも双子になる割合がはっきり高くなります。ランダム化比較試験をまとめたコクラン・レビューは、新鮮胚の2個戻しで多胎のリスクが15%の人が1個戻しにした場合、リスクは2〜4%に下がると推計しています。1個戻しを繰り返した場合でも、2個戻し1回で多胎リスクが13%の人では0〜3%になるとされています[10]。

日本の公表データでは、2個戻しだけに限った多胎率は区別して示されていません。そのため「2個戻しなら何%」と一つの数字で言い切ることはできませんが、2個戻しにすると二卵性の双子の可能性が加わり、そこに胚の分割による一卵性の可能性も重なる、という関係になります。

📊 治療法別にみた双子・多胎の割合(主な報告)

妊娠の経緯 双子・多胎の割合 数字の条件
日本全体(自然妊娠を含む) 約1% 全分娩に占める多胎分娩
飲み薬の排卵誘発 3.4%〜13% 妊娠あたり。対象疾患や人工授精の有無で異なる
注射薬(ゴナドトロピン)+人工授精 32% 心拍確認後の妊娠あたり(三つ子を含む)
体外受精の1個戻し(胚の分割) 1.36% 日本の単一胚移植の臨床妊娠あたり
体外受精全体(日本2023年) 3.4%(新鮮胚)/3.8%(凍結胚) 妊娠あたり。1個戻しと2個戻しの両方を含む
体外受精の2個戻し 1個戻しより明らかに高い 日本の単独データなし。国際的な試験の統合では約13〜15%を想定

※出典:人口動態統計の集計[1]、Legro 2014[5]、Diamond 2015[6]、日本産科婦人科学会2023年成績[9]、Ikemoto 2018[7]、Cochrane 2020[10]。条件が異なるため、数字どうしを直接比べることはできません。

三つ子(品胎)以上になる確率

不妊治療による三つ子以上は、現在の日本の体外受精ではまれで、排卵誘発の注射薬で起こることが知られています。2023年の日本の体外受精では、三胎は新鮮胚で1例、凍結胚で26例と、およそ11万5,000件の妊娠のうち27例でした[9]。一方、先に紹介した人工授精の試験では、三つ子10例はすべてゴナドトロピン注射の群から生じ、飲み薬の群では1例もありませんでした[6]。

1個戻しでも、分かれた胚がさらに分かれたり、同じ周期に自然に排卵した卵子の妊娠が重なったりすると、まれに三つ子になることがあります。三つ子は双子よりも早産などのリスクがさらに高くなるため、排卵誘発では育っている卵胞の数を超音波で確かめながら治療が進められます。

💡 用語解説:品胎(ひんたい)

品胎は三つ子の妊娠を指す医学用語です。双子の妊娠を双胎(そうたい)、2人以上をまとめて多胎(たたい)と呼びます。三つ子以上の妊娠は、双胎と比べても母体・胎児ともに合併症が多くなります。

\ 双子を妊娠された方の出生前検査について /

📅 NIPTを予約する

お問い合わせはこちら | 双子で受けられるNIPT

2. 体外受精で1個しか戻していないのに双子になるのはなぜ?

1個戻しで双子になる理由の多くは、移植した1つの胚が子宮の中で2つに分かれて、一卵性の双子になることです。ただし、すべてが一卵性というわけではなく、同じ周期に自然に排卵した卵子が受精して、二卵性の双子になる場合もあります。ここでは、胚が分かれる仕組みと、それが増えやすい条件を順に説明します。

移植した1つの胚が2つに分かれる=一卵性双胎

一卵性双胎は、1つの受精卵から育った胚が発生の途中で2つに分かれ、それぞれが1人の赤ちゃんになることで生まれます。もとの受精卵は1つなので、2人のゲノム(遺伝情報の全体)は基本的に同じです。自然妊娠でも一卵性は一定の頻度で起こり、その原因の大部分は遺伝的な要因ではないとされています[4]。

胚が分かれる時期によって、胎盤(絨毛膜)や赤ちゃんを包む膜(羊膜)の数が変わります。受精後早い時期に分かれると胎盤も羊膜も2つずつになり、それより後に分かれると胎盤を1つ共有する一絨毛膜の双子になります。体外受精で胚盤胞まで育ててから移植した胚は、すでに発生が進んでいるため、分かれた場合には胎盤を共有する形になりやすいと考えられています。ただし、胚盤胞移植後の一卵性双胎の膜性については報告が限られており、必ず一絨毛膜になるとまでは言い切れません。

胚を1個移植初期胚または胚盤胞
▶
胚が2つに分かれる原因の多くは不明
▶
一卵性双胎ゲノムは基本的に同じ
▶
膜性を確認妊娠初期の超音波

胚盤胞まで培養すると一卵性双胎が増えるといわれる理由

体外受精で一卵性双胎が増える条件として、最も一貫して報告されているのが「胚盤胞まで培養してから移植すること」です。胚盤胞は、受精後5〜6日ほど培養して、赤ちゃんになる細胞のかたまり(内細胞塊)と胎盤になる細胞に分かれ始めた段階の胚です。日本の93万周期の分析では、胚盤胞まで培養した場合の胚の分割のオッズ比(起こりやすさの比)は1.79でした[7]。複数の研究をまとめたメタ解析では2.16[11]、オーストラリア・ニュージーランドの登録データでも1.99と、初期胚の移植より約2倍でした[8]。

培養期間が長いと胚が分かれやすくなる理由は、まだはっきりしていません。体の外での培養環境や、胚が透明帯から抜け出す過程が関わるのではないかという仮説がありますが、決着はついていません。

なお、胚盤胞移植は1回あたりの妊娠率を上げ、1個戻しを進めるうえでも役立つ方法です。オッズ比が約2倍といっても、もともとの頻度が1%台なので、胚盤胞移植をした人の大多数は単胎(1人)の妊娠になります。

透明帯への操作(アシステッドハッチング)や凍結融解は関係する?

アシステッドハッチングや凍結融解胚移植と一卵性双胎の関係は、研究によって結論が分かれており、現時点では「増える」とは言えません。日本の登録データでは、アシステッドハッチングでオッズ比1.21、凍結融解胚移植で1.34と、わずかに増える結果でした[7]。メタ解析でもアシステッドハッチングは1.17とわずかに関連がありましたが、凍結胚移植には有意な関連がみられませんでした[11]。さらにオーストラリア・ニュージーランドのデータでは、アシステッドハッチングに有意な関連はなく、ガラス化凍結した胚の移植ではむしろ新鮮胚より少ない(0.87)という結果でした[8]。

このように、3つの大きな研究で向きがそろっているのは胚盤胞培養だけです。アシステッドハッチングや凍結については、施設の方法や患者さんの背景の違いが結果に影響している可能性があり、それだけを理由に治療法を変える根拠にはなりません。

💡 用語解説:アシステッドハッチング(AHA)

胚は透明帯という殻のような膜に包まれており、着床する前にこの膜から抜け出します(孵化=ハッチング)。アシステッドハッチングは、レーザーや薬液で透明帯に小さな切れ目を入れたり、薄くしたりして、胚が抜け出しやすくする操作です。凍結融解で透明帯が硬くなった胚などに行われることがあります。

1個戻しでも二卵性の双子になることはある?

1個戻しで生まれた双子の中にも、二卵性の双子が一定の割合で含まれています。オーストラリアの1施設で1個戻し後に生まれた双子109組を調べた研究では、11%(12組)が男女の組み合わせで、一卵性ではありえない二卵性でした。そのうち9組は、排卵誘発をしない自然周期での凍結胚移植でした。研究者は、1個戻し後の双子の10組に1組から5組に1組は、移植した胚とは別に、同じ周期に自然に受精した妊娠が重なったものと推定しています[12]。

自然周期やホルモン補充をしない周期では、その周期に自分の卵子が排卵されています。移植の前後に性交渉があれば、移植した胚とは別の受精卵が着床する可能性はゼロではありません。二卵性の双子が見つかったからといって、移植が2個だったわけではない、ということです。

一卵性か二卵性か、膜性はいつわかる?

双子であることは妊娠初期の超音波で胎嚢や心拍が2つ見えることでわかり、胎盤と膜の数(膜性)も妊娠初期に判定されます。国立成育医療研究センターは、膜性は妊娠初期に必ず分類し、妊娠14週を過ぎて初めて受診した場合、赤ちゃんの性別が同じだと膜性の判定が難しくなることがあると説明しています[13]。膜性の見分け方は絨毛膜性(膜性診断)で詳しく解説しています。

膜性と一卵性・二卵性は同じではありません。一絨毛膜双胎の大部分は一卵性ですが、極めてまれに二卵性一絨毛膜双胎も報告されているため、膜性だけで卵性を100%確定することはできません。胎盤が2つ(二絨毛膜)の場合は一卵性のことも二卵性のこともあり、男女の組み合わせでなければ超音波だけでは区別できません。卵性を確定するには遺伝学的検査が必要です。妊娠がわかる時期や初期の体の変化については妊娠初期に双子とわかる時期の記事にまとめています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【確率の数字は「分母」を確かめて読む】

双子の確率として出てくる数字は、分母がそれぞれ違います。人口動態統計は全分娩、体外受精の集計は妊娠、排卵誘発の臨床試験は心拍が確認できた妊娠が分母です。同じ「3%」でも、何を分母にしているかで意味が変わります。

もう一つ大切なのは、集団の割合をそのまま一人ひとりの確率として受け取らないことです。年齢、胚の状態、移植の個数、周期の種類によって見込みは変わります。数字は治療を選ぶときの目安として使い、ご自身の条件での見通しは担当の医師と確かめるのがよいと考えています。

3. 排卵誘発剤で双子になる仕組み

排卵誘発剤で双子が増えるのは、1回の周期で複数の卵胞が育ち、複数の卵子が排卵されて、それぞれが受精するためです。こうしてできる双子は二卵性双胎です。通常の月経周期では、いくつかの卵胞が育ち始めても最終的に排卵まで進むのは1つだけですが、排卵誘発剤はこの「1つに絞り込む」仕組みに働きかけるため、2つ以上の卵胞が成熟することがあります。

飲み薬(クロミフェン・レトロゾール)

飲み薬の排卵誘発剤では、多嚢胞性卵巣症候群の女性を対象にした試験で、双胎妊娠がレトロゾール3.4%、クロミフェン7.4%でした。両者の差は統計的に有意ではありませんでしたが、生児を得た割合はレトロゾールのほうが高い結果でした(27.5%対19.1%)[5]。

クロミフェンは、脳の視床下部でエストロゲン(卵胞ホルモン)が働く場所をふさぎ、「エストロゲンが足りない」と脳に思わせることで、卵胞を育てるホルモン(FSH)の分泌を増やします。レトロゾールは、エストロゲンをつくる酵素(アロマターゼ)の働きを一時的に弱め、同じようにFSHを増やします。レトロゾールは作用が短く、体の中でエストロゲンが増えてくると脳への働きかけが弱まり、育つ卵胞が1つに絞られやすいと考えられています。

ただし、原因不明不妊で人工授精を併用した試験では、心拍確認後の妊娠あたりの多胎はレトロゾール13%、クロミフェン9%で、順番が逆になっていました[6]。研究によって対象も数え方も違うため、「どちらの薬が必ず双子になりにくい」と決めることはできません。

注射薬(ゴナドトロピン)と、多胎・OHSSを防ぐ卵胞の確認

排卵誘発で多胎、特に三つ子以上が起こりやすいのは、注射薬のゴナドトロピンを使ったときです。ゴナドトロピンは卵胞を直接育てるホルモンそのものを補う薬で、飲み薬のように脳の調節を介さないため、複数の卵胞が一度に育ちやすくなります。原因不明不妊の試験では、心拍確認後の妊娠の32%が多胎で、三つ子10例はすべてこの群でした[6]。

複数の卵胞が育ちすぎると、多胎のほかに、卵巣が腫れておなかに水がたまる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のおそれも高まります。そのため、注射薬による排卵誘発では、超音波で育っている卵胞の数と大きさを確かめ、多すぎる場合には排卵を起こす注射を見送る、人工授精やタイミングをその周期は行わない、といった判断がされます。どこで線を引くかは施設や患者さんの状況によって異なります。

4. 日本で「1個戻し」が原則とされる理由

日本で体外受精の胚移植が原則1個とされているのは、複数の胚を戻すと多胎妊娠が増え、母子の合併症が増えるためです。1個戻しが広まる前の2007年には、体外受精の多胎率は11.0%ありましたが、学会の方針が示された2008年に6.6%へ下がり、2015年以降はおよそ3%台で推移しています[14]。

日本産科婦人科学会・日本生殖医学会の方針

日本産科婦人科学会は2008年に、移植する胚は原則として1個とし、35歳以上の女性や2回以上続けて妊娠しなかった女性などには2個の移植を認める、という見解を示しました。この見解の導入と前後して多胎率が下がったことは、保険適用前後の変化を調べた研究でも示されています[14]。

それに先立つ2007年には、日本生殖医学会が、移植胚数を3個以内とすること、35歳未満の初回治療では原則1個に制限すること、40歳未満では原則2個以下とすること、移植しない胚を凍結する選択肢を必ず示すこと、をガイドラインとしてまとめています[15]。2022年4月からは体外受精が保険診療になりましたが、その後も1個戻しの割合は8割台を保っています[9]。

多胎妊娠が母子にもたらすリスク

双子の妊娠では、早産、妊娠高血圧症候群、胎児の発育の問題などが、1人の妊娠より多くなります。国立成育医療研究センターは、双胎妊娠で妊娠37週未満の早産が約50%、28週未満の早産が約2%、妊娠高血圧症候群が10%弱に起こると説明しています。妊娠糖尿病のリスクも高まり、産後のメンタルヘルスの問題が10〜15%にみられるとしています[13]。

胎盤を1つ共有する一絨毛膜の双子では、さらに特有の合併症があります。代表的なのが双胎間輸血症候群で、一絨毛膜二羊膜双胎の約10%に起こるとされ、妊娠初期から2週間ごとの健診で経過をみることが勧められています[13]。2人の体重の差が大きくなる胎児発育不全も、双子で注意される問題の一つです。体外受精に伴うその他のリスクについては体外受精のリスクでも解説しています。

💡 用語解説:双胎間輸血症候群(TTTS)

胎盤を1つ共有する双子では、胎盤の表面で2人の血管がつながっていることがあります。このつながりを通る血液の流れが一方に偏ると、片方の赤ちゃんは血液が多すぎて羊水が増え、もう片方は血液が足りずに羊水が減ります。これが双胎間輸血症候群(ソウタイカンユケツショウコウグン)です。胎盤が2つある双子では起こりません。

⚠️ 知っておきたいこと

ここで紹介した割合は、多くの妊婦さんを集めた集団の数字です。双子を妊娠したからといって、これらの合併症が必ず起こるわけではありません。実際のリスクは、膜性、妊娠した時の年齢、持病などによって変わります。双子の妊娠では、膜性を早めに確かめ、多胎妊娠に対応できる医療機関で健診を受けることが一般的です。

\ 双子の妊娠でのNIPT・出生前診断 /

📅 NIPTを予約する

お問い合わせはこちら | 双子のダウン症確率とNIPT

5. 双子が欲しい・双子を産むには?医学的な答え

双子を狙って授かる医学的な方法はありません。「双子が欲しい」「双子を産むにはどうしたらいいか」と調べる方は少なくありませんが、ここまで見てきたように、不妊治療で双子が増えるのは、多胎を避けようとしても一定の割合で起こってしまう結果であって、双子をつくるための方法ではありません。

双子を「狙って」授かる医学的な方法はない

日本の体外受精では、双子を希望するという理由で2個戻しをすることは、学会の方針にそぐいません。2個の移植が認められているのは、35歳以上や、続けて妊娠しなかった場合など、1回あたりの妊娠率を考慮する必要がある状況です[14]。排卵誘発剤についても、卵胞が多く育った周期はむしろ中止を検討するのが一般的な考え方で、双子を目的に使う薬ではありません。

一卵性の双子は、胚盤胞まで培養すると増えることがわかっていますが、それでも1個戻しの妊娠の1〜2%程度です[7]。一卵性双胎は胎盤を共有する形になりやすく、合併症が多いタイプでもあるため、増やすことを目的とした操作は行われていません。食べ物や生活習慣で双子になりやすくなるという話も見かけますが、それを確かめた医学的な根拠は示されていません。

体質や家系は関係する?

二卵性の双子には家系で集まりやすい傾向があり、その一部は遺伝で説明されます。ゲノム全体を調べた研究では、卵胞を育てるホルモンFSHの遺伝子(FSHB)の近くと、SMAD3遺伝子に、自然に二卵性双胎を授かりやすいことに関わる一般的な遺伝子多型が見つかりました[16][3]。卵子が分泌する成長因子のGDF9遺伝子についても、まれなバリアントと二卵性双胎との関係が研究されています。

ただし、影響の一つひとつは小さく、これらを調べて双子を授かりやすいかどうかを予測できる検査はありません。二卵性のなりやすさに関わる遺伝的な背景は、主に排卵のしやすさを通して働くと考えられています。一卵性の双子は、ほとんどが遺伝的な要因によらないとされています[4]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【双子を望む気持ちと、1個戻しの考え方】

1個戻しが原則とされているのは、多胎妊娠のリスクを下げながら、移植しなかった胚を凍結して次の移植機会を残せるためです。1個ずつ戻しても、2個をまとめて戻した場合と最終的に子どもを授かる見込みが大きく変わらないことは、複数の試験をまとめた解析でも示されています[10]。

双子の妊娠では、出生前検査の選び方や結果の解釈に単胎妊娠とは異なる点があります。そのことを次の章で説明します。

6. 不妊治療で双子を妊娠したら:出生前検査の考え方

双子の妊娠でも、NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)や羊水検査などの出生前検査は受けられますが、1人の妊娠とは結果の読み方が違います。NIPTは、お母さんの血液に含まれる胎盤由来のDNAの断片を調べて、染色体の数の変化の可能性を推定する検査です。双子の場合、母体血中には主として胎盤由来のcfDNAが含まれます。特に二卵性双胎では、通常のNIPTの結果だけから、異常を示すシグナルがどちらの胎児・胎盤に由来するかを特定することはできません。

一卵性の双子はゲノムが基本的に同じなので、染色体の数の変化も2人に共通していることが多いと考えられます。一方、二卵性の双子は別々の受精卵から育っているため、1人だけに染色体の変化があることもありえます。膜性の確認が出生前検査の前提として大切なのは、このためです。検査の精度や判定の注意点は双子のダウン症確率とNIPTの注意点で詳しく解説しています。

また、妊娠初期には双子だったものの、途中で1人の発育が止まって見えなくなる「バニシングツイン」が起こることがあります。発育が止まった胎児のDNAがしばらく血液中に残るため、NIPTの結果に影響することがあり、検査の時期や解釈に注意が必要です。詳しくはバニシングツインとはをご覧ください。NIPTは確定的な診断ではないため、陽性の場合には羊水検査などの確定検査で確かめます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 体外受精で1個戻しをして双子になる確率は?

日本の大規模な登録データでは、1個戻しの妊娠のうち、移植した胚が分かれて多胎になった割合は1.36%でした。胚盤胞まで培養してから移植すると、初期胚の移植と比べておよそ2倍起こりやすいと報告されています。また、同じ周期に自然に排卵した卵子が受精して、二卵性の双子になる例もあります。

Q2. 双子を希望して2個戻しはできますか?

日本では、日本産科婦人科学会の見解により胚移植は原則1個とされ、2個の移植は35歳以上や2回以上続けて妊娠しなかった場合などに限って認められています。双子を希望することを理由とした2個戻しは、この方針にそぐいません。具体的な移植個数は、治療を受けている医療機関で相談して決めることになります。

Q3. 排卵誘発剤で双子になる確率は?

薬と対象によって異なります。多嚢胞性卵巣症候群の女性を対象にした試験では、双胎妊娠がレトロゾールで3.4%、クロミフェンで7.4%でした。原因不明不妊で人工授精を併用した試験では、心拍確認後の妊娠のうち多胎はレトロゾール13%、クロミフェン9%、注射薬のゴナドトロピン32%でした。三つ子は注射薬の群だけで起こっていました。

Q4. 流産した後は双子を妊娠しやすいというのは本当?

流産の後に双子を妊娠しやすくなるという医学的な根拠は確認されていません。双子のなりやすさに関わるのは、治療の方法(排卵誘発剤の種類、移植する胚の数や段階)、母親の年齢、二卵性の家系などです。

Q5. 1個戻しで双子になったら、一卵性か二卵性かはいつわかりますか?

胎盤と膜の数(膜性)は妊娠初期の超音波で判定され、妊娠14週を過ぎると同性の双子では判定が難しくなることがあります。胎盤が1つなら一卵性と考えられますが、胎盤が2つの場合は一卵性と二卵性の両方がありえます。男女の双子でなければ超音波だけでは区別できず、確定には生まれた後の遺伝子の検査が必要です。

まとめ

不妊治療で双子になる確率は、治療法によって大きく異なります。自然妊娠を含む日本全体では双子は分娩の約1%ですが[1]、2023年の日本の体外受精では妊娠の3.4〜3.8%が多胎でした[9]。排卵誘発剤では、飲み薬で数%〜10%前後、注射薬で約3割の多胎が報告されており、三つ子は主に注射薬で起こります[5][6]。

1個しか戻していないのに双子になるのは、多くの場合、移植した胚が分かれて一卵性の双子になるためで、胚盤胞まで培養するとその頻度は約2倍になります[7][11]。一部には、同じ周期の自然な妊娠が重なった二卵性の双子も含まれます[12]。日本で1個戻しが原則とされているのは、多胎妊娠で早産や妊娠高血圧症候群などが増えるためで、双子を狙って授かる医学的な方法はありません。双子を妊娠した場合は、膜性を早めに確かめたうえで、出生前検査の特徴も理解して選ぶことが大切です。

👶 双子を妊娠された方の出生前検査

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が、双子の妊娠でのNIPTや羊水検査・絨毛検査について、膜性や妊娠週数に応じた検査の特徴と限界をご説明したうえで検査を行っています。なお、当院は遺伝診療のクリニックで、体外受精や排卵誘発などの不妊治療は行っていません。

参考文献

  • [1] 統計から見る多胎児の比率. 一般社団法人日本多胎支援協会(人口動態統計「単産-複産(複産の種類)別分娩件数」にもとづく集計). [日本多胎支援協会]
  • [2] ふたごの確率. 大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター. [大阪大学]
  • [3] New insights into the (epi)genetics of twinning. Hum Reprod. 2024;39(1):35-42. doi:10.1093/humrep/dead131 [Oxford Academic]
  • [4] Is the probability of having twins determined by genetics? MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [5] Letrozole versus clomiphene for infertility in the polycystic ovary syndrome. N Engl J Med. 2014;371(2):119-129. doi:10.1056/NEJMoa1313517 [NEJM]
  • [6] Letrozole, Gonadotropin, or Clomiphene for Unexplained Infertility. N Engl J Med. 2015;373(13):1230-1240. doi:10.1056/NEJMoa1414827 [NEJM]
  • [7] Prevalence and risk factors of zygotic splitting after 937 848 single embryo transfer cycles. Hum Reprod. 2018;33(11):1984-1991. doi:10.1093/humrep/dey294 [Oxford Academic]
  • [8] Incidence and risk factors of monozygotic twinning following ART: analysis of 154 671 live births resulting from single embryo transfer. Hum Reprod. 2025;40(9):1744-1752. doi:10.1093/humrep/deaf121 [Oxford Academic]
  • [9] 2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績. 公益社団法人日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
  • [10] Number of embryos for transfer following in vitro fertilisation or intra-cytoplasmic sperm injection. Cochrane Database Syst Rev. 2020. CD003416. doi:10.1002/14651858.CD003416.pub5 [Cochrane]
  • [11] Risk factors for monozygotic twinning after in vitro fertilization: a systematic review and meta-analysis. Fertil Steril. 2019;111(2):302-317. doi:10.1016/j.fertnstert.2018.10.025 [ScienceDirect]
  • [12] Incidence and zygosity of twin births following transfers using a single fresh or frozen embryo. Hum Reprod. 2014;29(7):1438-1443. doi:10.1093/humrep/deu064 [Oxford Academic]
  • [13] 多胎妊娠外来. 国立成育医療研究センター. [国立成育医療研究センター]
  • [14] Impact of health insurance coverage for assisted reproductive technology on multiple embryo transfers and multiple pregnancies in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2025;51(5):e16304. doi:10.1111/jog.16304 [Wiley]
  • [15] 倫理委員会報告「多胎妊娠防止のための移植胚数ガイドライン」. 一般社団法人日本生殖医学会. 2007. [日本生殖医学会]
  • [16] Identification of Common Genetic Variants Influencing Spontaneous Dizygotic Twinning and Female Fertility. Am J Hum Genet. 2016;98(5):898-908. [AJHG]

関連記事

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

関連記事