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妊娠中期に摂るべき栄養素とは?サプリを利用する際の注意点

辛かったつわりも終わり、徐々に体調も安定してくる妊娠中期。食事も美味しく感じられるようになり、妊婦生活を楽しんでいるママも多いのではないでしょうか。

お腹の中では胎盤も完成することから、赤ちゃんはママのへその緒から直接栄養をもらうようになります。これまで以上にママがどんな栄養を摂取するのかも重要となってくるため、妊娠中期からサプリメントの利用をお考えの方も多いようです。

しかし、どんな栄養素をどのくらい摂ればよいのか、どの栄養素に注意しなければいけないのかよくわからないというママも少なくないはず。

そこでこの記事では、妊娠中期に摂るべき栄養素と推奨量、過剰摂取に注意すべき栄養素、サプリメントを利用する際の注意点について解説します。

妊娠中期に摂るべき栄養素と推奨量

妊娠中期に必要な食材の数々

妊娠中に摂るべき栄養素にはさまざまなものがあります。

つわりなどでなかなか思うように食べられない妊娠初期だけでなく、安定期と呼ばれる妊娠中期も、食事の摂り方によっては不足してしまう栄養素も。

ここではまず、妊娠中期に摂るべき栄養素と推奨量についてご紹介します。

妊娠中期に摂るべき栄養素

妊娠中は、妊娠前とは異なる食事の摂取基準が厚生労働省により設定されていることをご存知ですか?これは、妊娠中に適切な栄養状態を維持して正常な分娩をすることや、赤ちゃんの発育、ママの体に必要な量の栄養を摂取するためです。

とはいえ、妊娠中期はつわりが治まってくることから、食べ過ぎによる体重増加も気になります。また、その反対に安定期に入ったにもかかわらず、つわりが治らない方もいることでしょう。

食事で必要な栄養素を摂取できればそれに越したことはありませんが、そううまくはいかないものです。妊娠中期はお腹の赤ちゃんもぐんぐん大きくなってきます。以下の栄養素に注目し、効率よく摂るようにしましょう。

  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 葉酸
  • ビタミンB1、B2
  • ビタミンC
  • タンパク

妊活中からの摂取が重要だといわれている葉酸は、赤血球を作るために重要な役割を担っているため、妊娠中期も大切です。すでにサプリメントで摂取しているという方も多いかもしれませんが、引き続きしっかりと摂取することをおすすめします。

そして妊娠中期にとくに積極的に摂取したいのが「鉄」です。

なぜなら、妊娠中期はママの体内を巡る血液量が増えると同時に、赤血球量も増加するため、これまで以上に貧血になりやすいからです。さらに、鉄の吸収率やその働きを促すためにも、タンパク質やビタミンB、ビタミンCなどをあわせて摂ることが大切になります。

適切な摂取量の目安

以下は、妊娠中期に積極的に摂りたい栄養素の1日の摂取推奨量を表にまとめたものです。

カルシウム マグネシウム 葉酸 ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンC タンパク質
妊娠期以外 10.5mg 650mg 270mg〜290mg 240㎍(妊活中は+400㎍) 1.1mg 1.2mg 100mg 50g
妊娠中期 +9.5mg 310mg〜330mg +240㎍ +0.2mg +0.3mg +10mg +10g

妊娠中期は、胎児の成長とともに必要なエネルギーや栄養素も増えていきます。普段よりも多めの摂取が推奨されている栄養素もあるため、普段の食生活と照らし合わせて不足していそうなものがないか確認してみましょう。

妊娠中期の過剰摂取に注意すべき栄養素

✕マークを上げている妊娠中期の女性

上記では、妊娠中に通常時よりも多めの摂取が推奨されている栄養素もあることをご紹介しましたが、その反面過剰摂取に注意すべき栄養素も存在します。

とくにサプリメントで摂取する場合、成分が高濃度で添加されている商品もあるため、毎日服用すると過剰摂取になってしまうものも。

ここでは、妊娠中期の過剰摂取に注意すべき栄養素についてご紹介します。

ビタミンA

妊娠中期だけでなく、全妊娠期間を通して注意が必要なのは「ビタミンA」です。

とくに妊娠初期は、ビタミンAを過剰摂取すると赤ちゃんの奇形リスク上昇が懸念されます。妊娠中期でも、ビタミンAの過剰摂取により母体と胎児に悪影響が出る恐れもあるので注意が必要です。

しかし、ビタミンAも皮膚の粘膜の状態を保ったり、目の機能を正常に保ったりするために重要な栄養素です。そのため、ビタミンAは悪影響の心配がない植物性の食品から摂取するようにしましょう。

ビタミンD

ビタミンDは、骨を形成する成分であるカルシウムやリンの吸収を促進する栄養素です。骨の形成や神経、筋肉の働きを正常にする役割を担っており、ビタミンDが欠乏すると赤ちゃんに「くる病」が発症するリスクも高まることがわかっています。

その他にも、ビタミンDの不足は妊娠高血圧症候群などのリスクを高めるなど、妊娠中には必要不可欠な栄養素であるといえます。しかし、過剰に摂り過ぎてしまうと血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎたり、臓器にカルシウムが蓄積したりすることもあるため注意が必要です。

カルシウム

ご存知の通り、カルシウムは歯や骨を形成する大切な栄養素です。妊娠中のママは、自分の分だけでなく、赤ちゃんの骨や歯を作るために必要な分のカルシウムも摂取する必要があるため、普段よりも多めに摂取しなければいけません。

とはいえ、カルシウムの過剰摂取は皮膚の痒みや吐き気、便秘などの症状を引き起こす高カルシウム血症を誘発する恐れも。そのうえ、妊娠中期に重要な栄養素である鉄やマグネシウムなどの吸収を阻害してしまう可能性もあるため、過剰に摂取しないよう注意しましょう。

妊娠中期は、母体の血液量が増えることから、鉄はとくに重要なミネラルです。不足してしまうと、鉄欠乏症貧血となるので、病院でも必要に応じて鉄剤などの内服治療が行われています。

しかしその一方で、鉄欠乏症貧血でない方が過剰に鉄を摂取してしまうと、肝臓へのダメージや血液中に流れ出した鉄によって血管がダメージを受ける可能性もあります。

さらに、妊娠糖尿病のリスクを高める可能性があるとの報告もあるため、鉄の過剰摂取には十分注意しなければいけません。

DHA・EPA

DHAやEPAは、体内で合成できないため食事などから摂取することが必要な必須脂肪酸です。

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の脳や目の網膜の脂質成分で、脳に直接入って栄養素として機能できる物質です。一方のEPA(エイコサペンタエン酸)は、血液をサラサラにする効果や中性脂肪低下作用がDHAよりも高く、脳内にはほとんど存在しません。

胎児の発育にとって非常に重要な役割を担っている栄養素ですが、1日の推奨量を大幅に超える3g以上を摂取した場合、血を固めるシステムが弱まり、出血量が増加する可能性もあるため過剰摂取には十分な注意が必要です。

妊娠中期にサプリメントを利用する際の注意点

サプリメント

妊娠中期にサプリメントを利用する方は、赤ちゃんの発育のために摂取するケースがほとんどですが、注意しないと逆効果になってしまうことも。

そこでここでは、妊娠中期にサプリメントを利用する際の注意点をご紹介します。

基本はバランスの良い食事で栄養を摂取

妊娠中期は、つわりが治まり食欲も出てくることから、基本的に葉酸以外の栄養素は、食事から摂ることが望ましいとされています。

とくに上記でご紹介した注意すべき栄養素を含むサプリメントは、過剰摂取により母体と胎児に悪影響をおよぼす可能性や、持病をお持ちの方は常用薬との飲み合わせが悪いケースもあるため、食事から自然と摂取することが重要です。

そして、カロリーや塩分の摂り過ぎにも十分注意しなければいけません。

また、妊娠中期は徐々にお腹も出てくるため、胃が圧迫されて1回の食事量が減ることもありますが、食事の回数を増やすなどして対応しましょう。

ただし、上記でもご紹介したビタミンAは意外と簡単に1日の推奨量を超えてしまいます。貧血にならないようにとレバーを毎日食べるなど、偏った食事にならないよう気をつけましょう。

マタニティサプリメントを利用

現在、さまざまなサプリメントが販売されており、その中には妊婦さん専用のマタニティサプリメントも存在します。

マタニティサプリメントは、妊娠中に摂りたい複数の栄養素を効率的に摂取できるよう作られているため、ママには嬉しいアイテムです。しかも、妊婦さんの平均的な食事を考慮し、1日の推奨量を超えてしまわないような処方になっていますので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

サプリを利用する際は医師に相談

サプリメントは、あくまでも食事の補助として利用すべきものです。なぜなら、サプリメントには複数の成分が高濃度で添加されているため、成分同士の相互作用や過剰摂取のリスクがあるからです。

妊娠中は赤ちゃんに良いものをより多く摂らなければいけないと考えがちですが、実際のところバランスの摂れた食事ができていれば、それほど不足する栄養素はありません。

そのため、妊娠中期にサプリメントを利用するのは、どうしても食事から必要な栄養素が摂れない場合や欠乏症などが疑われる場合のみにし、担当の医師に相談してから利用するようにしましょう。

まとめ

妊娠中期に摂るべき栄養素と推奨量、過剰摂取に注意すべき栄養素、サプリメントを利用する際の注意点をご紹介しました。

つわりで食べられなかったり、特定のものしか受け付けなかったりしたママの中には、栄養不足を補うために妊娠初期からサプリメントを利用している方もおられるかもしれません。

妊娠中期に入りつわりも落ち着いてくると、食事も美味しく食べられるようになるため、サプリメントの種類によっては過剰摂取になってしまう可能性もあります。

妊娠中期からは、食事からの栄養素の摂取を基本とし、サプリメントはあくまでも補助的なものと考えるようにしましょう。また、利用する際は今回ご紹介した栄養素の過剰症に十分注意し、かかりつけの産婦人科へ相談のうえ正しく利用することをおすすめします。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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