InstagramInstagram

妊娠高血圧症候群とは?3つの予防法を紹介

妊娠中は体重の増加に気を付ける、塩分の過剰摂取に気を付けるなど、赤ちゃんが健康に生まれてくるために注意すべきことが多いのですが、なぜ気を付けなければいけないかということを知らない妊婦さんも多いのではないでしょうか?妊娠中に気を付けるべき疾患の一つに、妊娠高血圧症候群というものがあり、妊婦さんの約20人に1人の割合で起こるといわれています。

妊娠高血圧症候群は、かつて妊娠中毒症と呼ばれていた疾患で、高血圧だけが母体や胎児に悪影響を及ぼすことが判明したことによって、2005年4月から「妊娠高血圧症候群」と呼ばれるようになりました。

妊娠高血圧症候群に罹ると、母体だけではなくおなかの赤ちゃんにも危険を及ぼすので、注意が必要な疾患といえます。

この記事では、妊娠高血圧症候群が及ぼす影響や予防法をご紹介します。

妊娠中に妊娠高血圧症候群にならないために、どんなことに気を付けたらよいかを知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧
上の血圧値が140mmHg以上、または下の血圧値が90mmHg以上になった場合、もしくは、蛋白尿が1日300mg以上で2g未満の場合も妊娠高血圧症候群と判断されます。

さらに、上の血圧値が160mmHg以上、下の血圧値が110mmHg以上、蛋白尿が1日2g以上となると重症と判断され、妊娠継続が困難になり、早めに出産しなければいけなくなる可能性もあります。

妊娠前や妊娠20週までに慢性的な高血圧が続いていて、妊娠後に再度血圧が上がったり蛋白尿が出たりすることでも妊娠高血圧症候群と診断されることがあります。

まずは、妊娠高血圧症候群になることで母体と赤ちゃんに生じる影響と原因、妊娠高血圧症候群になりやすい方についてご紹介します。

母体と赤ちゃんへの影響

妊娠高血圧症候群は、母体にも赤ちゃんにも命の危険が及ぶことがある疾患です。

以下は母体に及ぼす影響です。

  • 血圧上昇
  • 蛋白尿
  • むくみ
  • けいれん発作
  • 脳出血
  • 肝臓、腎臓の機能障害
  • HELLP症候群

妊娠高血圧症候群になっていても、自覚症状はほとんどないといわれています。そのため、妊婦検診時に異常が発覚することが多いのです。

手足のむくみは、一晩休んでもなくならないほどひどくなることもあり、重症化することで脳出血などの重篤な状態を引き起こす可能性もあります。

手足がむくんでいることは妊娠中毒症の症状の一つでもありましたが、むくみは正常な妊娠でも出る可能性があるため、診断基準からは外れています。しかし、妊娠高血圧症候群の症状として現れることはあります。

さらに、胎児にも以下のような影響を及ぼします。

  • 胎児発育不全
  • 常位胎盤早期剥離
  • 胎児機能不全
  • 胎児死亡

妊娠高血圧症候群によって、胎盤機能が低下して胎児への酸素や栄養の供給がうまく行われなくなることで、胎児発育不全を引き起こしやすくなります。

最悪のケースでは、胎児が死亡してしまうこともあるため、重症化している場合は妊娠を終わらせるという判断をすることもあります。

妊娠高血圧症候群の原因

妊娠高血圧症候群のはっきりとした原因は不明ですが、有力な原因と考えられているのは、胎盤の血管形成異常などです。

胎盤の血管形成異常が起こると、胎盤を通じて赤ちゃんに栄養を十分に送れなくなってしまいます。

そのため、母体はその状態をなんとかしようと、体を高血圧状態にして赤ちゃんに栄養や酸素を流そうとしている可能性があると考えられています。

また、子宮の環境や遺伝子が原因といわれることもありますが、現在のところ原因は不明というのが最も一般的となります。

妊娠高血圧症候群になりやすい方

原因がはっきりわかっていないので、判断が難しい部分ではありますが、リスク因子として以下のような方が妊娠高血圧症候群になりやすいとされています。

  • 高齢の妊婦さん
  • 妊娠前から高血圧の方
  • 高血圧の家族がいる方
  • 急激に体重が増加してしまった方
  • 多胎妊娠の方

重症化することで母体にも胎児にも重大な影響を及ぼす可能性がある、妊娠高血圧症候群にならないために、上記のような方はとくに気を付ける必要があります。

自覚症状がないことがほとんどなので、日ごろの妊婦検診をしっかり受け、健康管理を怠らないようにすることが重要です。

妊娠高血圧症候群の予防法

血圧を測定中の妊婦さん
妊娠高血圧症候群は原因のわからない疾患なので、確実に以下のことをしていれば予防できるというものでもないのが現状ですが、気を付けることで予防につながると考えられていることをご紹介します。

体重の増加に気を付ける

急激な体重の増加は妊娠高血圧症候群だけではなく、妊娠糖尿病のリスクもあり大変危険です。

妊娠中はホルモンの働きも関係しているので、通常時よりも太りやすくなっています。しかし、最終的に出産するまでに増加してもよい体重は以下のように考えられています。

  • 赤ちゃんの体重…約3kg
  • 胎盤と羊水の重さ…約1kg
  • 母体の体重増加…約3~4kg

これらを合わせると、約7~8kgが増加すると見込まれる体重となるので、それ以上は危険ということになります。

正確な体重は人によってさまざまですが、おおまかに計算すると、1週間に300~500g程度の増加が理想です。

急激に体重が増えてしまうと、妊娠高血圧症候群のリスクが高くなるといわれているため、体重管理には十分気を付ける必要がありますが、過度に気にしすぎて痩せすぎた状態での出産も危険なので、バランスよく食事をするようにしましょう。

心配な方は、妊婦検診時によく医師と相談し、体重が増えすぎていないか、増えすぎている場合どのような対策をしたらいいかを確認する必要があります。

塩分をとりすぎないようにする

塩分をとりすぎてしまうと、体内では塩分濃度を調整するために水分を排出しないようになってしまい、体液の循環量が増え、高血圧になりやすくなります。

妊娠中に目安とされる塩分の摂取量は、1日10g以下が理想とされています。

加工食品やコンビニのお弁当などは塩分量が多く、10gをすぐ超えてしまうので注意しましょう。

食事に気を使いすぎて疲れてしまうのもよくないのですが、外食やコンビニ、スーパーのお弁当などで済ませてしまった日は、1日の総塩分摂取量を考え、調整するようにしたり、翌日に塩分控えめの食事をとったりして工夫する必要があります。

疲労が溜まらないようにする

妊娠中はただでさえ疲労が溜まりやすく、疲れたと感じやすい状態です。

免疫が低下したり、ホルモンのバランスが崩れたりすることによって疲労が抜けにくいといわれているのです。

疲れを感じないためにも、とくに働いているママはこまめに休息をとるようにしましょう。

一日のうちに何度も横になって疲れをとるのもおすすめです。疲労感を溜めないように、家族にも疲れやすいことを伝えておくと、休みやすくなります。

また、しっかり睡眠をとることも重要です。リラックスした状態でお風呂に入るなど、良い睡眠のための準備をして夜はぐっすり眠れるように心がけましょう。

横になって休むことで、子宮や腎臓への血流が増して血圧が安定するので、疲労を感じたら横になってリラックスした時間を過ごすようにすることが重要です。

妊婦検診を定期的に受けることが非常に重要

入院中の妊婦さんと医師
妊娠高血圧症候群は原因のわからない疾患なうえに、自覚症状がほとんどないので、妊婦検診を定期的に受けることで、妊娠高血圧症候群の症状をすぐに見つけることが非常に重要です。

とくに重症になってしまっている場合は、母体にも胎児にも命の危険がある疾患なので、異常を即発見するためにも妊婦検診に定期的に通うようにしましょう。

また、重症化している場合は入院して安静に過ごすことが一般的な治療となります。

食事制限なども行われる場合がありますが、血圧そのものを下げる治療はなかなか難しく、このまま妊娠を継続するのが危険だと判断された場合は早産時期であっても妊娠を中断し、分娩することがあります。

分娩することで母体は改善するため、現状では妊娠を中断することが最善策となっています。

まとめ

妊娠高血圧症候群が及ぼす影響や予防法をご紹介しましたが、参考になりましたか?

妊娠高血圧症候群は、原因がはっきりわかっていない疾患でありながら、罹患することで母体にも胎児にも重篤な症状をもたらします。

重症化することで命の危険もあるような疾患なので、できる予防策はしっかり行い、妊娠高血圧症候群の予防をすることが重要です。

予防としてできることを記事内でご紹介しましたが、一番重要なのは妊婦検診にしっかり通うことです。

自覚症状がない疾患なので自分で判断することは非常に難しく、医師の判断が必要になります。

妊婦検診で異常を即発見できるよう、定期的な妊婦検診を必ず受けるようにしましょう。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事