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40代の妊活でやってほしいこと、知ってほしいこと

この20年大きく変わっていったのが40代の出産です。1995年に1万2472人ですが、約20年後の2014年には4万9606人と約4倍も増えています。しかもこれまで40代の出産は経産婦(過去に出産経験のある女性)が多かったのですが、初産の女性が増えてきています。

だからといって「自分も出産できる」と安心してはいけません。40代になってくると20代や30代前半のようにはいかないのが現状です。妊娠出産するためにはきちんとした知識を身につけた上で妊活をする必要が出てきます。 そこで40代で妊活をするときに知っておいてほしいことややってほしいことをまとめてみました。是非参考にして無事に赤ちゃんを授かってください。

40代で妊娠する確率

妊活をしている女性ならば「35歳から卵子の質が落ちる」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかも卵子は年齢を追うことに数が減少していくため質も数も落ちてしまい妊娠するのが難しくなるのです。

それでも「生理がくれば妊娠できる」と思っている方も多いのですが、それは大きな勘違いです。女性の体は閉経の10年くらい前から妊娠ができなくなります。なぜなら排卵が終わっているからです。どうして生理が来るのかといいますと卵の周囲の細胞が10年ほどホルモンを作り続けているからです。肝心の卵子はないので妊娠に至ることはありません。 閉経は人によってまちまちですが、早い人は51~52歳くらいから始まります。だから40代には妊娠できなくなる恐れがあるのです。

40代の自然妊娠率は?

アメリカ産科婦人科学会によると40歳までに10%未満に低下すると言われています。その理由の一つして挙げられるのが、先述した卵子の減少です。女性の卵子は生まれたときに数が決まっており、 年齢を重ねるごとに減少していきます。妊娠6ヶ月の胎児が700万あるのに出産時には200万にまで減っているのです。そこから毎月数百単位で減っていき、思春期には30万個ほどにまで落ち込みます。そこからさらに減少していく35歳になると、人によりますが1万から3万個しか残りません。40代になればさらに数が少なくなるので妊娠しにくくなるのです。

もう一つ考えられるのが性行為の回数が減ることです。男女とも40代に入る頃から性欲が減退していくことが多いため性行為の回数も減っていきます。女性ファッション誌「LEE」が2020年に30代40代の女性に調査した結果によると335人の(既婚者256人・パートナーと同居16人で子ども有りが215人、なしが103人)40%が「半年以上なし」と回答しています。セックスレスの定義である「一ヶ月以上行為なし」を加えると約6割がセックスをしていないという結果です。色々理由がありますが、回数が減ればそれだけ妊娠する確率が下がるのは当然です。だから40代の女性が妊娠しない要因の一つといえます。

40代で不妊治療した場合の妊娠率は?

35歳以上、とりわけ40歳を超えると自然妊娠する確率が下がるのはご理解いただけたかと思います。では、生殖補助医療(体外受精人工授精・顕微授精)を受けた場合の妊娠率はどうなるでしょう。 まずは下のグラフをご覧ください。
日本産婦人科学会が2017年に発表した生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)の妊娠率・生産率(子どもが生きて生まれてくる確率)・流産率
日本産科婦人科学会 ARTデータブック2017より引用)

これは日本産婦人科学会が発表した生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)の妊娠率・生産率(子どもが生きて生まれてくる確率)・流産率です。ご覧の通り35歳から徐々に下にさがっているのがおわかりいただけると思います。では、このグラフの40歳以上の妊娠率を数字にすると以下の表になります。

年齢 妊娠率
40歳 15.2%
41歳 12.4%
42歳 9.3%
43歳 6.8%
44歳 4.8%
45歳 3.1%
46歳 2.3%
47歳 1.2%
48歳 0.8%
49歳 1.4%
50歳以上 0.7%

この数字をご覧いただけるとわかるとおり生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)でも妊娠する可能性が低いのがおわかりいただけると思います。

40代の妊娠出産リスク

40代の妊娠はたくさんのリスクがあります。まず知って欲しいのは先述したように流産する割合が高いことです。日本産科婦人科学会 ARTデータブック2017より引用して流産率を表にしていますのでご覧ください。

年齢 流産率
40歳 33.6%
41歳 39.2%
42歳 43.2%
43歳 49.3%
44歳 57.5%
45歳 62.6%
46歳 64.8%
47歳 76.9%
48歳 60.0%
49歳 71.4%
50歳以上 75.0%

確率は年を重ねていくごとに高くなっています。せっかく妊娠できても流産する確率が高いので40代の妊活は自然妊娠・タイミング法はもちろん、生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)でも出産するまで気の休まるときがありません。

他にもリスクとして挙げられるのが、妊娠高血圧症候群です。母親が40歳以上で約8%の発生頻度の約2倍です。また、妊娠糖尿病は35歳以上では20~24歳の8倍、30~34歳の2倍と年齢が上がるにつれ、高くなるのが明らかになっており、早産、胎児発育不全、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などのリスクが高くなると言われています。

他にもダウン症などの染色体異常の児が生まれる確率が高くなることがわかっており、確率は35歳で200人に1人、40歳で60人に1人くらいです。

40代から始める妊活

ここまで述べたように40代の妊娠は確率が低い上にリスクが高いことがわかっています。そのため40歳からの妊活はすぐに始めることが大切です。また、ご夫婦でやっておいて欲しいことを記しておきますのでご覧いただけると幸いです。

夫婦で妊娠出産について話し合う

妊活を始める前にパートナーと妊活や妊娠、出産後の生活について話し合うのがいいでしょう。特に以下の項目については率直にお互いの意見を言い合ってから答えを一致させておくと妊活がしやすくなります。

  1. ・子供が本当に欲しいのか、子供がいない人生の選択肢はないのか
  2. ・子供ができたらその後の育児を担えるのか
  3. ・妊活や育児にお互いのお金や時間を費やせるのか
  4. ・なかなか妊娠できなかった場合、どのタイミングで治療を止めるのか
  5. ・妊娠したらお互いの仕事はどうするのか
  6. ・高齢妊娠や出産に伴うリスク(妊娠高血圧症候群や早産、流産の可能性)を理解した上で 妊活をするのか
  7. ・妊娠したら出生前診断を受けるのか、診断の結果をどう受け止めるのか

妊活は始めればすぐに妊娠できるわけではないので、どれも年代問わず話し合って欲しいことばかりです。特に40代の妊活は20代・30代に比べ妊活が長期に及ぶことが少なくありません。もし不妊治療が始まれば仕事の調整も必要になりますし、転職をする可能性もあります。しかも生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)が始まれば費用面の負担も大きくなるのです。その上、妊娠しても病気や流産といったリスクもあります。しかも出産後の育児や先天性の染色体異常なのかどうかまで考えないといけません。

だからこそ始める前に夫婦、カップルで話し合いをしておく必要があるのです。きちんと話し合ってお互いの意見がまとまってから始めてください。

基礎体温チェックとタイミング法をすぐに始める

妊活を始めると決めたらすぐに基礎体温チェックを始めましょう。ご存じかもしれませんが基礎体温を測るのは妊活の基本です。毎朝婦人体温計で体温チェックを測って記録することで排卵があるかどうかの目安となる高温相があるかを確認することができます。最低でも二ヶ月は測るようにしましょう。

妊娠しやすい時期は、次の生理が来る14日前の前後数日に起こる排卵の時期です。その期間に複数回の避妊具なしでの性行為をおすすめします。単純に回数を増やすのも方法の一つです。

3ヶ月で結果が出なければ不妊専門医院に相談

40代の妊活は年齢が上がるとリスクも上がっていきます。そのためいつまでもタイミング法で妊娠できなければ医師に相談した方いいでしょう。次のステップに進むにしてもどれも費用は高額です。自由診療になるためすべて自己負担となります。

何より体の負担も大きくなりますし、長引くだけ妊娠する確率が低くなります。だからこそ早い判断が必要ですので医師と話し合いをしましょう。もし過去に婦人科や不妊症治療のクリニックへ通院したことがないなら以下の項目を見て選んでみてください。

  1. ・不妊治療施設で行われている治療成績(着床率や妊娠率など)
  2. ・不妊治療の内容や料金
  3. ・自宅や会社から通いやすいか、診察時間はいつまでか
  4. ・診察の予約などは取りやすいか
  5. ・通っている患者の口コミ

体外受精・人工授精・顕微授精の値段

女性医師
もしタイミング法からステップアップして生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)に移った場合、高額な費用が発生します。経済的に余裕のある人ならば取り組めますが、余裕がない人にとって大きな壁です。事前にどれくらいかかるのか知っておきたいと思いますので大まかな費用をご紹介します。

  1. ・人工授精(1周期あたり):2万〜4万円
  2. ・体外受精及び顕微授精(受精卵の凍結も含む):20〜80万円
  3. ・胚移植(1周期あたり、薬代も含む):12万〜20万円

ただし、不妊治療は国から助成金が出ていますので是非活用してください。条件は以下になります。

対象者
・特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦、治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
対象となる治療
・体外受精及び顕微授精
給付金額
・一回につき30万円
助成回数
・1子ごとに6回まで(40歳以上43歳未満は3回まで)
対象年齢
・妻の年齢が43歳未満
所得制限
・なし
(参考資料:厚生労働省・不妊に悩む夫婦への支援について

詳しい内容はお住まいの自治体にお問い合わせください。

今すぐやっておきたい6つのこと

ここまで先述したように40代の妊娠はたくさんのリスクがあります。そのリスクを一つでも軽くするためにやってほしい6つのことがあります。下に記しておきますのでご覧ください。

1.婦人科の病気を治す
子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫などの持病がある人はきちんと治療をしましょう。今すぐ治療が必要でなくても、定期的な受診を忘れずに。

2.「隠れ持病」のチェック
比較的に多いのは甲状腺の病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、日ごろの食事や運動不足、家族の病歴などが関係してきますので注意してください。

3.痩せと太り過ぎの人は適正体重に
反対に痩せていても胎児の健康に影響がでます。肥満(BMI25以上)だと妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが上がりますので適正体重を目指しましょう。

4.葉酸、ビタミンD、鉄など不足栄養素を十分取る
葉酸やビタミンDは妊娠初期から胎児の神経や骨の発育に欠かせません。妊娠出産では母体が貧血になりやすいので鉄もしっかり摂取をしましょう。

5.運動や入浴などで卵巣の血流を上げておく
卵巣の血流が悪いと卵巣機能が落ちて受精率や妊娠率が低下するという報告があります。運動や入浴、ヨガなどで骨盤内の血流を良くしておきましょう。

6.禁煙する
喫煙すると血管が収縮し、卵巣の血流状態にも悪影響を与えます。喫煙は卵巣の老化を促進させ、喫煙者は閉経が早いとの報告も出ているので禁煙しましょう。

40代で妊娠出産した女性の体験談

39才で結婚してからすぐに赤ちゃんが欲しかったのですが、私がリウマチを患っていたので、その治療を優先してから治療することに。40代ということもあり不妊治療専門クリニックを受診して検査を受けたら、男性不妊が判明。TESE(精巣内精子採取術)を受けて精子を凍結し、顕微授精にトライ。持病と男性不妊を乗り越えて妊娠することができました。(42歳で妊娠 Eさん)

34歳から妊活を始め、専門クリニックでのタイミング法で妊娠するも流産。転院して2年間、地元の産婦人科でタイミング法を行うが結果が出ず、専門クリニックに再転院。人工授精を計6回行い、体外受精へステップアップを決めました。2回目の移植で妊娠が判明し、すごくうれしかったです(40歳で妊娠 Mさん)

36歳ごろから心がけてタイミングをとっていましたが妊娠せず、通院。摂食障害持ちで無排卵月経が続き、病院でのタイミング法を行っていました。本格的に妊活を始めたのは約1年半前。人工授精をへて、最後の望みと思って体外受精へステップアップ。こわさと不安で押しつぶされそうでしたが、妊娠に至り、あまりのうれしさに泣きました。(41歳で妊娠 Sさん)

まとめ

40代の妊活についてまとめてみました。繰り返しになりますが、40代の妊活は時間との勝負です。子どもを授かりたいと思うなら早く行動をしたほうが確率は高くなります。男性側も年を取ると妊娠力が衰えてくるのがわかっています。もしパートナーの年齢があなたとそんなに変わらないのであれば、一緒に参加することでお互いに励ましあったり、一人で悩まずに済んだりしますので是非二人で取り組みましょう。

もし妊娠して新型出生前診断NIPT)を受けるのであれば、ミネルバクリニックは妊娠9週目から受け付けていますのでお気軽にお問い合わせください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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