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NIPT(新型出生前診断)は陰性だったのにダウン症…誤診はなぜ起こる?

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NIPT新型出生前診断)は非確定診断の1つですが、高い感度と的中率のため判定結果を最終診断と勘違いしてしまいがちです。陰性と判定されたのに、生まれてきたらダウン症の赤ちゃんだったというケースもあります。
今回の記事ではNIPT(新型出生前診断)の結果が「陰性だったのに実は…」とい誤診が起きる原因や検査の精度について解説をします。

NIPTとは

NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)は出生前診断の一種で、非確定検査に分類されます。妊娠中の母親を採血し、胎児の染色体異常遺伝的異常を検査することができます。NIPTは通常、妊娠10週〜20週の間に実施され、以下の染色体異常を検出するために使用されます。

ダウン症(トリソミー21)
エドワーズ症候群(トリソミー18)
パトウ症候群(トリソミー13)

NIPTを受けられる施設には「認証施設」と「非認証施設」がありますが、認証施設の場合は上記の3つの項目しか調べることができません。
非認証施設であれば、上記3つのほか性別や微小欠失など、より多くの項目を調べることができます。

NIPTは非確定検査

出生前診断には、「確定検査」と「非確定検査」があります。
NIPTは非確定検査に分類されますが、これは検査結果が陽性だったとしても、NIPTだけで結果を診断することはできないということです。仮にNIPTで陽性判定となった場合、本当にお腹の赤ちゃんに染色体異常があるかどうかを診断するためには確定検査を受ける必要があります。

確定検査とされている「羊水検査」や「絨毛検査」は、母体のお腹に直接針を指して検査を行います。そのため、早産や流産のリスクを伴います。また、NIPTが妊娠10週で受けられるのに対し、絨毛検査は妊娠11週から、羊水検査は妊娠16週からとかなり妊娠経過が進んでからとなってしまいます。
現在ではリスクのある確定検査を受ける前に、NIPTで検査をするのが主流の流れとなっています。

NIPTの特徴

NIPTの特徴としては以下が挙げられます。

  • ●非侵襲的: NIPTは母親の血液から胎児の遺伝的情報を取得するため、子宮内に侵入する必要がありません。これにより、流産のリスクが少なく、非常に安全です。
  • ●高精度: NIPTは高い感度と特異度を持つテストで、正確な結果を提供します。特にダウン症のスクリーニングにおいて、他の検査法に比べて高い精度を誇ります。
  • ●早期情報提供: NIPTは早期の妊娠段階で遺伝的情報を提供できるため、患者と医師に早期の診断と介入の機会を提供します。

NIPTの陰性結果とその信頼性

陰性結果は、NIPTが検出可能な染色体異常が存在しないことを示します。つまり、胎児は21、18、13番染色体に関連する主要な遺伝的異常を持っていない可能性が高いということになります。

陰性結果は高い信頼性を持ちますが、絶対的な確証を提供するものではありません。NIPTには偽陰性(異常が存在しているにもかかわらず陰性結果を示すこと)のリスクが存在しますが、このリスクは他のスクリーニングテストに比べて非常に低いです。

NIPTの陰性結果は、多くの親にとって安心感を提供しますが、確定診断ではありません。確定診断には、通常、羊水穿刺や絨毛標本採取(CVS)などの侵襲的な検査が必要です。

しかし、確定診断といえど、モザイクと言われる状態で、部分的にダウン症の細胞があるにもかかわらず、羊水検査や絨毛検査で陰性結果になることもありますので、100%の検査はありません。

NIPTの陰性結果は、胎児が染色体異常を持つリスクが低いことを示し、多くの場合、親にとって安心感をもたらします。ただし、確定診断のために医師との相談が重要であり、個々の状況に応じて適切な判断が必要です。

NIPTの精度は高い

NIPTはコンバインド検査母体血清マーカー、超音波エコー検査など他の出生前診断に比べ、検査精度・陽性的中率が高いのが特徴です。実際にどのくらい的中率が高いのか、21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の的中率をまとめた表で紹介します。

以下は、NIPTを受検した35歳の妊婦さんの陽性的中率と陰性的中率です。
ここでの陽性的中率とは「陽性と判定された人が本当に陽性である」確率、陰性的中率とは「陰性と判定された人が本当に陰性である」確率のことをいいます。

【NIPTを受検した35歳の妊婦さんの検査結果】

この表から、一般的な35歳の妊婦さんがNIPTを受けて21トリソミー疾患を検査した場合、
【陽性と判定されたら、本当に陽性の確率は80.0%】、【陰性と判定されたら、本当に陰性の確率は99.9%】です。つまり、陽性と判定された場合でも20.0%は陰性の可能性があり、陰性と判定されても少ない確率ではありますが0.1%は陽性となる可能性もあります。

NIPTは精度が100%ではないものの、的中率の高い出生前診断検査であることがわかるでしょう。
では、他の検査の的中率はどれくらいなのでしょうか。

■35歳の妊婦さんがコンバインド検査をした場合
・陽性的中率…4.9%
・陰性的中率…99.95%
※21、13、18トリソミーの的中率
参照:母体血清マーカー検査とは | 出生前検査認証制度等運営委員会

■35歳の妊婦さんが母子血清検査をした場合
・陽性的中率…3.20%
・陰性的中率…99.95%
※21、13、18トリソミーの的中率
参照:母体血清マーカー検査とは | 出生前検査認証制度等運営委員会

他の検査と比べてみても、NIPTの陽性的中率の高さは明らかです。
ただ、完全100%というわけではないため、1万人に1人の確率で偽陰性が出てしまうことは心得た上で検査を受ける必要があります。

NIPT(新型出生前診断)の結果と言葉の意味

検査精度を表すときに「偽陰性」、「偽陽性」、「感度」、「特異度」、「陽性的中率」、「陰性的中率」という言葉が用いられます。
遺伝カウンセリングなどで言葉を伝えられた場合に、意味をしっかりと理解できていなかったことで戸惑ってしまう方も多いでしょう。

ここからは、それぞれどのような意味で用いられているのか解説していきます。

偽陰性とは

偽陰性は、本当は異常がある(陽性)のにもかかわらず、検査で陰性が出てしまうことです。
NIPTの場合だと、検査で陰性と判定されたのに実際にはダウン症だった、というケースがこれにあたります。
NIPTでは、3つのトリソミーにおいて陰性的中率99.9%ですが、1万人に1人の確率で偽陰性が起こってしまう可能性があります。

偽陰性は次のような原因で起こるとされています。

胎児分画の割合が低い】
胎児分画とは、妊婦さんの血液中に含まれる胎児のDNA断片の割合のことです。採血した血液の中に胎児のDNA断片が十分に含まれていない場合、陽性であっても陰性と表示されることがあります。

【胎盤性モザイク】
胎盤性モザイクとは、妊婦さんの胎盤に含まれる染色体に異常があることをいいます。胎盤性モザイクは偽陽性や判定保留の原因としても報告されていますが、稀に偽陰性が起こることもあります。非常に珍しいケースのため、現在も研究が続いています。

【depthの回数】
depthとは、遺伝子情報を何回読み込んだのかという指標です。一般的には数字が高いほど、多くの回数を読み込んでいる=精度が高いとされています。depthの回数が少ないと偽陰性が起きる可能性があるとされています。近年では高い精度を保てるdepth回数が明らかになっており、今後depth回数による偽陰性は少なくなると予想されます。

東京都で働く産婦人科医が、ここ数年、都内の別々の病院(認定施設)に勤務してみたところ、1件ずつ、合計3件のNIPT偽陰性でダウン症だったケースがあったと教えてくれました。ダウン症が一番多いので、偽陰性も多いのでしょうか?ちなみに、ミネルバクリニックでは現在までに一例もダウン症のNIPT偽陰性例はありません。

偽陽性とは

偽陽性は、本当は異常がない(陰性)のにもかかわらず、検査で陽性が出てしまうことです。
NIPTの場合だと、検査で陽性と判定されたのに実際にはダウン症ではなかった、というケースがこれにあたります。
陽性的中率が低い検査でしばしば起こりますが、NIPTでもわずかながら起こる可能性があります。
また、NIPTの偽陽性は妊婦さんの年齢が低いほど起こりやすいとされています。

【NIPTの年齢による陽性的中率】

年齢 陽性的中率
ダウン症 18トリソミー 13トリソミー
25 79.32 48.14 16.70
30 85.28 58.40 23.26
35 93.58 77.92 43.23
40 98.20 92.88 89.96
41 98.64 94.54 78.89
42 98.99 95.86 83.89
43 99.25 96.87 86.96
44 99.43 97.67 89.96

※NIPTコンソーシアムの実測と文献J Obstet Gynaecol Res. 2021 47:3437-3446.を参考に出生前検査認証制度等運営委員会が算出したものを引用

感度とは

感度とは「病気の人を検出する力」のことをいいます。または、病気を持っている人が検査で陽性になる確率ともいえます。NIPTでいえば、染色体異常を持つ人を検出する力です。

たとえば、病気を持っている人だけを100人集めて検査をした場合、80人に陽性が出て20人に陰性が出たのであれば、その検査の感度は80%です。(陰性が出た20人は偽陰性)
感度が高いほど、病気を見逃す確率が低くなります。

NIPTの場合、ダウン症と18トリソミーにおける感度は99.9%、13トリソミーにおいても91.3%です。

同じ非確定検査であるコンバインド検査の感度は80%、母体血清マーカー検査では83%である点から、NIPTは感度が高いことがわかります。

特異度とは

特異度とは「病気でない人を検出する力」のことをいいます。または、病気を持っていない人が検査で陰性になる確率ともいえます。NIPTでいえば、染色体異常を持たない人を検出する力です。
たとえば、病気を持っていない人だけを100人集めて検査をした場合、99人に陰性が出て1人だけに陽性が出たのであれば、その検査の特異度は99%です。(陽性が出た1人は偽陽性)

特異度の高い検査では、偽陽性がほとんど起こりません。
NIPTでは、3つのトリソミーともに特異度が99%以上のため、非常に偽陽性が起こりにくい検査であるといえます。

NIPT(新型出生前診断)の結果はどのように通知されるの?

どのように通知されるの?

NIPTの検査結果は「陽性」「陰性」「結果保留」の3つのいずれかで通知されます。

認可施設でNIPTを受けた場合、結果通知は必ず対面式で行われますが、非認可施設の場合は郵送やメールで知らされることが多いです。(非認可施設でも対面式を取り入れているところはあります。)
NIPTの検査結果は具体的にどのような形式で通知されるのかを詳しく解説します。

陰性の場合

陰性の場合、「異常がない」または「異常である可能性は非常に低い」といった内容が表記されます。既出のとおり、NIPTの陰性的中率は99.9%であるため、陰性と通知された際には、ほぼ陰性で間違いない可能性が非常に高いです。
病院によっては陰性的中率を表示するところもあるようですが、ミネルバクリニックの陰性的中率は100%のため、的中率は表示されません。

陽性の場合

陽性の場合、染色体異常の可能性がある項目が赤字で表示されます。
また、21トリソミー、13トリソミー、18トリソミーの3種類の異常に関しては陽性的中率(この結果が本当に陽性である確率)が表示されます。3つのトリソミー以外の項目では、陽性的中率は表示されません。
ミネルバクリニックでも陽性の場合は、上記のように通知されます。

また、陽性が出たからといっても、本当に異常があるかどうかは羊水検査や絨毛検査といった確定検査をしない限り判断できません。NIPTでは稀に偽陽性が起こるため、陽性が出て羊水検査をしても異常がなかった、ということもあります。

NIPTで陽性が出ると冷静でいることは難しいかもしれませんが、まずは落ち着いて、医師と今後の対応について話し合うようにしましょう。

判定保留の場合

非常に稀ではありますが、判定保留と表示されることがあります。判定保留とは、何らかの理由で検査結果を出すことができない、ということです。
判定保留は全体の1%弱の確率でしか起こらないケースです。
取り立てて想定する必要はありませんが、もし判定保留が出た場合には医師と今後の対応を相談します。

【判定保留で考えられる原因】

原因 対応
血液中の赤ちゃんのDNA断片が少ない 血液中の赤ちゃんの遺伝子は時間が経つほど
増えていくため、時期を遅らせて再検査
溶血*していた 採血時に溶血しないよう対策し、再検査
21、13、18トリソミー以外の
染色体異常があった
羊水検査か絨毛検査を受ける

*血液中の赤血球が破壊されてしまうこと。溶血した血液ではNIPTができない。
※他にも、検査機器要件に適合できずにエラーが出てしまうことがあります。

血液中の赤ちゃんの遺伝子の少なさや、溶血による判定保留の場合は再検査で解決できます。
しかし、判定保留には21、13、18トリソミー以外の染色体異常が関係している場合もあります。場合によっては、異常リスクや妊娠時期を考慮し、再検査よりも羊水検査や絨毛検査を勧められることもあるでしょう。

ミネルバクリニックで判定保留が出た場合には、原因の可能性をしっかりと説明し、あらゆるリスクを考慮した上で、患者さんが心から納得できる選択をサポートします。

まとめ

陰性だったのにまとめ

NIPTは高い感度と特異度で染色体の先天性疾患を調べられる出生前診断です。ダウン症(21トリソミー)の場合は感度99.1%・特異度99.9%で限りなく100%に近い確率での判定が可能です。

しかし、NIPTはあくまでも非確定診断であるため、陰性判定が出た場合でも実は染色体に異常があったというケースも僅かながらにあります。NIPTを受検する前に、100%で結果が判定されるわけではないことを十分に理解しておきましょう。

また、カウンセリング中や検査結果を医師から伝えられる際などに、「偽陰性」や「偽陽性」などの用語を耳にすることがあります。
検査結果を素早く理解して、気持ちを落ち着かせたり、心の準備をしたりする上で受検をする前にこれらの用語を理解しておくことがおすすめです。
NIPT受検に対する不安が大きい方は、カウンセリングがしっかりとできるクリニックがよいでしょう。

ミネルバクリニックでは、遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しております。
出生前診断に関する疑問点や不安なことがある方はぜひ、お気軽にご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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