目次
- 1 ダウン症候群(21トリソミー)の特徴・顔貌・確率|臨床遺伝専門医が解説
ダウン症候群(21トリソミー)の特徴・顔貌・確率|臨床遺伝専門医が解説
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特徴的な顔貌と身体 → つり目、低い鼻根、猿線(手相)など、新生児期から見られる特徴をイラストで解説します。 -
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なぜ21番染色体なのか? → 理研の最新研究(2024)が解明した、小さい染色体ほどエラーを起こしやすい「サイズ依存の物理的要因」を紹介。 -
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生活と将来のリアル → 療育による発達支援や学校生活、家族への情報提供、若年性アルツハイマーのリスクについても解説。 -
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安心のための選択肢 → 積算リスク1/600の遺伝子疾患を検査できる「ダイヤモンドプラン」と、陽性時の確定検査を自院で行えるミネルバクリニックの体制について。
1. ダウン症候群(21トリソミー)とは?
ダウン症候群(Down syndrome:ダウン症)は、正式には「21トリソミー」と呼ばれ、最も頻度の高い染色体異常です。通常、ヒトの細胞には23対46本の染色体がありますが、ダウン症候群の人は21番目の染色体が1本多く、計3本(トリソミー)になっています。
💡 用語解説:トリソミー(Trisomy)
「Tri(3)」+「somy(染色体)」という意味の医学用語です。通常は2本(Disomy)であるはずの染色体が、細胞分裂のエラーによって3本になる現象を指します。
この「1本多い染色体」に含まれる遺伝情報が過剰になることで、全体的な発達のバランスが変化し、特徴的なお顔立ちや体質、知的発達の遅れなどが生じます。しかし、これらはあくまで「体質」の一つであり、適切な療育や医療的ケアによって、学校生活や就労など、豊かな社会生活を送るダウン症候群の人も増えています。
2. 【画像解説】ダウン症の特徴と顔貌
ダウン症の赤ちゃん(子ども)には、新生児期から共通してみられるいくつかの身体的特徴があります。これらは「ダウン症候群」という名前の通り、複数の特徴が組み合わさって現れますが、全ての特徴が必ず全員に現れるわけではありません。また、ご両親に似ている部分も当然あります。
👶 顔貌の特徴(お顔立ち)
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つり上がった目(眼裂斜上):
目尻がやや上がっているのが特徴です。 -
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低い鼻根(鞍鼻):
目と目の間(鼻の付け根)が低く、平坦な印象を与えます。 -
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内眼角贅皮(もうこひだ):
目頭の皮膚が覆いかぶさっていることが多いです。 -
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舌の突出:
口の中の容積に対して舌が大きめであることや、筋力が弱いために、舌が少し出ていることがあります。 -
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耳の位置が低い:
目のラインよりも低い位置に耳があり、耳の上部が折れ曲がっていることもあります。
🖐 手足・身体的特徴
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猿線(ますかけ線):
手のひらを横切るシワが1本につながっています(通常は2本)。 -
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小指の特徴:
小指が短く、内側に曲がっている(内湾)ことがあります。また、関節のシワが1つ少ないこともあります。 -
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サンダルギャップ:
足の親指と人差し指の間が広く開いています。 -
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筋緊張低下(フロッピーインファント):
筋肉の張り(緊張)が弱く、抱っこすると柔らかく感じられます(ふにゃふにゃしています)。
3. エコー検査で見える予兆と限界
妊婦健診の超音波(エコー)検査で、「ダウン症の疑い」を指摘されることがあります。しかし、エコーはあくまで形態を見る検査であり、染色体を直接見るわけではありませんので、確定診断ではありません。
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🔍 エコーでチェックされる主なポイント
① NT(Nuchal Translucency:首の後ろのむくみ)
妊娠11週〜13週頃に見られる、胎児の首の後ろの皮下浮腫(むくみ)です。生理的に誰にでも見られるものですが、厚さが3.5mm以上ある場合、ダウン症や心疾患の可能性が統計的に高くなるとされています。
② 鼻骨(Nasal Bone)の低形成
ダウン症の胎児では、鼻骨の成長が遅れている、あるいは確認できない(欠損)場合があります。
③ 心奇形などの合併症
心室中隔欠損症などの心臓の形や、十二指腸閉鎖などの消化管の異常が見られる場合、染色体異常の合併を疑います。
⚠ 注意:エコーで異常がなくてもダウン症である可能性(偽陰性)や、逆にNTが厚くても正常である可能性は十分にあります。確定には羊水検査が必要です。
ミネルバクリニックでは、2022年11月より高性能な4Dエコーを導入しました。NIPT検査の前に、臨床遺伝専門医が胎児の当日の状態を詳細に確認します。赤ちゃんの動きや形態をリアルタイムで確認してから検査に進めるため、より安心して受検いただけると好評です。
4. 確率と原因:なぜ「21番」に多いのか?(最新研究より)
ダウン症のリスクは、母親の年齢とともに上昇します。35歳で約1/300、40歳で約1/100になります。これは、卵子の老化に伴い、細胞分裂の際に染色体がうまく分配されない「不分離」が起こりやすくなるためです。
🧬 【2024年最新】理研が解明した「サイズ依存の物理的要因」
なぜ数ある染色体の中で、特に「21番」の異常が多いのでしょうか?
理化学研究所(理研)は2024年7月、マウス卵母細胞を用いた実験で、世界初となる画期的なメカニズムを解明しました。
🔬 「小さい染色体」ほど、内側に集まりやすい
細胞分裂の際、染色体は「紡錘体(ぼうすいたい)」という装置によって引っ張られ、左右に分配されます。理研の研究により、「サイズが小さい染色体ほど、紡錘体の内側に配置されやすく、その結果、分配の力が強くかかりすぎてエラー(不分離)を起こしやすい」という物理的な法則が発見されました。
ヒトの21番染色体は、全染色体の中で最も小さい染色体の一つです。つまり、加齢による卵子の質の低下に加え、この「物理的なサイズ要因」が重なることで、21トリソミーが特に高頻度で発生する可能性が示唆されたのです。
5. ダウン症候群の寿命と合併症のリアル
以前はダウン症の方の寿命は短いと言われていましたが、現在は医療の進歩により劇的に延びています。
📈 平均寿命の変化
1960年代には10歳前後だった平均寿命は、現在では約60歳に達しています。これは、死因の多くを占めていた心疾患の手術技術や、感染症への治療法が飛躍的に向上したためです。
🏥 主な合併症と治療
- 先天性心疾患:約50%に見られます(心室中隔欠損など)。手術による治療が可能です。
- 消化器疾患:十二指腸閉鎖、鎖肛など。
- 眼・耳の疾患:斜視、難聴など。
※これらは早期発見・治療により、予後が大きく改善します。
6. 【重要】若年性アルツハイマーと「急激な退行」
近年、ダウン症の方の長寿化に伴い、新たな課題として注目されているのが「若年性アルツハイマー型認知症」です。「急に仕事ができなくなった」「性格が変わったように頑固になった」といった変化は、単なる加齢ではなく、病気が原因である可能性があります。
🧠 なぜダウン症はアルツハイマーになりやすいのか?
アルツハイマー病の主な原因物質の一つに「アミロイドベータ(Aβ)」というタンパク質があります。この物質が脳に蓄積することで、神経細胞が破壊されます。
実は、このアミロイドベータを作る遺伝子(APP遺伝子)は、「21番染色体」上に存在します。ダウン症の方は21番染色体が3本あるため、健常な方よりもアミロイドベータが過剰に(約1.5倍)作られやすく、結果として40代〜50代という早い段階でアルツハイマー病を発症するリスクが高まることが分かっています。
📉 40歳以上の発症率
研究によると、ダウン症の方の脳内では40歳頃までにほぼ全員にアルツハイマー病理(アミロイド斑)が見られ、50代で約30%、60代では約50%以上が認知症の症状を発症すると報告されています。
⚠️ 「急激な退行」に注意
就労していた方が、急に作業手順を忘れたり、意欲が低下したりする場合、「急激な退行(Rapid Regression)」と呼ばれる状態の可能性があります。雇用現場での「突然来なくなった」「物忘れがひどかった」という現象も、この病態が背景にあることが多いです。
7. ダウン症のある生活:療育・学校・お金のこと
ダウン症候群のお子さんを育てるイメージを具体的に持つことは、不安を解消する第一歩です。現在はご家族を支える社会的なサポート体制も充実してきています。
🌱 療育(発達支援)
早期から理学療法(PT)や言語聴覚療法(ST)を受けることで、運動機能や言葉の発達を促します。多くの自治体で「児童発達支援センター」などが利用できます。
🏫 子どもたちの学校生活
地域の小学校の「通常学級」「特別支援学級」や、「特別支援学校」など、お子さんの特性やご家族の希望に合わせて選択肢があります。インクルーシブ教育の推進により、地域で学ぶ子どもたちも増えています。
💰 経済的支援(情報)
特別児童扶養手当(1級:月額約5.5万円、2級:月額約3.6万円 ※所得制限あり)や、障害児福祉手当などが利用でき、経済的な負担を軽減する制度が整っています。
8. ミネルバクリニックのNIPT(新型出生前診断)
ダウン症などの染色体異常は、NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)で、妊娠10週(ミネルバクリニックの早期NIPTなら妊娠6週)から高精度に調べることができます。
ミネルバクリニックは、日本で唯一の臨床遺伝専門医が遺伝子検査を行うために開業した日本初のクリニックです。その高い専門性に基づき、世界中の検査機関から厳選した、信頼性の高い検査を皆様に提供しています。
(図:父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)
9. ミネルバクリニック独自の「トリプルリスクヘッジ」
ミネルバクリニックは、単に検査結果を返すだけではありません。臨床遺伝専門医として、患者様の不安に最後まで寄り添うため、以下の「トリプルリスクヘッジ」体制を整えています。
1. 金銭的リスクヘッジ(互助会)
検査時に互助会にご入会(会費8,000円・非課税)いただくことで、万が一陽性だった場合の羊水検査費用を、上限なしで全額負担します(税込16万5千円までといった制限は撤廃しました)。経済的な不安なく、確定診断へ進めます。
2. 時間的リスクヘッジ(院内完結)
2025年6月より産婦人科を併設し、陽性時の確定検査(羊水・絨毛検査)を自院で実施可能になりました。非認証施設としては唯一の体制です。たらい回しにされることなく、いつものクリニックで完結します。
3. 心理的リスクヘッジ(専門医)
検査前の遺伝カウンセリングから陽性後のフォローまで、すべて院長である臨床遺伝専門医が担当します。また、検査結果が出ずに再検査が必要で、その前に流産してしまい検体を再提出できない場合には、検査費用を全額返金する安心結果保証制度も導入しました(2025年1月〜)。
10. まとめ
ダウン症(21トリソミー)は、誰にでも起こりうる染色体の変化です。特徴的なお顔立ちや合併症のリスクはありますが、医療の進歩とともに寿命は延び、社会の中で元気に暮らす方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、妊娠中に不安を感じることは自然なことです。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が、最新の知見と技術に基づいたダイヤモンドプランを提供し、お母さんと赤ちゃんの未来をサポートします。オンライン診療により全国どこからでも受検可能です。一人で悩まず、まずは専門医にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
🏥 臨床遺伝専門医へのご相談
ダウン症の特徴や確率、NIPTに関するご不安は、専門医が常駐するミネルバクリニックへお気軽にご相談ください。
最新の遺伝医学と、温かい心であなたをお迎えします。
参考文献
- [1] Snijders RJ, et al. Maternal age- and gestation-specific risk for trisomy 21. Ultrasound Obstet Gynecol. 1999. [PubMed]
- [2] RIKEN. Large chromosomes are more likely to be located at the periphery of the spindle, while small chromosomes are more likely to be located in the interior. 2024. [理化学研究所]
- [3] American Academy of Pediatrics. Health Supervision for Children With Down Syndrome. 2022. [AAP]
- [4] Lott IT, Head E. Dementia in Down syndrome: unique insights for Alzheimer disease research. Nat Rev Neurol. 2019. [PubMed]
- [5] Fortea J, et al. Clinical Course of Alzheimer’s Disease in Down Syndrome. J Alzheimers Dis. 2021. [PubMed]




