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NIPTで性別を教えてくれない理由は?中絶問題と認証(認可)の違い

NIPTで性別を教えてくれない理由は?中絶問題と認証(認可)の違い

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

NIPTで性別を教えてくれない理由は?
中絶問題と認証(認可)の違い

NIPT(新型出生前診断)を受けようとした際、あるいは受けた後に、「赤ちゃんの性別は教えられません」と言われ、戸惑う妊婦さんは少なくありません。技術的には十分に判定可能なのになぜ隠されるのか、その背景には深い倫理的課題が潜んでいます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 NIPT・性別判定・倫理
臨床遺伝専門医監修

Q. なぜ日本医学会の認証施設(認可施設)では性別を教えてくれないのですか?

A. 望まない性別だった場合の「非医学的理由による人工妊娠中絶」を防ぐためです。
日本医学会のガイドラインでは、NIPTの目的を特定の3つの染色体疾患(13、18、21トリソミー)の検査に限定しており、性別の告知は原則として行わないルールとなっています。しかし、非認証施設(無認可施設)では性別を知ることが可能です。

  • 教えない理由 → 性別を理由にした中絶(命の選別)を防ぐための倫理的配慮
  • 施設による違い → 認証施設は「不可」、非認証施設は「可能」という明確なルールの差
  • 法律(母体保護法) → 性別不満での中絶は明記されていないが、実態として解釈の余地がある問題
  • 現場のリアルなデータ → 実際には99.5%の妊婦さんが知ることを望み、中絶を選ぶ方はごく僅か

1. NIPTで赤ちゃんの性別はわかるのに教えてくれない理由

NIPT(非侵襲的出生前検査)は、お母さんの血液中にわずかに溶け出している赤ちゃんのDNA断片を調べる検査です。このDNAを解析すれば、赤ちゃんが男の子(XY)か女の子(XX)かの染色体性別は、実は非常に高い精度で判定可能です。

エコー(超音波)検査で性別がわかるのは早くて妊娠14週〜16週頃ですが、NIPTであれば妊娠6週〜10週という非常に早い段階で性染色体の情報を得ることができます。技術的には十分に「わかる」にもかかわらず、なぜ日本の多くの施設では教えてくれないのでしょうか。

最大の理由は、非医学的な理由(希望する性別ではないという理由)による人工妊娠中絶を防ぐためです。日本医学会のガイドラインでは、この倫理的懸念を重く見ており、原則として性別を告知しないという方針をとっています。

💡 専門用語:非医学的性別選択とは?

「男の子にだけ遺伝する重篤な病気がある」といった医学的・治療的な理由ではなく、「どうしても女の子が欲しかった」「跡継ぎとして男の子を望んでいた」といった個人的な嗜好に基づく性別の選択を指します。倫理的な議論の的となっており、世界各国で厳格な規制の対象となっています。

しかし一方で、早くから名前を考えたり、ベビー服を準備したりしたいと願うご家族の純粋な「知る権利」がないがしろにされているのではないか、という指摘も存在します。

2. 認証施設(認可)と非認証施設(無認可)における性別判定のルールの違い

NIPTを提供する医療機関は、大きく「日本医学会の認証施設(認可施設)」と「非認証施設(無認可施設)」に分かれます。この二つでは、検査できる項目の範囲と、教えてもらえる情報に決定的な違いがあります。

認証施設(認可施設)のルール

日本医学会の厳しいガイドラインに縛られているため、検査できるのは「13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)」の3つの染色体疾患のみに限定されています。また、結果に赤ちゃんの性別が含まれていたとしても、ご家族に伝えることは許されていません。

非認証施設(無認可施設)のルール

法的な違反をしているわけではなく、医学会の独自ルールに属していない施設です。そのため、3つのトリソミーだけでなく、性染色体の異常や微細欠失、単一遺伝子疾患まで幅広く検査可能であり、もちろん赤ちゃんの性別も希望すれば100%お伝えすることができます。

「非認証=質が低い、危険」というイメージを持たれがちですが、それは大きな誤解です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【非認証施設である理由と、当院の誇り】

当院ミネルバクリニックは、日本医学会の「非認証施設」です。しかし、それは検査の質が低いからではありません。むしろ、最新の海外技術をいち早く取り入れ、患者様の「知る権利」に最大限寄り添うために、あえてその立場を選んでいます。

私たちは非認証でありながら、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングから検査、そして陽性後の確定診断(羊水検査・絨毛検査)までを一貫して院内で行う体制を整えています。こうした体制を持つ医療機関は、日本全国を見渡しても極めて稀有(rare)な存在であると自負しております。

3. 胎児の性別を理由にした人工妊娠中絶は法律で認められる?

では、仮に性別がわかり、「希望していた性別ではなかった」という理由で中絶を希望した場合、日本の法律(母体保護法)においてそれは許されるのでしょうか。

母体保護法第14条では、人工妊娠中絶が認められる条件として「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」と定めています。「胎児の性別が不服だから」という理由は、法律上どこにも明記されていません。

しかし現実問題として、日本の法律における「経済的理由」は極めて幅広く解釈される傾向にあります。そのため、表向きは「経済的理由」として申告され、実態としては性別への不満が背景にある中絶が行われてしまう余地が残されているのが現状です。

注意:NIPTで赤ちゃんの性染色体の異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)が見つかった場合も、表現型が軽度であるケースが多く、命に直接関わらない疾患での中絶は倫理的に激しい議論を呼んでいます。だからこそ、専門医による慎重な遺伝カウンセリングが不可欠なのです。

4. 「命の選別」と非医学的性別選択が抱える倫理的な課題

性別判定をめぐる問題は、日本だけのものではありません。世界保健機関(WHO)などの国際機関も、「十分な情報を得た上で選択できるようにする」という生殖の自律性を尊重しつつも、性別を理由とした命の選別には強い警鐘を鳴らしています。

世界の規制と人口動態のひずみ

例えばインドや中国では、男児を重んじる文化背景から、非医学的な性別選択が横行した歴史があり、法律で胎児の性別判定を禁止しています。男女比の著しい不均衡は、社会に深刻な少子化や人口動態のひずみをもたらしました。

デザイナーズベビーへの懸念

単なる性別にとどまらず、才能や外見など、親の嗜好に基づいて胎児の遺伝的特徴を選択するようになる「デザイナーズベビー」へと倫理のタガが外れてしまうのではないか、という懸念も根強く存在します。

こうした背景から、ドイツでは妊娠12週目以降でなければ性別を教えてはいけないという法律があり、イギリスでも民間を含めてNIPTによる性別判定を禁止するよう提案が出されるなど、各国の対応は分かれています。日本における認証施設の「教えない」というルールも、こうした安易な命の選別に対する防波堤としての役割を担っている側面があります。

5. 臨床遺伝専門医が語る現場の実態と妊婦さんの本当の気持ち

ここまで、倫理的な課題や厳しい懸念について解説してきましたが、日々の診療現場で何千、何万という妊婦さんと向き合ってきた専門医の視点から、少し異なる「真実」をお伝えします。

当院ミネルバクリニックでは、性別をお知らせするかどうかは患者様の自由意志にお任せしていますが、実際には受検者の99.5%が「知りたい」と希望されます。では、望まない性別だったから中絶をする方がどれだけいるかというと、0.1%未満という極めて稀なケースに過ぎません。

例えば、「男の子ばかり3人続いているから次は女の子が欲しい」というご家族であっても、検査の結果また男の子だとわかって「じゃあ中絶する」と言い出す方は、現代の日本ではまずいらっしゃいません。皆さま、早くから性別を知ることで、名前を考えたり、ベビー用品を準備したりと、愛情を持って迎える準備をしたいだけなのです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【少数を犠牲にするパターナリズムへの疑問】

「教えれば安易な中絶が増える」という懸念は、妊婦さんの母性や倫理観を信じない、やや古いパターナリズム(父権主義的保護)の匂いを感じます。ごく一部の極端なケースを恐れるあまり、大多数の健全な親たちの「早く知りたい、準備したい」という純粋な権利を奪ってよいのでしょうか。

私たちは、ご夫婦の力を信じています。正しく情報を開示し、必要であれば徹底的にカウンセリングで伴走する。情報を隠すのではなく、知った上でどう受け止めるかを共に考えるのが、真の医療であると考えています。

6. 後悔のない出生前診断のためにご家族で話し合ってほしいこと

NIPTは、「安心を買う検査」と思われがちですが、結果によってはご夫婦に重い決断を迫る検査でもあります。生涯に関わる検査だからこそ正確性が最重要であり、短期間で結果を出すことよりも、質の高い検査と手厚いサポート体制を選ぶべきです。

当院の「ダイヤモンドプラン(COATE法)」では、13、15、16、18、21、22トリソミーに加え、性染色体異数性(4種)、微細欠失(12領域)、そして父親由来の新生突然変異による56種の単一遺伝子疾患(重度の合併症を伴う症候性自閉症の原因等を含む)まで網羅しています。微細欠失においても陽性的中率>99.9%の高精度を誇るこの技術は、国内で提供できる医療機関が限られています。

父親由来の遺伝子変異イメージ

(父親の高齢化等による精子の新生突然変異が子へ伝わるイメージ)

万が一、陽性という結果が出た場合でも、当院では患者様を決して一人にしません。NIPT受検者全員に互助会(8,000円)へのご加入を頂いており、これにより羊水検査費用が全額補助されます。2025年6月からは院内で羊水・絨毛検査を実施できる体制も整い、確定診断までスムーズに、安心して進んでいただけます。

ご家族で「もしも」の時にどう受け止めるかをしっかりとお話し合いのうえ、信頼できる専門医のもとで検査を受けられることを強くお勧めいたします。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTで性別がわかるのはいつからですか?

非認証施設である当院の場合、早ければ妊娠6週(早期NIPT)からの血液検査で、非常に高い精度で性染色体を判定することが可能です。エコー検査よりもずっと早い段階で知ることができます。

Q2. 認可施設で性別を聞き出せる裏ワザはありますか?

ありません。日本医学会の認証施設では、ガイドラインによって性別の開示が固く禁じられています。性別をどうしても早く知りたい場合は、臨床遺伝専門医が在籍する信頼できる非認証施設を選ぶ必要があります。

Q3. 性染色体の異常(SCA)とは何ですか?

性染色体(X・Y)の数の異常です。ターナー症候群(45,X)やクラインフェルター症候群(47,XXY)などがあります。生命予後に大きな影響を与えないケースが多く、知的な遅れがないこともありますが、身長や生殖能力に影響が出る場合があります。

Q4. ミネルバクリニックの「互助会」とは何ですか?任意ですか?

NIPTを受検される皆様に加入いただく制度(8,000円)です。万が一陽性結果が出て羊水検査等の確定診断が必要になった際、その費用を全額補助するためのものです。皆様に安心して検査を受けていただくため、受検される方全員に適用されます。

Q5. 非認証施設は違法ではないのですか?

違法ではありません。医師免許を持つ医師が血液検査を行うことは適法です。「非認証」とは、あくまで日本医学会という一団体の独自ルール(3つのトリソミーしか検査しない等)の枠組みに入っていない、という意味であり、医療行為としての違法性はありません。

Q6. 遺伝カウンセリングだけでも受けられますか?

当院では本気で受検をご検討の患者様に責任ある医療を提供し続けるため、お一人につき1.5時間の十分な枠を確保して動画等による詳細な事前説明を行っております。「とりあえず相談だけ」というスタンスでのご予約は固くお断りしており、検査を前提とした深いサポートを提供しています。

🏥 知る権利と、命への責任に寄り添います

性別を知りたいと願うのは、決して悪いことではありません。
私たちは臨床遺伝専門医としての高度な技術心の安全を守るケアで、皆様の選択を全力でサポートします。

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参考文献

  • [1] World Health Organization (WHO). Ethical issues in reproductive health. [WHO]
  • [2] ACMG. cfDNA screening for fetal aneuploidy and sex chromosomes. [ACMG]
  • [3] ACOG. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Practice Bulletin No. 226. [ACOG]
  • [4] 母体保護法 第14条の解釈と人工妊娠中絶の現状について [厚生労働省]
  • [5] 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」 [PDF]


プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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