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18トリソミー(エドワーズ症候群)胎児のエコーでわかる16の特徴|いつからわかる?

目次

18トリソミー(エドワーズ症候群)とは正常では2本1組しかないはずの第18番染色体が3本増えてしまうことにより身体に様々な症状がでるトリソミー症候群をいいます。歴史的に産婦人科の妊婦健診では超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせたコンバインド検査などを開発して出生前検査をしてきました。トリソミーなどの染色体異常は奇形(外から見てわかる形態異常)を伴うため、妊婦検診のエコーや胎児ドック(より精密な胎児超音波検査)で発見することも場合によっては可能で、出生前診断の最もよい対象となります。この記事では18トリソミーがエコーでわかるにはどういう特徴があるのか、またその特徴は妊娠何週ごろから現れるのかについて記載していきます。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|1.後頭部突出、または後頭部隆起

T18エコー後頭部膨隆
このエコー写真は妊娠28週の妊婦さんのものです。赤ちゃんの脳には異常は見られないのですが、頭の後ろの方の(後頭部)骨が盛り上がっているのがわかると思います。医学的にはこれを後頭部突出、または後頭部隆起といいますが、18トリソミーで特徴的な外表奇形の一つです。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|2.脳梁欠損

脳梁
脳梁とは大脳の左右の半球をつなぐいちばん大きな神経の束のことをいいます。この脳梁が部分的または全く無くなっている状態を脳梁欠損といいます。大体は胎児前脳に全前脳胞症(ぜんぜんのうほうしょう)のようなおおきな奇形が発生するのに合併して、結果的に頭蓋骨の内部構造がいびつになります。側脳室など脳室は大体はおおきくなり(拡張し)、左右の両半球の間に嚢胞(なにがしかの袋をこういいます)を形成することが多くなっています。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|3.Dandy-Walker複合奇形

4脳室拡大、小脳虫部欠損・無形成などの頭蓋の後方部の内部構造の一連の異常をDandy-Walker複合奇形といいます。脳内構造の異常として一番注目すべきは小脳虫部と呼ばれる部分の欠損なのですが、DandyWalker複合奇形の胎児をより早期に見つけるためには、まず後頭部の頭蓋内襄胞または小脳の後側のスペースである大槽の拡大を発見することだとされています。はやいと妊娠11週から見つかることがあります。大槽の大きさが異常かどうかを決めるための基準がしっかりしたものがないのですが、大体は前後の長さで10mm以上を異常値としています。しかし、正常な赤ちゃんでも妊娠末期ではこの程度の値を示すことはあることからなかなかこれと言った明確な基準が決められないのが現状です。また、大槽をエコーで検出するときに角度を強くつけすぎる(斜め切りしてしまう)と大きく測定されてしまい、なおかつ小脳虫部も見えにくくなり、異常所見となってしまうため注意が必要です。しかし、大槽が大きく見えるときにはやはり18トリソミーをまずもって疑いのある疾患として考えなければなりません。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|4.脈絡叢襄胞

脈絡叢(みゃくらくそう)は左右の側脳室、第三脳室、第四脳室にある血管が豊富な組織のことで、脳やせき髄を保護する脳脊髄液を産生しています。幅が2mm以上ある明らかな嚢胞が脈絡叢にあると、脈絡叢嚢胞といいますが、実は妊娠中期では多い報告だと3%くらいでみられるものです。自然に消失することもあり、脈絡叢嚢胞がどうしてできるのかという原因については明らかになっていません。脈絡叢嚢胞は染色体異常では特に18トリソミーとの関連が注目されてきました。脈絡叢嚢胞があると18トリソミーの可能性が約14倍となります。しかし、脈絡叢嚢胞自体は正常胎児でも1%くらいで認められるもの(所見)です。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|5.眼間狭小

眼間狭小というと、左右の瞳孔の間の距離が広いことを意味するというイメージでしょうが、医学的には眼窩(眼球の入っているくぼみ)の左右の大きさを意味する場合があります。
この場合は眼窩自体の左右径が頭部の一番大きな径(大横径)と比べて小さいことをさしています。
眼間狭小は全前脳胞症、とりわけ無葉全前脳胞症などで認められることが多くなっています。眼間狭小のできるメカニズムと頭部・頭蓋の中心線上の形成が阻害されることが密接に関係しているためです。眼間狭小を認める疾患としては、さまざまな染色体異常(とくに13トリソミー)、小頭症など多数あります。出生前診断された眼間狭小の症例では口唇裂の合併が多いという報告もあります。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|6.口唇裂および口蓋裂、口唇口蓋裂

口唇裂・口蓋裂・口唇口蓋裂は顔面裂の一つで、奇形の中でも発生率が高く、日本では500人に一人と報告されています。白人では1000人に一人なのに日本人では倍になっていることも注目される点です。
口唇裂があると1/3で口蓋裂を合併するといわれています。 口蓋裂の頻度は意外に高いのですが、口唇裂の口唇裂・口蓋裂に合併する奇形としては小顎症、心奇形、耳奇形に注意が必要で、13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)といった染色体異常に口唇裂・口蓋裂が合併することが多いことから羊水穿刺(羊水検査)の上、染色体検査を行う必要があります。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|7.鼻の異常

鼻の異常はいつから見つかりやすくなるのかというと、横顔を描出しやすくなるのが大体は妊娠中期になるため、妊娠中期以降となります。特に横顔を見ることが必要になるような赤ちゃんでは羊水過多を伴っていることが多く、見つけるのに苦労するということはあまりないでしょう。
鼻骨の長さを調べて異常を検出する研究は白人でよく行われているため、そういうデータをもともと鼻が低い日本人にそのまま適応するのは困難だと考えます。
鼻の奇形がは18トリソミー、21トリソミー、三倍体(23本の染色体セットが3つある)などの染色体異常に
合併しやすいと報告されています。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|8.小耳症

胎児の耳の大きさ(耳介長)は妊娠週数とともに大きくなることは想像に難くないと思いますが、耳介の長さは妊娠週数とは無関係に頭の最大横径(大横径)の約1/3だと報告されています。耳が小さい小耳症は、さまざまな奇形症候群に合併するのですが、特に13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどの染色体異常(数的異常)では小耳症を合併する頻度が高いという報告が数多くなされています。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|9.嚢胞性ヒグローマ

嚢胞性ヒグローマはリンパ管系に発生する奇形で、とくに頚部に多いものです。妊娠のいつから見られるようになるのかというと、大体早ければ妊娠12週頃から赤ちゃんの首のうしろ(項部、うなじ)に認められるようになります。一番おおいのはTurner症候群ですが、他の染色体異常である13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどのトリソミーに合併して見られることが多いのも特徴です。嚢胞性ヒグローマの約13%が18トリソミーです。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|10.項部透過像(NT)

項部透過像(NT)とは妊娠初期に見られる赤ちゃんの首のうしろのむくみ(浮腫)で、NTそのものは正常所見の一つです。通常を大きく上回る肥厚が見られたときは、ダウン症候群、18トリソミーをはじめとする染色体異常などが疑われます。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|11.肺低形成

肺の形成が悪い、という症状は13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどの奇形症候群で認められます。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|12.心奇形

胎児に心奇形を認めた場合には、染色体異常の可能性が高まります。特に18トリソミーでは100%に心奇形を合併すると言われています。18トリソミーに合併する心奇形としては心室中隔欠損、ファロー四徴症(心室中隔欠損+肺動脈狭窄+大動脈騎乗+右室肥大)、両大血管右室起始症、左心低形成症候群、心内膜床欠損などがあります。

心内膜床欠損症

心内膜床という心臓の内部を形成するのに欠かせない組織が不完全に発達することにより左右の心房を隔てる心房中隔、左右の心室を隔てる心室中隔がきちんと形成されないという先天奇形です。心内膜床欠損症の約50%は染色体異常と関連があり、とりわけその染色体異常の半数以上が21トリソミー、 1/4が18トリソミーです。
実は心室というのは心房を隔てる中隔から発生するため、典型的な心内膜床欠損ではでは心房中隔欠損をきたし、心内膜床からの心室中隔も形成されず、大きな心室中隔欠損を認めることになります。心房と心室の間で逆流しないようにするための弁で左心系には僧帽弁、右心系は三尖弁と言われる大事な弁たちがありますが、こうした房室弁も共通房室弁となるという奇形が伴います。両心室の形成されるバランスがわるくて、一方の心室が低形成となる場合もあります。
心内膜床欠損症は不整脈も来します。心臓の「収縮しなさい」という指令(刺激)は心房から心室へと順番に伝わります。互いに勝手に収縮したり拡張したりすると心臓の一番大事なポンプ機能が果たせません。ポンプは中身がいっぱいになったタイミングで押さないと(収縮しないと)空うちになって無意味ですよね。心内膜床欠損症では心房から心室に順番に伝わるはずの刺激を伝導する繊維の形成もうまくいかないため、房室ブロック(心房と心室の間で信号がブロックされる)という重篤な不整脈を合併します。
心内膜床欠損だけが心奇形としてあり、胎児水腫の合併がない場合、生後に心臓の手術をするなどの治療により85~90%以上の生存率が期待できます。どちらかの心室の低形成があったり、大動脈、肺動脈どちらかの動脈が極端に細い場合は根治術は大変困難となります。

左心低形成症候群

大動脈弁および僧帽弁はあるのですが、それらの低形成のため、動脈管が開存したままになっていないと体に血液を送ることが維持できない状態をいいます。動脈管とは大動脈と肺動脈とを繋ぐ小さな管で、赤ちゃんが胎児のあいだは必ず開いたままになっています。胎児のときには肺はありますが空気をすうという呼吸はしていなくて働いていませんから、肺には肺の組織が存在できる程度の血液を流せば足りるのです。働いていない肺に流さず、全身に必要な血液を流したほうが効率が良いということでしょう。動脈管は生後赤ちゃんが肺呼吸を始めると、肺に血液を流すためにすぐ閉じてしまいます。
ところが、左心低形成症候群ではこの動脈管が閉じてしまうと全身に血液が送れなくなってしまうので大変です。こうした場合はまず動脈管が閉じないようにする手術をします。
左心低形成症候群は男児に多く、女児ではTurner症候群の可能性が高まります。18トリソミーで多い心疾奇形の一つですが、22pll.2微小欠失症候群でも見られます。

ファロー四徴症

ファロー四徴症
ファロー四徴症とは心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗。右室肥大を合併した奇形ですが、胎児のときには肺に送らないといけない血液が少ないので右室肥大はほとんどありません。大動脈と肺動脈はらせん状の隔壁ができて分かれるのですが、そのらせん中隔のねじれが足らないため、大動脈のはじまりが心室中隔の上にまたがってしまうのです。Fallot四徴症は18トリソミーや21トリソミーに多い心奇形です。21q1.2微小欠失症例でFallot四徴症が認められたという報告もあります。
肺動脈の形成が悪すぎる赤ちゃんでは胎児水腫に進行することがあります。胎児水腫さえなければ分娩方法は児が成熟していれば自然分娩で問題ありません。

両大血管右室起始症

大動脈、肺動脈という両大血管が右心室から出ている、というファロー四徴症と同じく心臓の発生の段階での動脈のらせん中隔のねじれの異常によりおこります。一般的には心室中隔欠損を伴います。
両大血管右室起始症は染色体異常と関係していて、とりわけ18トリソミーの疑いが高くなります。22qll.2微小欠失症候群でも認められます。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|13.食道閉鎖

食道閉鎖がいつから赤ちゃんのエコーで評価できるようになるのかというと、妊娠18週以降です。このころになると赤ちゃんが飲み込む羊水が食道を通って胃や十二指腸に到達し、胃の内容物ができるため、胃が膨らんだり、胃の内容物が十二指腸に押し出されて胃が小さくなったりするのが見えるようになってきます。
食道閉鎖もまた染色体異常の合併が多いエコーの異常所見で、染色体異常の種類としては18トリソミーと21トリソミーがあります。食道閉鎖も合併する場合は21トリソミーの可能性が高くなります。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|14.臍帯ヘルニア

胎児十二指腸閉塞のエコー所見
臍帯ヘルニアは実は最初は赤ちゃん全員が持っています。妊娠第1三半期(初期)では生理的膳帯ヘルニアと呼ばれる現象があるからです。妊娠7週末から8週、中腸(腸をつくるもとになります)が急速に発育してループを形成し、臍帯の付着部位から臍帯内へと脱出してヘルニアを必ず生じます。この時点では肝臓と腎臓が赤ちゃんのお腹のほとんどの部分を占めているため、腸が入るスペースがないからわざとヘルニアという形で外に出しているのです。それではいつから腸が腹腔内に収まっていくのかというと、妊娠12週ころになります。したがって、異常な臍帯ヘルニアをエコーで評価できるのは少なくとも13週以降となります。
しかし、生理的ヘルニアは径7mmより大きくなることはないので、妊娠8~12週でも病的な臍帯ヘルニアの診断は可能です。
臍帯ヘルニアはよく染色体異常を合併することが知られていますが、染色体異常の合併する確率は40%と報告されています、臍帯ヘルニアの合併する染色体異常は18トリソミーがもっとも多く、次に13トリソミーとなります。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|15.膀胱出口部閉塞

膀胱出口の閉塞は男児におこりやすく、とくに後部尿道弁があることで起こります。後部尿道弁とは本来、アポトーシスをおこしてなくなるべき泌尿生殖膜がうまくなくなることができないまま残ってしまうことで後部尿道内に残存して発生すると考えられています。尿道閉鎖などでも膀胱出口の閉塞と同じような症状がおこるのですが、これは女児にも発症します。尿路の腎臓の下流の閉塞は腎臓からの尿の出口がふさがってしまって水腎症とよばれる腎臓が腫れる状態をおこします。膀胱の出口がふさがると、膀胱が大きくなり、巨大膀胱と言われる状態になります。いつからこのエコー所見がみえてくるのかというと、早ければ妊娠10~14週で気付かれることもあります。巨大膀胱では13トリソミーやは18トリソミーなどの染色体異常のリスクがおよそ25%あります。

18トリソミーのエコーでわかる特徴|15.停留精巣

停留精巣はエコーで見える陰嚢の中に精巣が描出されないことで明らかになります。精巣は妊娠末期にならないと下降しないこともあります。殆どの停留精巣は単独、つまり停留精巣だけが赤ちゃんに存在する、という状態ですが、停留精巣を合併する症候群には、prune-belly症候群、Noonan症候群、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどがあります。

18トリソミー胎児のエコーでわかる特徴|16.単一膳帯動脈

単一膳帯動脈とは胎子期に通常なら2本ある臍動脈のうち1本がないという先天性の奇形をいいます。ヒトでは約1.0%の確率で発生し、ほかの奇形を併発することもあります。単一膳帯動脈は染色体異常も合併しやすいことがわかっていて、18トリソミーでは半数以上が単一膳帯動脈を合併しています。13トリソミーでも10%以上で単一膳帯動脈が見られます。

まとめ

18トリソミー(エドワーズ症候群)はNIPT(新型出生前診断)の対象疾患となっていることから、その認知度が昨今上がっている疾患です。NIPTとは赤ちゃんの胎盤(絨毛)から母親の血液に流れるDNAの断片を検査することで赤ちゃんの染色体異常や遺伝子疾患を知ることができる検査です。NIPTで陽性になると羊水検査や絨毛検査などの確定的検査が必要となります。
18トリソミーにみられる代表的なエコーでわかる特徴的な所見を網羅的に述べてみました。このページを見られたみなさんは、エコーで見られる特徴的な異常所見の出現する時期が、NIPTよりだいぶ遅いことがわかると思います。

18トリソミーなどの染色体異常はNIPTなどの出生前診断で出産前に検査することができるため、妊娠初期の段階で検査を受けて、出産に向けて準備を進めることが可能です。

東京の「ミネルバクリニック」では、年齢制限なし・妊娠9週目からNIPTを実施しています。

染色体に関するプロフェッショナルである臨床遺伝専門医が在籍しており、大学病院クラスの環境でNIPTを受けていただくことができます。

遺伝カウンセリング体制も整っているため、出産に対する不安を抱える方の悩みを親身に受け止め、緩和・解消に導くことができます。

18トリソミーなどの染色体異常の検査を検討されている方は、この機会に是非「ミネルバクリニック」までお気軽にご相談ください

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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