InstagramInstagram

NIPTは陽性なのに羊水検査は陰性!考えられる原因と選択肢について

NIPT検査で陽性が出ていても、確定的検査では陰性の判定となることがあります。この場合は確定的検査の方が正しい判定結果となります。
実際に検査を受けてNIPTで陽性となり、確定診断に進んだものの判定は陰性でどうするべきか不安に思われている方もいるのではないでしょうか。出生前診断は非常に複雑な検査であり、精神的にも不安定になりやすくなります。そのため遺伝専門医の医師のカウンセリングを受けることが重要です。

この記事では、なぜ検査結果に相違が出てしまうのか、そのメカニズムとともに各検査内容について詳しくご紹介します。

確定的検査と非確定的検査のちがい

出生前診断には、確定的検査と非確定的検査の2種類があります。
確定的検査では胎児の疾患の有無を確定させることができ、非確定的検査では胎児に疾患があるかどうかの可能性を調べることができます。
以下の表で確定的検査と非確定的検査をまとめました。費用や検査内容のちがいをチェックしてみましょう。

比較表

比較表

確定的検査には羊水検査と絨毛検査があります。お腹に針を刺し、羊水や絨毛細胞を採取するため、羊水検査では約0.2〜0.3%、絨毛検査は約1%とわずかではありますが流産のリスクがあります。その分、確定的検査は胎児の細胞が多く含まれている羊水や絨毛細胞を採取して行うので検査の精度は非常に高いです。

NIPTなどの非確定的検査は、母体から採血したり、超音波を使ったりして検査をするので、非侵襲的であり確定的検査と比べて流産のリスクはほとんどありません。
しかし、非確定的検査は染色体異常の可能性を判断するための検査であるため、診断結果を確定させるには確定的検査が必要です。

非確定検査では陽性であっても、確定検査では陰性である(偽陽性)というケースも十分に起こり得ます。
また、新型出生前診断のNIPTは他の非確定的検査に比べて精度が高い検査ですが、NIPTを受けた場合でも診断を確定するためには、確定的検査の受検が推奨されています。

NIPTの特徴とは

NIPTは検査方法が簡易的で的中率も比較的高いことから、出生前診断の一次検査という位置付けで各施設でも幅広く行われるようになってきました。NIPTの具体的な検査方法や費用など各概要についてご紹介します。

NIPTは非確定的検査

NIPTとは採血で母親のDNAの断片を測定することにより、胎児の染色体異常の可能性が高いかどうかを判定する検査のことです。妊娠9週目以降から受検できます。検査結果は異常ありの陽性、もしくは異常なしの陰性のどちらかで通知されます。
陰性の的中率は約99.9%と非常に正確性が高いのですが、その一方で陽性の的中率は妊婦さんの年齢や基礎疾患の有無、検査項目などによって変化するといわれています。

そのため、陰性結果に対する信頼度は高いものの、陽性判定には結果に関する不安定さがあり確定診断を受ける必要があります。

母体にも赤ちゃんにも負担が少ない

NIPTは母体から約20ccの血液を採取して検査を行う方法です。そのため赤ちゃんに直接的な影響はありません。身体にも優しい負担の少ない検査であることから、臨床では、非侵襲性出生前遺伝学的検査または無侵襲的出生前遺伝学的検査とも呼ばれることがあります。
採血に伴う一時的な軽度の痛みは伴いますが、出生前診断検査のなかでも非常に簡易的で安全な検査であるといえます。流産や死産のリスクはほとんどありません。

費用は高め

検査方法は採血のみですが通常の採血の判別とは違い、染色体や遺伝子を調べるには専門の医療機器が必要となるため通常よりも高額となります。 診療自体も自由診療扱いとなり、検査費用の相場は約20万円前後と高めです。
クリニックによって料金は異なりますが、ミネルバクリニックでは17.6万円(税込)で実施しています。

羊水検査の特徴

出生前診断の確定診断ともいわれる羊水検査ですが、どのような方法で行われ、母子へのリスクはどれくらいあるのでしょうか。羊水検査による位置付けや具体的な検査内容、方法について解説していきます。

羊水検査は確定診断

羊水検査は確定診断

羊水検査とは母体のお腹の胎盤に直接針を刺して、羊水の中の胎児の細胞を直接採集し、細胞の中に含まれる染色体を分析する検査のことです。胎児の状態を直接的に分析することができます。
母体に直接的に針を刺すため約0.2〜0.3%の流産や死産の可能性があるといわれており、必ずしも安全に遂行できるとは限りません。実施対象の妊娠週数は主に羊水の量が十分に備わる妊娠16〜18週目頃からとなります。

検査結果はNIPTと同様で陽性もしくは陰性のどちらかで通知されます。

陽性なら100%染色体に異常があると分かる

NIPTと異なる点は羊水検査は確定診断となるため、陽性と判別された場合は100%染色体異常があるということになります。
しかし稀に確定診断で、陰性と言われていたのに産まれてからダウン症(21トリソミー)と診断されることがあります。これはダウン症の子が持つ、モザイク型と呼ばれる細胞を保持している場合です。

モザイク型とは正常と異常の両方の細胞が確認されることです。両方の細胞が存在しているため正常な細胞しか検出されなかったり、異常細胞が正常細胞によって隠れてしまったりすることで起きます。割合としては全体の約1%の可能性で起こり得るといわれています。

費用は10〜20万円

羊水検査の費用相場は大体10万円〜20万円くらいになります。NIPTと同様に自由診療扱いとなるため、公的な医療補助を受けることができません。そのため経済的負担も大きくなります。
民間保険に加入している場合、契約状況によっては保障適用となる場合もあるので一度加入状況を確認することもおすすめです。

NIPTが陽性だったら受けるのが羊水検査

NIPTが始まる前の2013年頃までは、出生前診断の検査方法の主流は羊水検査や絨毛検査でした。しかしこれらの検査は正確性は高いものの母子への身体的リスクの可能性が少なからずあることから、最近では一次検査としてNIPTを実施することが増えてきました。そのため、羊水検査はNIPT検査で陽性が出た人を対象に、二次検査という位置付けで実施されています。

NIPTと羊水検査の違いについて表にまとめました。

項目 NIPT(新型出生前診断) 羊水検査
検査時期 9週目以降
(ミネルバクリニック以外では10週目以降)
16週以降
検査項目 ・13トリソミー(パトウ症候群)
・18トリソミー(エドワーズ症候群)
・21トリソミー(ダウン症)
*医療機関によりオプションが異なる
・21トリソミー(ダウン症)
・ターナー症候群(モノソミーX)
・クラインフェルター症候群
・染色体異常
・その他遺伝子疾患全般
費用 ・認可施設:約20〜25万円
・無認可施設:5万円〜20万円
10万〜20万円
診断 非確定検査 確定検査

NIPTは妊娠9週目以降と早期の段階から実施可能ですが、羊水検査は妊娠中期である15週目以降という検査時期の大きな違いがあります。

その他にも、検査項目の実施可能な範囲が変わってきます。
主にNIPTの場合は3つの遺伝子異常の有無が確認できます。最近では項目内容の範囲が拡大してきていますが、クリニックによって異なるため確認が必要です。
より詳しく遺伝的疾患について知りたい場合や、確定診断目的の場合は羊水検査が適用となります。

確定的検査の前に知っておくべきポイント

確定的検査に進んだ場合、母子への身体的負担だけではなく、検査費用による経済的負担や結果に対する精神的不安も大きくなっていきます。事前に概要について理解し、検査に安心して臨めるように必要なポイントについてご紹介します。

羊水検査を受けられるのは妊娠16週〜18週目まで

確定的検査を受けられるのは妊娠16週目以降です。この時期は胎盤が完成し、妊娠初期にのつわりが落ち着きはじめ、安定期の状態に入る頃です。そのため検査による流産のリスクを回避できるほか、胎盤の完成によって細胞の採取が可能となります。

検査の実施は16週目以降からが対象となりますが、18週目までに行うことが推奨されています。結果が出るまでに数週間時間を要するため、結果によって今後の重要な決断をする際の期限が関係するからです。
検査結果が出るまでの期間は、検査結果や方法によって異なります。検査結果は早くて2週間後に伝えられ、遅い場合は4週間ほどかかることもあります。

流産のリスクがある(1%以下)

確定的検査は羊水検査の他にも絨毛検査というものがあります。どちらの検査も母体を介し直接的に胎盤の組織を採取するため、出血や破水、子宮内感染、早産などを引き起こす可能性があります。
主に羊水検査は約0.2〜0.3%の流産リスクがあるのに対し、絨毛検査の場合は約1%とやや高めになっています。

費用は10〜20万円程度かかる

確定的検査もNIPTと同様に自費診療扱いとなるため、費用も約10〜20万円程かかります。二次的検査という位置づけにあることから、NIPTで陽性反応が出て最終確認として確定的検査に臨まれた場合は追加で上記費用が必要となってきます。

そのため検査を受けるご家族の経済的負担は非常に大きいものになります。出生前診断を受ける際には追加検査の可能性も考慮し計画を立てた状態で実施されることをおすすめします。

出生前診断は医師からのアドバイスと適切なフォローアップが必要

出生前診断は、産まれる前から状態を知ることによって産後の育児環境を早めに整えることができ、家族の心の準備も行うことができるなど多くのメリットがあります。その一方で、結果によっては母子の今後に大きく影響する非常にデリケートな検査でもあります。
判定結果が出るまでの不安や、通知が出てからの不安など妊婦さんが精神的に不安定になりやすいでしょう。場合によっては冷静な判断ができず、その時の感情で重要な決定をしてしまい後悔することもあります。

このような時は豊富な症例件数と知識を十分に持っている遺伝専門医のカウンセリングを受けましょう。相談に乗ってもらい、情報提供をしてもらうことで不安が軽減されることもあります。

ミネルバクリニックでは、NIPTを受検して陽性反応が出た際には羊水検査費用を全額負担するサービス(互助会)を提供しております。国内屈指のNIPT技術と医療環境を取り揃えた遺伝子専門のクリニックなので、染色体・遺伝子に精通する臨床遺伝専門医によるカウンセリングを受けていただくことができます。
NIPTを安心して受けられる医療施設をお探しの際は、この機会にご相談ください。

まとめ

出生前診断は医学の進歩により検査も簡易的になってきたことから、希望すれば誰でも受けることができるようになってきました。出産前に赤ちゃんの状態を知ることは準備にも繫がりメリットがありますが、予想外の結果によって不安に襲われることも少なくありません。それほど複雑で、慎重な判断が問われる検査になります。

医師の説明を十分に理解し、納得した状態で検査に臨みましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事