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NIPT陽性・羊水検査は陰性?
結果が覆る偽陽性の原因と流産リスク
📍 クイックナビゲーション
NIPT(新型出生前診断)で陽性という結果を受け取り、頭が真っ白になっているかもしれません。しかし、NIPTの陽性が必ずしも赤ちゃんの疾患を確定させるものではありません。その後の羊水検査で「陰性」となるケースが存在します。なぜ判定が覆るのか、そのメカニズムと今後の選択肢について、臨床遺伝専門医が詳しく解説します。
Q. NIPTが陽性だったのに、羊水検査で陰性になることは本当にありますか?
A. はい、十分にあり得ます。
NIPTは胎盤由来のDNAを測定しているため、胎盤のみに染色体異常があり赤ちゃん自身は正常であるケース(胎盤限局性モザイクなど)では、NIPTが陽性でも確定検査で陰性(偽陽性)となることがあります。
- ➤偽陽性のメカニズム → 胎盤限局性モザイク(CPM)やバニシングツインの影響
- ➤検査のちがい → NIPTはスクリーニング、羊水検査が「確定診断」
- ➤結果がわかる時期 → FISH法(数日)とGバンド法(2〜3週間)の違い
- ➤流産リスクの現実 → 約0.2〜0.3%という確率と、安全への取り組み
1. NIPT陽性から羊水検査陰性へ。判定が覆る「偽陽性」とは
NIPTの検査結果で「陽性」という文字を見た瞬間、目の前が真っ暗になるのは無理もありません。しかし、NIPTはあくまでも「染色体異常の可能性が高いかどうか」を判定するスクリーニング検査(非確定的検査)です。100%の的中率ではありません。
【結論】NIPTで陽性判定が出たにもかかわらず、その後の羊水検査で異常なしと判定されるケースを「偽陽性(ぎようせい)」と呼びます。確定診断である羊水検査の結果の方が正しいと判断されます。
「陽性=絶望」ではありません
実際の診療現場でも、NIPT陽性の知らせに泣き崩れて来院された患者様が、羊水検査を経て「陰性」の報告を受け、安堵の涙を流される光景に何度も立ち会ってきました。だからこそ、陽性という結果だけでパニックに陥る必要はありません。まずは冷静に、次のステップである確定的検査へ進むことが最も重要です。
2. なぜ判定が違うの?NIPTの偽陽性を引き起こす原因
では、なぜ精度の高いと言われるNIPTで判定がズレてしまうのでしょうか。その理由は、お母さんの血液中に流れ出ているDNAの「出どころ」にあります。
注意:NIPTは直接赤ちゃんの細胞を調べているのではなく、胎盤から母体の血液中に溶け出したDNAの断片(cfDNA)を分析しています。この「胎盤の細胞」と「赤ちゃんの細胞」の違いが、偽陽性を生む最大の要因です。
原因① 胎盤限局性モザイク(CPM)
最も代表的な原因が、胎盤限局性モザイク(CPM: Confined Placental Mosaicism)です。受精卵が細胞分裂を繰り返して胎盤と胎児に分かれていく過程で、染色体のエラーが「胎盤の細胞だけ」に残ってしまう現象です。この場合、胎盤のDNAを拾うNIPTでは異常あり(陽性)となりますが、羊水検査で直接赤ちゃんの細胞を調べると赤ちゃんの染色体は正常(陰性)であることがわかります。
原因② バニシングツイン
双子(多胎妊娠)の片方の赤ちゃんが、妊娠の早い段階で亡くなり子宮内に吸収されていく現象をバニシングツインと呼びます。亡くなってしまった側の胎児に染色体異常があった場合、そのDNAが母体の血液中に放出され続け、NIPTで陽性と判定されることがあります。
原因③ 母体側の要因(コピー数変異など)
お母さん自身のDNAも血液中に混ざっているため、お母さん自身が自覚症状のない微細な染色体の変化(コピー数変異)を持っている場合、それがノイズとなって偽陽性を引き起こすことがあります。
🔍 さらに詳しく専門的なメカニズムを知りたい方へ
検査手法(ワイドゲノム法とターゲット法)による偽陽性の出やすさの違いや、より詳細な医学的メカニズムについては以下の記事で臨床遺伝専門医が深く解説しています。
▶ NIPT陽性から羊水検査陰性へ。偽陽性の確率と原因を専門医が解説
3. 確定的検査(羊水検査・絨毛検査)と非確定的検査のちがい
出生前診断には、大きく分けて「非確定的検査」と「確定的検査」の2種類があります。
- ➤非確定的検査(NIPTなど):母体から採血するのみで負担は少ないですが、染色体異常の「可能性」を判断するスクリーニング検査です。
- ➤確定的検査(羊水検査・絨毛検査):お腹に細い針を刺して羊水や絨毛細胞を直接採取します。非確定的検査で陽性が出た場合、診断を確定させるために必ず必要となります。
当院のNIPTプランについて
ミネルバクリニックは非認証施設ですが、臨床遺伝専門医がカウンセリングから判定、その後のケアまで一貫して行う極めて稀有な医療機関です。COATE法を用いた最新の検査を提供しており、微細欠失の陽性的中率は>99.9%という高い精度を誇ります。
とくにダイヤモンドプランでは、常染色体トリソミー(13, 15, 16, 18, 21, 22番)、性染色体異数性(45,X / 47,XXX / 47,XXY / 47,XYY)に加え、12領域の微細欠失(1p36, 2q33, 4p16, 5p15, 8q23q24, 9p, 11q23q25, 15q11.2-q13, 17p11.2, 18p, 18q22q23, 22q11.2欠失)と、父親由来の新生突然変異を含む単一遺伝子(56遺伝子)まで網羅しています。
4. 羊水検査の結果はいつわかる?判定の仕組み
確定検査に進んだ場合、結果が出るまでの期間が長ければ長いほど、待つ間の精神的負担は大きくなります。羊水検査の結果判明までの期間は、検査方法によって異なります。
FISH法(迅速検査)とGバンド法(全染色体検査)
- ➤FISH法:特定の染色体(13, 18, 21番など)の異常を迅速に調べる方法です。FISH法なら数日〜1週間程度で仮の結果をお伝えできます。
- ➤Gバンド法:採取した細胞を培養し、すべての染色体の数や構造を細かく調べる基本の確定診断です。細胞を増やす必要があるため、結果が出るまでに約2〜3週間の時間を要します。
補足:出生前と出生後の診断方法の違い
Gバンド法では極めて微小な欠失(微細欠失)は検出困難です。出生前に微細欠失の確定診断を行う場合は、原則として超音波での構造異常がある場合などにマイクロアレイ検査(CMA)などが検討されます。マイクロアレイ検査(CMA)による原因精査は、インプリンティング異常等のメチル化異常が確認された後の出生後診断としても重要な位置づけにあります。
5. 羊水検査の安全性と、気になる「流産リスク」の現実
お腹に針を刺す検査と聞けば、「検査で赤ちゃんを失ってしまったらどうしよう」と恐怖を感じるのは当然のことです。
羊水検査による流産や破水、感染症などの合併症が起こるリスクは、約0.2〜0.3%(300人に1人程度)と言われています。ゼロではないリスクがあることは事実です。しかし、実際の臨床現場では、医師が盲目的に針を刺すわけではありません。
熟練した医師が超音波(エコー)で慎重に確認しながら、赤ちゃんと胎盤の位置を正確に把握し、安全なルートを選んで穿刺を行います。これにより、リスクを最小限に抑えるための万全の対策が取られています。
6. 一人で抱え込まないで。遺伝専門医によるアフターサポート
NIPTを受けて陽性判定が出た後、最もつらいのは「どこに相談すればいいのかわからない」「追加の検査費用が支払えるか不安」という孤独と焦りです。
ミネルバクリニックでは、陽性時の経済的な不安を取り除くため、NIPT受検者全員に互助会制度(8,000円)と安心結果保証制度(6,000円)へのご加入をお願いしています(強制加入)。互助会制度により、陽性となって羊水検査に進む場合、その検査費用が全額補助されます。これは、追加費用の心配をなくすための重要なセーフティネットです。
また、遺伝カウンセリング料金も初期費用に含まれており、陽性時はもちろん、妊娠中の不安に対して何度でも専門医に相談が可能です。ネットの情報に疲れてしまったら、どうか一人で抱え込まず、専門医を頼ってください。
よくある質問(FAQ)
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参考文献
- [1] ACOG. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Practice Bulletin No. 226. [ACOG]
- [2] ACMG. Noninvasive prenatal screening for fetal aneuploidy, 2016 update: a clinical practice resource of the American College of Medical Genetics and Genomics. [ACMG]
- [3] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」 [公式サイト]
- [4] 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針(改訂)」 [PDF]

