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スクリーニング検査と診断的検査の違い:NIPTが非確定的検査とされる理由

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

NIPTは21トリソミーの検出率が99%を超える精度の高い検査ですが、確定診断ではなく、スクリーニング検査(日本では非確定的検査)に位置づけられています。理由は大きく2つあります。1つは、陽性の結果が本当に病気を意味する割合(陽性的中率)が、検査を受ける集団によって変わること。もう1つは、NIPTが測っているのが赤ちゃん自身ではなく、胎盤と母体に由来するDNAであることです。このページはNIPTの教科書シリーズ第5章の2ページ目(5-2)として、スクリーニング検査と診断的検査の違いを、定義・目的・結果の意味の3つの面から整理し、NIPTが非確定的検査とされる理由を臨床遺伝専門医の立場から解説します。

⏱ 30秒でわかる要約

Q. NIPTは確定診断ですか?

いいえ。NIPTはスクリーニング検査で、陽性の場合は羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。日本では「非確定的検査」と呼ばれています。

Q. 精度が高いのに、なぜ確定にならない?

NIPTが測るのは胎盤と母体のDNAで、赤ちゃん自身の染色体ではないからです。胎盤だけの染色体の変化や母体側の要因で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。

Q. スクリーニング検査と診断的検査の違いは?

スクリーニング検査は病気の可能性がある人を見つけ出す検査、診断的検査は病気があるかどうかを確定する検査です。目的が違うので、求められる性能も違います。

Q. 陰性なら安心してよい?

陰性的中率は非常に高く、陰性はかなり信頼できます。ただし偽陰性はゼロではなく、NIPTの対象外の病気は分かりません。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 NIPT教科書 第5章(5-2)
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. NIPTはなぜ確定診断ではないのですか?

A. NIPTは、胎盤と母体に由来する血液中のDNA断片の量から、赤ちゃんの染色体の数を統計的に推定する検査だからです。推定の精度は高いものの、胎盤だけに起きた染色体の変化や母体側の要因によって、赤ちゃんの実際の状態と結果が食い違うことがあります。そのため国内外の指針は、陽性の結果を羊水検査などの確定的検査で確かめることを求めています。

  • ➤4つの指標 → 感度・特異度は検査の性質、陽性的中率・陰性的中率は集団によって変わる
  • ➤陽性的中率 → 偽陽性率が低くても、病気の人が少ない集団では陽性の中に偽陽性が混ざる
  • ➤スクリーニング → 確定診断を受けるべき人を見つけ出すための検査
  • ➤食い違いの原因 → 胎盤限局性モザイク、バニシングツイン、母体の染色体の変化や腫瘍
  • ➤陽性のあと → 羊水検査または絨毛検査で確かめる

妊婦と女性医師、DNA・染色体・検査結果のアイコンを配置した「NIPTの教科書」のシリーズ画像

1. 結論:NIPTは確定的検査ではなくスクリーニング検査

出生前検査のうち、羊水検査と絨毛検査は赤ちゃん(または胎盤)の細胞の染色体を直接調べる確定的検査です。NIPTは、確定的検査を受けるかどうかを判断するための検査で、確定診断にはなりません。この位置づけは、NIPTの精度がどれだけ高くても変わりません。精度の高さと、結果を確定診断として扱ってよいかどうかは、別の問題だからです。

NIPTの陽性の結果だけで、妊娠を続けるかどうかといった取り返しのつかない判断をすることは、国内外の主要な指針は勧めていません。米国産婦人科学会(ACOG)は、セルフリーDNA検査をスクリーニング検査と位置づけ、陽性の場合は診断的検査で確かめるよう求めています[1]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針も、NIPTをスクリーニング検査(NIPS:noninvasive prenatal screening)として扱っています[2]。

精度と確定性が別の問題だというのは、次のように考えると分かりやすくなります。精度は「検査がどれだけ正確に測れているか」を表し、診断の確定性は、検体と胎児の状態の関係、検査方法、検出対象や検出限界などを踏まえて判断します。NIPTは測る力そのものは非常に高いのですが、測っている対象は母体血中に流れ出た胎盤と母体のDNAで、知りたい対象である赤ちゃんの染色体とは少しずれています。この「対象のずれ」と偽陽性・偽陰性の可能性があるため、現在のcfDNAを用いるNIPTは、検出率が高くても確定診断として扱いません。

日本では「非確定的検査」と呼ぶ

海外では「スクリーニング検査」と呼ばれるNIPTを、日本では「非確定的検査」と呼んでいます。こども家庭庁の出生前検査の情報サイトでは、NIPTやコンバインド検査、母体血清マーカー検査を「確定的検査を受けるか判断するための検査(非確定的検査)」としてまとめ、陽性の場合は絨毛検査または羊水検査で確定させる、と説明しています[3]。日本医学会の出生前検査認証制度の指針も、この区分に沿っています[4]。

呼び方は違っても、意味するところは同じです。「スクリーニング」という言葉は、一般には健康診断のように全員を一律に検査するイメージを持たれやすく、「希望する人だけが受ける検査」であるNIPTの性格と誤解を生みやすい面があります。「非確定的検査」という呼び方は、結果が確定ではないという性質を前面に出したものといえます。一般的なスクリーニング検査の考え方はスクリーニング検査の用語ページ、出生前検査の種類ごとの比較は確定的検査と非確定的検査の違いのコラムで解説しています。

2. 検査の性能を表す4つの指標

検査の性能は、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率の4つの指標で表します。前の2つは検査そのものの性質を、後の2つは「結果が出た人にとっての意味」を表します。この違いを理解すると、NIPTが確定診断にならない理由の半分が見えてきます[5][6]。

4つの指標は、検査を受けた人を「病気があるか、ないか」と「検査が陽性か、陰性か」で4つのグループに分けた表から計算します。

📊 検査結果と実際の状態の組み合わせ(2×2表)

病気あり 病気なし
検査陽性 a:真陽性 b:偽陽性
検査陰性 c:偽陰性 d:真陰性

※a〜dはそれぞれのグループの人数を表します。

感度と特異度:検査そのものの性質

感度(sensitivity)は、病気のある人を検査で正しく陽性と判定できる割合で、a÷(a+c)で計算します。出生前検査では「検出率」とも呼ばれます。感度が99%なら、病気のある人100人のうち99人を見つけ、1人を見逃す(偽陰性)ことになります。

特異度(specificity)は、病気のない人を検査で正しく陰性と判定できる割合で、d÷(b+d)で計算します。100%から特異度を引いた値が偽陽性率で、病気がないのに陽性と出てしまう割合を表します。NIPTの性能を示すときは、特異度の代わりに偽陽性率を使うことがよくあります。

感度と特異度は、検査の仕組みと判定の基準(カットオフ値)に左右され、有病率だけから直接決まる指標ではありません。ただし、妊娠週数、胎児分画、単胎・双胎などの集団の特徴や、判定保留の扱いによって、実際に観察される値は変わります。ただし、感度と特異度はたいてい引き換えの関係にあります。陽性と判定する基準を甘くすれば見逃しは減って感度は上がりますが、病気のない人まで陽性になりやすくなり、特異度は下がります。基準を厳しくすれば、その逆になります。どこに基準を置くかは、見逃しと偽陽性のどちらをどれだけ許容するかという判断で、検査の目的によって変わります。21トリソミーについてのNIPTのメタ解析では、単胎妊娠で検出率99.7%、偽陽性率0.04%と報告されています[7]。

陽性的中率と陰性的中率:結果を受け取った人にとっての意味

陽性的中率(positive predictive value:PPV)は、検査で陽性になった人のうち本当に病気がある人の割合で、a÷(a+b)で計算します。陽性の結果を受け取った妊婦さんにとって、本当に知りたいのはこの数字です。陽性的中率(PPV)の考え方は用語ページでも詳しく説明しています。

陰性的中率(negative predictive value:NPV)は、検査で陰性になった人のうち本当に病気がない人の割合で、d÷(c+d)で計算します。陰性の結果をどこまで信頼してよいかを表します。

感度・特異度と的中率の違いは、見る向きの違いだと考えると整理しやすくなります。感度と特異度は、「病気がある人」「病気がない人」という実際の状態から出発して、検査がどう答えるかを見た指標です。これに対して的中率は、「陽性だった人」「陰性だった人」という検査結果から出発して、実際の状態がどうだったかを見た指標です。検査を受ける側は、自分に病気があるかどうかを知らない状態で結果を受け取るので、日常の判断で役に立つのは的中率のほうです。一方、検査どうしの性能を比べるときには、集団の特徴や判定保留の扱いを確認したうえで、感度と特異度が使われます。

ここで注意したいのは、陽性的中率と陰性的中率は、検査の性能だけでは決まらないという点です。同じ感度・特異度の検査でも、検査を受ける集団にその病気の人がどれくらいいるか(有病率)によって、大きく変わります[6]。

💡 用語解説:検出率と陽性的中率の取り違え

「NIPTの精度は99%」という表現は、多くの場合、検出率(感度)を指しています。これを「陽性なら99%の確率で病気がある」と読むのは誤りです。陽性のときに本当に病気がある確率は陽性的中率で、検出率とは別の数字です。

3. 陽性の結果が「確定」にならない統計的な理由

偽陽性率がゼロではない検査では、検出率や特異度が高くても、病気の人が少ない集団で検査を行うと、陽性の中に偽陽性が相対的に多く混ざります。これが、スクリーニング検査の陽性を確定的検査で確かめる必要がある、統計的な理由です。

人数に置き換えてみます。メタ解析で報告された21トリソミーの検出率99.7%、偽陽性率0.04%[7]を使い、21トリソミーの頻度が1,000人に1人の集団で10万人がNIPTを受けたと仮定すると、21トリソミーの赤ちゃんは100人です。そのうち約100人が陽性になり、見逃しは0.3人ほどです。一方、21トリソミーではない9万9,900人のうち、偽陽性率0.04%で約40人が陽性になります。陽性になった約140人のうち、本当に21トリソミーなのは約100人で、陽性的中率は約71%という計算になります。偽陽性率0.04%という小さな数字でも、病気のない人の数が圧倒的に多いため、偽陽性の人数は無視できない大きさになるのです。

同じ計算を21トリソミーの頻度が100人に1人の集団で行うと、陽性的中率は約96%になります。つまり、「NIPTで陽性だった」という同じ結果でも、その重みは検査を受ける前の時点での可能性(事前確率)によって変わります。現在のNIPTには偽陽性の可能性が残るため、陽性の結果は確定的検査で確かめなければなりません。母体年齢や染色体ごとの陽性的中率を数字で示した解説は、次のページ以降のNIPTの精度(感度・特異度・陽性的中率)に任せ、ここでは考え方だけを押さえます。高リスク・低リスクの集団でのNIPTの成績は、高リスク集団と低リスク集団におけるcfDNA NIPTで扱っています。

一方、主要なトリソミーについて、一般的な受検集団での陰性的中率は非常に高くなります。ただし、検査前の可能性が高い場合には、陰性後にも残る可能性を個別に評価します。病気の人が少ない集団では、陰性の結果はそもそも外れにくいからです。NIPTは「陰性の結果の信頼性が非常に高く、陽性の結果は確認が必要」という性質を持つ検査です。これは、病気の可能性がある人を拾い上げて確定的検査につなぐ、というスクリーニング検査の役割にそのまま合っています。

4. スクリーニング検査と診断的検査で求められる性能の違い

スクリーニング検査は「病気の可能性がある人を見つけ出す」ための検査、診断的検査は「病気があるかどうかを確定する」ための検査です。目的が違うので、求められる性能も違います。

📊 スクリーニング検査と診断的検査の違い

スクリーニング検査(非確定的検査) 診断的検査(確定的検査)
目的 病気の可能性がある人を見つけ出す 病気があるかどうかを確定する
対象 症状や所見のない人も含めた広い集団 スクリーニングで陽性になった人など、可能性が高い人
求められる性能 見逃しが少ないこと(高い感度)と、体への負担が少ないこと 対象の異常を直接評価でき、検査法の診断性能と検出限界が明確であること
出生前検査の例 NIPT、コンバインド検査、母体血清マーカー検査 羊水検査、絨毛検査
陽性のあと 確定的検査で確かめる 結果に基づいて方針を考える

スクリーニングが成り立つための条件

スクリーニングの考え方の土台として今も引用されるのが、1968年に世界保健機関(WHO)が公表したウィルソンとユングナーの原則です[8]。対象の病気が重要な健康問題であること、早い段階で見つけられる適切な検査があること、その検査が受ける人に受け入れられるものであること、見つかった人を確定診断して対応する体制があること、などが挙げられています。スクリーニング検査は単独で完結するものではなく、陽性の人を確定診断につなぐ仕組みとセットで初めて意味を持つ、というのがこの原則の核心です。

出生前検査のスクリーニングには、この原則とは違う面もあります。一般的な検診の目的は早期発見と早期治療ですが、出生前検査の目的は、妊婦さんとご家族が赤ちゃんの状態について情報を得て、妊娠中や出生後の準備を含めた選択を自分たちで考えられるようにすることです。そのため、検査を受けるかどうか自体が本人の選択に委ねられ、検査の前に何が分かり何が分からないかを説明する遺伝カウンセリングが重視されます。

スクリーニング検査の目的

スクリーニング検査は、一見すると問題のない多くの人の中から、病気の可能性がある人を見つけ出し、確定診断を受ける機会につなげるための検査です。対象となる人数が多いので、体への負担や費用が小さいことが重要になります。一方、見逃しが多いとスクリーニングの意味がなくなるため、感度は高くなければなりません。

偽陽性はある程度は許容されます。偽陽性の人は確定的検査で「病気なし」と分かるからです。ただし、偽陽性が多すぎると、本来は必要のない確定的検査を受ける人が増え、その不安や負担、確定的検査にともなうわずかなリスクを背負う人が増えます。NIPTが従来の母体血清マーカー検査より優れているとされるのは、検出率が高いだけでなく、偽陽性率がはるかに低く、不要な確定的検査を大きく減らせる点にあります[1]。

出生前検査の歴史を振り返ると、スクリーニング検査の進歩は「偽陽性の減少」の歴史でもありました。母体血清マーカー検査やコンバインド検査は、偽陽性率が数%あるため、陽性になった人の多くは実際には21トリソミーではなく、羊水検査を受けた人の大半が「正常」と確認されていました。NIPTが登場して偽陽性率が大きく下がったことで、確定的検査を受ける人の数を抑えながら、見逃しも減らせるようになりました。それでもNIPTの位置づけがスクリーニング検査のままなのは、ここまで見てきたとおり、測っている対象が胎盤と母体に由来するDNAであり、偽陽性・偽陰性が残るためです。

診断的検査に求められること

診断的検査は、その結果に基づいて妊娠中の方針を決めるための検査です。そのため、対象の異常を直接評価でき、検査方法ごとの診断性能と検出限界が明確であることが求められます。出生前の診断的検査である羊水検査と絨毛検査は、細胞そのものを採り、核型検査や染色体マイクロアレイなどを用いて対象の異常を直接調べます。すべての異常を100%検出できるという意味ではありません。そのかわり、お腹に針を刺す必要があり、ごくわずかながら流産などのリスクをともないます。

ただし、確定的検査も万能ではありません。絨毛検査は胎盤の組織を調べるため、胎盤だけの染色体の変化を拾うことがあり、羊水検査でもまれにモザイクの解釈が難しい場合があります。確定的検査の精度と限界については、羊水検査・絨毛検査の精度とは?で解説しています。

5. NIPTが診断的検査にならない理由

NIPTが確定診断にならない根本的な理由は、NIPTが赤ちゃん自身の細胞ではなく、母体血中に流れ出た胎盤と母体のDNA断片を測っていることにあります。NIPTと胎児の状態が食い違う原因には、胎盤や母体に由来する生物学的要因のほか、低い胎児分画や解析上の要因もあります。

測っているのは胎盤から出たDNA

NIPTで「胎児のDNA」と呼ばれているものは、実際には胎盤の表面の細胞から母体血中に出てきたセルフリーDNA(cfDNA)です。胎盤と赤ちゃんは同じ受精卵から育ちますが、ごく早い時期に別々の道を歩むため、両者の染色体が一致しないことがあります。

代表的なのが、胎盤にだけ染色体の異常な細胞がある限局性胎盤モザイク(CPM)です。胎盤に21トリソミーの細胞があり、赤ちゃんの染色体は正常という場合、NIPTが陽性になることがありますが、赤ちゃんは21トリソミーではありません(偽陽性)。逆に、胎盤は正常で赤ちゃんにだけ異常がある場合は、NIPTで見逃されることがあります(偽陰性)。モザイクが結果にどう影響するかは、モザイクとは?NIPTの結果が偽陽性・偽陰性になるため注意が必要ですで詳しく説明しています。

妊娠初期に双子の一方が育たなくなるバニシングツインも、偽陽性の原因になります。育たなくなった胎児に染色体の異常があった場合、その胎盤組織からのDNA放出がしばらく続き、生きている赤ちゃんとは無関係に陽性と判定されることがあるためです。

胎盤のモザイクの起こりやすさは、染色体によって違います。特に13トリソミーのNIPT陽性では、21トリソミーより胎盤限局性モザイクに注意が必要です。18トリソミーでも胎盤と胎児の結果が一致しない場合がありますが、13・18トリソミーの陽性的中率には、それぞれの頻度や検査性能も影響します。陽性の結果を解釈するときに、どの染色体の陽性かを必ず確認するのはこのためです。

母体のDNAの影響

母体血中のcfDNAの大部分は、母親自身の細胞に由来します。そのため、母親自身の染色体の変化も結果に影響します。母親の血液細胞の一部に染色体の異常な細胞が混ざっている場合や、母親が染色体の一部の小さな欠失・重複を持っている場合、さらにはまれに母親の腫瘍に由来するDNAが、赤ちゃんの異常のように見えることがあります。全ゲノムNIPTを国の検査として導入したオランダの追跡調査では、13・18・21番以外の追加所見のうち、由来を判定できた358例では、25.1%(90例)が母体に由来していました[9]。母体側の要因はNIPTの偽陽性の原因:母体側の要因、母体の腫瘍については母体悪性腫瘍とNIPTで扱っています。

判定そのものが統計的な推定である

NIPTは、それぞれの染色体に由来するDNA断片の量を数え、正常な妊娠の検体の分布と比べて「多すぎるかどうか」を統計的に判定します。羊水検査のように、1つ1つの細胞の染色体を数えて確かめるわけではありません。多くの検査では、調べたい染色体に由来する断片の割合が、正常な妊娠の検体の平均からどれだけ離れているかをZスコアという指標で表し、一定の値を超えたものを陽性と判定します。正常な妊娠でも断片の割合には自然なばらつきがあるため、ばらつきの端にある正常な検体が基準を超えることも、異常があっても増え方が小さい検体が基準に届かないことも、確率的に起こりえます。正常と異常の測定値の分布が重なる場合は、判定基準によって見逃しと偽陽性の割合が変わり、両者を完全になくすことはできません。胎盤に由来するDNAの割合(胎児分画)が低いと、増え方そのものが小さくなり、判定はさらに難しくなります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「精度99%」と「確定ではない」は矛盾しない】

NIPTについて、「精度が99%以上なのに、なぜ確定診断ではないのか」という疑問はもっともです。答えは、99%という数字が多くの場合、「対象の染色体異常がある妊娠を陽性と判定できる割合(感度)」を表し、「陽性の結果が正しい確率(陽性的中率)」とは異なるところにあります。NIPTは胎盤のDNAを高い精度で測っていますが、胎盤の染色体と赤ちゃんの染色体は、いつも同じとは限りません。

この結果を解釈するときに重要なのは、検査の性能と、結果の意味を分けて考えることです。NIPTは、陰性の結果については非常に信頼性が高く、陽性の結果は「確定的検査を受けて確かめる価値がある」という強い信号です。陽性の結果を受け取ったときに、確定的検査を受けずに妊娠の継続について判断することは、医学的には勧められません。

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6. 結果が出たあとにすること

NIPTの結果は「陽性」「陰性」「判定保留」のいずれかで返されます。陽性なら確定的検査で確かめ、陰性でも残る可能性を理解し、判定保留なら原因に応じて再検査などを考えます。

陽性の場合:確定的検査で確かめる

陽性の場合は、羊水検査または絨毛検査で赤ちゃんの染色体を確かめます[1][3]。どちらを選ぶかは、陽性になった染色体の種類、妊娠週数、胎盤のモザイクの可能性などによって変わります。たとえば、胎盤のモザイクが起こりやすい染色体の陽性では、胎盤を調べる絨毛検査ではなく、赤ちゃん由来の細胞を調べる羊水検査が勧められることがあります。陽性のときの確定診断の進め方はNIPTで陽性の結果がでたときの確定診断で解説しています。

陰性の場合:残る可能性を知っておく

陰性の結果は信頼性が高いものの、偽陰性がゼロではありません。赤ちゃんだけに染色体の異常があり、胎盤は正常という場合などに起こりえます。また、NIPTで調べていない染色体の変化や、染色体以外の原因による病気は、陰性でも否定されません。NIPTの基本的な対象は13・18・21番のトリソミーです。性染色体の数の変化を追加で調べる検査もありますが、日本の認証制度の対象には含まれず、希望に応じて検討する追加項目です。検査対象は、赤ちゃんの先天的な病気全体から見ると、その一部にすぎません。心臓の形の異常の多くや、1つの遺伝子の変化による病気などは、NIPTが陰性でも否定されないのです。超音波検査で形態の異常が見つかった場合は、NIPTの結果にかかわらず、確定的検査を含めた検討が必要になります。偽陰性の仕組みはNIPTの偽陰性で説明しています。

判定保留の場合

判定保留は「この検体では十分な確かさで判定できなかった」という意味で、陽性とも陰性とも異なります。異常の確定を意味しませんが、陰性として扱うこともできません。最もよくある原因は、母体血中の胎盤由来DNAの割合である胎児分画が低いことです。再採血で結果が出ることも多い一方、判定保留そのものが18トリソミーや13トリソミーなど一部の染色体異常と関連するという報告もあるため[10]、遺伝カウンセリング、詳しい超音波評価、確定的検査の選択肢を提示することが推奨されます。再採血を選ぶかは、妊娠週数や超音波所見、確定診断を得るまでの時間などを踏まえて検討します。

検査の前に知っておくこと

NIPTが非確定的検査であることは、結果が出てから知るより、検査を受ける前に知っておくほうが役に立ちます。陽性だったら確定的検査を受けるのか、確定的検査は妊娠何週ごろにどこで受けられるのか、結果が出るまでにどのくらいかかるのか、といったことを事前に考えておくと、結果を受け取ったときに落ち着いて次の判断ができます。検査前の遺伝カウンセリングでは、こうした流れと、NIPTで分かること・分からないことを確認します。

また、NIPTの陽性的中率や偽陽性の原因についての知識は、陽性の結果を受け取った人が確定的検査を受けずに判断してしまうことを防ぐうえでも重要です。陽性の結果は「異常の可能性が高い」という強い信号ですが、確定ではありません。この点を検査前に理解しておくことが、NIPTを正しく使うための前提になります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTで陽性なら、赤ちゃんは確実に染色体異常ですか?

いいえ。NIPTは非確定的検査(スクリーニング検査)で、陽性の結果は確定ではありません。陽性のときに本当に異常がある割合(陽性的中率)は、染色体の種類や妊婦さんの年齢などで変わります。確かめるには羊水検査または絨毛検査が必要です。

Q2. NIPTで陰性なら安心してよいですか?

陰性的中率は非常に高く、陰性の結果はかなり信頼できます。ただし偽陰性はゼロではなく、NIPTで調べていない病気は陰性でも否定されません。妊婦健診の超音波検査で異常が見つかった場合は、改めて検査を検討します。

Q3. スクリーニング検査と診断的検査はどう違うのですか?

スクリーニング検査は、多くの人の中から病気の可能性がある人を見つけ出し、確定診断につなげるための検査で、見逃しが少なく体への負担が小さいことが重視されます。診断的検査は病気があるかどうかを確定するための検査で、対象の異常を直接評価でき、検査法の診断性能と検出限界が明確であることが求められます。出生前検査では、NIPTが前者、羊水検査と絨毛検査が後者です。

Q4. 精度が高いのに、なぜ羊水検査が必要なのですか?

NIPTが測っているのは赤ちゃん自身の細胞ではなく、胎盤と母体に由来する血液中のDNAだからです。胎盤だけの染色体の変化や、母体側の要因で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。羊水検査は赤ちゃん由来の細胞の染色体を直接調べるため、確定診断になります。

Q5. 「非確定的検査」と「スクリーニング検査」は同じ意味ですか?

出生前検査の文脈では、ほぼ同じ意味で使われています。海外ではNIPTをスクリーニング検査と呼び、日本では「確定的検査を受けるか判断するための検査(非確定的検査)」と呼んでいます。どちらも、陽性の結果を確定的検査で確かめる必要がある、という点は共通です。

7. まとめ

NIPTは21トリソミーの検出率が99%を超える精度の高い検査ですが、確定診断ではなく、スクリーニング検査(日本では非確定的検査)です[1][3]。感度と特異度は検査そのものの性質を表すのに対し、陽性的中率と陰性的中率は検査を受ける集団の有病率で変わります。21トリソミーの頻度が低い集団ほど、陽性的中率は下がります[6][7]。

NIPTが確定診断にならない根本の理由は、測っているのが赤ちゃん自身の細胞ではなく、胎盤と母体に由来するDNAであることです。限局性胎盤モザイク、バニシングツイン、母体の染色体の変化などによって、結果と赤ちゃんの状態が食い違うことがあります。陰性の結果は非常に信頼性が高い一方、陽性の結果は羊水検査や絨毛検査で確かめる、というのがNIPTの正しい使い方です。

🧬 NIPTを検討している方へ

ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が、NIPTで分かることと分からないこと、陽性・陰性・判定保留の意味を含めて検査前の遺伝カウンセリングを行い、NIPTを実施しています。陽性の場合の確定的検査の流れも、事前にご説明しています。

参考文献

  • [1] Society for Maternal-Fetal Medicine. Society for Maternal-Fetal Medicine Consult Series #74: Cell-free DNA screening for aneuploidies: Updated guidance. Pregnancy. 2025;1:e70139. doi:10.1002/pmf2.70139. ACOGが2025年11月に承認し、2026年1月のPractice AdvisoryとともにPractice Bulletin No. 226に代わる指針。 [SMFM Consult Series #74]
  • [2] Dungan JS, Klugman S, Darilek S, et al. Noninvasive prenatal screening (NIPS) for fetal chromosome abnormalities in a general-risk population: An evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2023;25(2):100336. doi:10.1016/j.gim.2022.11.004. [PubMed 36524989]
  • [3] こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業. 出生前検査とは?|妊娠中の検査に関する情報サイト. [こども家庭庁]
  • [4] 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針(令和4年2月). 第7回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料1. [厚生労働省]
  • [5] Altman DG, Bland JM. Diagnostic tests. 1: Sensitivity and specificity. BMJ. 1994;308(6943):1552. doi:10.1136/bmj.308.6943.1552. [PubMed 8019315]
  • [6] Altman DG, Bland JM. Diagnostic tests 2: Predictive values. BMJ. 1994;309(6947):102. doi:10.1136/bmj.309.6947.102. [BMJ 原著]
  • [7] Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314. doi:10.1002/uog.17484. [PubMed 28397325]
  • [8] Wilson JMG, Jungner G. Principles and practice of screening for disease. Public Health Papers No. 34. Geneva: World Health Organization; 1968. [WHO IRIS]
  • [9] van Prooyen Schuurman L, Sistermans EA, Van Opstal D, et al. Clinical impact of additional findings detected by genome-wide non-invasive prenatal testing: Follow-up results of the TRIDENT-2 study. Am J Hum Genet. 2022;109(6):1140-1152. doi:10.1016/j.ajhg.2022.04.018. [DOI 10.1016/j.ajhg.2022.04.018]
  • [10] Revello R, Sarno L, Ispas A, Akolekar R, Nicolaides KH. Screening for trisomies by cell-free DNA testing of maternal blood: consequences of a failed result. Ultrasound Obstet Gynecol. 2016;47(6):698-704. doi:10.1002/uog.15851. [DOI 10.1002/uog.15851]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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