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血栓性微小血管症(TMA)の遺伝子検査|TMAとは・原因(aHUS・先天性TTP)を39遺伝子で調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

血栓性微小血管症(TMA)の遺伝子検査

血栓性微小血管症(TMA)とは、全身の細い血管に小さな血栓ができて、溶血性貧血・血小板減少・腎臓などの臓器障害が起こる病気の総称です。医療で「TMA」というときは、この病気のことを指します。原因はさまざまですが、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)や先天性の血栓性血小板減少性紫斑病(先天性TTP)のように、生まれつきの遺伝子の変化が関わるものがあります。原因の遺伝子がわかると、補体の働きを抑える薬をやめられるか、腎移植のときに再発をどう防ぐか、ご家族が腎臓の提供者(ドナー)になれるか、といった判断が変わります。このページでは、TMAの原因と種類、TMAに関わる39遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. TMAとは?この検査で何がわかりますか?

TMAは、溶血性貧血・血小板減少・臓器障害が同時に起こる病気の総称です。この検査では、aHUSに関わる補体の遺伝子、先天性TTPのADAMTS13、コバラミン代謝のMMACHC、DGKEなど、TMAに関わる39遺伝子を一度に調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

TMA・aHUSと言われて原因を確かめたい方、再発をくり返す方、腎移植を考えている方とドナー候補のご家族、ご家族にTMAや原因のわからない腎不全の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、治療・移植・ご家族の検査の計画に使えます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

🧬 Q. 足りない遺伝子は追加できますか?

国際的な専門家会議(KDIGO)がaHUSで最低限調べるべきとした9遺伝子は、すべてこの検査に入っています。そのほかに調べたい遺伝子があれば、追加できるかをご相談いただけます。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、治療と家族の計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 血栓性微小血管症(TMA)とは?症状・原因・診断基準

血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)は、細い血管の内側が傷つき、そこに血小板が集まって小さな血栓ができることで、赤血球が壊れ(溶血性貧血)、血小板が減り、臓器の血流が悪くなる病気の総称です。とくに腎臓が傷つきやすく、溶血性尿毒症症候群(HUS)は「血小板減少・赤血球が機械的に壊れる貧血・急性腎障害」の3つがそろうTMAとして定義されています[2]。

TMAの3つのサインと症状

TMAの症状は、この3つのサインから出てきます。赤血球が壊れて貧血になると、だるさ・息切れ・顔色の悪さが出ることがあります。血小板が減ると、あざや出血が起こりやすくなります。腎臓の細い血管が詰まると、尿が減る・むくむ・血圧が上がるといった変化が出ることがあり、脳の血管が詰まると、頭痛や意識の変化などが出ることもあります。どの症状が強く出るかは、原因と、どの臓器の血管が詰まるかによって変わります。

血液検査では、壊れた赤血球のかけら(破砕赤血球)が見つかることが、TMAを疑う大事な手がかりになります。

TMAの原因と種類:遺伝子が関わるのはどれか

TMAは1つの病気ではなく、原因の違う病気の集まりです。原因によって治療が違うため、まず原因を見分けることが何より大切です。HUSの原因は、志賀毒素を出す大腸菌、肺炎球菌、補体の働きの乱れ(非典型HUS)、DGKE遺伝子の変化、コバラミンC欠損症、そして感染・薬・がん・全身の病気による二次性のものに分けられています[2]。

🩸 TMAの主な種類と、遺伝子が関わるか

種類 主な原因 生まれつきの遺伝子の関わり(この検査で調べる遺伝子)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS) 補体の働きが抑えられなくなる(遺伝子の変化・抗H因子抗体) あり(CFH・CFI・CD46・C3・CFB・THBD・CFHR1〜5 など)
先天性TTP(アップショー・シュルマン症候群) ADAMTS13という酵素が生まれつき働かない あり(ADAMTS13)
後天性TTP ADAMTS13に対する自己抗体 なし(遺伝子検査ではわからない。抗体の検査で調べる)
DGKEによるHUS DGKE遺伝子の両方の変化 あり(DGKE)
コバラミンC欠損症(cblC型)によるTMA ビタミンB12の代謝の病気 あり(MMACHC)
志賀毒素によるHUS(STEC-HUS) 腸管出血性大腸菌(O157など)の毒素 なし(便の検査などで調べる)
二次性TMA 感染・薬・がん・全身の病気、造血幹細胞移植や臓器移植のあとなど 原因はほかにあるが、妊娠に関連したHUSでは補体の遺伝子の変化が多く見つかる(第3章)

※分類は文献[2][1][6]による。

TMAの診断基準:ADAMTS13活性と補体の検査

TMAが疑われたら、まずADAMTS13という酵素の働き(活性)を測り、TTPかどうかを見分けます。国内の血栓性血小板減少性紫斑病の診療ガイド(2023年)は、原因のわからない血小板減少と溶血性貧血がある人でADAMTS13活性を測り、10%未満に下がっていればTTPと診断するとしています。活性が10%未満で、ADAMTS13の働きを止める抗体(インヒビター)がなければ先天性TTPが疑われ、確定にはADAMTS13遺伝子の解析が必要とされています。

aHUSは、志賀毒素によるHUSとTTPを除いたうえで診断します。国際的な専門家会議(KDIGO)の報告では、aHUSの診断の流れの中に補体の遺伝子の検査と、自分の補体を抑える因子に対する抗体(抗H因子抗体)の検査が組み込まれています。また、子どものaHUSでは、すべての方でコバラミンC欠損症の検査(血液・尿の検査)が必須とされています[1]。

急性期の治療は、遺伝子検査の結果を待たずに、血液検査などの結果から始まります。遺伝子検査は、原因を確かめ、その後の治療・腎移植・ご家族の検査を考えるために行うものです。

TTPとTMAの違い・DICとの違い・O157のHUSとaHUSの違い

TMAは病気の「グループの名前」で、TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)やHUS(溶血性尿毒症症候群)は、その中の一つひとつの病気の名前です。TTPはADAMTS13の働きがなくなることで起こり、aHUSは補体の働きが抑えられなくなることで起こります。原因が違うので、治療も違います。

DIC(播種性血管内凝固)も血小板が減る病気ですが、血液を固めるしくみが全身で使い果たされる状態で、TMAとは別の病態です。見分けるには、血液の固まりやすさの検査も含めて判断します。

「溶血性尿毒症症候群」と検索すると、O157などの腸管出血性大腸菌の食中毒のあとに起こるHUS(STEC-HUS)の情報が多く出てきます。これは菌の毒素が原因で、生まれつきの遺伝子の病気ではありません。一方、下痢のあとに限らず起こり、補体の働きの乱れが原因になるのが非典型(atypical)HUS=aHUSで、こちらは遺伝子が関わることがあります[2]。

TMAは何科で診る?

TMAの診断と治療は、腎臓や血液の専門の診療科(お子さんでは小児科の腎臓・血液の専門医)が中心になります。当院は治療を行っていませんので、治療は専門の医療機関で受けていただき、当院では遺伝子検査と、その結果をご本人・ご家族の計画にどう使うかを、臨床遺伝専門医がご説明します。

2. 遺伝子が原因のTMA:aHUS・先天性TTP・MMACHC・DGKE

TMAのうち、生まれつきの遺伝子の変化が関わるのは、主にaHUS、先天性TTP、コバラミンC欠損症(cblC型)、DGKEによるHUSです。この検査は、これらの原因遺伝子をまとめて調べます。

非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)と補体の遺伝子

非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、補体(細菌などを攻撃する免疫のしくみの一つ)がブレーキを失い、自分の血管の内側を傷つけてしまうことで起こります。KDIGOの報告では、aHUSの方の少なくとも50%に、生まれつきの変化か後からできた抗体による補体の異常が見つかるとされています[1]。補体のブレーキ役の遺伝子(CFH・CFI・CD46)が働かなくなる変化と、アクセル役の遺伝子(C3・CFB)が働きすぎる機能獲得型変異の両方があります。

日本人のaHUSは、欧米とは原因の内訳が違います。日本のaHUS 118人(103家系)を調べた研究では、遺伝子と抗体を調べた104人のうち、C3の変化が31%と最も多く、CFHが10%、CD46(MCP)が5%、DGKEが1%、抗H因子抗体が19%で、35%は原因がわかりませんでした。C3の中でも特定の変化(p.I1157T)が23%を占め、日本人では欧米よりCFHの変化が少なく、C3の変化が多いと報告されています[3]。同じ研究で、初めて発症した年齢の中央値は6歳(3か月〜84歳)、約65%が子どものうちの発症でした[3]。

💡 用語解説:抗H因子抗体

H因子(CFH遺伝子から作られるたんぱく質)は、補体のいちばん大事なブレーキです。このH因子に対する抗体が自分の体にできると、遺伝子に変化がなくてもブレーキが効かなくなり、aHUSが起こります。抗体は遺伝子検査ではわからないので、血液の抗体の検査で調べます[1]。

先天性TTP(アップショー・シュルマン症候群)とADAMTS13

先天性TTPは、ADAMTS13遺伝子の2本ともに変化があり、ADAMTS13という酵素が生まれつきほとんど働かないことで起こる病気です[6]。2本が同じ変化の場合(ホモ接合)と、違う変化の組み合わせの場合(複合ヘテロ接合)があります。

国内の診療ガイド(2023年)によると、日本で2022年末までに見つかった先天性TTPは70例で、推計は110万人に1人です。遺伝子解析で確定した65例のうち、ホモ接合は11例、複合ヘテロ接合は54例でした。ご両親は片方だけに変化をもつ保因者で、ADAMTS13活性は30〜50%を示すことが多いとされています。

大人になってから発症したTTPの多くは自己抗体による後天性ですが、フランスの全国登録の研究では、妊娠をきっかけに発症したTTPの42人のうち10人(24%)が先天性TTPでした。大人で発症したTTP全体では5%未満であるのに比べ、妊娠をきっかけにしたTTPでは先天性の割合が高いと報告されています[7]。

MMACHC(cblC型)によるTMA:治療法がある原因

MMACHC遺伝子の変化によるメチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症cblC型は、ビタミンB12がうまく使えない代謝の病気で、腎臓のTMAを起こすことがあります。報告された36人をまとめた研究では、全員に血管の中での溶血・血尿・たんぱく尿があり、3分の2はaHUSと診断されていました。ヒドロキソコバラミン(ビタミンB12の一種)による治療で多くの方の腎機能が良くなり、3人は透析をやめることができました。一方で、治療されなかった方は報告の中で全員亡くなっています[8]。

この研究は、原因のわからない溶血・血尿・たんぱく尿がある方では、ホモシステインの測定や遺伝子検査でcblC型を確かめるよう勧めています[8]。補体の病気だと思われていたTMAが、治療法のある代謝の病気だとわかることがあるのが、TMAを広く調べる意味の一つです。代謝の病気を中心に調べたい方には、メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症の遺伝子検査もあります。

DGKE:1歳になる前に始まるHUS

DGKE遺伝子の変化によるHUSは、2013年に報告された比較的新しい原因です。9つの家系の研究で、2本ともに変化がある(潜性遺伝)お子さんが、1歳になる前にaHUSを発症していました。この病気は補体ではなく、血管の内側の細胞の信号の異常で起こると考えられています[9]。補体の遺伝子だけを調べても見つからない原因なので、乳児期に始まったTMAでは大切な遺伝子です。

TMA・aHUSは遺伝する?遺伝する確率

遺伝する確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたによって大きく違います。

  • ●aHUSの補体の遺伝子:多くは2本ある遺伝子の片方に変化がある形で見つかります(常染色体顕性(優性)遺伝の形)。この場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます。ただし、変化を受け継いでも、発症するとは限りません。KDIGOの報告では、発症する確率は年齢とともに上がり、70歳までに64%に達しうるとされています[1]。感染や妊娠などのきっかけが重なって発症すると考えられており、2つ以上の原因の変化をもつ方も3〜5%います[1]。
  • ●先天性TTP(ADAMTS13)・DGKE・cblC型(MMACHC):常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。保因者のご両親は、ふだん症状がありません。

原因の変化をもっていても発症しない人がいることを「不完全浸透」といいます(浸透率が100%ではない状態)。aHUSでは、症状のないご家族が同じ変化をもっていることがよくあるため、「家族に患者さんがいないから遺伝ではない」とも、「変化を受け継いだから必ず発症する」とも言えません。だからこそ、ご家族のうち誰が同じ変化をもっているかを知っておくことに意味があります。

3. 原因の遺伝子がわかると、治療と見通しが変わる

aHUSでは、原因の遺伝子がわかることで、補体の働きを抑える薬をやめられるか、腎移植のときにどれくらい再発しやすいか、ご家族がドナーになれるかの判断が変わります。名前がつくと、次の一手が決まります。

補体の働きを抑える薬(エクリズマブなど)をやめられるか

aHUSの治療では、補体の働きを抑える薬(エクリズマブなど)が使われます。KDIGOの報告は、この薬をやめるかどうかは、少なくとも6〜12か月の治療と、腎機能が3か月以上安定していることを確かめたうえで一人ひとり判断するとし、腎移植を受けた方ではやめることを勧めていません[1]。

フランスで55人がエクリズマブをやめた研究では、補体の遺伝子にまれな変化があった28人のうち12人(43%)が再発したのに対し、変化が見つからなかった23人では1人(4%)だけでした(その1人も、のちに先天性のADAMTS13欠乏症とわかりました)。再発した13人は全員が薬を再開し、11人はもとの腎機能に戻りました。研究者は、補体の遺伝子の結果にもとづいて薬をやめる方針は妥当で安全だと結論しています[4]。薬をやめるかどうかの判断は、治療を担当する専門の医療機関で行いますが、その判断材料のひとつが遺伝子検査の結果です。

腎移植のときの再発の見通しと、ドナーになるご家族

aHUSで腎臓の働きが失われ、腎移植を考えるとき、移植した腎臓でaHUSが再発する危険は、原因の遺伝子によって大きく違います。KDIGOの報告は、移植後の再発の危険を次のように分けており、この分類にはaHUSに関わるすべての遺伝子の検査が必要としています[1]。

🫘 aHUSの腎移植後の再発の危険(KDIGOの報告より)

再発の危険 当てはまる場合
高い(50〜100%) 以前の移植で早く再発した/病気の原因となる変化・機能獲得型の変化がある
中くらい 変化が見つからない/CFIの変化だけ/意義のわからない変化/抗H因子抗体が低い値で続いている
低い(10%未満) CD46(MCP)の変化だけ/抗H因子抗体がずっと陰性

※文献[1]のTable 4による。危険が高い場合は、移植の日から補体の働きを抑える薬を予防的に使うことが勧められています。

ご家族が腎臓を提供する(生体腎移植)場合にも、遺伝子の結果が欠かせません。KDIGOの報告は、aHUSの方への生体腎移植は、ご本人の原因(遺伝子の変化または抗体)がはっきりわかっていて、ドナーになるご家族がその原因をもっていないことを確かめた場合にだけ考えるべき、としています[1]。症状のないご家族も同じ変化をもっていることがあるため、ご本人の原因がわからないままでは、ご家族がドナーになれるかを判断できません。あなたの1回の検査が、ご家族が自分の状態を知り、ドナーになれるかを考える手がかりになります。

妊娠とTMA:妊娠に関連したaHUSと先天性TTP

妊娠はTMAのきっかけになることがあります。フランス・英国・イタリアの妊娠に関連したHUSの87人を調べた研究では、発症は出産後が76%、初めての妊娠が58%で、診断のときに71%が透析を必要としました。補体の遺伝子の変化は56%に見つかり(CFHが30%、CFIが9%)、妊娠に関連したHUSは、妊娠と関係のないaHUSと重さも遺伝子の変化の頻度も似ていると報告されています[5]。

先天性TTPでは、国内の診療ガイド(2023年)が、妊娠はTTPの発作を悪くする要因で、妊娠中に新鮮凍結血漿を定期的に補わない場合、赤ちゃんが亡くなる割合は50%にも及ぶとしています。同じガイドは、妊娠中は新鮮凍結血漿を毎週定期的に補うことが欠かせないと考えられる、としています。フランスの研究でも、予防的な血漿の治療が、お母さんと赤ちゃんの両方に役立ったと報告されています[7]。

妊娠の前に原因がわかっていれば、妊娠中にどんな備えが必要かを、前もって専門の医療機関と計画できます。妊娠中の管理は、産科と、血液内科・腎臓内科のある医療機関で行います(当院は分娩を行っていません)。

4. TMA遺伝子検査を受けるとよい人

TMA・aHUSと言われて原因を確かめたい方、再発をくり返す方、腎移植を考えている方とそのご家族、ご家族にTMAの方がいる方に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません。

こんな方に向いています

  • ●TMA・aHUSと診断され、原因を確かめて治療や薬をやめるかどうかの判断に使いたい方
  • ●TMAの再発をくり返している方、子どものうち(とくに乳児期)に発症した方
  • ●ADAMTS13活性が10%未満で、抗体(インヒビター)がなく、先天性TTPが疑われる方
  • ●妊娠中や出産後にTMAを起こしたことがあり、次の妊娠を考えている方
  • ●aHUSで腎移植を考えている方と、ドナー候補のご家族
  • ●ご家族にTMA・aHUS・原因のわからない腎不全の方がいて、ご自身が同じ変化をもっているか知りたい方

ご家族にTMA・aHUSの方がいて、自分もなるかもしれないと不安な方へ

親やきょうだいがaHUSを発症し、「自分もいつか同じ病気になるのでは」「子どもに遺伝しているのでは」という不安を抱えながら暮らしている方もいます。ご家族の原因の変化がわかっていれば、症状のない方も、同じ変化を受け継いでいるかを確かめることができます。

受け継いでいないとわかった場合は、ご家族で見つかったその変化について、ご自身やお子さんへの影響を心配しなくてよくなります。ただし、aHUSには原因の遺伝子が1つではない場合や、遺伝子以外の原因(抗H因子抗体など)もあるため、「この病気とは無関係」とまでは言えません。

受け継いでいるとわかった場合も、すぐに発症するとは限りません。aHUSは変化をもっていても発症しない方が多い病気です(第2章)[1]。そのうえで、体調を崩したときにaHUSの家族歴と遺伝子の変化を医療機関に伝えられること、妊娠を考えるときに前もって備えを計画できること(第3章)、生体腎移植のドナーになれるかを判断できること、が次にできることです。

知らないでいることも、同じように選べる選択肢です。当院は、知りたいと願う方を拒むことはしませんが、検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医と時間をかけて考えたうえで、ご本人が決めていただきます。結果を知ったあとの気持ちの変化についても、相談を続けていただけます。

この検査より別の検査が向いている場合

TMAの原因がはっきり遺伝子以外にあるときは、まずそちらの検査が先になります。比べる相手は「検査の種類」です。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
ADAMTS13の抗体(インヒビター)が陽性 後天性TTPの可能性が高く、治療が先。遺伝子検査は通常不要
血便・下痢のあとに発症、志賀毒素が陽性 志賀毒素によるHUS。便の検査など
aHUSと診断され、補体の遺伝子にしぼって調べたい TMAフォーカスパネル(22遺伝子)
原因をしぼれないTMA、補体以外の原因も含めて広く調べたい このページのTMAパネル(39遺伝子)
溶血はなく、血小板減少や血栓が中心 血栓症・血小板障害・凝固因子欠乏症の包括パネル
溶血はなく、たんぱく尿・ネフローゼが中心 ネフローゼ症候群・糸球体性蛋白尿パネル
腎臓・血液以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※パネル検査と全エクソーム検査の違いはWESとパネル検査の違いで解説しています。どれが合うかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

TMAパネル(39遺伝子)とTMAフォーカスパネル(22遺伝子)の選び方

TMAフォーカスパネルの22遺伝子は、すべてこのTMAパネル(39遺伝子)に含まれています。KDIGOがaHUSで最低限調べるべきとした9遺伝子(CFH・CD46・CFI・C3・CFB・THBD・CFHR1・CFHR5・DGKE)は、両方の検査に入っています[1]。違いは、このパネルにだけ入っている次の17遺伝子です。

⚖️ 2つのTMAパネルの違い

項目 TMAフォーカスパネル TMAパネル(このページ)
遺伝子の数 22遺伝子 39遺伝子
向いている方 aHUSと診断され、補体の遺伝子を中心に調べたい方 原因をしぼれないTMA、補体の周りの遺伝子まで広く調べたい方
このパネルだけにある遺伝子 なし(22遺伝子はすべてTMAパネルにも含まれる) C3AR1・C4BPA・C4BPB・C5・C5AR1・C6・C7・C8A・C8B・C8G・CFP・CR1・CR2・FKRP・STAT2・VWF・ZNFX1

※遺伝子の一覧は、検査を行う会社の現在の検査内容で確かめた(2026年10月21日)。

広く調べるほど、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかる機会も増えます。どちらを選ぶかは、これまでの検査の結果やご家族の状況をうかがって、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

\ あなたの結果が、ドナーを考えるご家族の判断材料に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご本人で原因がわかれば、ご家族は同じ場所だけを調べて、同じ変化をもっているかを確かめられます。

遺伝カウンセリング・遺伝診療について | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる39遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、TMAに関わる39遺伝子を、次世代シークエンサーで一度に調べます。表の病名と遺伝のしかたは、遺伝子と病気の対応をまとめたデータベース(OMIM番号つきのUniProt)と各論文で確かめたものです。

補体の制御・活性化に関わる遺伝子

🧬 補体に関わる遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
CFH 非典型溶血性尿毒症症候群1型/H因子欠損症/加齢黄斑変性4型・基底層ドルーゼン aHUSは片方の変化で起こることが多い(2本とものこともある)。H因子欠損症は潜性
CFI 非典型溶血性尿毒症症候群3型/I因子欠損症/加齢黄斑変性13型 aHUSは片方の変化。I因子欠損症は潜性
CD46(MCP) 非典型溶血性尿毒症症候群2型 片方の変化で起こることが多い(2本とものこともある)
C3 非典型溶血性尿毒症症候群5型/C3欠損症/加齢黄斑変性9型 aHUSは片方の変化(機能獲得型)。C3欠損症は潜性
CFB 非典型溶血性尿毒症症候群4型/B因子欠損症/加齢黄斑変性14型 aHUSは片方の変化(機能獲得型)。B因子欠損症は潜性
THBD 非典型溶血性尿毒症症候群6型/トロンボモジュリン異常による血栓性素因 片方の変化
CFHR1・CFHR3 非典型溶血性尿毒症症候群1型(CFHとの間の組み換え・欠失) 家系ごとに評価
CFHR5 CFHR5欠損症(CFHR5腎症)/aHUSとの関連の報告 片方の変化
CFHR2・CFHR4 病気との関係を研究中の遺伝子(CFHのとなりに並ぶよく似た遺伝子) 研究中
C5・C6・C7・C8A・C8B・C9 それぞれの補体成分の欠損症(C9は加齢黄斑変性15型も) 潜性
CFD D因子欠損症 潜性
CFP プロペルジン欠損症 X連鎖
CD55 CHAPLE症候群(補体の過剰な活性化・血栓・たんぱく漏出性胃腸症) 潜性
CD59 CD59欠損による溶血性貧血(多発神経障害を伴うことがある) 潜性
CR2 分類不能型免疫不全症7型/全身性エリテマトーデスのなりやすさ 免疫不全症は潜性
CR1・C3AR1・C5AR1・C4BPA・C4BPB・C8G 病気との関係を研究中の遺伝子(補体の受容体や制御に関わる) 研究中

※病名はUniProt(OMIM番号つき)、aHUSの遺伝のしかたと発症のしかたは文献[1]による。aHUSは変化をもっていても発症しないことが多い(不完全浸透)。

TTP・代謝・凝固・腎臓・その他に関わる遺伝子

🧬 補体以外の遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
ADAMTS13 先天性血栓性血小板減少性紫斑病(アップショー・シュルマン症候群) 潜性
DGKE 非典型溶血性尿毒症症候群7型/ネフローゼ症候群7型 潜性
MMACHC メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症cblC型 潜性
VWF フォン・ヴィレブランド病1型・2型・3型 1型は顕性、3型は潜性、2型は型による
PLG プラスミノゲン欠乏症/遺伝性血管性浮腫4型 欠乏症は潜性、血管性浮腫は顕性
F12 第XII因子欠乏症/遺伝性血管性浮腫3型 欠乏症は潜性、血管性浮腫は顕性
INF2 巣状分節性糸球体硬化症5型/シャルコー・マリー・トゥース病(顕性中間型E) 顕性
FKRP 肢帯型筋ジストロフィー/先天性筋ジストロフィー(ジストログリカン異常症) 潜性
STAT2 免疫不全症44型/偽TORCH症候群3型 潜性
ZNFX1 免疫不全症91型と過剰な炎症 潜性
ST3GAL1 病気との関係を研究中の遺伝子(糖鎖を作る酵素) 研究中

※病名と遺伝のしかたはUniProt(OMIM番号つき)による。ADAMTS13は文献[6]、DGKEは文献[9]、MMACHCは文献[8]も参照。これらの遺伝子の病気が、すべてTMAの形で出るわけではありません。

このパネルに入っていない遺伝子は追加できる

KDIGOがaHUSで最低限調べるべきとした9遺伝子はすべて入っていますが、研究が進むにつれて、新しい遺伝子が報告されることがあります。このパネルに入っていない遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。詳しくはカスタマイズ遺伝子パネル検査をご覧ください。症状が腎臓・血液以外にも広がっている方は、全エクソーム検査(WES)という選択肢もあります。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、39遺伝子の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな欠けや入り込み)と、欠失・挿入の解析でわかる範囲の変化です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

この検査でわからないこと

  • ●CFHとCFHRのよく似た領域:CFHとCFHR1〜5は、よく似た配列が並んでいます。KDIGOは、この領域のコピー数の変化や、2つの遺伝子がつながった遺伝子(ハイブリッド遺伝子)、複雑な組み換えも見つけられる検査が必要としています[1]。この検査でも、偽遺伝子やよく似た配列のために、変化を見つけにくいことがあります。必要に応じて、別の方法での確認を考えます。
  • ●CR1遺伝子:遺伝子の中によく似た領域がいくつもあるため、一部の変化を確実に見つけることができません。
  • ●抗体が原因のTMA:後天性TTP(ADAMTS13に対する抗体)や、抗H因子抗体によるaHUSは、遺伝子検査ではわかりません。血液の抗体の検査が必要です。
  • ●見つけにくい変化:染色体の転座や逆位、繰り返し配列の伸び、遺伝子の働きを調節する領域や遺伝子の奥深くの変化、1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つからないことがあります。体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)を見つけることも目的にしていません。
  • ●調べていない遺伝子:この39遺伝子以外の原因は調べていません(追加の相談は第5章)。

陰性でも「TMAではない」ではない・VUSのこと

原因が見つからなくても、TMAやaHUSが否定されるわけではありません。日本のaHUSの研究でも、35%の方は原因がわかりませんでした[3]。また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査やドナーの判断に使ったりはしません。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子の変化が見つかったら、ご本人・ご家族・これからのお子さんのそれぞれに、次にできることがあります。わかるだけで終わらせず、次の行動につなげることが、この検査を受ける意味です。

ご本人(症状がある方):治療の判断と再発への備え

病名がはっきりし、治療の判断材料になります。aHUSでは、補体の働きを抑える薬をやめられるか、腎移植でどれくらい再発しやすいかの見通しが立ちます(第3章)。先天性TTPとわかれば、新鮮凍結血漿の定期的な補充という、後天性TTPとは違う治療の方針につながります。cblC型とわかれば、ヒドロキソコバラミンなどの代謝の治療につながります[8]。治療は、腎臓・血液の専門の医療機関で受けていただきます。感染や妊娠などのきっかけで再発することがあるため、ご自身の原因を知っておくことは、今後の体調の変化に早く気づく手がかりにもなります。

ご家族:同じ変化をもっているかをピンポイントで調べる

ご本人で原因の変化がわかれば、ご家族も必要に応じて同じ場所だけを調べ、同じ変化をもっているかを確かめることができます。aHUSは症状のないご家族も同じ変化をもっていることがあり、生体腎移植のドナーを考えるときには、とくに大切です(第3章)。ただし、検査を行うかどうかは、検査の目的、ご本人にとっての医学的な利益、年齢や、ご自身で理解して同意できるかを踏まえて、一人ひとり判断します。症状のない方の検査は、ご本人の同意のもとで行います。

子どもを持つとき:お子さんへの確率と選択肢

お子さんへの確率は、遺伝のしかたで変わります(第2章)。片方の変化で起こるaHUSでは、お子さん1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎますが、受け継いでも発症するとは限りません。先天性TTP・DGKE・cblC型のような潜性遺伝の病気では、パートナーも同じ遺伝子の保因者かどうかで確率が変わります。

パートナーの保因者検査について、当院の拡大版保因者スクリーニングで確かめたところ、ADAMTS13とCFHは女性版1009遺伝子と男性版911遺伝子の対象、MMACHC・FKRP・CD59は女性版787遺伝子・男性版714遺伝子を含むすべての版の対象です。DGKEはどの版にも入っていません(2026年10月に各ページの遺伝子一覧で確認)。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることもできます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。出生前診断を受けずに出産することも、もちろん選べる選択肢です。どの選択も尊重します。

当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の意味、ご家族にどう伝えるか、次に何をするかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。

結果が陰性・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合でも、抗H因子抗体などの血液の検査や、ほかの原因の検討が続きます(第6章)。KDIGOの移植後の再発の分類では、変化が見つからない場合は「中くらい」の危険に入ります[1]。VUSだった場合は、研究が進んで意味がはっきりすることもあるため、時間をおいて結果を見直すことがあります。

8. TMA・aHUS・TTPと日本の制度(2026年10月時点)

非典型溶血性尿毒症症候群は指定難病109、血栓性血小板減少性紫斑病は指定難病64です。(厚生労働省の指定難病の一覧で確認。)先天性TTPは指定難病64の中に含まれ、国内の診療ガイド(2023年)によると、指定難病の診断基準ではADAMTS13活性10%未満がTTPの条件になっています。

医療費の助成を受けるには、それぞれの認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。なお、当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット発送
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 ADAMTS13, C3, C3AR1, C4BPA, C4BPB, C5, C5AR1, C6, C7, C8A, C8B, C8G, C9, CD46, CD55, CD59, CFB, CFD, CFH, CFHR1, CFHR2, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CFI, CFP, CR1, CR2, DGKE, F12, FKRP, INF2, MMACHC, PLG, ST3GAL1, STAT2, THBD, VWF, ZNFX1(39遺伝子)
検査費用 税込330,000円(塩基配列と欠失・挿入の解析を含む)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外(病的意義がよくわからない変化を報告に含めない):無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA、口の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液
オンライン診療 対応。唾液・口の内側の粘膜でほとんどの場合に実施でき、血液の場合は全国の提携医療機関で採血

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因がわかると、ご家族の選択肢も増える】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

TMA、とくにaHUSは、同じ遺伝子の変化をもっていても発症しない方が多い病気です。だからこそ、「家族に同じ病気の人がいないから」「自分は元気だから」という印象だけでは、何も言えないと考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

TMAは、原因によって治療がまったく違う病気です。原因の遺伝子がわかれば、薬を続けるかやめるか、腎移植をどう進めるか、ご家族がドナーになれるか、次の妊娠にどう備えるかを、根拠をもって考えられるようになります。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. TMAとは何ですか?どんな病気ですか?

TMA(血栓性微小血管症)は、全身の細い血管に小さな血栓ができ、溶血性貧血・血小板減少・腎臓などの臓器障害が起こる病気の総称です。TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)、志賀毒素によるHUS、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)などが含まれ、原因によって治療が違います。aHUSや先天性TTPのように、生まれつきの遺伝子の変化が関わるものもあります。

Q2. TMAの症状は?何科を受診すればいいですか?

貧血によるだるさや息切れ、血小板減少によるあざや出血、腎臓の障害による尿の減少やむくみ、脳の血管が詰まることによる頭痛や意識の変化などが出ることがあります。診断と治療は、腎臓や血液の専門の診療科が中心になります。当院では治療は行っておらず、原因を確かめる遺伝子検査と遺伝カウンセリングを行っています。

Q3. TMA・aHUSは遺伝しますか?子どもに遺伝する確率は?

原因によって違います。aHUSの補体の遺伝子の変化は片方の変化で見つかることが多く、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎますが、受け継いでも発症するとは限りません。国際的な専門家会議の報告では、発症する確率は70歳までに64%に達しうるとされています。先天性TTP・DGKE・cblC型は潜性遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。

Q4. TTPとTMAの違いは?DICとの違いは?

TMAは病気のグループの名前で、TTPはその中の一つです。TTPはADAMTS13という酵素の働きがなくなることで起こり、ADAMTS13活性が10%未満に下がっていることで診断します。DICは血液を固めるしくみが全身で使い果たされる状態で、TMAとは別の病態です。原因が違うので、治療も違います。

Q5. TMAは治りますか?血漿交換で治せますか?

原因によって治療が違います。TTPは、血漿の治療が始まる前はほとんどの方が亡くなる病気でしたが、血漿の治療によって生存率は80〜90%に上がったと報告されています。aHUSでは補体の働きを抑える薬が使われ、cblC型ではビタミンB12の一種による治療で腎機能が良くなった方が多く報告されています。原因を確かめることが、治療を選ぶ第一歩です。

Q6. TMA・aHUSは結婚に差し支えますか?

遺伝の確率は、原因の遺伝子と家族ごとに違い、検査で「わかること」があります。ご自身が変化をもっているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかを知ったうえで、妊娠中の備えや出生前診断などを考えることができます。知ったうえで選べる選択肢があることを、遺伝カウンセリングで一緒に確かめましょう。

Q7. 検査で異常が見つからなかったら、TMAではないということですか?

いいえ。原因が見つからなくても、TMAやaHUSが否定されるわけではありません。日本のaHUSの研究でも35%の方は原因がわかりませんでした。抗H因子抗体や後天性TTPのように、遺伝子検査ではわからない原因もあります。血液の検査などとあわせて判断します。

Q8. このパネルにない遺伝子も調べられますか?

国際的な専門家会議(KDIGO)がaHUSで最低限調べるべきとした9遺伝子は、すべてこの検査に入っています。そのほかに調べたい遺伝子があれば、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

🧬 一度の検査で、治療とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。TMAの原因の遺伝子がわかれば、補体の働きを抑える薬をやめられるか、腎移植をどう進めるか、ご家族がドナーになれるか、次の妊娠にどう備えるかを考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の検査、パートナーの保因者検査、絨毛・羊水からの胎児の出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Goodship THJ, Cook HT, Fakhouri F, et al. Atypical hemolytic uremic syndrome and C3 glomerulopathy: conclusions from a “Kidney Disease: Improving Global Outcomes” (KDIGO) Controversies Conference. Kidney Int. 2017;91(3):539-551. [DOI: 10.1016/j.kint.2016.10.005]
  • [2] Fakhouri F, Zuber J, Frémeaux-Bacchi V, Loirat C. Haemolytic uraemic syndrome. Lancet. 2017;390(10095):681-696.
  • [3] Fujisawa M, Kato H, Yoshida Y, et al. Clinical characteristics and genetic backgrounds of Japanese patients with atypical hemolytic uremic syndrome. Clin Exp Nephrol. 2018;22:1088-1099. [DOI: 10.1007/s10157-018-1549-3]
  • [4] Fakhouri F, et al. Eculizumab discontinuation in children and adults with atypical hemolytic-uremic syndrome: a prospective multicenter study. Blood. 2021;137(18):2438. [DOI: 10.1182/blood.2020009280](PMID: 33270832)
  • [5] Bruel A, Kavanagh D, Noris M, et al. Hemolytic uremic syndrome in pregnancy and postpartum. Clin J Am Soc Nephrol. 2017;12(8):1237-1247. [DOI: 10.2215/CJN.00280117]
  • [6] Kremer Hovinga JA, Coppo P, Lämmle B, et al. Thrombotic thrombocytopenic purpura. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17020. [DOI: 10.1038/nrdp.2017.20]
  • [7] Moatti-Cohen M, Garrec C, Wolf M, et al. Unexpected frequency of Upshaw-Schulman syndrome in pregnancy-onset thrombotic thrombocytopenic purpura. Blood. 2012;119(24):5888-5897.
  • [8] Beck BB, van Spronsen F, Diepstra A, Berger RM, Kömhoff M. Renal thrombotic microangiopathy in patients with cblC defect: review of an under-recognized entity. Pediatr Nephrol. 2017;32(5):733-741. [DOI: 10.1007/s00467-016-3399-0](PMID: 27289364)
  • [9] Lemaire M, Frémeaux-Bacchi V, Schaefer F, et al. Recessive mutations in DGKE cause atypical hemolytic-uremic syndrome. Nat Genet. 2013;45:531-536. [DOI: 10.1038/ng.2590]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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