目次
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- ➤ 副腎白質ジストロフィー(ALD)の基礎知識
- ➤ X連鎖劣性遺伝と女性保因者の意味
- ➤ 祖父の40代発症とその家族への影響
- ➤ 姉妹で受けた保因者検査の結果
- ➤ 現代医療での対処法と希望
- ➤ 同様の状況の方へのメッセージ
副腎白質ジストロフィー(ALD)とは
副腎白質ジストロフィー(Adrenoleukodystrophy:ALD)は、X連鎖劣性遺伝の代謝異常症です。ABCD1遺伝子の変異により、極長鎖脂肪酸の分解に異常が生じ、主に脳の白質と副腎に影響を与えます。
原因:ABCD1遺伝子の病的バリアント(変異)
遺伝形式:X連鎖劣性遺伝(男性が発症し、女性は保因者となることが多い)
発症パターン:小児期発症(脳型)、成人期発症(脊髄型)、副腎不全型など
男性での頻度:17,000人に1人程度
症状発症率:約80%の方が生涯のうちに何らかの症状を発症する可能性
主な症状:脚の筋力低下・痙縮、歩行困難、膀胱・腸管機能障害、感覚障害、腰痛など
発症時期:通常40-50歳代から、男性より進行は緩やか
副腎不全:女性では極めて稀(1%未満)
祖父の病気と家族への影響
母方の祖父が副腎白質ジストロフィーで40代に発症し、亡くなりました。発症が40代と比較的遅めだったため、当初は原因不明の歩行困難として扱われていました。ALDは進行がゆっくりなため、闘病生活は長期間にわたりました。
祖父は徐々に歩行が困難になり、通勤時には祖母が車で往復送迎する必要がありました。家族全体に大きな負担がかかっていたことを、私たち姉妹は子どもの頃から見て育ちました。
祖母は「病気の人と結婚したことを後悔しているわけではない」と言っていましたが、そのような両親の姿を見て過ごした母は、父が病気だということを恥じるつもりもありませんでした。しかし、私たち娘に保因者検査を受けることを勧めました。
X連鎖劣性遺伝と女性保因者について
ALDはX連鎖劣性遺伝のため、女性は通常保因者となり、男性に病気を伝える可能性があります。
X連鎖劣性遺伝の特徴:
• 病的遺伝子はX染色体上にある
• 男性(XY)は1つのX染色体しか持たないため、病的遺伝子があれば発症
• 女性(XX)は2つのX染色体を持つため、通常は保因者となる
• 保因者の女性から生まれる男児の50%が発症する可能性
女性保因者の症状:
多くの女性保因者は無症状ですが、約30%の方が中高年以降に軽度の症状(歩行困難、膀胱障害など)を発症する可能性があります。
母から娘への遺伝:
母方の祖父がALDの場合、その娘(患者様の母親)は確実に保因者です。保因者の母親から娘への遺伝確率は50%となります。
姉妹での受診と検査への想い
母の勧めもあり、姉妹で一緒にミネルバクリニックを受診しました。自分たちが保因者なのかどうかを知ることで、将来の家族計画について適切な判断をしたいと考えていました。
祖父の発症を間近で見てきた経験から、もし自分たちが保因者だった場合の対処法について詳しく知りたいと思っていました。現代の医療技術でどのようなことができるのか、具体的な選択肢があるのかを相談したかったのです。
検査結果:二人とも保因者と判明
検査結果により、私たち姉妹は二人ともALDの保因者であることがわかりました。これは予想していたことでもありましたが、実際に結果を聞いた時は複雑な気持ちでした。
しかし、臨床遺伝専門医から現代の医療技術では様々な対処法があることを詳しく説明していただき、決して絶望的な状況ではないことを理解できました。
現代医療での対処法:希望への道筋
「現代の医療では、病気の遺伝子をこれから妊娠するお子さんが持っているかどうかを調べることができます。対処はできるんです。」
出生前診断の選択肢:
• 絨毛検査(妊娠10-13週):胎盤の組織を採取してABCD1遺伝子を解析
• 羊水検査(妊娠15-18週):羊水中の胎児細胞からABCD1遺伝子を解析
• 新型出生前診断(NIPT):現在ALD対応の研究が進んでいる
着床前遺伝学的検査(PGT-M)について:
現在、日本ではABCD1遺伝子を対象としたPGT-Mは承認されていません。日本産科婦人科学会(JSOG)は非常に厳格な基準を設けており、「小児期発症の極めて重篤な単一遺伝子疾患」のみが対象となっています。海外では実施可能な場合もありますが、費用や渡航の負担が大きくなります。
夫の検査の重要性:
ALDはX連鎖劣性遺伝のため、夫がALDでない限り、女児は保因者となりますが発症はしません。男児の場合は50%の確率で発症するため、適切な検査と対応が重要です。
新生児スクリーニング:
2025年現在、日本でも新生児マススクリーニングにALDが追加予定です。早期発見により、適切な治療や管理を開始することができます。
専門医からのメッセージ:希望を持って
ALDの保因者であることがわかっても、現代の医療技術により多くの選択肢があります。適切な遺伝カウンセリングと医学的サポートがあれば、健康な子どもを授かることは十分可能です。
重要なのは、正しい知識を持ち、専門医と連携して計画的にアプローチすることです。着床前遺伝学的検査(PGT-M)や出生前診断など、科学の進歩により様々な方法が利用可能になっています。
また、仮に生まれた子どもがALDであったとしても、新生児スクリーニングによる早期発見と適切な治療により、症状の進行を遅らせたり、生活の質を向上させることができる時代になっています。
保因者検査を受けることで、不安から解放され、具体的な対策を立てることができます。一人で悩まず、専門医にご相談いただくことが何より大切です。
姉妹の今後の計画
検査結果を受けて、私たち姉妹はそれぞれパートナーと十分に話し合い、将来の家族計画について検討することにしました。
妹は近々結婚予定で、出生前診断を含めた様々な選択肢について検討しています。日本ではALDに対するPGT-Mは現在承認されていないため、妊娠後の検査や海外での治療など、複数の方法を検討する必要があります。
私はまだ具体的な予定はありませんが、検査を受けることで漠然とした不安が解消され、具体的な対策を知ることができて良かったと思っています。
家族にALDの方がいる場合、一人で抱え込まずに保因者検査を受けることをお勧めします。現代の医療技術により、多くの選択肢があることを知ってください。
関連情報:
ALDを含むX連鎖劣性遺伝疾患の詳細情報
よくある質問
ミネルバクリニックの特徴
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臨床遺伝専門医による診療:X連鎖劣性遺伝疾患の豊富な経験 -
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包括的サポート:保因者検査から着床前診断まで一貫した医療体制 -
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オンライン対応:全国どこからでも遺伝カウンセリング可能 -
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家族割引制度:姉妹・兄弟での検査には特別料金適用 -
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着床前診断対応:PGT-Mの実施から妊娠管理まで
臨床遺伝専門医による包括的サポート
オンライン診療対応・全国どこからでも検査可能
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※遺伝子検査をお考えの方は、必ず臨床遺伝専門医にご相談ください。
※本記事の医学的情報は2025年9月現在のものです。

