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臨床遺伝専門医になるには?資格取得ガイド: 資格試験と認定制度の詳細

この記事では、臨床遺伝専門医資格を取得するためのプロセスと情報を提供します。臨床遺伝専門医の重要性についても触れます。

セクション 1: 臨床遺伝専門医とは

臨床遺伝専門医の役割と専門性について

臨床遺伝専門医は、医学の分野で遺伝学臨床医学の専門的な知識を結びつけ、遺伝的な要因が関与する疾患や遺伝的リスクに関する診断、治療、およびカウンセリングを提供する医師です。以下に臨床遺伝専門医の役割と専門性について詳しく説明します。

1. 遺伝的診断
臨床遺伝専門医は、患者の遺伝的なリスクを評価し、遺伝的疾患や遺伝的要因に関連する疾患を診断する能力を持ちます。これには染色体異常単一遺伝子疾患、複合遺伝子因子などが含まれます。
2. 遺伝カウンセリング
患者やその家族に対して遺伝カウンセリングを行います。これは遺伝的リスクの説明や遺伝的検査の選択肢についての情報提供を含みます。また、患者に遺伝的な疾患のリスクや帰結についてアドバイスを提供し、意思決定をサポートします。
3. 遺伝的検査の指導
遺伝的検査の適切な実施と結果の解釈に関する指導を提供します。患者が遺伝的検査を受ける場合、臨床遺伝専門医は最適な遺伝的テストの選択と結果の説明を行います。
4. 家族歴の収集と評価
家族歴を収集し、遺伝的リスクの評価に利用します。家族歴は遺伝的な疾患の早期診断に重要です。
5. カスタマイズされた治療プラン
患者の個別の遺伝的プロファイルに基づいて、治療プランをカスタマイズします。これは特定の遺伝的疾患の管理や予防を含むことがあります。
6. 研究と臨床トライアルへの参加:
一部の臨床遺伝専門医は臨床トライアルや遺伝学に関する研究に参加し、最新の治療法や診断方法の開発に貢献します。
7. 多職種との連携
臨床遺伝専門医は他の医療専門家、遺伝カウンセラー、看護師、臨床遺伝学者などと連携し、患者の包括的なケアを提供します。

臨床遺伝専門医の役割は遺伝学と臨床医学の専門性を組み合わせ、患者に対する個別化された医療ケアとカウンセリングを提供することです。彼らの専門性は遺伝学的な疾患の早期診断、予防、および治療に不可欠であり、家族の健康と福祉に貢献します。

遺伝学と臨床医学の接点において、臨床遺伝専門医がどのように貢献するのか

臨床遺伝専門医は、前項目で述べたような役割を果たし、遺伝学と臨床医学のブリッジとして、患者の遺伝的リスクを最小限に抑えるために不可欠な存在です。臨床遺伝専門医の専門性は遺伝的に関連する疾患の早期診断と適切な治療法の提供に貢献し、家族の健康と福祉を向上させます。

セクション 2: 資格試験の概要

臨床遺伝専門医の資格試験についての情報を提供します。このセクションでは、試験に関する重要な情報を提供し、資格取得に向けたステップを明確に説明します。

臨床遺伝専門医を取るのは難しいのか?

臨床遺伝専門医の合格率は大体60%くらいと言われています。年によっては50%を切るときもありました。暫定措置で、3年間の研修が廃止されたことがあって、その最終年には50%を切っていました。大体は合格率60%と思っていただくと良いです。合格率の低さは試験の難易度が高いということを意味しています。

仲田洋美が臨床遺伝専門医になるのに行ったこと

まずはトンプソン&トンプソンと言う遺伝医学の教科書を読破しました。そのうえで、大事なことをノートに書きだし、日々ひたすら暗記しました。例えば、コドン表などはすらすら書けるようにしていました。実務ではコドン表はいつでも見られるので暗記しなくてもいいと思うかもしれませんが、試験には出ると思ったからです。案の定、私の時にはストップコドンが出ましたので、すらすら回答しました。

あとは、浸透率とか、複合ヘテロとか、機能喪失型バリアントとかいう遺伝医学用語をしっかり理解して暗記しました。そういう日々のお勉強の積み重ねが非常に重要です。

研修開始登録

臨床遺伝専門医になるためには、まず、日本人類遺伝学会または日本遺伝カウンセリング学会に入会の上、こちらから、研修開始登録をしなければなりません。

認定研修施設に所属する指導責任医、あるいは認定研修施設外に所属する指導医の指導を受けながら、臨床遺伝の研修を3年以上行い、遺伝カウンセリングを含む遺伝医療を実践した者

出典:臨床遺伝専門医を目指す方へ

以上より、研修期間は最低3年間必要ですので、早めに手続きをしましょう。

ただし、以下の決まりがあるので、基本領域の専門医を取得する前に研修開始をすることはできません。

研修開始には一般社団法人日本専門医機構が定める基本領域(19領域)の専門医資格を保持していなければならない。

出典:臨床遺伝専門医制度施行細則

臨床遺伝専門医になるのに必要な基礎となる専門医

*日本専門医機構の定める基本領域専門医

総合内科専門医* 内科専門医 小児科専門医 皮膚科専門医 精神科専門医 外科専門医** 整形外科専門医 産婦人科専門医 眼科専門医 耳鼻咽喉科専門医 泌尿器科専門医 脳神経外科専門医 放射線科専門医 麻酔科専門医 病理専門医 臨床検査専門医 救急科専門医 形成外科専門医 リハビリテーション科専門医 総合診療専門医

*制度委員会が認める専門医*
消化器病専門医 循環器専門医 呼吸器専門医 血液専門医 内分泌代謝科専門医 糖尿病専門医 腎臓専門医 肝臓専門医 アレルギー専門医 感染症専門医 老年病専門医 神経内科専門医 リウマチ専門医 がん薬物療法専門医 消化器内視鏡専門医
消化器外科専門医 呼吸器外科専門医 心臓血管外科専門医 小児外科専門医
*認定内科医の資格のみでは申請できません。
**外科認定医・外科認定登録医の資格でも申請可能です。

出典:臨床遺伝専門医を目指す方へ

外科認定医は一旦外科専門医を取得していたものの、手術をしなくなったため専門医資格を更新できなくなった外科医たちに付与されるものです。内科認定医は、そこから内科専門医試験に合格しなければ専門医を取れないので、内科認定医は専門医レベルに到達したことがない医師たちです。このため外科と内科で認定医の扱いに違いが出ています。

注意すべきこととしては、現在、臨床遺伝専門医も専門医機構の認定をもらいたいと交渉しているため、制度委員会が独自に認める専門医がいつまで認められるかについて不透明なことでしょう。

臨床遺伝専門医の研修中にやらねばならないこと

遺伝医学の習得と遺伝カウンセリングの臨床経験

第5条 研修施設に在籍する専攻医は、指導責任医に研修指導を依頼し、承諾の上、研修開始届に必要事項の記載を得ること。3年間以上の研修期間中に、以下の研修をおこなわなければならない。
(1) 3年間以上の研修期間中に遺伝カウンセリングを20例以上担当もしくは陪席すること。この20例の遺伝カウンセリングには、周産期、小児期、成人期、腫瘍の各遺伝医療領域を含み、各領域の症例数は少なくとも3症例を要する。20症例のうち5症例は詳記を記載し、詳記の5症例には周産期、小児期、成人期、腫瘍の各領域を含むこと。更に詳記の5症例のうち少なくとも3症例は申請者自身が遺伝カウンセリングを担当すること。
(2) 所属する施設で上記研修領域を網羅できない場合は、3年間以上の研修期間中にロールプレイ実習のある以下の研修会に参加、不足領域のロールプレイに 1 回以上参加し、参加証明を添付した申請書に研修内容を記載する。すなわち、各領域の症例数が不足する場合には不足している当該領域1症例をロールプレイの同領域受講1回で補填することができる。ただしロールプレイの事例は20症例、5例詳記に加えることはできない。20症例、5例詳記はあくまで専攻医自身が遺伝カウンセリングを担当もしくは陪席したことが必須要件である。
• 日本遺伝カウンセリング学会
遺伝カウンセリングロールプレイ(GCRP)研修会
(3) 定期的に開催される症例検討会および教育的行事に参加する。
第6条 研修施設以外の施設に在籍する専攻医は、指導医資格をもった臨床遺伝専門医に研修指導を依頼し、承諾の上、指導医による受入証明書に必要事項の記載を得ること。3年間以上の研修期間中に次の各号すべてに該当した場合に規則第3条第1項を適用できるものとする。
(1) 3年間以上の研修期間中に以下の研修会に参加し研修単位を20単位以上取得すること。
• 日本人類遺伝学会
遺伝医学セミナー:10単位
• 日本遺伝カウンセリング学会
遺伝カウンセリングロールプレイ(GCRP)研修会:5単位
(2) 上記研修会におけるロールプレイ実習に合計6回以上参加し参加証明を取得し、参加証明を添付した申請書に研修内容を記載する。
(3) 3年間以上の研修期間中に遺伝カウンセリングを20例以上担当もしくは陪席し、指導医の対面指導を受けること。この20例の遺伝カウンセリングには、周産期、小児期、成人期、腫瘍の各遺伝医療領域を含み、各領域の症例数は少なくとも3症例を要する。20症例のうち5症例は詳記を記載し、詳記の5症例には周産期、小児期、成人期、腫瘍の各領域を含むこと。更に詳記の5症例のうち少なくとも3症例は申請者自身が遺伝カウンセリングを担当すること。なお、複数の指導医による対面指導を合計することができる。
(4) 上記研修領域を網羅できない場合は、3年間以上の研修期間中に(2)の研修会の不足領域のロールプレイに 1 回以上参加し、参加証明を添付した申請書に研修内容を記載する。 すなわち、各領域の症例数が不足する場合には不足している当該領域1症例をロールプレイの同領域受講1回で補填することができる。ただしロールプレイの事例は20症例、5例詳記に加えることはできない。20
症例、5例詳記はあくまで専攻医自身がカウンセリングを担当もしくは陪席したことが必須要件である。

出典:臨床遺伝専門医制度施行細則

学術活動

学術活動の評価のために必要とする書類は、研修期間中に発表したものだけではなく、研修期間外に発表したものを含め、遺伝医学に関係した原著論文(症例報告を含む)または総説2編以上のリストとする。ただし、臨床遺伝に関する学会発表を2回行った場合には、論文1編とみなす。論文、学会発表ともに共著者、共同演者を含む。

出典:臨床遺伝専門医制度施行細則

実施日程

臨床遺伝専門医の資格試験は年間で1回のみ実施されます。試験の実施日程は大体9~10月です。

試験内容

試験内容は、筆記試験と実技試験ですが、筆記試験の段階で不合格の場合は、実技試験(カウンセリング技能の試験)に進むことはできません。実技試験の試験官は2名で、患者役と配偶者または血縁者という設定で、受験者が当然医師役をします。
筆記試験の過去問は販売されているので、必要ならこちらから申し込んでください。

受験資格

臨床遺伝専門医の資格試験を受験するために必要な資格や要件について説明します。

●基本領域や臨床遺伝専門医制度委員会が認めるサブスペシャルティの専門医を有していること。
●臨床遺伝専門医研修開始手続きから3年を満了していること。
●日本人類遺伝学会または日本遺伝カウンセリング学会会員であること。
●遺伝医学に関する論文2本(学会発表は2回で論文1本と換算する)があること。
●日本人類遺伝学会または日本遺伝カウンセリング学会の学術集会に少なくとも1回は参加していること。

試験の重要性

資格試験の合格は臨床遺伝専門医としての資格を取得するために不可欠です。試験に合格することで、患者に対する高品質な遺伝学的ケアとカウンセリングを提供できる能力を第3者から担保されます。

合格通知

合格通知は試験から大体1か月後に来ます。

セクション 3:試験合格後のプロセスと必要なステップ

臨床遺伝専門医試験に合格した後、専門医としての資格を取得するために特定のプロセスと必要なステップがあります。以下に、臨床遺伝専門医試験合格後のプロセスと必要なステップを説明します。

1. 資格認定
資格審査が合格した場合、臨床遺伝専門医の資格が正式に認定されます。これにより、専門医としての資格が確定し、遺伝学と臨床遺伝学の分野での専門医としての実務が可能となります。患者の遺伝的ケアとカウンセリングを提供し、臨床遺伝学の分野での専門性を活かします。
2. 認定証明書の発行
資格認定後、専門医に対して認定証明書が発行されます。この証明書は資格を正式に示すものであり、患者や他の医療専門家に提供できる資格の証拠です。
3. 継続的な教育
臨床遺伝専門医は資格を維持するために継続教育を受ける必要があります。新しい研究や臨床の進歩に対応し、患者に最新のケアを提供します。専門医は5年ごとに更新しなければなりません。

臨床遺伝専門医としての資格取得は、遺伝学と臨床医学の専門性を結びつけ、患者に高品質な遺伝学的ケアを提供するための重要なステップです。資格取得後は、専門的な知識とスキルを活用して、患者とその家族に遺伝学的な疾患に関するサポートを提供し、医療の品質と安全性を確保します。

セクション 4: 臨床遺伝専門医試験合格へのアドバイス

臨床遺伝専門医試験では、まずは筆記試験に合格する必要があります。遺伝医学の知識を全般的にしっかり持っていないと、合格するのは難しいでしょう。分野としても多岐にわたる「横断型専門医」ですので、幅広い知識が必要です。地道な勉強が必要です。

また、臨床遺伝専門医試験では、実技試験があります。実技試験では共感力などが問われます。態度が悪いと不合格となるため、日ごろからコミュニケーション能力を培いましょう。

セクション 6: 臨床遺伝専門医の一覧

全国の臨床遺伝専門医の一覧は、臨床遺伝専門医制度委員会の全国臨床遺伝専門医・指導医・指導責任医一覧から見ることができます。

まとめ

臨床遺伝専門医資格は重要であり、遺伝に関連する患者のケアにおいて貴重な役割を果たします。資格試験と認定制度についての情報をお伝えしました。

ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを提供しております。オンライン診療で全国から受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。ご予約はこちら

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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