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遺伝子や染色体に関わる病気や悩みについて、専門家と一緒に考えるのが遺伝カウンセリングです。この記事では、最初に受けたNIPTで13トリソミー陽性となり、羊水検査と臍帯血の検査で「低頻度モザイク」と分かったうえで、出産を選ばれたご夫婦の事例をご紹介します(ご本人の了承を得て、個人が特定されないよう細部を変えています)。NIPTで陽性と言われても、それだけでは診断は決まりません。確定検査で確かめ、結果の意味を専門家と整理してから考えることの大切さを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 13トリソミーの「低頻度モザイク」とは?
体の細胞のうち、13番染色体が3本ある細胞が一部だけで、ほとんどが正常な細胞という状態です。すべての細胞が13トリソミーの場合とは違い、症状の出方には幅があり、調べた細胞の割合だけで症状の程度を予測することはできません。
🔬 Q. NIPTで13トリソミー陽性なら、赤ちゃんは13トリソミーですか?
確定ではありません。米国の大規模な検査室のデータでは、NIPTで13トリソミーの可能性が高いとされた方のうち、確定検査で確かめられたのは約45%でした。胎盤だけの変化などで陽性になることがあるため、羊水検査などの確定検査で確かめます。
🏥 Q. この事例では、どうやって確かめたのですか?
最初のNIPTで陽性となり、当院のNIPTでも陽性でした。胎児ドックで形の異常は見られず、羊水検査と臍帯血の検査の両方で低頻度モザイクと分かりました。ご夫婦は遺伝カウンセリングで話し合いを重ね、産むことを選ばれました。
\ 陽性でも、確定検査まで院内で受けられます /
当院のNIPTはすべてのプランで13トリソミーを調べます。陽性のときは、陽性後の遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられ、羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(主要な項目は3日以内に結果)。
1. 遺伝カウンセリングとは?
遺伝カウンセリングとは、遺伝子や染色体に関わる病気について、科学的根拠にもとづく医学的な情報を受け取り、悩みや疑問を専門家と一緒に整理していく診療です。情報を受け取るだけでなく、その情報をもとにご自身で決めていけるよう、心理的・社会的な面からも支えます。対象は、遺伝性の病気をもつ方や、おなかの赤ちゃんに染色体や遺伝子の変化が見つかった妊婦さんだけでなく、そのご家族や、まだ病気のない方も含まれます。
遺伝カウンセリングでいちばん大切なのは、置かれている状況を十分に理解し、それを受け止めたうえで意思決定することです。専門家はその過程を支えます。遺伝カウンセリングの考え方は遺伝カウンセリングの重要性と実施手順、NIPTでの遺伝カウンセリングの役割はNIPTと遺伝カウンセリングで解説しています。
2. 今回の症例の問題点:最初のNIPTで13トリソミー陽性
Aさんご夫婦は、結婚して初めての妊娠でNIPT(新型出生前診断)を受けることにしました。どこで受けるかをあまり考えずに、最初に別の医療機関でNIPTを受けたところ、結果は13トリソミー陽性でした。そこで、当院でもNIPTを受けて確かめたいと、ミネルバクリニックにお越しになりました。
13トリソミー(パトウ症候群)は、13番染色体が3本ある染色体の変化です。NIPTで陽性と言われたときに知っておきたいのは、NIPTの陽性は「可能性が高い」という意味で、診断ではないということです。米国の大規模な検査室に確定検査が依頼された712検体を解析した研究では、NIPTで陽性とされたうち確定検査で確かめられた割合(陽性的中率)は、21トリソミーで約84%、18トリソミーで約76%だったのに対し、13トリソミーでは約45%でした[1]。13トリソミーは、ほかのトリソミーに比べて、陽性でも赤ちゃんに変化がない場合が多いことがわかります。
3. 今回の症例の検査結果
当院のNIPTでも、結果は13トリソミー陽性でした。一方で、Aさんは胎児ドック(赤ちゃんの形をくわしく見る超音波検査)も受けており、赤ちゃんに形の異常は見られませんでした。すべての細胞が13トリソミーの赤ちゃんでは、超音波検査で何らかの異常が見つかることが多いと報告されています(13トリソミーの胎児33人の検討で、30人〔91%〕に少なくとも1つの異常)[4]。形の異常がないことは、13トリソミーの可能性を下げる手がかりの一つになりますが、それだけで否定はできません。そこで、羊水検査で確かめることにしました。
羊水検査の結果は低頻度モザイク、つまり、13トリソミーの細胞が一部にあり、ほとんどは正常な細胞という結果でした。
羊水検査のあとに臍帯血も調べた理由
羊水の中の細胞は、赤ちゃんの体の一部の組織からはがれ落ちてきた細胞で、全身の細胞を代表しているわけではありません。羊水を培養した細胞を1細胞ずつ調べた研究では、腎臓に由来する細胞が多くを占めていました(二分脊椎の胎児4人と健康な胎児1人の検討)[6]。また、モザイクのトリソミーでは、トリソミーの細胞の割合が組織によって違うことが知られています(21トリソミーのモザイクについての総説)[7]。
そこで、赤ちゃんの血液そのものを調べる臍帯血の検査(へその緒から赤ちゃんの血液をとる検査)も行いました。羊水検査でモザイクが見つかったとき、臍帯血で赤ちゃんの血液の細胞を調べて確かめる方法があります[2]。Aさんの臍帯血の検査でも、結果は低頻度モザイクでした。
13トリソミーのモザイクとは
モザイクとは、ひとりの体の中に、染色体の数が違う細胞が混ざっている状態です。13トリソミーのモザイクでは、トリソミーの細胞と正常な細胞が混ざっているため、すべての細胞が13トリソミーの場合とは違い、症状の出方に幅があります。ただし、どの組織にどれくらいトリソミーの細胞があるかは人によって違い、羊水や血液で調べた割合だけで、生まれてからの症状の程度を正確に予測することはできません。
なお、NIPTで陽性になる理由には、赤ちゃん本人ではなく胎盤だけに染色体の変化がある状態(胎盤限局性モザイク)もあります。NIPTは主に胎盤から血液中に出てきたDNAを調べているためです。染色体のモザイクは、絨毛検査の1〜2%、羊水検査の0.1〜0.3%で見つかると報告されています[2]。胎盤と赤ちゃんの細胞の違いは生物学的な性質なので、どれほど精度を上げてもNIPTの感度・特異度が100%になることはないと指摘されています[3]。Aさんの場合は、胎盤だけでなく赤ちゃん本人の細胞(羊水と臍帯血)にもモザイクがあることを、確定検査で確かめました。
4. 今回の症例の選択
Aさんご夫婦は、遺伝の専門家と話をしたいという思いから、産婦人科での検査が続くあいだも、当院とずっと連絡を取り続けていました。遺伝カウンセリングでは、モザイクとはどういう状態か、検査でわかったこととわからないことを一つずつ整理しました。
モザイクの場合、トリソミーの細胞がどこにどれくらいあるかによって、症状の出方は大きく違います。もちろん、脳などにトリソミーの細胞が多ければ、障害が出る可能性もあります。羊水検査で13トリソミーの低頻度モザイクと分かり、超音波検査で異常がなく、生まれたあとの発達も順調だったという報告もあります[5]。ただし、これは1例の報告で、すべての方に同じ経過があてはまるわけではありません。
いろいろと考えたうえで、Aさんご夫妻は産むという決断をされました。決断にあたっては、これまでに当院で13トリソミーの低頻度モザイクと分かり、出産された方の経過も参考にしていただきました。
その後、Aさんご夫妻にはお子さんが生まれました。経過は引き続き見ていく必要がありますが、今のところ大きな問題はないようで、ご夫婦は「産んでよかった」と感じておられるようでした。当院では、陽性になった方のその後を一例ずつ追い、その経験を皆さまにお伝えできるようにしています。
5. NIPTで13トリソミー陽性と言われたら
NIPTで陽性と言われたら、結果だけで判断せず、まず確定検査で赤ちゃん本人の染色体を確かめることが大切です。特に13トリソミーは陽性的中率が約45%と低めで[1]、胎盤だけの変化やモザイクが関わることがあります[2][3]。確定検査の選び方は絨毛検査と羊水検査の違い、陽性後の流れはNIPT陽性だったらどうする?で解説しています。
当院は2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。検査は基本は日曜日に行い、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。当院でNIPTを受けた方は、陽性後の遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられ、確定検査の費用は羊水検査互助会(カトレア会)で補助されます。ほかの医療機関でNIPT陽性と言われ、確定検査の受け入れ先が決まらない方も、できる範囲でお引き受けしています。
これからNIPTを受ける方へ
この事例のように、陽性のあとに確定検査や遺伝カウンセリングまで受けられるかどうかは、受ける施設を選ぶときに確かめておきたい点です。当院のNIPTは、スタンダードプラン・プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・双子マックスプラン・インペリアルプランのどれでも13トリソミーを調べます。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。料金はNIPTの費用・料金、精度の考え方はNIPTの精度でご確認ください。
\ 陽性のあとも、同じ施設で確かめられる安心を /
常駐する臨床遺伝専門医が、検査前の遺伝カウンセリングから陽性後の説明、院内での羊水検査・絨毛検査まで担当します。
6. まとめ
遺伝カウンセリングは、遺伝子や染色体に関わる病気について、科学的根拠にもとづく医学的な情報を受け取り、悩みを専門家と一緒に整理する場です。この事例では、NIPTで13トリソミー陽性となったあと、羊水検査と臍帯血の検査で低頻度モザイクと確かめ、その意味を整理したうえで、ご夫婦が出産を選ばれました。NIPTの陽性は診断ではありません。確定検査で確かめ、わかったこととわからないことを分けて考えることが、納得のいく選択につながります。
🩺 院長コラム【遺伝の悩みに真摯に寄り添う】
遺伝の悩みは、多くの場合、お子さんを持とうとするときに表面化します。おなかの赤ちゃんのこととなれば、なおさら深刻な悩みになります。
NIPTの陽性という結果だけで決めてしまわず、確定検査で確かめ、その結果が何を意味するのかを一緒に整理することが大切だと考えています。そういう悩みを抱えた方に真摯に寄り添える、そういう遺伝専門医でありたいと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 13トリソミーのモザイクとは何ですか?
体の細胞のうち一部だけが13番染色体を3本持ち、残りは正常な細胞という状態です。トリソミーの細胞がどの組織にどれくらいあるかは人によって違うため、症状の出方には幅があります。
Q2. NIPTで13トリソミー陽性になる確率と、本当に13トリソミーである確率は?
NIPTで13トリソミーの可能性が高いとされた方のうち、確定検査で確かめられたのは約45%と報告されています(米国の検査室に確定検査が依頼された712検体の解析)。21トリソミー(約84%)や18トリソミー(約76%)より低いため、陽性のときは確定検査で確かめることが大切です。
Q3. 羊水検査で低頻度モザイクだったとき、臍帯血の検査をするのはなぜですか?
モザイクの割合は組織によって違うことがあり、羊水の細胞の結果だけでは赤ちゃんの全身の状態がわからないためです。臍帯血を調べると、赤ちゃんの血液の細胞の状態も確かめられます。ただし、どの検査でも調べた細胞についてしか言えないことは変わりません。
Q4. 低頻度モザイクと分かったら、赤ちゃんは元気に生まれますか?
一概には言えません。低頻度モザイクで形の異常がなく、元気に生まれて発達も順調だったという報告がある一方、症状の程度を出生前に正確に予測することはできません。超音波検査の所見とあわせて、遺伝カウンセリングで考えていきます。
Q5. ほかの医療機関でNIPT陽性と言われました。ミネルバクリニックで確定検査を受けられますか?
できる範囲でお引き受けしています。当院は2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。検査は基本は日曜日に行い、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
🏥 NIPTの陽性は、確定検査で確かめてから考える
ミネルバクリニックでは常駐する臨床遺伝専門医が、検査前の遺伝カウンセリングから陽性後の説明まで担当します。陽性のときは羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられ、主要な項目は3日以内に結果が出ます。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。お急ぎの方はNIPT専用ダイヤル 03-3408-3768 へ。
参考文献
- [1] Petersen AK, Cheung SW, Smith JL, et al. Positive predictive value estimates for cell-free noninvasive prenatal screening from data of a large referral genetic diagnostic laboratory. Am J Obstet Gynecol. 2017;217(6):691.e1-691.e6. [DOI: 10.1016/j.ajog.2017.10.005](PMID: 29032050)
- [2] Grati FR. Chromosomal mosaicism in human feto-placental development: implications for prenatal diagnosis. J Clin Med. 2014;3(3):809-837. [DOI: 10.3390/jcm3030809](PMID: 26237479)
- [3] Grati FR, Malvestiti F, Ferreira JC, et al. Fetoplacental mosaicism: potential implications for false-positive and false-negative noninvasive prenatal screening results. Genet Med. 2014;16(8):620-624. [DOI: 10.1038/gim.2014.3](PMID: 24525917)
- [4] Lehman CD, Nyberg DA, Winter TC 3rd, et al. Trisomy 13 syndrome: prenatal US findings in a review of 33 cases. Radiology. 1995;194(1):217-222. [DOI: 10.1148/radiology.194.1.7997556](PMID: 7997556)
- [5] Chen CP, Chern SR, Wu PS, et al. Prenatal diagnosis of low-level mosaicism for trisomy 13 at amniocentesis associated with a favorable outcome. Taiwan J Obstet Gynecol. 2017;56(6):840-842. [DOI: 10.1016/j.tjog.2017.10.025]
- [6] Dasargyri A, González Rodríguez D, Rehrauer H, et al. scRNA-Seq of cultured human amniotic fluid from fetuses with spina bifida reveals the origin and heterogeneity of the cellular content. Cells. 2023;12(12):1577. [DOI: 10.3390/cells12121577]
- [7] Papavassiliou P, Charalsawadi C, Rafferty K, Jackson-Cook C. Mosaicism for trisomy 21: a review. Am J Med Genet A. 2015;167A(1):26-39. [DOI: 10.1002/ajmg.a.36861]






