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破水とは、胎児を包む卵膜が破れ、羊水が流れ出てきている状態のことです。
臨月に入り出産が近づいてくると、もうすぐ待望の赤ちゃんに会えるという嬉しい気持ちが湧いてくると同時に、「いつ破水や陣痛が起こるのか」「先に破水してしまったのに陣痛こなかったらどうしよう」など、不安に思うこともたくさんあるでしょう。
実際のところ、陣痛よりも先に破水してしまうことはめずらしくありません。出産のはじまりは陣痛から、と思われている方も多いですが、半数とは行かないまでも3割近くの方が破水をきっかけにお産がはじまっているとのデータもあります。
一般的に、陣痛がきていなくても破水していれば入院して出産の時を待ちます。しかし、すでに破水しているにもかかわらず、いつまで待っても陣痛がこないケースもあるようです。
そこでこの記事では、破水したのに陣痛がこない原因と対処法をご紹介します。
陣痛がこない状態で破水したらどうなる?
臨月とは妊娠36週0日、つまり妊娠10か月からのことです。ママや赤ちゃんにリスクの少ない正産期は、出産予定日の3週間前(妊娠37週0日)から出産予定日の2週間後(妊娠41週6日)までとなっています。そのため、予定日に陣痛がこなかったとしても、すぐに赤ちゃんの身体に悪影響が及ぶことはないでしょう。
しかし、正産期に破水したにもかかわらず陣痛がこないと、「出産できないのでは?」と不安になってしまうママも多いはず。そこでここでは、陣痛がこない状態で破水したらどうなるのかご紹介します。
まず、陣痛がこない状態で破水することを「前期破水」と呼ぶのをご存知ですか?前期破水が起こっても、約8割の方は破水後24時間以内に陣痛が起こるので、それほど心配することはありません。
万が一破水後もなかなか陣痛がこない場合は、病院で適切な処置を行ってくれますが、処置の内容については、妊娠何週目であるかや破水してからどのくらいの時間が経ったかによっても異なります。担当の医師の説明をよく聞いて、焦りすぎないよう注意しましょう。
破水したのに陣痛がこない原因
破水してからもなかなか陣痛がこないと、「赤ちゃんに何かあったのでは?」と心配になってしまうママも多く、中には自分のせいで陣痛がこないと泣いてしまう方もいるようです。
では、なぜそのような事態が起こるのでしょうか。ここでは、破水したのに陣痛がこない原因についてご紹介します。
陣痛がこない原因はさまざま
通常の場合、破水は分娩がはじまって子宮口が全開大になる頃に起こりますが、なんらかの原因により子宮内圧が上昇したり、子宮内が感染を起こしていたりすると前期破水が起こります。
以下は、子宮内圧が高まる原因です。
- 重い荷物を持ち上げた
- 転んでお腹をぶつけた
- 激しい咳やくしゃみをした
これらの原因により前期破水が起こりますが、破水したのに陣痛がこないのには以下のような原因が考えられます。
- 母体の栄養不足
- 子宮の収縮が弱い
- 妊娠週数が早い
- 子宮奇形や子宮筋腫など子宮に異常がある
近年、妊娠中も太りたくないからと過度のダイエットを続ける方も多く、母体の栄養不足が懸念されています。たしかに、妊娠中の急激な体重増加は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、難産などのリスクが高まるため注意すべきですが、適度な体重増加は必要です。
ママの栄養不足は陣痛が起こりにくくなる原因になりますので、栄養バランスに気をつけて規則正しく食事を摂るようにしましょう。
また、ママの子宮に子宮奇形や子宮筋腫がある場合も、子宮収縮が起こりにくく陣痛がなかなかこなかったり、妊娠37週よりも早く破水した場合も陣痛が起こりにくかったりします。
破水後6〜12時間経過すると感染リスクが上昇
上記では前期破水でも約8割の方は破水後24時間以内に陣痛が起こることをご紹介しましたが、時間が経過するとともに子宮内の感染リスクが上昇することも知っておかなければいけません。なぜなら、破水により子宮内に細菌が入り込むルートができてしまうからです。
つまり、破水すると出産を終えるまでの制限時間が生じてしまうのです。
具体的には、破水後6〜12時間が経過しても陣痛がはじまらない場合は、ママと赤ちゃんの感染リスクが上昇するため、感染を予防する抗生剤を使用して様子をみることになります。
感染を起こすと、ママの発熱や頻脈、羊水からの悪臭、膿性の頸管分泌物、子宮の圧痛などの症状が現れる可能性もあります。赤ちゃんも頻脈になったり具合が悪くなったりすることから、生まれてきた後の元気度に影響が出る恐れもあるでしょう。
さらに、胎盤が早い時期に子宮から剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」が起こるリスクも上昇するため、早急に適切な処置を受ける必要があります。
また、前期破水が原因で早産になってしまった場合は、赤ちゃんの肺や脳に問題が起こったり、場合によっては死亡したりする可能性も。
これらのトラブルが起こらないようにするためにも、破水をしたら陣痛の有無にかかわらず入院する必要があるのです。
陣痛がこないのに破水したときの対処法
なんの前触れもなく破水してしまうと、どうしたらよいかわからず、慌ててパニックになってしまうママも多いようです。万が一自宅や外出先で破水してしまったときに慌てないよう、いざというときどうすればよいのか、対処法を知っておきましょう。
前期破水の特徴
破水すると羊水が流れ出てくるのは当然のことですが、妊娠中は尿漏れしやすかったりおりものが大量に出たりすることもあるので、破水したことに気づかないケースも多いようです。
まずは前期破水の特徴を知り、破水に気づけるようにしておく必要があります。
- 色:無色透明もしくは淡い黄色、少量の出血が混ざったピンク色。
- におい:無臭もしくは生臭い、甘酸っぱい。
- 量:個人差が大きく下着や服がびしょびしょになるケースもあれば、おりものくらいのケースもある。高位破水では少量の場合が多い。
前期破水に限らず、破水は個人差が大きいため一概にはいえませんが、上記のような特徴がある場合は破水している可能性があります。
早急にかかりつけの産婦人科へ連絡
上述した通り、破水してから時間が経過すると感染を起こす恐れもあります。破水したかもと思ったら、まずは清潔なナプキンを当てて早急にかかりつけの産婦人科へ連絡しましょう。
その際、絶対にやってはいけないのが入浴やシャワーです。水を媒体として膣から細菌に感染する恐れがあります。自宅で突然破水してしまった場合、羊水を洗い流してから病院に行きたい気持ちもわかりますが、入浴やシャワーはせずに清潔なタオルなどで拭くだけにしておきましょう。
外出先で破水してしまった場合は、すぐに病院へ連絡してトイレでナプキンを当てます。そのままタクシーや自家用車で病院へ向かいますが、自分で車を運転して外出した場合は、車は運転せずにタクシーを利用してください。車は後で家族に取りに行ってもらうなどして対処しましょう。
臨月に入ったら、ひとりで車を運転して出かけるのは控え、家族と出かけるときはナプキンや大きめのタオルなどの破水セットを持っておくと安心です。入院セットは後で家族に持ってきてもらうか、常に車の中に準備しておいてもよいでしょう。
病院での対応
病院へ到着したら、まずは本当に破水しているか確認します。
破水していることが確認されたら、自然に陣痛がくるのを待ちますが、なかなか陣痛がこない場合は陣痛誘発剤や促進剤を使って陣痛を誘発させます。
ママと赤ちゃんにとくに問題がないようであれば、24時間何もせずに自然と陣痛がくるのを待つという病院も多いです。陣痛誘発剤や促進剤を使用するタイミングは病院によって異なるので、いつまで陣痛がこなければ薬を使うのか、医師や看護師に確認してみるとよいでしょう。
一般的には、まずは錠剤の陣痛誘発剤や促進剤を使用し、なかなかお産が進まないようであれば点滴での投与に切り替えます。それでもなかなか分娩に至らない場合は、緊急帝王切開で赤ちゃんを取り出すことになるでしょう。
まとめ
破水したのに陣痛がこない原因とその対処法をご紹介しました。
破水からお産がはじまることは、それほどめずらしくありませんが、なかなか陣痛がこないと不安になってしまうことでしょう。
破水から陣痛がくるまでの時間には個人差があり、いざそのときになってみないとわかりません。なかなか陣痛がこない場合は、陣痛誘発剤や促進剤を使って陣痛を起こすことになります。
陣痛誘発剤や促進剤は、陣痛を起こしてくれる反面、稀に陣痛の痛みが強く出てしまうことも。そのため、できれば自然と陣痛が起こってくれるのが理想ですが、赤ちゃんを無事に産むことを最優先に考え、必要であれば使用することをオススメします。
出産間近の方は、本記事を参考にいざというときに備えておいてくださいね。