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妊娠中のおりものは、通常のそれとは様子が違います。
そして、妊娠中はおりものの変化以上に、破水が心配の元です。
経過により変化するおりものと、見慣れない破水とはどう違うのか、そして注意しなければいけない病気など、膣分泌物から判断する様々な例をご紹介します。
妊娠中のおりものは変化する
おりものは、妊娠が進むにつれて役割が変わっていくので、様子が変化していきます。
おりものの形状には個人差がありますが、ここでは一般的な具体例を説明します。
通常のおりもの
おりものの役割は、自浄作用といって、膣内の潤いを保ち、汚れを防ぎ、有害な細菌の繁殖を防ぐことです。
そのために膣内を酸性に保ってくれているので、酸っぱい匂いがする場合があります。
おりものの形状については個人差がありますが、通常は粘液質で、排卵時には精子を受け入れやすくするため、ゼリー状に変化します。
このように、通常時にも変化がみられるおりものですが、妊娠すると、その時期によってさらに変わっていくのです。
妊娠期間中のおりものの変化
おりものと破水を区別する為には、初期から中期、そして後期へ移るにつれて変化するおりものの様子を知る必要があります。
おりものには妊娠中に限らず個人差があり一概には言えませんが、一般的な妊娠期間中のおりものが変化する例を一覧にしましたので、参考にしてください。
色 | 質感 | 匂い | 量 | |
妊娠初期(0~15週) | 乳白色・クリーム色 着床出血のため、少量の血液が混じることも |
さらっとしている | 酸っぱい匂いがきつく感じる | 通常に比べて増える |
妊娠中期(16~27週) | 半透明・乳白色 | 卵白状のとろみがある | 無臭 酸っぱい匂い |
初期に比べて若干増える |
妊娠後期(28~39週) | ホルモンの関係で、色が濃くなる 黄色・茶色 |
どろっとしている またはスライム状 |
生臭い、甘酸っぱいなど、匂いが強くなる | 中期に比べて若干増える 分娩前1週間ではさらに増える |
こうして見ると、うっすらと色があること、若干のとろみ、酸っぱい匂いという辺りが、ある程度の一般的な共通点と言えるかもしれません。
予定日前のおりもの
色に関しては、分娩が近くなると血液が混ざる場合があるので、純粋なおりものの色ではない場合もありますが、内診などが原因の出血が混じるだけのこともあり、痛みなどがないのであれば、心配いらないことがほとんどです。
妊娠初期から中期、後期へと、緩やかな形で少しずつおりものの量が増えていきますけど、出産の1週間前(臨月)頃からはさらに増え、胎児を産む際の潤滑剤になる為ドロっとした卵白状になります。
人によっては女性ホルモンであるプロゲステロンの所為で黄色っぽくなり、匂いが強くなる場合もあります。
また、スライムようなおりものも出てきますが、これは「粘着栓」という、細菌が入らないように子宮口に詰まって蓋の役割をしていたものが、分娩が近づくことで、溶けて出てくるものです。
個人差はありますが、この頃のおりものはナプキンがぐっしょりと濡れるほど水っぽくなる場合もあり、その際は破水の可能性も合わせて考えなければいけません。
破水とおりものの違い
破水は妊娠後期に起こりやすいと思われがちですが、妊娠中期にも起こる可能性があります。
重い物を持ったり、尻もちをついたりすると、卵膜の弱くなっている箇所が破けて破水する場合があるのです。
そして同様の時期になると、大きくなる子宮に膀胱が圧迫されていくので、妊婦さんは尿漏れに悩まされるようになります。
同じように重い荷物を持ったり、強めの咳やくしゃみをしたりしたときに尿漏れすることが多くなるので、おりものと破水だけではなく、尿漏れとの区別も付きにくくなります。
破水にも種類がある
おりものと同様、破水についても複数の種類に分けられます。
- ちょろちょろと水っぽいものが出る高位破水
- 子宮口近くの卵膜が破れる低位破水
- 破裂音の後にドバっと出る完全破水
- 陣痛前に来る前期破水
流れ出てくる分泌物が明らかに多い完全破水などの低位破水であれば、おりものと間違えることはほとんどなく、いつ病院に向かうかの話で済みます。
しかし、陣痛が来る前に破水する前期破水や、少しずつ羊水が流れ出る高位破水という、紛らわしい破水があります。
妊娠後期だけでなく、妊娠中期や初期にも起きる可能性が十分にある高位破水の場合は特に、おりものと同じように少量の分泌なので、一般の妊婦さんが破水かどうかを判断することはかなり難しいと言えます。
破水とおりものを見分けるポイント
おりものと破水は、分泌物に個人差がある以上、見分ける基準を断言するのは大変難しいところです。
尿漏れであれば、なるべく力まないなど、意識することで多少防げますが、自分でコントロールできない破水とおりものは見た目や匂い、感触などで判断することになります。
臨月など、破水との見分けが付きにくくなる水っぽいおりものと比べてみましょう。
色 | 匂い | 量 | 特徴 | |
水っぽいおりもの | 透明・白っぽい・黄色っぽいなど様々 | あまりしないか、酸っぱい匂い | 少しずつだが、人によって多い | ホルモンバランスが崩れると水っぽくなる |
破水 | やや黄色い乳白色または透明 出血が混じるとピンク色に |
生臭いか、甘酸っぱい匂い | 一気に大量、または、少しずつチョロチョロと出る | 水のようにサラサラしている |
尿漏れの場合は、色や量が破水によく似ている場合もありますが、決定的に違うのは匂いです。アンモニア臭がします。
上記のような水っぽいおりものは妊娠初期にも見られますが、妊娠初期の破水も有り得えます。その場合は早産や流産に繋がる危険があるのです。
おりものと違い、チョロチョロと止まらずにさらさら流れ出てくる分泌物の場合は、高位破水の可能性が高いと言えます。
こんな場合はすぐ病院へ
分娩が近い場合でのおりものの増量や、少量の高位破水など、紛らわしさに病院に行くのを迷うケースは多いと思います。
以下のような場合は病院へ早めに連絡をし、来院を指示されたらシャワー、徒歩などは避けナプキンをあてて、誰かに運転を任せた自動車を利用し、安静な状態で病院へ向かいましょう。
異常なおしるしや、破水かどうかわからない場合
おしるしの場合、わかりやすく月経のようなある程度の血液量であれば判断に困りません。
しかし血液量は人それぞれです。おりものに多少血が混じったような、健診後によく見る状態のピンク色と紛らわしかったり、しばらくすると止まったり、おしるし自体がない人もいます。
出血量が異常に多い、さらさらした出血が続く、塊りのような出血や強い痛みがある場合などは、陣痛を待たずに急いで病院に知らせましょう。
また高位破水の場合は、おりものと破水の区別がつけ難いにも関わらず、早期発見が重要な上、破水から分娩まで時間が空いていると感染の危険性があります。
病院で行われる破水かどうかの検査については、一般的にはBTB試験紙法という、リトマス試験のような形で行われますので、痛みなどはありません。
高位破水の場合は直ちに行わなければならない処置があるので、自己判断をせず早急に病院に連絡をしましょう。
感染症を疑う場合
妊娠中の感染症は、抵抗力が低下している状態で常在菌に感染してしまったり、性行為が原因だったりという場合が多いのです。
通常の膣内は、膣内細菌が弱酸性に保つ働きをしており自浄作用によって守られています。しかし性行為などでそのバランスが崩れると、細菌の増殖を許してしまい、細菌性膣炎が起きてしまうのです。
細菌性膣炎になると、灰色や黄緑色、時には通常のおりものに似た黄色っぽい色の膿状のおりものだったり、魚臭帯下(ぎょしゅうたいげ)と呼ばれる魚の腐ったような匂いのおりものが出ます。
強いかゆみがあり、ぽろぽろと白いカッテージチーズ状のおりものになるカンジダ膣炎や、黄緑色で悪臭を放ち、細かい泡が混じるおりものになる膣トリコモナス症などがあります。
日本で一番多い性感染症であるクラミジア膣炎は特に、水っぽいおりものが大量に分泌されるので、破水にとてもよく似ています。
それらの感染症を放置したまま悪化し、やがて卵膜に達すると、高位破水に繋がる絨毛膜羊膜炎となり、早産や流産の原因となるのです。
感染している際のおりものは、何らかの異常が見た目や匂いなどに表れ、量に至っては高位破水と見分けがつきにくいのが特徴です。高位破水も放置していい症状ではありません。早く医師に診てもらってください。
感染症は早期発見がとても重要です。少しでも異常を感じたら、すぐに病院へ連絡をして一刻も早く治療を受けましょう。
まとめ
破水とおりものの違いを知ってもらうために、それぞれの特徴や、些細な異常を放置してはいけない理由などを解説しましたが、心当たりはありましたか?
おりものについては、変な色をしていてかゆみや痛みがあり、匂いが異常であれば、なるべく早い受診をおすすめします。
おりものと破水の見分け方については、特に高位破水に関しては区別ができないと思って頂いた方がいいので、くれぐれも自己判断はせずに、気になるようなら早急に病院へ相談しましょう。
いざという時の為に入院の用意を進め、気になる異常を放置することなく、安心して分娩を迎えられるようにしっかり準備しておきましょう。