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妊娠すると、多くの女性はつわりに悩まされるようになります。
つわりの有無や症状の度合いは人それぞれですが、中にはつわりが辛くて日常生活に支障を来してしまう方も少なくありません。
つわりは病気ではないとよく言われますが、心身ともに健やかなマタニティ生活を送るためにも、つわりに関する正しい知識や対処法を知っておくことは大切です。
今回は、つわりの基礎知識と原因、症状、主な対処法について解説します。
つわりがあまりにもひどい場合は、無理せずに医療機関へ受診しましょう。
つわりとは?
つわりとは、主に妊娠初期に生じる消化器系の異常のことです。
つわりの有無や症状の種類、度合いには個人差がありますが、妊娠中に発生するトラブルの中でも特に頻度が高く、半数以上の妊婦さんがつわりを体験すると言われています。
妊娠週数が経過すると自然に治まるケースが多いですが、中には食事や水分を満足に取れないほど症状が悪化する方もいます。
脱水症状をはじめとする重度の症状を引き起こすつわりは「妊娠悪阻」と呼ばれ、医療機関での治療が必要になることもあります。
また、一度つわりが治まったものの、妊娠後期になって再びぶり返すケースも見られます。
つわりはいつから始まる?
つわりが始まる時期には個人差がありますが、胎盤や赤ちゃんの心音が確認できる妊娠5週目頃から始まり、妊娠中期に入る前後の12~16週頃まで続くと言われています。
ただ、全員がつわりを体験するわけではなく、中にはまったく症状がない方もいます。
一方で、生理予定日の一週間前からつわりの症状が始まる人、妊娠初期から出産までずっとつわりの症状が続く人、中期で一度落ち着いたものの、後期でぶり返したりする人など、つわりの時期は個人によってそれぞれです。
なお、同じ人であっても、一人目と二人目でつわりの有無や症状の度合い、期間が異なることもあります。
そのため、つわりがいつからいつまでと断言することはできませんが、多くの場合、妊娠が判明する前後に始まるので、つわり対策を考えるのなら妊娠前から準備しておく必要があるでしょう。
つわりのピークはいつ頃?
つわりの症状は、一般的に妊娠6~9週目あたりでピークを迎え、10週目以降になると徐々に緩和されていく傾向にあるようです。
もちろん、これはあくまで一般論で、前日までつわりがひどかったのに、翌日になったらぱたりと治まったという人もいます。
繰り返しになりますが、つわりの症状は個人差が非常に大きいので、「10週を過ぎても治まらない」「後期に入ってもつわりが続く」などの症状があったとしても、直ちに異常とは言えません。
ただし、つわりの症状が悪化して脱水症状などを起こした場合は、無理をせずに産院で適切な治療を受けましょう。
つわりの原因
つわりの原因は未だに全容解明されていませんが、妊娠によるホルモンバランスの変化に対応しきれないことが原因という説が有力視されています。
具体的には、妊娠したときに胎盤の絨毛(じゅうもう)から分泌される「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンが嘔吐中枢を刺激するためではないかと考えられています。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の変動がつわり症状が現れる時期と重なっているほか、hCGが高い事例(双子や胎状奇体など)ではつわりの症状が重くなったり、逆に流産のリスクが高いときはつわりの症状が軽減したりするからです。
また、妊娠中はプロゲステロンと呼ばれる黄体ホルモンの影響でガスが出やすくなります。
ガスが充満すると腸の動きが悪くなり、吐き気や嘔吐などを催す原因になることもあるようです。
いずれにせよ、妊娠によるホルモンバランスの変動は自分ではどうしようもないことなので、つわりそのものをコントロールするのは難しいと言われています。
ただ、つわり中でも、過ごし方を工夫すれば気を紛らわせたり、症状を軽減させたりすることが可能です。
つわり自体を防ぐことはできなくても、きちんと対策すれば重症化のリスクは下げられますので、諦めずに適切な対処を模索しておきましょう。
つわりの症状
つわりは消化器系の異常ですが、期間はもちろん症状も人それぞれで異なります。
ここでは代表的なものを7つご紹介します。
1. 吐き気・嘔吐
胃や胸がむかつく、吐き気を催す、あるいは嘔吐するなど、消化器官の異常が起こります。
むかつきや吐き気は空腹時に強くなる傾向にありますが、何か食べると吐いてしまうため、一日中ずっと気分が悪いという人も少なくありません。
症状が重いと、水分すらも吐いて脱水症状を起こしてしまう危険性があるため、通院または入院して点滴治療を受ける場合もあります。
2. においに敏感になる
妊娠すると、これまで気にならなかったにおいを強く感じたり、不快感を覚えたりすることがあります。
もともと嫌いだったにおいはもちろん、以前は好きだった香りが、妊娠を境に苦手になってしまう場合もあるようです。
どんなにおいに敏感になるかは個人差がありますが、ご飯の炊けるにおいやシャンプー、芳香剤、香水などを不快に思う方が多く見られます。
3. 眠気
睡眠時間を十分に取っているのに、日中に強い眠気に襲われたり、一日の大半を寝て過ごしたりする妊婦さんは少なくありません。
妊娠中に増えるプロゲステロンには、眠気を催すはたらきがあると言われており、いくら寝ても寝足りないという現象が発生しやすくなります。
4. 食欲不振
つわりが始まると、胃のあたりに不快感や重さを感じ、食欲が湧かなくなることがあります。
食欲不振は妊娠初期だけでなく、大きくなった子宮が胃を圧迫し始める妊娠後期にも発生しやすい傾向にあります。
5. 味覚の変化
妊娠を機に味覚が変化し、妊娠前に好きだったものが苦手になったり、逆に妊娠前は嫌いだったものが好きになったりする人もいます。
味覚の変化は出産と共に解消されるケースが多いですが、吐き気や胃のむかつきといった不快感の記憶と重なり、出産後も好みの変化が継続したというケースもあるようです。
なお、妊娠中はよく酸っぱいものを食べたくなると言われていますが、味覚や好みの変化には個人差があるため、酸っぱいものが食べられない、苦手という人もいます。
6. 頭痛
妊娠中に増加するプロゲステロンには、自律神経にはたらきかけて末梢血管を拡張させるはたらきがあると言われています。
血管が拡張すると、その周辺の神経が刺激を受け、炎症物質が生じて頭痛の原因になることもあります。
妊娠中の頭痛は、偏頭痛のように左右どちらかの頭がズキズキと脈を打つように痛むケースが多いようですが、まれに左右どちらも痛む場合があります。
なお、頭痛に関してはつわり症状だけでなく、妊娠悪阻や妊娠高血圧症候群が原因となっているケースもあります。
これらは医療機関で適切な治療が必要ですので、つわりと安易に決めつけず、頭痛に悩まされていることを医師に相談しましょう。
7. よだれ
通常、よだれは酸っぱいものを食べたり、美味しそうなものを見たり聞いたりしたときに大量に分泌されますが、つわりのときは何もしなくても断続的にたくさんのよだれが出てくることがあります。
人によっては自分の唾液を苦く感じてしまい、なかなか飲み込めずに困っている方も多いようです。
また、吐き気や嘔吐の症状がある方は、よだれを飲み込むとさらに気分が悪くなってしまうこともあります。
以上、つわりの主な症状をご紹介しました。
つわりのある妊婦さん全員がすべての症状に悩まされるわけではありません。
つわりの種類
前項で紹介したように、人によってつわりの症状には偏りがあり、以下のように大きく5つの種類に分類されます。
- ・吐きつわり:食べたり飲んだりすると嘔吐する
- ・食べつわり:常に何か食べていないと吐き気を催す
- ・においつわり:においに敏感になり、特定のにおいで気分が悪くなる
- ・眠気つわり:日中でも強い眠気や倦怠感を感じる
- ・よだれつわり:よだれが大量に分泌され、吐き気を助長させることがある
なお、人によっては吐きつわり+よだれつわりなど、複数の症状が重なっていることもあります。
つわりがつらいときの対処法
つわりの症状がつらいときの対処法は、前述したつわりの種類によって異なります。
自分がどのつわり症状に当てはまるのか確認してから、適切な対処法を試すようにしましょう。
ここではつわりの症状の種類ごとに、おすすめの対処法をご紹介します。
吐きつわりの対処法
ものを食べたり飲んだりしたときに吐き気を催す吐きつわりの方は、まず無理に食事を摂るという意識を見直しましょう。
お腹に赤ちゃんがいると、栄養のあるものを食べなければと焦ってしまうかもしれませんが、赤ちゃんが母胎から栄養を摂るようになるのは、胎盤が完成した後のことです。
それまでは卵黄嚢(らんおうのう)と呼ばれる器官から栄養を摂取するため、ママの栄養状態が赤ちゃんに大きな影響を及ぼす心配はないとされています。
そのため、妊娠初期のうちは無理に食べようとせず、食べられるものを食べられるぶんだけ食べることを意識しましょう。
吐きつわりの方は空腹になると吐き気が強くなる傾向にありますので、一日三度の食事にとらわれず、少量ずつ食べ物を口にして空腹状態にならないようコントロールするのがおすすめです。
食べつわりの対処法
何か食べていないと気分が悪くなる食べつわりの方は、吐きつわりと同じく、食べ物を小分けにして摂取しましょう。
食べ過ぎると胃腸に負担がかかり、吐き気や嘔吐の症状がひどくなる場合があるので要注意です。
また、炭水化物や甘いものばかり摂取すると血糖値が上がり、空腹感を増長させるおそれがあります。
食べつわりの場合、吐きつわりに比べると食べられるものが多い傾向にありますので、なるべくバランスの良い食事を心がけましょう。
においつわりの対処法
特定のにおいで気分が悪くなる場合や、においに敏感になってしまった場合は、シャンプーや洗剤、香水、芳香剤などを一時的に無香タイプのものに置き換えましょう。
食べ物のにおいがきついと感じる場合は、あら熱を取ってから冷蔵庫で冷やすとにおいが軽減されます。
ただ、冷たいものばかりを食べると胃腸に負担をかけますので、キンキンに冷やすのではなく、常温に近い状態で食べることをおすすめします。
眠気つわりの対処法
妊娠中に眠気を感じたら、無理に抗おうとせず休むことが大切です。
ただ、妊娠中も仕事を続けているワーキングママの場合、眠気を感じても起きていなければなりません。
そんなときは意識的に体を動かす、人と会話する、顔を洗うなど、うまく眠気を逃す工夫を取り入れましょう。
よだれつわりの対処法
つわりのせいで大量のよだれが出て、かつ飲み込むのが難しい場合は、ティッシュで拭くなどしてこまめに吐き出すことが大切です。
また、食事をしっかり摂ると唾液が分泌されやすくなるので、一度に食べる量を減らし、そのぶん食べる回数を増やすなどの工夫を取り入れてみるのもよいでしょう。
こまめに歯を磨いたり、ガムや飴など含んで口内をすっきりさせたりするのも有効な手段のひとつです。
【まとめ】つわりの症状ごとに、適切な対処法を試してみよう
つわりの原因は未だに全容解明されていませんが、ホルモンバランスの変化によるものという説が有力です。
妊娠中のホルモンバランスの変化は自分ではコントロールできませんが、つわりの症状ごとに適した対処法を実践すれば、症状を軽減させることが可能です。
ただ、つわりが重症化して脱水症状などを起こした場合は、自分だけで対処するのは困難です。
母胎に危険が及ぶ可能性もありますので、つわりが悪化して妊娠悪阻になった場合は、我慢せずに医療機関で適切な治療を受けましょう。
妊娠悪阻ほどひどくなくても、産院でつわりがつらいことを相談すれば、有用なアドバイスをもらえます。
つわりは精神的なストレスも少なからず影響しますので、一人で悩まず、周囲の人の助けを借りながらつわりの時期を乗り越えましょう。