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妊娠初期はホルモンの影響などにより、体温が通常時よりも高くなることはよく知られています。個人差はありますが、母体が妊娠をキープしようと高温の状態になるため、熱っぽさが続くことも多いです。
ここ数年は、新型コロナ感染症の影響により、妊娠がわかってから毎朝体温を測っているという方も多いのではないでしょうか。そんな状況の中、妊娠中期に入ったにもかかわらず体温が37℃を超えているとなると、「赤ちゃんは大丈夫なのか」「風邪を引いたのかな」「もしかしてコロナ!?」など、不安になってしまうママも多いはず。
そこでこの記事では、妊娠中の体温の変化、妊娠中期に微熱が出る原因と注意すべき症状についてご紹介します。妊娠中期に入ってからも熱っぽくて心配という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
妊娠中の体温の変化
妊娠中期は、ママと赤ちゃんをつなぐ胎盤がすでに完成しており、つわりも落ち着いてくることから、体調が良い日も多くなっているのではないでしょうか。
妊娠してから毎日体温を測っていたママの中には、妊娠中期に入る頃から体温が落ち着き出したことに気づいた方もいるようです。
では、そもそも妊娠中の体温はどのように変化していくのでしょうか。
妊娠初期は体温が上昇
個人差はありますが、一般的に妊娠すると体温の高い高温期が継続します。多くの方が36.7℃以上になるため、体温の上昇で妊娠に気づいた方もいることでしょう。
では、妊娠初期に体温が上昇するのは、ホルモンの影響だということをご存知ですか?
受精卵が着床したら、子宮内膜が剥がれないようにプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し続けます。プロゲステロンは体温をつかさどる脳の体温中枢に作用し、基礎体温を上げる働きをするため、低温期と比較して0.3〜0.6℃ほど高い高温期が継続するのです。
とはいえ、妊娠初期に体温が高くないからといって心配することはありません。妊婦健診で医師が順調だと判断すれば、なんらかの原因で数日間体温が下がっていたとしても、ほとんどの場合問題ないでしょう。
妊娠中期は徐々に37℃以下へ下降
多くの場合、妊娠13週〜妊娠14週目頃には高かった体温も次第に下降し、妊娠中期の中頃(妊娠6か月〜妊娠7か月頃)までには平熱に戻ります。
これは、赤ちゃんとママをつなぐ胎盤が完成し、ホルモンが分泌する場所が卵巣から胎盤へ移行するためです。
また、妊娠初期はホルモンが増生される状況に体が慣れていなかったことで体温が上昇していましたが、妊娠週数が進むにつれて徐々に慣れてくることも関係しているといわれています。これにより、妊娠初期から続いていた体温の上昇やつわりなども落ち着いてくるでしょう。
妊娠後期も平熱が継続
妊娠に伴う症状には個人差が大きく、出産するまでつわりがある方もいるため一概にはいえませんが、妊娠後期は妊娠中期と同様に平熱かそれ以下になります。
妊娠後期になると、お腹も大きくなってきたり皮下脂肪がついてきたりすることから、微熱があるように感じる妊婦さんも。とくに夏場は汗をかく場面も多いので、脱水症状にならないように注意しましょう。
妊娠中期に微熱が出る原因と注意すべき症状
上記では、妊娠中期になる頃には体温が平熱に戻ることをご紹介しましたが、中には微熱が出たというママもいるようです。
そもそも微熱に明確な定義はありませんが、普段の平熱よりも高く37.5度よりも低い場合を「微熱」といいます。ちなみに、「発熱」は微熱よりも高い37.5度以上を指し、それよりも深刻な体温を「高温」といい、38度以上のことです。
医師がなんらかの疾患を疑うのは、37.5度以上の発熱、もしくはさらに高い高温のときです。では、妊娠中期に微熱が出た場合、気にしなくてもよいのでしょうか。
ここでは、妊娠中期に微熱が出る原因を解説し、注意すべき症状についてもご紹介していきます。
ホルモンの影響
上記でもご紹介したように、妊娠するとプロゲステロンというホルモンの影響で体温が上昇し、妊娠中期に入る頃には平熱に戻るケースが多いです。
しかし、ホルモンは赤ちゃんが産まれてくるまで増生され続けるので、人によっては妊娠中期に入ったにもかかわらず微熱が出ることもあるでしょう。
また、妊娠中期になるとお腹の赤ちゃんも成長して大きくなってくるので、胎児が子宮内で熱を産生し、それによって熱っぽく感じるママもいるようです。
風邪
ホルモンの影響が妊娠中期も続くママがいる一方、免疫力が低下しやすい妊娠中は風邪を引きやすくなっており、風邪で微熱が出てしまうママも。
風邪の場合は、微熱の他に以下の症状が出ることもあります。
- 鼻水
- 咳
- 頭痛
- 喉の痛み
- 下痢
- 関節痛
妊娠中に風邪をひいてしまうと、妊娠していないときよりも辛く感じるものです。無意識のうちに脱水症状を起こしてしまう場合もあり、妊娠中では母子ともに危険な状態になる恐れもあります。上記のような症状がある場合は、水分補給をしっかりとして、安静にするようにしましょう。
また、妊娠中期には胎盤に備わっているフィルター機能のおかげで、薬の成分が子宮内に侵入するのを制限できるようになります。ただし、薬の成分によっては胎盤を通過して赤ちゃんの体内に入ってしまう恐れも。そのため、市販の風邪薬を服用したい場合は、必ず担当の医師に相談してください。
インフルエンザや新型コロナ感染症
インフルエンザや新型コロナ感染症なども、妊娠中期に微熱が出る原因のひとつです。
新型コロナ感染症については、妊婦さんだからといって重症化するわけではないといわれています。過度に心配することはありませんが、妊婦さんの方が肺炎になると重症化しやすいといわれているため注意が必要です。
ワクチンを接種した方もそうでない方もおられますが、妊婦さんの摂取に関するデータも限られていることから、妊婦さん自身が摂取のメリットとデメリットをよく理解したうえで判断するようにしましょう。
一方、インフルエンザは妊娠中にかかると合併症を起こしやすいといわれています。その確率は、妊娠14週から妊娠20週で妊娠していない状態の1.4倍となっており、それ以降はさらに確率が上昇します。
妊娠中期では、流産や早産、胎児死亡など、胎児に深刻な影響を及ぼす可能性があるので、同居家族が発症した場合や微熱しかない場合でも、病院を受診するようにしましょう。
トキソプラズマ症
風邪と似た症状が現れるトキソプラズマ症という感染症も、妊娠中期に微熱が出る原因のひとつです。
トキソプラズマ症は、感染しても正常な免疫機能が働いていればほとんど症状が現れることはありません。しかし、免疫力が低下している妊娠中は、重症化するケースもあるので注意が必要です。
トキソプラズマ症は、トキソプラズマという寄生性単細胞生物で猫科の動物が終宿主であるため、猫を飼っている妊婦さんはとくに注意しなければいけません。
トキソプラズマ症は、感染する箇所によって症状が異なり、胎盤を経由してしまうと赤ちゃんにまで感染し、先天性トキソプラズマ症を引き起こす恐れがあります。
妊娠中期に胎児が先天性トキソプラズマ症に感染すると、胎児の低体重や脳炎、黄疸のリスクが上昇するので、妊娠がわかったらトキソプラズマの抗体検査を受けておくようにしましょう。
その他の感染症
インフルエンザや新型コロナ感染症は、感染症の中でもとくに注意すべきですが、他にも胎児に影響を与えるような感染症は存在します。
以下は、妊娠中期に微熱や発熱の恐れがある感染症の例です。
赤ちゃんへの悪影響が懸念される感染症
- 風疹
- 水痘
- ジカ熱
- デング熱
早産などの原因となる感染症
- 麻疹
- 急性腎盂腎炎
- 虫垂炎
多くの感染症は、微熱や発熱の症状を伴います。そのため、心配なときは微熱であっても病院を受診し、原因となる感染症を突き止めて適切な治療を受けることが大切です。
注意すべきなのは37.5℃以上の発熱
妊娠中期は、ホルモンの影響や子宮内での胎児の熱の産生などにより微熱が出ることもあります。37.5℃以下の微熱の場合は自宅で安静にし、数日のうちに下がったのを確認できれば問題ありません。
上記でもご紹介したように、医師は37.5℃以上の発熱があるとなんらかの疾患を疑います。37.5℃以上熱があるときは、妊娠に伴う症状ではない可能性もあるため、早急に病院を受診することをおすすめします。
ただし、微熱であってもその他に喉が痛い、頭が痛い、咳や鼻水が出ている、熱が上がってきた、関節痛がひどいなどの症状がある場合、ただの風邪だろうと安静にして済ませるのは危険です。
重篤な事態を引き起こす疾患である可能性も捨てきれないため、微熱の他にも症状があるときはかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
まとめ
妊娠中の体温の変化と妊娠中期に微熱が出る原因、注意すべき発熱についてご紹介しました。
妊娠中期は、本来であれば胎盤の完成により高温期も終わって安定期に入るため、友達に会ったり出産準備をしたりと楽しく過ごせる時期です。そんなときに微熱が出てしまうと、不安になってしまうことでしょう。
妊娠中期に体温が37℃を超えたからといって、必ず何かの異常があるわけではありません。しかし、徐々に熱が上がってきたり他に症状があったりする場合は、かかりつけの産婦人科へ連絡し、医師の指示を仰ぐようにしましょう。
妊娠中期の微熱が不安な方は、本記事を参考に健やかな妊婦生活を送ってくださいね。