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妊娠中期に入ると、辛かったつわりも徐々に落ち着き、胎動も感じられるようになるため、やっと妊婦生活を楽しめるとワクワクしているママも多いことでしょう。
10か月におよぶ妊婦生活の中でもママと赤ちゃんが安定している妊娠中期は、一般的に安定期とも呼ばれ、産後の準備やお出かけなど、もっともアクティブに過ごせる時期です。
しかしそんな楽しい妊娠中期にもかかわらず、流産を経験したというママも。
流産は妊娠初期のものだと思っている方も多いだけに、妊娠中期に起こる流産は、ママや家族にとって悲しみも一段と深く、通常の生活を送ることすら困難になることもあります。
妊娠中期に起こる流産は、多くの場合母体に原因があるため、妊娠初期のものとは異なります。そう聞くとママのせいと感じてしまうかもしれませんが、逆に考えると流産を防ぐためにママ自身にできることがあるということです。
この記事では、妊娠中期に流産が起こる確率や治療、原因についてご紹介します。安定期に入ったものの、流産してしまわないか不安に思っている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
妊娠中期に起こる流産とは
流産とは、妊娠22週未満の時期に妊娠が中断してしまうことです。
妊娠12週未満の流産を早期流産、妊娠12週以降22週未満の流産のことを後期流産、それ以降を早産といいます。また、流産しかかっている状態のことを切迫流産といいます。
一般的に安定期と呼ばれる妊娠中期に入ると格段に流産の危険性は低くなりますが、流産や早産のリスクがまったくなくなるわけではありません。
ここではまず、妊娠中期に流産が起こる確率や症状による分類、治療などについてご紹介します。
妊娠中期に流産が起こる確率
そもそも、流産は妊娠した方の約15%にみられます。
その中でもっとも多いのは妊娠12週未満に起こる早期流産で13.3%、妊娠中期に起こる後期流産は、全妊婦さんの1.7%程度にみられるといわれており、早期流産と比べて極めて少ない確率です。
また、母体の年齢が上がるにつれて流産の発生頻度は高くなり、40歳以上の女性では25%もの確率となっています。それ以外にも、母子が病気になったり命を落としたりする可能性の高い「ハイリスク妊娠」と呼ばれる状態では、流産の確率は高まる傾向も。
以下は、ハイリスク妊娠の危険因子です。
- 年齢が若すぎる、もしくは高齢になってからの妊娠
- 低身長や肥満などの身体的な特徴がある
- パートナー不在での出産を控えているなど、社会的に弱い立場の方の妊娠
- 過去に流産や死産、妊娠中に問題があった
- タバコや薬物などを常用している
これらは妊娠中期に入っても流産のリスクを上昇させる問題であり、妊娠中だけでなく、陣痛や分娩児にもなんらかの問題が発生する可能性を高めるため注意が必要です。
妊娠中期に起こる可能性がある流産の症状による分類と治療
妊娠中期に起こる後期流産も、早期流産と同様に流産の種類によって症状が異なります。以下は、妊娠中期に起こる可能性がある流産の症状による分類と治療法です。
進行流産
進行流産とは、胎児が流産しかかっている状態です。出血や陣痛のような腹痛がはじまり、子宮の内容物が外に出かかっています。
進行流産がさらに進むと、完全流産もしくは不全流産となります。
完全流産は胎児を含む妊娠性の組織が含まれる胎嚢などが完全に子宮外に排出された状態で、不全流産は子宮の内容物が完全には外に排出されず、一部が子宮内に残っている状態です。
一般的な治療としては、完全流産では子宮内のすべてが排出されているため、そのまま経過観察になるケースが多いです。しかし不全流産の場合は、子宮の内容物が自然と排出されるのを待つか、残存物を取り除く子宮内容除去手術をするかのどちらかとなります。
ただし後期流産では、胎児や絨毛、胎盤が大きいため手術によって子宮から胎児や絨毛を取り出すのが困難です。そのため、ほとんどの場合死産分娩となります。
稽留流産
稽留流産とは、胎児が子宮内ですでに死亡しているにもかかわらず、腹痛や出血などの流産の症状が現れていない状態です。
超音波検査で胎児の成長がみられない場合や、胎児の心拍が検出できない場合など、担当の医師の診察によって、稽留流産と確認されます。
進行流産と同様に胎児や胎盤などの子宮の内容物が自然と排出されるのを待ったり、子宮内容除去手術を行ったりするのが一般的ですが、妊娠中期はすでに赤ちゃんが大きくなっているため、基本的には陣痛を起こして産むことになります。
進行流産と稽留流産のどちらの場合でも、後期流産では器具で子宮口を開いてから人工的に子宮収縮を起こす膣剤などを挿入し、赤ちゃんと胎盤を出すのが後期流産の一般的な治療法です。
最後は麻酔をかけて軽く掻把を行って処置は終了し、術後は3日間程度入院することになります。
後期流産は死産届の提出が義務となっており、戸籍に子どもの存在を残すことはできませんが、申請すれば出産育児一時金も支給されるでしょう。
妊娠中期でも流産の分類によっては気づかないことも
上記でご紹介したように進行流産では出血や腹痛がみられることから、ママ自身が流産の可能性に気づけますが、稽留流産では自覚症状がありません。そのため、妊婦健診などで病院を受診したときに診察ではじめてわかることも多いのです。
稽留流産の場合、ほぼ無症状なうえにママが自覚できるような前兆はほとんどありませんので、流産の兆候に気づいてあげられなかったと自分を責めないようにしましょう。
妊娠中期に流産が起こる原因
染色体の異常など、赤ちゃんに重篤な異常がある場合のほとんどは、妊娠初期で成長が止まり流産してしまうため、妊娠12週を過ぎてからの流産は非常に数が少なくなります。
つまり、妊娠中期に起こる流産の多くは、母体側の原因で起こるということです。しかし、勘違いしてはいけないのは、ママが何か体に悪いことをしたから流産したのではなく、子宮になんらかのトラブルが発生して流産になるという点です。
残念なことに、きちんと妊婦健診へ行っていたからといって、必ず妊娠中期に起こる流産を予防できるわけではありませんが、早期に問題を発見できれば医療技術を使って防げる可能性も高まります。
ここでは、妊娠中期に流産が起こる原因についてご紹介します。
母体の異常
以下は、妊娠中期の流産の原因となる母体の異常です。
- ・子宮奇形
- ・子宮筋腫
- ・子宮頸管無力症
- ・子宮内の癒着
- ・絨毛膜羊膜炎 など
上記の中でもっとも多いのは、子宮の出口にある子宮頸管がゆるんで開いてしまう子宮頸管無力症です。本来であれば、子宮頸管は赤ちゃんが外に出てくるほどの大きさになるくらいまでしっかりと閉じているものですが、なんらかの原因によって妊娠期間の途中で開いてしまうと、後期流産の原因となってしまうのです。
子宮頸管がゆるんでいると、膣から細菌が入りやすくなったり、子宮内で細菌感染が起こりやすくなったりすることで、さらに流産が起こる可能性が高まります。
妊婦健診などで早期のうちに発見できれば、子宮頸管を縛る手術をして流産を予防できるでしょう。
全身疾患や生活習慣
妊娠中期の流産は、高血圧や糖尿病、甲状腺、膠原病などの全身疾患が原因となって起こることもあります。
また、意外と多いのが母体への強いストレスによる流産や激しい運動、喫煙や肥満、飲酒、カフェインの過剰摂取といった生活習慣に関わる原因によるものです。
妊娠中期は安定期に入り、ママもつわりが軽くなるため無理しがちですが、持病をお持ちの方や体を動かす仕事をしている方は、くれぐれも注意しましょう。
細菌の感染
妊娠中期の流産では、母体側の要因が多いことをご紹介しましたが、その中でもとくに細菌の感染が原因となる頻度が高まります。
たとえば、細菌性膣炎などの炎症性疾患に罹患していると膣の自浄作用が阻害され、膣内常在菌を含むさまざまな病原体によって感染が起こります。そして絨毛膜羊膜炎や細菌の羊水内侵入が起こった結果、炎症性の子宮収縮が誘発され、本来開くべきではない子宮口が開いてしまったり、破水したりしてしまうのです。
おりものに血が混じる、粘着性がある、においが気になるなどの場合は感染が疑われるため、早急にかかりつけの産婦人科へ相談に行きましょう。
他にも風邪やB型肝炎、サイトメガロウィルス、クラミジア、梅毒、ヘルペスなどは感染による炎症を起こしやすく流産のリスクが上昇しかねないので注意が必要です。
まとめ
妊娠中期に流産が起こる確率や治療、原因についてご紹介しました。
妊娠中期に起こる可能性がある後期流産は、主に胎児ではなく母体側に原因があるといわれています。流産というと、一般的には妊娠初期に起こるイメージが強いため、安定期と呼ばれる妊娠中期に流産が起こる可能性もあることに驚かれたのではないでしょうか。
後期流産は、原因や治療法などについてもあまり一般的には知られていないことも多く、不安に感じる方もおられるかもしれません。
しかし多くの場合、流産は複合的な要因によって起こります。流産がこわいからと精神的なプレッシャーを感じたり、睡眠不足になったりすると、免疫力が落ちて逆に流産のリスクを高めてしまうことも。
後期流産が起こる確率は、早期流産と比べると非常に少ないものです。流産を予防したいのであれば、健康的な日常生活を心がけ、うまくストレスを発散するようにしましょう。