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女性にとって人生の大イベントである妊娠と出産。
出産前は赤ちゃんを迎える準備で忙しい上に、出産後は赤ちゃんのお世話に忙しくなるので、出産予定日の数か月前から産休に入る女性も多いようです。
産休や育休を取得するためには、さまざまな手続きが必要なことをご存知ですか?手続きのほとんどは会社を通して行われますが、種類もさまざまで複雑なので、産休前にきちんと確認しておくことが重要です。
また、産休に入る本人が内容を把握しきれていないと、せっかくもらえるはずのお金が受け取れないなど、損をしてしまうことも。
そこでこの記事では、産休、育休期間に受け取れる手当と免除になる保険料、税金と産休、育休を取得するための手続きの流れと必要書類についてご紹介します。
最後に手続きの準備や確認に便利なチェックリストもご紹介しているので、これから産休や育休を取るという方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
産休、育休期間に受け取れる手当と免除になる保険料、税金
そもそも、産休には産前休業と産後休業があります。産後8週間の産後休業は労働基準法によって定められた強制休業ですが、産前6週間の産前休業は本人の希望に任されています。育児休業も産前休業と同様に、申請することで取得できる休暇であるため、必ずしも休まなければいけないわけではありません。
基本的に、産休や育休期間中に給与の支払いはありません。中には産休、育休中も給与が支給される企業もありますが、稀なケースでしょう。
では、出産のためにお休みをとっている間、収入はゼロになってしまうのでしょうか。ここでは、産休、育休期間に受け取れる手当と免除になる保険料、税金についてご紹介します。
受け取れる手当
以下は、産休や育休中に給与の支払いがされない場合、給与の5〜7割程度受け取れる手当です。
- 出産手当金:勤務先の健康保険に加入している場合に支給される。
- 出産育児一時金:出産にかかる経済的負担を軽減するために、健康保険から1人につき42万円が支給される。
- 育児休業給付金:勤務先の雇用保険に1年以上加入している場合などに、子どもが1歳の誕生日を迎える前日(条件によっては2歳まで)まで支給される。
- 児童手当(子ども手当):現住所の自治体から子ども1人につき、3歳まではひと月1万5千円、それ以降は1万円が中学生まで支給される。(所得制限あり)
出産育児一時金は、産休、育休中に給与の支払いがされている場合でも受け取れます。しかし、出産手当金はそれより多い給与、育児休業給付金は給与の8割以上が支払われている場合、もらうことができません。
児童手当についても、扶養親族の数などによって所得制限があるため注意が必要です。
免除になる保険料、税金
産休、育休中は、国民健康保険以外の協会けんぽや組合健保などの保険料と、厚生年金保険料が免除になります。期間は休業の開始月から終了前月までで、日割計算は行いません。
ただし、自動的に免除されるわけではなく、申請書を提出する必要がありますので、会社を通して手続きを行ってください。
また、雇用保険料は給与が無給の場合は、自動的に免除になります。こちらは会社が計算をしてくれるので、とくに手続きをしなくても大丈夫です。
税金については、給与が支払われない場合は所得もないため所得税は発生しません。しかし、住民税は前年度の所得によって課税されます。住民税は納める必要があるという点に注意しましょう。
産休、育休を取得する際の手続きの流れと必要書類
産休や育休は、女性労働者に与えられている権利です。ただし上記でもご紹介したように、会社を通して申請しなければならないものや、病院、年金事務所に提出するものなどさまざまな種類があります。
とくに申請に期限があるものや提出するタイミングが重要なものなどは、いつまでに提出すべきかを意識しておかなければいけません。
そこでここでは産休、育休を取得するための手続きの流れと必要書類についてご紹介します。
産休前、産前休業中
産休は、取得する本人が会社へ妊娠を申し出て、取得するための申請を行わなければいけません。以下は、産休前に行う手続きと必要書類です。
- 産前産後休業届
- 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書
- 住民税の支払い方法確認
産前産後休業届は会社によってある場合とない場合があります。提出が必要な場合は、産休前に届けておきましょう。
健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書は、保険料の免除に必要な書類です。会社で用意してくれる場合もあれば、自分で用意する場合もあります。
住民税の支払い方法は会社によって異なるため、産休へ入る前に確認しておくことをおすすめします。
また、出産手当金の申請を予定している方は、勤務先から産休前に申請書類を受け取っておいた方がスムーズに手続きが行えるでしょう。
産後休業中
産後は産休、育休中でもっとも提出書類が多く、バタバタする時期です。産前から準備できるものもありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。以下は、出産後に行う手続きと書類です。
- 家族異動届
- 健康保険被扶養者異動届(子どもを扶養する場合)
- 健康保険出産育児一時金支給申請書
- 健康保険出産手当金支給申請書
- 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届
- 育児休業申出書
家族異動届は、会社によって仕様が異なり、提出期限もそれぞれです。
出産育児一時金や出産手当金の申請には、勤務先と出産した医療機関の医師、助産師の協力が必要になります。入院の際に書類を持参し、申請書の証明欄に出産に関する証明を受けるようにしましょう。
健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届は、予定日以外で出産したために産休期間が変更になった場合に必要です。
そして最後の育児休業申出書ですが、こちらは育休を取得するための重要な書類です。育休を開始する日のひと月前までに提出しなければいけませんので、出産後すぐに手続きを行うことをおすすめします。
ほとんどの申請が会社を通して行われますが、出産育児一時金のみ自分で申請するので注意しましょう。
育休中
産後休業終了後は、引き続き育休に入ります。産後休業中に育休取得手続きを行い、育休開始後は新たに給付金の手続きをすることとなります。以下は、育休中に行う手続きと提出書類です。
- 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届
- 育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
育休中も産休中と同様、基本的には給与が支給されないため、育児休業給付金という支援制度を利用できます。これを申請するためには育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書や、休業開始時賃金月額証明書が必要となります。
必要な添付書類は、母子手帳の印鑑があるページのコピーと振り込み口座の通帳の印鑑があるページのコピーなどです。
また、育休中も社会保険料は免除となりますが、期限内に申請する必要がありますので、忘れないように注意しましょう。
復職前
出産を終えて自分の体調や子どもの状況が落ち着いてきたら、そろそろ復職の手続きです。復職についても、いくつか提出しなければいけない書類がありますので、会社の担当者に用意してもらいましょう。
以下は、復職前に行う手続きと提出書類です。
- 出勤届
- 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届
- 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書
出勤届は、会社から提出を求められた場合のみ手続きを行ってください。
健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届は、社会保険料の免除を終了するために会社を通して日本年金機構へ提出する書類です。
そして厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書は、子どもが3歳になるまでの期間、時短勤務や残業なしで勤務したために給与が下がり、それに伴って社会保険料も下がることで年金額が減額されることを防ぐための特例です。
申請を希望する場合は、会社の担当者に必要書類を確認し、手続きを行いましょう。
手続きチェックリスト
以下は産休、育休を取得する際に必要な手続きのタイミングと必要書類をまとめたチェックリストです。ぜひご活用ください。
タイミング | 必要書類、手続き名 | 提出先 |
産休前、産前休業中 | □産前産後休業届 | 会社へ提出 |
□健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書 | 会社を通じて日本年金機構へ提出 | |
□住民税の支払い方法確認 | 会社へ確認 | |
産後休業中 | □家族異動届 | 会社へ提出 |
□健康保険被扶養者異動届(子どもを扶養する場合) | 会社を通じて協会けんぽ、健康保険組合へ提出 | |
□健康保険出産育児一時金支給申請書 | 加入している健康保険へ自分で請求 | |
□健康保険出産手当金支給申請書 | 本人または会社を通じて加入している健康保険へ請求 | |
□健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届 | 会社を通じて日本年金機構へ提出 | |
□育児休業申出書 | 会社を通じて日本年金機構へ提出(会社から育児休業取扱通知書の交付を受ける) |
育休中 | □健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届 | 会社を通じて日本年金機構へ提出 |
□育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | 会社を通じて公共職業安定所(ハローワーク)へ提出 | |
□雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 会社を通じて公共職業安定所へ提出 | |
復職前 | □出勤届 | 会社へ提出 |
□健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届 | 会社を通じて日本年金機構へ提出 | |
□厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書 | 会社を通じて日本年金機構へ提出 |
まとめ
産休、育休期間に受け取れる手当と免除になる保険料、税金と産休、育休を取得するための手続きの流れと必要書類についてご紹介しました。
近年、女性の社会進出とともに産休、育休取得後も働く女性も多いです。大きな企業にお勤めの場合は、会社側も手続きのノウハウをもっている可能性も高いですが、中小企業や担当者の経験年数によっては、手続きに不慣れな場合もあります。
産休、育休に関する手続きは、ほとんどが会社を通じて行ってもらうものです。会社任せにしてしまうと、手続きの時期を逃してしまうこともあります。
とくに注意すべきなのは、育児休業給付金の初回以降の手続きについてです。初回も出産日から4か月以降に手続きを行いますが、その後も2か月ごとに手続きが必要になるため、会社側も忘れてしまう可能性があります。
受け取れるはずのお金がきちんと支給されるよう、自分でもきちんと確認しましょう。