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妊娠初期の出血は妊婦さんの約3割が経験するともいわれており、それほど珍しいことではありません。
とはいえ妊娠初期は体だけではなく、心も非常にデリケートになる時期です。
予期せぬ出血があると「お腹の中で何か異常が起こっているのでは」「流産してしまうのでは」と不安な気持ちになってしまうものです。
そこで今回は、妊娠初期に起こる出血にはどのような原因が考えられるのか、また、出血時にチェックすべきポイントや対処法について解説します。
妊娠初期に起こる出血の原因
妊娠初期に流産する確率は10~15%程度ともいわれているため、妊娠初期の出血に不安を感じる方も少なくないでしょう。
しかし、妊娠初期の出血には体に何らかの異常があって起こるものと、生理現象として特に心配する必要のないものがあります。
以下では、妊娠初期に起こる出血の原因として考えられる代表的なものをご紹介します。
着床出血
着床出血とは、受精卵が子宮内膜に着床するときに子宮内膜の血管が傷ついたり、ホルモンバランスに変化が起こることによる出血で、妊娠初期に起こる出血の中で最も多い原因といわれています。
着床出血はほとんどの妊娠で起りますが、出血量が少量のため子宮内に吸収されてしまったり、おりものに混じることで出血に気付かないケースも少なくありません。
そのため、実際に着床出血に気付く人の割合は妊婦さんの4人に1人以下程度です。
出血が多い場合でも生理のように大量な出血が続くということはなく、生理の最初程度の出血が1日~4日程度続くだけのことがほとんどです。
また、着床出血があったからといって流産の可能性が高くなるようなこともありません。
着床出血は妊娠3週目~妊娠4週目にあたる生理予定日の1週間前~生理予定日頃に起こります。
一般的に着床出血が起こった1~2週間後の妊娠5週目頃に妊娠検査薬で検査を行うと陽性反応がみられます。
絨毛膜下血腫
受精卵が子宮内膜に着床する際、子宮内膜の血管が傷つけられて子宮を包んでいる絨毛膜と子宮内膜の間で出血が起こることがあり、このときにできる血の塊を絨毛膜下血腫といいます。
出血が少量であれば子宮に吸収されるものの、量が多い場合は膣の外まで漏れ出てしまいます。
絨毛膜下血種は超音波検査でも確認することができ、出血の量が少量~中量程度であれば治療をしなくても妊娠中期までに出血が止まることが多いものです。
しかし、血種が大きい場合は流産や早産のリスクが高まるため注意が必要です。
妊娠中期に入っても出血が続いたり血種が大きくなる場合は入院するなど安静を要することがあります。
子宮外妊娠(異所性妊娠)
子宮外妊娠は異所性妊娠とも呼ばれ、受精卵が子宮以外の卵管や卵巣、腹膜などに着床してしまう状態のことです。
全妊娠の1~2%の確率で起こるとされており、妊娠検査薬で陽性反応が出ているにも関わらず子宮内に赤ちゃんが見つからず、詳しく検査をした結果、子宮外妊娠と診断されるケースが多くみられます。
腹痛を感じることもありますが、ほとんどの場合自覚症状はありません。
子宮外妊娠は発見が遅れると卵管破裂による大量出血を起こし、妊婦さんの命に関わる危険性もあります。
妊娠の継続は不可能なため、子宮外妊娠と診断された場合は早急な処置が必要です。
早期に発見できた場合は注射で治療可能なケースもあります。
胞状奇胎
胞状奇胎は受精時の異常により胎盤を作るための組織である絨毛細胞が異常に増殖し、ぶどうのような粒錠になって子宮内に増えていく状態のことをいいます。
子宮外妊娠と同様、胞状奇胎も妊娠の継続は不可能なため、胞状奇胎と診断された場合は早急に子宮内の絨毛細胞を取り除く処置が必要です。
胞状奇胎では茶色の血がおりものに混ざっていたり、ごく少量の出血が断続的に起こることが多く、中には腹痛やつわり症状がみられることもあります。
切迫流産
切迫流産は流産しているのではなく、流産になりかけている状態のことをいいます。
妊娠22週未満で少量の出血が断続的にあったり、腹痛やお腹の張りなどの症状がみられる場合に切迫流産と診断されることがあります。
赤ちゃんの心拍が確認でき、出血が少量かつほかの症状も強くない場合は妊娠の継続が可能です。
反対に、出血が大量であったり、強い下腹部痛が伴う場合は流産になる可能性が高くなるため入院が必要となることもあります。
ただし、特別な治療法はないため、安静にしながらの経過観察です。
初期流産
妊娠22週未満の流産は初期流産といいます。
初期流産は妊娠12週目までに起こりやすく、流産の約8割が初期流産であるともいわれています。
その原因の多くは赤ちゃんの染色体異常によるものです。
初期流産が原因で起こる出血量は個人差がみられますが、出血は鮮血で、徐々に量が増えたり、下腹部に痛みが出ることが多い傾向にあります。
まったく自覚症状がない方もいます。
子宮頸部びらん
子宮の入口のあたりが赤くただれている状態のことを子宮頚部びらんといいます。
子宮頚部びらんは女性ホルモンが活発になることで起こる生理現象であり、病気ではありません。
そのため、基本的に流産のリスクもありませんが、子宮頚部びらんが起きていると、内診や性交などでも出血を起こすことがあります。
多くの場合出血は少量で、ピンクや茶色など、おりものに血が混じる程度です。
また、外的な刺激ではなく炎症を起こしているときに出血が起こることもあります。
炎症が酷い場合は抗生物質や膣内洗浄などの処置が行われます。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管とは子宮から膣につながる筒状の部分のことをいい、一般的に35~40mm程度の長さがあります。
子宮頸管ポリープはその名のとおりこの子宮頚管にポリープ(イボのような腫瘤)ができている状態です。
ポリープは柔らかく、内診や性交、排便時のいきみなどで簡単に出血しますが、出血量は少量で、長時間出血することはほとんどありません。
また、多くの場合このポリープは良性で、悪性に変異することも少ない傾向があります。
そのため、妊娠中でも直接赤ちゃんに影響はありませんが、ポリープが大きくなり炎症を起こすと流産を引き起こす可能性があります。
妊娠中はポリープの経過観察が必要です。
子宮頸がん
子宮頸がんは子宮頚部にできるがんで、ほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因です。
通常、子宮頸がんは初期の段階での自覚症状はありません。
しかし、進行すると不正出血や性交時の出血、下腹部の痛みなどが現れます。
出血は最初ごく少量で、徐々に増えていきます。
妊娠初期に受ける検診で子宮頸がんであることが発覚するケースもあります。
妊娠中に子宮頸がんと診断されるケースは妊婦さん10万人あたり10~50人程度です。
妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、進行度とがん細胞のタイプによっては妊娠継続を諦め、治療を優先することがあります。
妊娠初期の出血のチェックポイント
ここまで紹介した出血の原因からもわかるように、妊娠初期の出血では早急に対応すべきものとそうでないものがあります。
出血が起こった際に慌てることがないよう、出血があった際は以下の点を確認することを覚えておきましょう。
出血の状態を確認する
出血があった場合は、まず出血の色を確認しましょう。
出血の色は、出血してから体外へ出るまでの時間が長くなるほど茶色くなります。
出血が真っ赤やピンク色の場合は緊急性が高いと考えられるでしょう。
また、出血量についてもトイレの際にティッシュにつく程度のサラッとしたものよりも生理の2日目のような多い量やドロッとした塊状のものには注意が必要です。
いつから出血が起こったかも覚えておきましょう。
ほかの症状がないかを確認する
出血が起こった際は、出血以外の症状がないかも確認します。
腹痛やお腹の張り、発熱、吐き気などの身体的異常がないか、出血の原因となるような心当たりがないかも思い出してみましょう。
妊娠初期に出血が起きたときの対処法
妊娠初期の出血にはさまざまな原因が考えられますが、たとえ出血の量が少なく短期間の出血しかなかったとしても自己判断で大丈夫と判断してしまうことは危険です。
妊娠初期に出血が起きた際は、以下の手順で適切な対処をしましょう。
- 1.出血の状態を記録する
- 2.病院に連絡をする
- 3.病院を受診または安静にする
出血に気が付いたら、妊娠初期の出血のチェックポイントで紹介した内容を参考に、出血の状態や出血に気付いたタイミング、出血の頻度、出血の原因として思い当たることはあるかをまとめてかかりつけの病院に連絡をしましょう。
たとえば、すでにお腹の赤ちゃん心拍が確認されており、出血量もごく少量で出血が止まっているような状態であれば一旦安静を指示されることもあります。
反対に鮮血が出ている、出血量が多い、出血以外の症状がみられるといった場合は緊急性を要するケースが多いです。
病院を受診するように指示があった場合には、タクシーや車など極力身体的負担がかかりにくい方法を使って移動をしましょう。
【まとめ】自己判断をせず早めに医師に相談することが大切
妊娠初期の出血には特に処置もなく心配する必要のないものもありますが、何らかの異常によるものも少なくありません。
出血があった場合には、たとえ少量でも出血の色や頻度、そのほかの身体的症状を確認し、かかりつけの病院の指示を仰ぎましょう。
また、妊娠の可能性がある場合には、妊妊娠検査薬での判定ができる時期に検査をし、陽性の場合は速やか病院を受診しましょう。