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卵巣がチクチクするのはどうして?痛む理由や関わる病気、対処法を解説

出産という重要かつ重大なライフイベントを持つ女性にとっての腹痛には、女性特有の様々な怖い病気が隠されている可能性があります。

少し古くなったものなどを食べた場合の食あたりや、月に一度の生理痛、数日お通じがない時や、何かしらのプレッシャーによる胃痛など、原因にある程度の心当たりがある場合はまだ安心です。

しかし、女性特有の部分が病んでいるときの痛みが、なんとなく女性の不安をあおるのは、それが多分、本能によるものだからではないでしょうか?

女性の生殖器である卵巣の、生理や生理以外の時にチクチク痛むあの不快な症状について、痛む仕組みや、気になる症状、疑われる病気や対処法などを詳しく解説します。

卵巣の機能とは

子宮と卵巣が病気になる確率をグラフしたイメージイラスト画像

卵巣は妊娠・出産のためにとても大きな役割を果たす女性特有の臓器ですが、具体的にどのような働きをするのか説明します。

妊娠の準備をするエストロゲン(卵胞ホルモン)

卵巣には原始卵胞という、卵子の元になる細胞が蓄えられていて、初潮を迎えた女性はその数がゼロになるまで毎月1つずつ、原始卵胞を子宮へ向けて送り出します

送り出される前の原始卵胞は、卵巣の表面でエストロゲンというホルモンを分泌しますが、そのホルモンの役目は、子宮内膜という胎児のベッドになる場所を子宮内に作ることです。

子宮内膜ができる頃、原始卵胞は成熟して破裂し、中から卵子が飛び出して子宮へ向かいますが、これを排卵といいます。

出産の環境を整えるプロゲステロン(黄体ホルモン)

破裂して卵巣の表面に残った卵胞黄体に変化し、排卵直後からプロゲステロンというホルモンを分泌します。

すると、先に作った子宮内膜をさらに厚くして受精卵が着床しやすくし、乳腺も発達させます。

そして妊娠が成立しなかった場合、プロゲステロンの分泌量は減少していき、分泌が止まると、役目のなくなった子宮内膜は剥がれ落ちます。それが生理です。

卵巣はどうして、どんなときにチクチク痛むのか

赤血球のイメージイラスト画像

卵巣の働きは妊娠・出産に関わるホルモンの分泌を行うというものですが、ではその流れの中の、どんなときにどのような理由でチクチク痛むのでしょうか。

排卵痛

生理と次の生理との間の丁度真ん中の時期、つまり、次の生理の2週間前くらいのときの数日間に、排卵が行われます。

その排卵の際に、チクチクと痛むことがあります。それが排卵痛です。

原始卵胞が破裂して卵子が飛び出していくのですが、破裂のときの卵胞の大きさは約3cmと、卵巣の大きさだけでも親指大ほどあるのに、その卵巣と似たような程度まで大きくなった卵胞が破裂するのですから、痛みがあるのも頷けます。

そして排卵時に卵子が勢いよく飛び出して、卵巣を傷つけてしまう場合や、排卵時の卵巣は腫れることがあるなど、排卵痛の原因は様々あります。

痛みだけでなく、出血(排卵出血)してしまう人もいます。

卵巣以外が痛い

卵巣の周りの臓器が痛む場合、それが卵巣なのか、子宮なのか、あるいは腸なのか、実際のところしっかり区別がつくのかというと、実はかなり曖昧です。

卵巣が痛いと思っていたけれど、生理中はホルモンの作用で下痢や便秘をしやすいので、蓋を開けたら腸にガスが溜まっていただけだった、という場合も結構多いのです。

卵巣や卵巣周辺の臓器の痛みは、自分ではしっかりと判断しづらい部分があるので、本当はどこが痛いのか、きちんと判明させる必要があります。

チクチクせずに急に激痛になることも

卵巣腫瘍の場合、腫瘍自体は良性でも、卵巣の場所が骨盤の奥にあり自覚症状もないため、大きくなっていることにも気付かない場合が多いです。

そして卵巣が痛む場合に疑われる病気は他にもあります。

茎捻転

痛みも何もないまま静かに大きくなることで起こる、卵巣が根元から捻じれる茎捻転の場合、ある日急に、耐えがたい激痛に見舞われます。

茎捻転を引き起こし血流が止まってしまい、36時間以上経ってしまうと、卵巣は壊死を始めます。

そうなると緊急手術で卵巣を摘出しなければなりません。

子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内膜を構成するのと同様の細胞が、子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。

生理のときのようにその場で増殖・剥離を繰り返すので、痛みも出血もあります。

放置していると、痛みがどんどん強くなり、生理中以外にも痛むようになります。

チョコレート嚢胞

チョコレート嚢胞は子宮内膜症の一種で、内膜剥離時の出血がどこにも排出できずにチョコレートのように溜まって袋状の腫瘍(嚢胞)になる病気です。

放置しているとだんだん大きくなり周辺臓器と癒着して、生理の度に痛みが増し、日常生活に支障をきたします。

そしてチョコレート嚢胞はがん化する可能性もあります。

痛みが右か左に偏る場合がある

卵巣は子宮を挟んで左右にあり、必ずしも両方一緒に痛む訳ではなく、左右でいえばどちらかというと、右下腹部が痛むことが多いようです。

その場合に疑われる病気としては、子宮内膜症子宮筋腫子宮腺筋症卵巣腫瘍卵管炎骨盤内腹膜炎などで、これらが発症した場所によって、痛む場所が左右に分かれ、付随する症状を併発したり、痛みが悪化していったりする可能性もあります。

子宮筋腫や卵巣腫瘍などは大きくなるまで自覚症状がほとんどない病気ですが、卵巣辺りがチクチク痛む場合は卵管炎などの可能性があり、放置すると不妊などを引き起こしたり腫瘍の原因になったりしますので、早めに婦人科を受診しましょう。

排卵痛は予防・対処・治療できる?

婦人科で提出するカウンセリングをするためのアンケート用紙

では排卵痛の予防方法や対処方法、治療が必要な場合などについて見てみましょう。

チクチクか、激痛かで対処は変わる

チクチクと痛む場合は排卵痛である可能性は高いですが、生理痛がだんだん酷くなったり、日常生活に支障が出たりする場合は、卵巣や子宮の病気で治療が必要かもしれませんので、早めに婦人科を受診しましょう。

子宮内膜症の場合は、卵巣がチクチクする程度の痛みで気付くことはほとんどないので、排卵痛もあるけれども、それよりまず生理痛が酷いという場合などは注意が必要です。

生活習慣を整える

ストレスは様々な身体の不調を引き起こしますが、排卵痛の直接の原因としては考えづらいといわれています。

しかし、普段から排卵痛がある人が、ストレスを抱えていたり、睡眠不足や取れない疲れ、身体の冷えなどに悩まされていたりすれば、痛み自体をより強く感じる可能性は大いにあります。

人によっては排卵痛で腰痛を引き起こす人もいますので、普段から冷え性だと、通常より腰痛を不快に感じられるでしょう。

卵巣のチクチクする痛みを感じる度に不安に襲われるよりも、ストレスをなるべく溜めないようにし、入浴などでもシャワーではなく湯船に浸かるなどして身体を温め、しっかり疲労を癒し質の良い睡眠をとる努力をすると、排卵痛も多少軽減されるかもしれません。

市販の鎮痛剤

市販の鎮痛剤も有効ですが、婦人科でも受診すると処方される場合があります。

鎮痛剤は対症療法といって根本を治療するものではありませんが、今ある症状を和らげる治療を行った上で、その間に原因究明や対策をとることが期待できます。

低用量ピル

ピルはもともと女性側の避妊法ですが、低用量ピルは生理中のトラブルに対して効果があると言われています。他には排卵痛の軽減、多すぎる経血の調節などにも服用する場合があります。

しかし、どちらも婦人科を受診した後での処方になりますので、生理痛や排卵痛でお悩みであれば受けておくといいでしょう。

生理痛や排卵痛を放置しない

上述した茎捻転などは、卵巣腫瘍を早期発見することで防げる場合があります。

生理痛や排卵痛が茎捻転には直接関係ない症状だとしても、それを放置せず婦人科に相談するきっかけにすることで、罹るかもしれない病気を早期発見できたり、早い時点の治療開始に繋げたりすることができます。

生理痛も排卵痛も、本来であればそのような症状がないのが正常ですので、PMS(月経前症候群)といった症状に悩まされているのであれば婦人科の受診をおすすめします。

まとめ

卵巣がチクチクする理由や、対処法、疑われる病気など、思った以上にあったのではないでしょうか。

生理痛はあって当たり前、だから排卵痛も、女性だからあっても仕方ない、というのがひと昔前の考え方でした。

しかし、生理時や排卵時に不快な症状がある場合は治療が必要だということは、最近の常識になりつつあります。

妊娠や出産は、本来もっと激しい痛みを伴うものであるにも関わらず、女性がその大事を受け止められるのは、卵巣などの女性の生殖器が、痛みに鈍感な臓器だからです。

特に女性特有の病気は気付きにくいため、早期発見がとても重要で、自覚症状に気が付いたときにはもうかなり進んでいることが多いです。

この記事が、早めに婦人科を受診して早く安心して頂くためのきっかけになれば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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