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出産という大役をその身体に任されて生まれてきた女性にとって、卵巣から分泌されるホルモンはとても繊細で重要な位置づけを以て存在しています。
男性と違い2種類ものホルモンの働きに影響を受けて、女性の身体はとても複雑に変化しますが、その体調に振り回されている方も多いのではないでしょうか?
ホルモンと、それを分泌する卵巣の関係や、ホルモンバランスが及ぼす影響や病気など。
大切だとは分かっているけど詳しいことはよく知らない女性ホルモンについて、分かりやすく解説します。
そもそもホルモンとは?
水分が不足しているのに、水を摂らないままでいると脱水症状を起こすように、身体の環境や状況がいつもと違うまま通常通りの働きをしていると、体調を崩してしまいます。
例えば水分不足を感知すると「血圧が下がらないように」や「尿を濃縮して体外に水分が逃げるのを防ぐように」、「喉の渇きをより強く感じられるように」などの、様々な対策の情報を含んだ物質「情報伝達物質」が身体の各場所で作られます。
その情報伝達物質は、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、すい臓、生殖腺などの、内分泌腺と呼ばれる場所で作られ、刺激という形で、目的を果たすために各器官の受け取り役である「受容体」に、バトンのように渡されていき、最終的な器官へと辿り着きます。
遠く離れた場所でとるべき対策の内容を含んで送られていく、その情報伝達物質が「ホルモン」です。
ホルモンは現時点で100種類以上が発見されており、繊細かつ重要な働きで、人間の身体を調整しています。
女性ホルモンは2種類ある
上述のホルモンの中には、男性・女性それぞれ特有のホルモンがあります。
女性ホルモンと呼ばれるものは2種類あり、以下のような形で卵巣から分泌されます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
卵胞とは、卵子として排卵される前(成熟中)の状態のもので、卵巣内にあります。
その卵胞から分泌されるので、エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれています。
エストロゲンの分泌は、乳房や生殖器を発達させて女性らしい身体を作ったり、子宮内膜を厚くして妊娠しやすくしたりする働きがあります。
また、自律神経の働きも安定させるので、代謝や体調が良くなります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)
プロゲステロンは、成熟し変化して排卵された卵胞(卵子)から分泌されます。
変化した卵胞は黄色い色素を含む細胞で満たされているので、黄体と呼ばれます。
卵巣の中で黄体となった卵胞から分泌されるので、黄体ホルモンともいいます。
プロゲステロンは、エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を柔らかくしたり基礎体温を上げたりするなど、やはり妊娠しやすくするためのホルモンです。
エストロゲンが妊娠の為の環境を整えるホルモンだとしたら、プロゲステロンは水分や栄養を蓄えたり食欲を増進させたりするなど、その環境の質を高めるホルモンといえます。
女性ホルモンはどのように分泌される?
生理の周期から見ても分かるように、女性ホルモンは妊娠に必要な分泌や調整をひと月周期で行います。
妊娠準備の指令は脳、もっと詳しく言うと視床下部から、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン(=GnRH)を分泌することで排卵を促すよう発せられます。
その命令を受け取った脳下垂体は、
- FSH(卵胞刺激ホルモン)
- LH(黄体化ホルモン)
という、2種類の性腺刺激ホルモンを分泌します。
さらに、この2種類のホルモンを受け取った卵巣は、
- FSHから受け取った刺激でエストロゲン
- LHから受け取った刺激でプロゲステロン
を、それぞれ分泌します。
ここで分泌される女性ホルモンの量の過不足は卵巣に監視されていて、さらに量を抑えたり増やしたりなどの必要な指令を脳に出させるという、フィードバックの機能も卵巣にはあります。
卵巣の病気と女性ホルモン
それではその女性ホルモンの分泌量が、不足したり過剰になったりして、ホルモンバランスが崩れた場合、女性の身体にはどのような影響や罹る病気があるのかを紹介します。
エストロゲンのバランスが崩れた場合
エストロゲンは生殖機能の他にも、自律神経や心臓血管系、脂質代謝などを調整する働きを持っていて、更年期と呼ばれる45~55歳辺りから急激に減少します。
エストロゲンの分泌が不足した場合、
- ホットフラッシュや発汗
- 倦怠感、うつ、不眠
- 泌尿生殖器の萎縮
- 骨量減少
- 脂質異常症や動脈硬化の恐れ
などが心配されます。
逆に、エストロゲンが過剰になることで起きる問題もあります。
もう一つのホルモンであるプロゲステロンは、年齢による減少率がエストロゲンよりも高いため、相対的にエストロゲンの方が多くなる相対的エストロゲン過剰(エストロゲンドミナンス)という症状が現われることがあります。
エストロゲンが過剰な状態が続くと、子宮筋腫や良性の卵巣腫瘍、子宮内膜症などに罹っている場合、それに伴う不快な症状である貧血や生理痛、不妊症などが悪化しながら閉経まで続く可能性があります。
特に、子宮内膜症はエストロゲンの過剰が続くと増殖し、がんになりやすくなります。
そして、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、若年層に多い子宮頸がんの中には、エストロゲンの過剰によりその発生率が上がるホルモン感受性がんがあるといわれています。
プロゲステロンのバランスが崩れた場合
プロゲステロンは妊娠の際に働くホルモンなので、妊娠以外に関しては、その増減で身体に疾患を引き起こすことはまずありませんが、エストロゲンと同様、50歳前後から急激に減少します。
妊娠中にプロゲステロンが不足すれば受精卵が着床しにくく、不妊や流産の危険性が出てきます。
逆にプロゲステロンが過剰な場合や、エストロゲンより多い場合は、
- 胸の張りによる圧痛
- 頭痛・腰痛
- 肩こり・むくみ
- 便秘
- 吐き気
などの月経前症候群(PMS)の原因になります。
卵巣の病気の治療後のホルモンバランス
卵巣の病気に罹り、摘出を経験している場合も、ホルモンバランスに影響が出る場合があります。
卵巣を一部切除、または片方切除した場合
卵巣が片方ないからと言って、生理が2ヶ月に1回になるのかといえば、実際のところ毎月来ることには変わりありませんが、これは、残された卵巣が2倍排卵するということになるからです。
ですので、治療で一部切除した場合も、片方切除した場合も、ホルモンは変わらず分泌されるということになるので、バランスの崩れは殆ど認められないというのが一般的です。
卵巣を全摘出した場合
卵巣を全摘出した場合は、女性ホルモンの分泌が止まってしまう(外科的閉経)ため、ホルモンバランスが崩れ、更年期障害の症状が現われます。
閉経している場合の卵巣摘出の場合は、すでにホルモン分泌が止まっている上での摘出なので、術後も特に変化はありません。
女性ホルモンのバランスを整えるには
例え年齢を重ねても、妊娠を臨んでいないとしても、そして妊娠を迎えても、その時その時の人生を、少しでも快適に過ごしたいものです。
では、ホルモンバランスを崩してしまったときに、できることは何でしょうか?
ホルモン療法・投薬
「ホルモン補充療法(HRT)」など、減少したホルモンを補充する療法は、更年期障害などに有効です。
症状によっては漢方薬なども併用して治療を行います。
がん治療に関しては、ホルモン分泌を抑制する薬剤を投与してがん細胞の発育を抑制してがん治療を補助する療法や、特定のホルモンが分泌されることでがん細胞が増殖するのを防ぐため、そのホルモンを分泌する部分を切除する治療法もあります。
食事療法
日頃の食生活でもホルモンバランスを心がけることは可能です。
痩せ過ぎても太り過ぎてもホルモンバランスは崩れやすく、生理不順などを引き起こします。
必要な栄養素を摂ることはもちろんですが、減少すると顕著に症状として現われてくるエストロゲンは、豆腐などの大豆製品に多く含まれているイソフラボンが似た働きをするので、積極的に摂るといいでしょう。
他にも、骨量を補うカルシウムや、コレステロールをコントロールする乳製品などもおすすめです。
サプリメント
更年期障害や生理不順対策として、市販のサプリメントも数多く出ています。
通院して治療を受けるような症状の場合は注意が必要ですが、受診まではいかないけどちょっと気になる程度の時点であれば、サプリメントで補ってみるのもひとつの方法です。
ホルモンバランスの改善に影響を与えるサプリの成分としては、
- イソフラボンが主成分のエクオール
- 血行促進作用や抗酸化作用があり、ホルモンバランスも整えるビタミンE
- 精神の安定を図る作用のあるビタミンB6
- 精神安定の効果のあるトリプトファン
など、他にも妊娠中の栄養補給やホルモンバランスの崩れが原因の肌に効く成分など、ホルモンバランスに関わる数多くのサプリが出回っています。
しかし、体調で気になるところがあればまずは婦人科を受診するべきであり、サプリの利用で済むならそれも踏まえて医師に相談してみましょう。
まとめ
卵巣とホルモンの関係は密接で複雑ですが、不快な症状に対してとれる対策も治療もさまざまあることが分かって頂けたかと思います。
卵巣ホルモンのバランスの崩れが引き起こす「なんとなく疲れやすい」「なんとなくイライラする」症状が、病気発見に至るほどのものとして捉えにくいのは、自覚症状に乏しい卵巣の病気に通じるものがあると思いませんか?
調べた結果、取り越し苦労だったと知ることも、健康な体のためには必要なことですので、ホルモンバランスが気になるようなら早めに受診しましょう。