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卵巣茎捻転は緊急手術が必要?症状や原因などの詳細と治療について解説

「下腹がキリキリ痛む」「生理痛にも似た、キリで穴をあけているかのような腹痛がある」などの場合、「卵巣茎捻転」の可能性があります。卵巣茎捻転は「らんそうけいねんてん」と読み、漢字を見るとわかるとおり卵巣をつないでいる茎部分がねじれてしまった状態です。

普段、体の調子によって突然お腹が痛くなったり、体のどこかが痛くなったりすることもあります。そのような場合、痛みを感じる場所や痛みの種類で「これは生理痛」「これは下痢」など、どこがなぜ痛むのか、わかることも多いです。

しかし卵巣の痛みについては、「これは卵巣の痛みだ」と自分でわかる方も少ないうえ、卵巣茎捻転になると救急車を呼ばざるを得ないほどの激痛が突然訪れることもあります。

しかも、そのまま入院して手術をすることになるケースも多いため、聞き慣れない病名と突然の手術に気が動転してしまう方もいるようです。

そこでこの記事では、卵巣茎捻転の症状や原因などの詳細と、診療科目や治療について解説します。

卵巣茎捻転の詳細

卵巣と子宮のイメージ画像

卵巣とは、女性の子宮の両脇にひとつずつ存在する楕円形の臓器です。卵子の成熟や排卵を行う機能と、女性ホルモンを分泌する機能があります。

体の奥に位置するため、腫瘍ができた場合でも自覚できる症状はほとんどなく、検診などで検査を行った際に偶然発見されることも少なくありません。

中には、卵巣腫瘍ができていることすら気づいていない状態で突然強い腹痛に襲われ、卵巣茎捻転になっていることが発覚して緊急手術をしたという経験のある方も。

ここではまず、卵巣茎捻転の代表的な症状や原因、なりやすい年齢などについてご紹介します。

卵巣茎捻転とは

卵巣茎捻転とは、卵巣腫瘍などが原因で卵巣がねじれてしまい、元に戻らなくなった状態です。卵巣周囲の血流が悪くなるので、その部位の組織が徐々に壊死していってしまいます。

完全に壊死してしまうと、治療を行っても卵巣を含めた組織の機能の回復は望めません。そのため、早急な診断と治療が重要となります。

代表的な症状

以下は、卵巣茎捻転の代表的な症状です。

  • 腹痛がある
  • 下腹部の痛みがある
  • 吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状がある
  • 卵巣腫瘍がある
  • 腹部を押すと激しく痛む
  • 腹部の左下が痛む
  • 腹部の右下が痛む

卵巣茎捻転の主な症状は、腹部の激痛です。その予兆として、キリキリとした痛みを感じることもあります。多くの場合、激しい痛みとともに嘔吐を伴いますが、性器出血を伴うことはないため、婦人科系の疾患と気づかず他の診療科を受診してしまうこともあるようです。

卵巣茎捻転が起こってから数時間から1日程度の時間が経過すると、卵巣周囲の組織が完全に壊死してしまう可能性もあり、そうなってしまうと逆に痛みを感じなくなるケースも。

この場合、卵巣機能の回復は望めないケースが多いので、痛みを我慢せず速やかに受診することをおすすめします。

また、卵巣茎捻転は腹痛と嘔吐を起こす疾患の中でも緊急性の高いものに分類されます。症状が強く出ている場合は、救急車を要請することも考えるようにしましょう。

主な原因

以下は、卵巣茎捻転の主な原因です。

  • 卵巣腫瘍
  • 妊娠
  • 排卵誘発剤の使用

卵巣茎捻転は、卵巣腫瘍のうちの卵巣嚢腫というものが原因であることがほとんどです。一般的には、嚢腫の大きさが5〜6cm近くになると茎捻転を起こしやすくなるといわれていますが、それ以下でもそれ以上でも起こる可能性があるでしょう。

卵巣嚢腫には成熟嚢胞性奇形種とチョコレート嚢胞、ムチン性嚢腫、漿液性嚢腫という種類があり、その中でも「成熟嚢胞性奇形種」によって卵巣茎捻転が発生するケースがもっとも多く、他は比較的稀であるといえます。

成熟嚢胞性奇形種とは、卵巣に脂肪や髪の毛、歯などがたまった腫瘍で、卵巣腫瘍全体のうち15〜25%を占めます。20〜40代の女性に多くみられ、妊娠などをきっかけに発覚することも少なくありません。

一方のチョコレート嚢胞は、卵巣周囲との癒着が生じているケースも多いため、卵巣茎捻転には比較的なりにくいと考えられます。

他にも、妊娠初期はホルモンの影響により「ルテイン嚢胞」(黄体ホルモンの影響で、卵巣の袋状の部分に液体がたまった状態)ができやすく、卵巣茎捻転になる可能性があります。子宮が増大する妊娠20週以降では、その可能性も少なくなりますが、卵巣の位置によっては診断が困難なケースもあるでしょう。

また、不妊治療などで排卵誘発剤を使用している場合も、腫大した卵巣がねじれて卵巣茎捻転を引き起こす恐れもあるため、治療中は激しいスポーツや腰をひねる運動に注意が必要です。

なりやすい年齢

卵巣茎捻転は、出産できる年齢の女性であれば誰でも発症する可能性がありますが、比較的若い女性がなりやすいといえます。なぜなら、卵巣茎捻転の原因となる卵巣嚢腫は、20〜30代の若い女性に多くみられるからです。

しかし、子どもでも卵巣腫瘍がみつかることもあるうえに、卵巣の大きさに比べて卵管が比較的長く、茎捻転を起こしやすいとされているので注意しなければいけません。

子どもの卵巣腫瘍の多くは良性腫瘍です。通常は腫瘍のある部分をくり抜いて極力卵巣を残す方法がとられますが、卵巣茎捻転が小児に起こってしまうとそれが難しくなることもあります。子どもがお腹の痛みなどを訴える場合は、早めに受診しましょう。

卵巣茎捻転の診療科目や治療について

聴診器と卵巣・子宮のイメージ画像

上述の通り、卵巣の疾患は自覚症状がほとんどないため、茎捻転が起こるまで気づかないことも多いです。突然強い腹痛に襲われて病院に駆け込むことも多く、患者さん本人もなぜ腹痛が起こっているのかわからないことも。

そこでここでは、卵巣茎捻転の診療科目や治療についてご紹介します。

卵巣茎捻転は婦人科を受診

もともと卵巣腫瘍などを指摘されているなど、卵巣茎捻転が疑われるときは、婦人科を受診します。しかし、患者さん本人が卵巣の異常に気づいておらず内科などを受診した場合は、まずは身体の基本的な状態を把握しながら原因を探っていくことになるでしょう。

婦人科の診察では、内診や経膣超音波検査を行い、卵巣や子宮を観察します。ただし、それらの検査のみで卵巣茎捻転が起こっているかを判断することは難しいため、CT検査やMRI検査、血液検査などを行うこともあります。

その結果、卵巣茎捻転が強く疑われる場合は手術を行いますが、卵巣茎捻転の確定診断は手術でしか行えないということも知っておきましょう。

卵巣茎捻転は手術を行うのが一般的

一般的に、卵巣茎捻転の治療には開腹手術が必要です。開腹して直接卵巣の腫瘍やねじれ、血流を確認し、患者さんそれぞれの状態に合わせて適切な処置を行います。

ねじれや血流の程度によっては卵巣機能の回復が見込めるため、正常な卵巣部分を残して卵巣嚢腫の部分のみを摘出しますが、血流が途絶えて組織が壊死している場合は、卵巣や卵管をすべて摘出することも。

なお、近年は開腹せずにお腹を小さく切開して行う腹腔鏡手術が可能な医療機関も増えてきているので、開腹手術と比べて傷も小さく入院期間も短くて済むことがあります。

ただし、すべての病院で腹腔鏡手術を行っているわけではないので、緊急の場合には開腹手術となる可能性もある点に注意しましょう。

手術のリスク

卵巣茎捻転の手術を受ける際は、以下のようなリスクがあることを理解しておきましょう。

  • 周囲の臓器との癒着や出血で卵巣を残せない場合は、卵巣や卵管を摘出する可能性がある
  • 出血量が多く血圧の低下がみられる場合は、輸血が必要となる可能性がある
  • 手術後に腸などの臓器との癒着が起こり、腸閉塞になる可能性がある

通常、卵巣腫瘍のみを切除する手術では、できる限り卵巣を残すよう努めます。しかし、卵巣や周囲の臓器の状態によっては卵巣や卵管を残すことが難しく、摘出せざるを得ないことがあります。

また、開腹手術を行った場合、術後にお腹の中の組織同士がくっついてしまうこともあるため注意が必要です。臓器同士が癒着してしまうと、それによって腸の動きが制限されて腸閉塞が起こる可能性もあります。

術後に下腹部痛や腹部の張り、吐き気や嘔吐などの症状が出たときは、早急にかかりつけの医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

術後の経過

一般的に、卵巣茎捻転の治療では、4日間〜1週間程度の入院が必要だとされています。退院後は、1〜2週間程度自宅でゆっくりと休養しましょう。

手術による傷は数日間痛みますが、時間が経つにつれ徐々に軽くなります。万が一1週間以上経過しても傷が赤く腫れていたり、痛みや灼熱感を覚えたりする場合は、感染が起こっている可能性もあるので、すぐに受診して適切な処置を受けるようにしてください。

まとめ

卵巣茎捻転の症状や原因などの詳細と、診療科目や治療について解説しました。

卵巣茎捻転は、無症状の状態から突然強い腹痛などが現れるので、なかなか気付くのが難しい疾患です。

卵巣茎捻転は発生から手術までの時間が短ければ短いほど、卵巣を保存できる可能性は高まりますが、すべてのケースでそうとは言い切れません。

そのため、何時間経過するまでに手術をすれば必ず卵巣を残せるなど、「卵巣茎捻転のゴールデンタイム」を決めるのは困難です。まずは卵巣茎捻転にならないよう、普段から定期的に婦人科検診を受け、卵巣の状態を観察しておくようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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