InstagramInstagram

卵子の老化メカニズム|原因と妊娠へのリスク・老化防止の取組を紹介

女性の社会進出の進展、カップルの晩婚化によって「不妊症」に悩むカップルは増加傾向にあります。「不妊症」とは、妊娠することを望んで健康な男女が避妊を行わずに性行為を重ねるものの、1年以上に亘って妊娠に至らない症状のことを指します。

不妊症が生じる要因はさまざまであり、その要因が男女のどちらにあるかというと、女性由来の原因が不妊症全体に占める割合が約40%、男性由来のものが約25%、男女ともに原因があるものが約25%、原因不明であるものが約10%であるとWHOが公表しています。

この記事では、女性由来の不妊症の中でも「老化」が要因となっているケース、特に、卵子の老化に関する内容をまとめております。卵子が老化するメカニズム、卵子が老化することで妊娠・出産にどのような影響があるのか、卵子の老化を防止する方法に関して説明していますので、ぜひ最後までご覧ください。

卵子の老化メカニズム

メカニズム
まず初めに、「卵子の老化」のメカニズムに関してご説明します。卵子の老化に関わる要素は大きく「加齢」と「生活習慣」に大別されます。それぞれに関して詳しく見ていきましょう。

加齢による老化

「加齢」による卵子の老化は女性の身体のメカニズムと大きな関わりがあります。老化のメカニズムを①卵子が何をもとにして作られているのか、②卵子を作り出す細胞分裂(減数分裂)のステップより説明します。

卵子を作り出すもと(原始卵胞)

卵子は「原始卵胞(げんしらんほう)」という細胞がもととなって女性の卵巣内で作られます。この原始卵胞は女性がお母さんの胎内にいるときから、細胞分裂を通じて作られるもので、出生後に新たに原始卵胞が作られるということはありません。

卵子はこの原始卵胞1つ1つの中に存在しており、排卵の際にはこの原始卵胞が視床下部や下垂体から分泌されるホルモンの影響を受けて少しずつ成熟していき、十分に成熟した卵子が原始卵胞の膜を破り卵巣から卵管へと移動します。

原始卵胞は、胎生6か月ほどのときに約700万個存在しています。この数をピークに原始卵胞は自然と減少していき、出生時には約200万個になります。そして、思春期・生殖適齢期を迎える頃には約20~30万個にまで減少しています。

そして、月経が始まった後には、1回の月経の周期に約1000個減少していきます。妊娠することが難しくなり始める35歳頃には、原子卵胞の数は約2~3万個にまで減少しています。

このように、卵子のもととなる原始卵胞は女性が出生した後に新たに作られることがないため、「卵子の年齢=排卵時の女性の年齢」という関係が成り立ち、「加齢」が卵子に影響を与えることがわかります。

卵子を作り出す細胞分裂

原始卵胞が新たに作られないというメカニズムから卵子が老化していくことはご理解いただけたかと思いますが、「老化した原始卵胞から作り出される卵子は正常な状態ではない可能性が高くなる」ということも確認しましょう。

卵子を作り出すための細胞分裂は一般に「減数分裂(げんすうぶんれつ)」と呼ばれます。生物の身体情報や遺伝情報を管理する役割は、細胞の中の「染色体」が担っていますが、この染色体は2つで1対の構造をしています(ヒトの場合には2つで1対の構造が23組あります)。

しかしながら有性生殖のために、生殖器官では2つで1対である染色体を1つに分割する「減数分裂」が行われます。卵子だけでなく精子も減数分裂によって作り出されており、分割されたそれぞれ1つの染色体情報を持つ卵子と精子が受精することによって、受精卵(次の世代)は両親の染色体をもって2つで1対の構造を作り上げます。

このような細胞分裂が行われているものの、卵子のもととなる原始卵胞は女性が胎内にいるときに作り出され、新たに作られることはありません。そして、排卵のときまで原始卵胞は原始卵胞のままで卵巣内に存在し続けています。つまり、「原始卵胞は卵子を作り出す”減数分裂”を排卵のときまで中断させ続けている」ことになります。

中断期間が長い、言い換えれば老化している原始卵胞は卵子を作るための減数分裂を再開しても、正常に細胞分裂を行えなくなる確率が高くなります。再開してもストップしていた期間が長いと上手くできない、という状況は細胞分裂に限らず日々の生活の中でも感じられるのではないでしょうか?

「加齢」はこのような形でも卵子の形成に影響を与えているのです。

生活習慣による老化

生物の身体が老化するのは、加齢だけが原因ではありません。日常の生活習慣が身体の老化を促進させることもあります。

具体的にいうと「身体が老化する」とは、「体内の細胞が”酸化”することによって、細胞が持つ本来の機能を発揮できなくなってしまう」状態を指しています。

さらに「酸化」というのは、呼吸によって取り込んだ酸素が、生物が生命維持のためにエネルギーを産生する中で活性酸素へと変化し、この活性酸素が他の細胞と結びつく現象を表しています。これは活性酸素が他の物質と化合しやすい(結びつきやすい)という性質が大きく影響しています。

生命機能を維持するうえで活性酸素が生産されてしまうことは仕方のないことですが、卵子をはじめとした身体全体の老化を防止するためには「活性酸素の産生をできる限り抑え、活性酸素が体内の細胞と結びつくのを防止する」ことが重要であるといえます。

卵子の老化による妊娠へのリスク

リスク
卵子が老化するメカニズムに関してご理解いただいた次に、ここでは卵子の老化による妊娠へのリスクに関してご説明します。晩婚化の進行に伴って、高齢出産に臨むカップルも増加傾向にありますが、具体的に卵子の老化が妊娠率や流産・先天性疾患の可能性にどのような影響を及ぼすのかを見ていきましょう。

妊娠率

妊娠率への影響ですが、「卵子の老化によって妊娠率は低下していく傾向」にあります。

年齢別にみた6カ月間での自然妊娠率を、妊娠経験者と妊娠未経験者ごとに示したデータが以下の表になります。

年齢 6か月間における自然妊娠率
妊娠経験者 妊娠未経験者
30~ 約80% 約70%
32~ 約80% 約70%
34~ 約80% 約55%
36~ 約75% 約60%
38~ 約70% 約35%
40~ 約50% ほぼ0%
42~44 約40% ほぼ0%

表からも加齢(卵子の老化)による妊娠率の低下は明らかです。40歳を超えた妊娠未経験者の場合には自然妊娠の可能性はほぼ0%という結果も示されており、体外受精といった医療のサポートを受けることが必要となってきます。

若いうちの卵子はきれいな円形であるものが多くみられますが、加齢に伴って楕円形であったり歪な形になったりすることが増えていきます。加えて、外見的な形はもちろん、前述したように卵子を作り出す細胞分裂そのものが上手くいっていない可能性も高くなります。

上記に該当する卵子は受精そのものが難しく、また、受精ができたとしても細胞分裂が上手くいかず受精卵(胚)の成長が途中で止まってしまうことがあります。

加えて、受精卵が着床するためには「胚盤胞(はいばんほう)」という着床の準備が整った状態にまで成長していることが必要条件であるものの、受精卵の質が悪くなるため着床しにくく、結果的に妊娠の確立が下がってしまうことにもなります。

流産や先天性疾患の可能性

流産や先天性疾患への影響ですが、「卵子の老化によって流産や先天性疾患の可能性は増大していく傾向」にあります。

年齢別にみた自然流産率を示したデータが以下の表になります。

年齢 自然流産率
15~ 約10%
20~ 約10%
25~ 約15%
30~ 約20%
35~ 約25%
40~ 約30%
45~ 約60%

前述したように、加齢に伴った原始卵胞の減数分裂中断期間の長さは、正常な卵子の生成に影響をもたらします。これに合わせて胎児の染色体異常の発生率が高まり、自然に流産してしまう確率が20代の間では10~15%であるのに対して、30代後半以降には25%以上と増大していきます。

さらに、無事に着床・妊娠・出産に至ったとしても、赤ちゃんがダウン症候群をはじめとした染色体異常を原因とした先天性疾患を発症する確率も高まることが明らかとされています。

卵子の老化を防止するために

老化
最後に、卵子の老化を防止するための方法に関してご紹介します。「加齢」は誰もが避けられない現象ですが、日常生活を改善することで身体の中にある卵子の老化を抑えることは可能です。

「食生活」と「運動習慣」の観点で卵子の老化防止にはどのような対策方法があるのかを見ていきましょう。

食生活

卵子の老化には、体内の細胞の酸化も影響するとお伝えしましたが、この酸化は食生活の改善によって抑制することができます。

具体的には「抗酸化作用」を持った栄養素のある食物を取り入れることが効果的です。抗酸化作用とは、活性酸素との結びつきが体内の細胞よりも更に強い物質(栄養素)が優先的に活性酸素と結びつくことで体内の細胞の酸化を防止する作用を表しています。

抗酸化作用を持つ代表的な栄養素には、ビタミンエースとも称されるビタミンA・C・Eが挙げられます。これらを併せて摂取することで相互作用が働き、抗酸化作用は更に高まるといわれています。バランスのとれた食事を基本として、これらの栄養素にも注目してみてください。

運動習慣

卵子を作り出す器官である子宮や卵巣の機能を維持するためには適度な運動習慣も大切です。現代女性は「冷え性」である方も多いですが、これは体内の血液循環が滞っているために起こっている可能性が高いです。血行が滞ると栄養素を体内の細胞へと運ぶ機能も低下し、結果として生殖器官をはじめとした身体すべての機能低下をもたらします。

運動習慣をつけることで血行促進が図られ、卵子の老化防止に働きかけることが期待できます。注意点として、エアロビクスなどの激しい運動では活性酸素を多く産生してしまうため、ウォーキングやヨガなどの緩やかな運動を取り入れることをおすすめします。

特に、ヨガは普段の生活では使わない筋肉を刺激するとともに、呼吸法を取り入れた運動です。呼吸法には交感神経を優位にする効果があるため、リラックスしたい、嵩流力を高めたいときに有効です。ストレスの緩和も身体の機能維持には大切な要素であり、運動しながらリラックス効果を得られる点が大きな魅力です。

まとめ

笑顔の素敵な女性
ここまで、卵子の老化のメカニズム、卵子の老化による妊娠率・流産・先天性疾患への影響、老化を防止する方法に関してご紹介してきましたがご理解いただけたでしょうか?

「加齢」や「卵子は減り続けていく」という事実は避けられないことですが、今ご自身の身体の中にある卵子を大切に育てていくことは可能です。老化は日々の生活習慣と大きく結びついているため、妊活に向けて励んでいくには生活全体での見直しが必要不可欠です。実際に取り組まれていくときに、この記事が読者様のお力になれば幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

また、不妊にお悩みの方には、不妊の原因を遺伝子から特定し、最適な治療を考えることができる不妊治療遺伝子検査も実施しています。お気軽にご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事