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子宮体がんの症状は?なりやすいのはどんな人?検査や治療・予防について知っておこう

子宮体がんとは、子宮体部にできるがんのことです。

婦人科がんの中でも多くみられる子宮がんの一種で、食生活の欧米化などにより年々増加しています。その数は、1980年代から2018年にかけて9倍近く増加しているため、日頃から予防に努める必要があります。

ただその一方で、子宮体がんは早期発見しやすく、早い段階から治療をはじめれば完治する可能性も高いです。進行して末期の状態になると、がんが他の臓器へ転移してしまうので、早期に発見できるよう、定期的に婦人科健診を受けるなどの対策をしましょう。

この記事では、子宮体がんの種類や症状、検査や治療、予防についてご紹介します。子宮体がんが疑われる症状のある方や、ご家族に子宮体がんの既往歴がある方などはぜひ最後まで読んでみてください。

子宮体がんとは

子宮体がんは、生活習慣との関わりが深いがんとして知られています。

そもそも子宮は妊娠時に胎児を育てる子宮体部と、分娩時に赤ちゃんが通る産道の一部となる子宮頚部に分けられます。子宮体がんは、文字通り子宮体部にできるがんであり、近年日本において罹患率が上がっている疾患です。

まずは子宮体がんの症状などについて知り、気になることがあれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。

子宮内膜から発生するがんのこと

子宮体がんとは、主に子宮の内側を覆っている「子宮内膜」に発生するがんのことです。女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)が関与しているといわれています。

その一方で、子宮体がんの約5%が遺伝によって発症するといわれているため、家族にがんの既往歴がある方は不安を感じていることも多いようです。

子宮体がんの種類

子宮体がんと一言でいっても、女性ホルモンのエストロゲンが関与しているかにより、以下の2つの種類に分類されます。

  • I型:エストロゲンとプロゲステロンが関与しており、40歳代から閉経前後にかけて発症する。子宮体がんの多くがI型。比較的治りやすいのが特徴。
  • II型:女性ホルモンとは関係なく閉経後に発症する。悪性度が高く、発見が遅れることがほとんど。高齢の女性に発生する傾向にある。

子宮体がんは、子宮体部の内側にある子宮内膜から発生することから、「子宮内膜がん」とも呼ばれています。

子宮体部にできる悪性腫瘍で子宮内膜がんと混同しがちなのは、子宮平滑筋など子宮内膜以外から発生する「子宮肉腫」です。子宮内膜がんは子宮内膜腺からできる悪性腫瘍であり、子宮肉腫とはまったく異なる疾患なので注意しましょう。

とはいえ、その割合は95%以上が子宮体がんであるため、子宮肉腫の可能性は少ないと考えられます。

子宮体がんの症状とは

以下は、子宮体がんの症状の例です。

  • 不正出血
  • 褐色のおりもの
  • 膿の混じったおりもの
  • 排尿痛
  • 排尿障害
  • 排便障害
  • 性交痛
  • 下腹部の痛み

子宮体がんのもっとも代表的な症状は、不正出血です。子宮体がん患者の90%にみられます。明らかな出血ではなく、褐色のおりもののみの場合もあるので気をつけていないと見逃してしまうこともあります。

進行すると下腹部の痛み、下肢のむくみや痛み、排尿障害、排便障害などが起こることも。他にも、腹部膨満感がある場合もある程度進行している可能性があるので注意が必要です。

不正出血が長期間続く場合や、閉経しているにもかかわらず出血がある場合は、一度婦人科を受診することをおすすめします。

子宮体がんセルフチェック

子宮体がんは、子宮がんや子宮頸がん、乳がんのように国が定めるがん検診の対象ではありません。そのため、定期的に婦人科健診を受けるか、普段から自分の体調に気をつけておく必要があります。

以下のセルフチェックを行い、気になる症状があれば一度婦人科を受診しましょう。

□ 月経時以外にも出血がある

□ 閉経しているのに不正出血がある

□ 肥満ぎみである

□ 妊娠、出産経験がない

□ 30歳以上で月経不順がある

□ 血縁者に子宮体がん、大腸がん、胃がん、泌尿器系がんの既往歴がある

不正出血は、子宮体がんの代表的な症状でもありますが、ストレスや過度のダイエットでも起こります。しかし、子宮体がんや子宮頸がん、子宮筋腫などの疾患が隠れている可能性もあるので、注意しなければいけません。

子宮体がんになりやすい方

以下は、子宮体がんになりやすい方の例です。

  • 妊娠出産を経験していない方
  • 閉経が通常よりも遅い方
  • 肥満や糖尿病、高血圧の方
  • 自分や家族に乳がん、大腸癌の既往歴がある方
  • 乳がん治療でタモキシフェンを使用している方
  • 超音波検査で子宮内膜の厚みを指摘された方
  • PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

子宮体がんの90%以上は50歳以上の女性に発生しますが、中には40歳代でかかる方もいます。

その年代は、更年期に差し掛かっている場合も多く、ホルモンバランスが崩れて不正出血が頻発することもあるので、「いつもの不正出血か」となかなか婦人科を受診しない方もいるようです。

不正出血が気になる方は、それが問題のないものか、がんによるものかを知るためにも早めに検査を受けておかなければいけません。

また、糖尿病を患っている方は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが弱まっています。血糖値を下げようと膵臓からは大量のインスリンが分泌される(高インスリン血症)ため、血中インスリン濃度が高い状態になります。

高インスリン血症は、エストロゲンの分泌を促進することから、子宮体がんI型を発症しやすくなる可能性があるでしょう。

さらに、乳がん治療で「タモキシフェン」という薬剤を使用している場合や、女性ホルモン補充療法でエストロゲンのみを使用している場合も、子宮体がんの発生リスクに影響が出るので注意が必要です。

子宮体がん検査と治療・予防について

子宮体がんは、あらゆるがんの中でも、治る確率の高いがんだといわれています。

とはいえ、さまざまな条件により治癒の可能性や治療法の選択が異なりますので、まずは婦人科を受診し、検査を受けなければいけません。ここでは、子宮体がんの検査と診断、治療と予防についてご紹介します。

子宮体がんの検査と診断

子宮体がんの診断には、がんの有無をはじめ、どのタイプのがんなのか、どこまで広がっているかを調べる検査が必要です。

検査では、子宮内膜の細胞診や組織診、経膣超音波検査による子宮内膜の厚みの測定を行います。患者さんが高齢の場合は、子宮の中まで器具を挿入できないこともあるため、超音波検査のみで判断することも。

これらの検査の結果、子宮体がんと診断された場合は、血液検査やがんの広がりを調べるためにMRIやCT、PET-CT、心電図検査などの画像検査を行うことになるでしょう。

子宮体がんの治療は主に手術

子宮体がんの治療では、主に手術を行って子宮と卵巣などの付属器、場合によってはリンパ節も摘出します。

現在では、一部の子宮体がんに対して開腹せずに手術ができる腹腔鏡下手術や、ロボット支援下手術なども保険で行われるようになってきているので、担当の医師とよく相談して選択するようにしましょう。

また、手術以外にも以下の方法で治療を行うこともあります。

  • 放射線療法:手術後の再発や再燃の場所が限定されている場合に行われる方法。重篤な合併症や高齢で手術の適応でない患者さんの初回治療としても行われる。
  • ホルモン療法:プロゲステロンを大量投与する方法。妊娠を強く希望される方に検討されるが、条件をすべて満たす必要がある。
  • 化学療法:いわゆる抗がん剤治療のこと。術後の再発リスクが高い場合や手術の適応でない場合に行う。

近年、医療技術の発展とともに新しい治療法も登場してきていますが、臨床試験で有効性を検証する必要があります。臨床試験に参加できる可能性もあるので、担当の医師に相談してみるとよいかもしれません。

子宮体がんの予防法

子宮体がんの患者さんは、そうでない方と比べて揚げ物やインスタントラーメンなどを食べる機会が多いといわれています。その反対に、普段から緑茶やコーヒーを摂取している方や野菜を多く摂取している方は、子宮体がんになりにくいようです。

そのため普段から油物を控える、コーヒーや緑茶を1日1〜2杯飲む、野菜や豆類を摂取する、豆乳を飲むことなどを意識すると子宮体がんの予防になるといえるでしょう。

また、肥満や糖尿病、高血圧なども子宮体がんのリスクを高めるといわれています。普段から適度な運動を心がけ、肥満に気をつけましょう。

さらに、低用量ピルを服用するとホルモンバランスが整うため、子宮体がんのリスクが低下するといわれています。気になる方は、一度婦人科で相談してみることをおすすめします。

まとめ

子宮体がんの種類や症状、検査や治療、予防についてご紹介しました。

子宮体がんは、子宮がんの中でも子宮頸がんの罹患率を超えているといわれ、閉経後の女性にもっとも多く発症する疾患です。

エストロゲンの影響によるところが大きいですが、遺伝によって発生する可能性も捨てきれないので、不安な方は遺伝カウンセリングなどを受けるとよいでしょう。

また、最近では体への負担が少ない手術方法で治療できる可能性もあるため、そのような方法を取り入れている医療機関で治療を受けてもよいかもしれません。

とはいえ、まずは早期の段階で発見することが非常に重要です。完治させるためにも定期的にがん検診や婦人科検診を受けるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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