InstagramInstagram

不育症とは?知っておきたい基礎知識や検査方法を詳しく解説

女性にとって妊娠は人生の一大イベントであり、「赤ちゃんのぬくもりを1日でも早く感じたい」と夢見ている方はたくさんいます。しかし、妊娠が発覚した後は新たな生命を授かったことに幸せを感じながらも、出産に対する不安を抱いてしまうものです。出産に向けて、正しい知識を身につけておくことはとても大事ですが、その中でも注意しなければならないのが不育症と呼ばれる病気です。

この記事では、不育症とは何かを知っていただける基礎知識や検査方法、治療法を詳しく解説していきます。

不育症に関する基礎知識

妊娠を希望する女性

具体的にどのような症状が不育症にあたるのか、その定義やリスク因子をご説明していきます。

不育症とは

念願の赤ちゃんをお腹に授かったのに、さまざまな原因によって産まれる前に命を落としてしまうこともあります。

妊娠22週目に入る前に妊娠の継続が停止してしまうことを流産、妊娠12週目以降に胎児が亡くなってしまうことを死産と呼びますが、不育症は2回以上にわたって流産、もしくは死産を繰り返してしまう病気とされています。

妊娠反応が陽性だったにも関わらず、超音波検査で胎嚢が確認されなかった化学流産(生化学的妊娠)に関しては、日本では不育症の要因に当てはまらないとしています。しかし、欧州生殖医学会では、2017年から化学流産も不育症の要因になる流産に含めると発表し、日本でも不育症の捉え方が将来的に見直される可能性はあります。

不育症は、妊娠を経験する女性なら誰にでもリスクが生じますので、これからご説明する原因や検査方法などを知っておくに越したことはありません。

不育症のリスク因子

不育症を避けるために、日頃どんな行動をすればいいのかと考える方はたくさんいるでしょう。

しかし、不育症は染色体異常などの避けられないリスク因子が大きな割合を占めています。以下は、厚生労働科学研究班(齋藤班)の報告による、不育症のリスク因子の頻度です。

不育症のリスク因子
偶発的流産・リスク因子不明 65.3%
偶発的流産・リスク因子不明の中で抗PE抗体のみ陽性 22.6%
抗リン脂肪抗体陽性 10.2%
子宮形態異常 7.8%
Protein C 欠乏 7.4%
第Ⅻ因子欠乏 7.2%
甲状腺異常 6.8%
夫婦の染色体異常 4.6%
Protein CS欠乏 0.2%

※34.3歳±4.8歳未満且つ、既往流産回数2.8±1.4回の女性527名が回答したアンケート結果です。

不育症になった原因がわからないケースもあり、その場合は綿密に検査ができない場所にリスク因子があるとされています。

不育症の頻度

不育症は、2回以上の流産、もしくは死産を繰り返した場合に診断されますが、流産に至る確率は妊娠全体の10%〜15%といわれています。

妊婦さんの年齢が高くなるにつれて、流産に至る確率も高くなることは広く認知されていますが、40歳以降になるとその確率は40%以上に跳ね上がります。

近年の日本は少子高齢化にともなう高齢出産が増えていますが、不育症の頻度は5%前後とされています。

不育症は、リスク因子を特定させるための検査や適切な治療が用意されており、厚生労働省では、不育症に悩む女性を救うためのプロジェクトチームも発足されています。

不育症検査に対する経済的支援・相談体制の強化などが定期的に行われ、今後は不育症に対する正しい知識と理解を国民に広めるとともに、不育症検査の助成金の創設や保険の適用を目指すなどの方針が定められています。

複数回にわたる流産を経験した妊婦さんにとって、心強い味方となる相談先が全国各地にあることも覚えておきましょう。

不育症の検査について

医師に相談中の夫婦
万が一、流産・死産を繰り返してしまった場合は、「不育症になってしまったかもしれない」と疑い、科学的根拠が認められている不育症一次検査を経て、適切な治療法を受けることが推奨されます。

不育症検査の種類

先述の通り、不育症は原因を突き止められないリスク因子が半数以上を占めています。そのため、日本の医療機関で受けられる不育症検査は以下に限られています。

  • 抗リン脂質抗体
  • 子宮形態検査
  • 夫婦染色体検査
  • 内分泌検査
  • 血栓性素因スクリーニング
  • 絨毛染色体検査

2回以上妊娠したにも関わらず子供をもてない方は、リスク因子を特定しするために不育症検査を受ける流れとなります。

不育症検査を実施している医療機関

医療機関によって取り扱っている不育症検査は異なるため、各自治体のホームページで実施機関を調べた上で問い合わせを行いましょう。

不育症検査に関する助成金

不育症に悩む夫婦を助けるため、各自治体で助成金が用意されています。

東京都では、2019年から不育症検査費用の上限5万円までの助成金を受けられるようになっています。

北海道の札幌市では、上限10万円までの助成金を受けられるなど、各自治体で金額や申請期限が異なりますので、自治体のホームページで調べてみましょう。

東京都福祉保健局が設けている不育症検査の助成金制度はこちら

不育症の治療について

医師に励まされる女性
不育症検査によってリスク因子を特定できた場合、リスク因子に応じた治療を受けることができます。代表される治療法と予防をご説明していきます。

抗リン脂質抗体の治療法

不育症のリスク因子で全体の10.2%を占める抗リン脂質抗体は、血栓ができやすくなる自己免疫異常の一種です。血栓によって血流が悪くなり、胎児に酸素や栄養が届かなくなることで流産・死産を招く疾患です。

抗リン脂質抗体の治療には、低用量のアスピリンとヘパリン(1日5,000~10,000)を用いた治療などが行われます。

子宮形態異常の治療法

中隔子宮や単角子宮、双角子宮などの子宮形態異常によって、流産・死産を繰り返して不育症になるケースがあります。

子宮形態異常ですが、状態によっては問題なく妊娠が継続し、出産できる場合もあるため、全てにおいて治療が施されるわけではありません。

流産に至る確率が高い中隔子宮などに対しては治療が行われ、手術によって出産率が改善されることがあります。

内分泌異常の治療法

甲状腺異常や糖尿病などの内分泌異常は、薬物投与で血糖値を正常な数値にコントロールするなどの治療が行われます。

血糖値が悪い状態で妊活は行わず、しっかりと機能を回復させることが重要となります。

夫婦染色体異常の治療法

早期流産の原因で大きな割合を占めるのが転座型の染色体異常であり、治療法がない不育症のリスク因子とされています。

夫婦のどちらかが均衡型構造異常を持っていた場合、精子、もしくは卵子に引き継がれてしまい、ほとんどのケースで流産になってしまいます。

染色体異常は発見された時点で治療法を施すことはできませんが、染色体検査を受けて胎児が染色体異常を持っている確率を調べることは可能です。

理解しておかなければならないのが、加齢とともに染色体異常を持つ可能性が高まり、流産・死産に繋がりやすいということです。

染色体検査は、妊娠初期から受けられるNIPT(新型出生前診断)などがありますので、妊娠の回数や年齢に関わらず早めに受けておくことをオススメします。

予防について

不育症のリスク因子は半数以上が原因不明となっていますが、生活習慣を改善することで甲状腺異常などを避けることができます。

例えば、妊活中に食事管理をして肥満対策を行ったり、飲酒と喫煙を控えたりするなど、日頃の行動を改めることは大事になってきます。

生活習慣を改善しても避けられない流産・死産はありますので、出産前に子供を亡くしてしまっても決して自分を責めず、専門家やパートナー、家族からのアドバイスを受けながら今後の妊娠を考えていきましょう。

まとめ

不育症とは何かを知っていただける基礎知識、そして原因や治療法などをご紹介しましたが参考になりましたか?

流産・死産を2回以上繰り返す不育症は、妊娠全体の約5%を占めており、全ての妊婦さんにリスクが生じます。

偶発的なリスク因子が半数以上を占めており、健康で規則正しい生活をおくっていても不育症を避けられないケースもあります。

万が一、不育症と疑われた場合は、何が原因で流産・死産が引き起こされたのかを突き止めるため、不育症検査を受けましょう。

検査でリスク因子が特定できた場合、科学的根拠が認められている適切な治療を受けることで出産率が改善されることもあります。

流産・死産を繰り返す不育症はとても怖い存在ですが、皆さんの心に寄り添ってアドバイスをしてくれる専門家もおりますので、遺伝カウンセリングを積極的に受けるなどして不安を解消していきましょう。

また、ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事