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不育症の原因になる染色体異常とは?検査方法や妊娠に伴うリスクを解説

妊娠はするものの、流産や死産によって赤ちゃんを繰り返し亡くしてしまう不育症。

不育症の原因の大半は、偶然繰り返した流産によるものとされていますが、不育症検査でリスク因子を特定できることもあります。

その中でも、たくさんの妊婦さんを悩ませているのが染色体異常で、流産だけではなく、さまざまな先天性疾患の原因となっています。

この記事では、不育症の原因になる染色体異常とはどんなものかを知っていただき、染色体検査や妊娠に伴うリスクなどを解説していきます。

不育症になるさまざまなリスク因子

DNAのイメージ画像
不育症は、胎嚢が発見される前に流産してしまう化学流産を除いた流産・死産を、2回繰り返す反復流産、流産を3回以上繰り返す習慣流産を含めた病気です。

流産を繰り返す不育症は、原因不明の偶発的流産が約60%を占めており、その他は、抗リン脂質抗体症候群や子宮形態異常、そして染色体異常などが原因として挙げられます。

凝固因子異常 血流の悪化によって血液が固まりづらくなり、流産しやすい状態。
夫婦の染色体異常 親から子に受け継がれる染色体の形態に異常があり、流産しやすい状態。
内分泌異常 甲状腺機能の働きすぎ、または甲状腺機能の低下によって、ホルモンを分泌する働きに異常があり、流産しやすい状態。
子宮形態異常 子宮の形に異常がみられ、胎児や胎盤が圧迫されて流産しやすい状態。

主に4種類に分けられるこれらのリスク因子は、化学的根拠が認定されている不育症検査で特定をした後に治療することもできます。

不育症の原因になる染色体異常とは?

医療と遺伝物質のイメージ画像
不育症のリスク因子の一つに挙げられる染色体異常は、妊婦さんなら必ず意識する先天的な疾患です。

染色体異常という言葉は知っていても、どのように発生するか知らない方も多いと思いますので、重要なポイントを詳しくご説明していきます。

染色体異常が発生する原因

人間には、46本23対の染色体が細胞の一つひとつに存在しています。

染色体は、親から子に受け継がれる遺伝情報を有するDNAが格納された分子で、全ての染色体に異常が発生する可能性があります。

染色体異常が発生する原因はさまざまです。放射線や紫外線が原因となり染色体が切断されたり、特定の薬物が細胞分裂の際に染色体が2つから1対1に分かれる働きを妨げたりすることが原因となっています。

染色体異常は受精卵の時点で発生しているため、発生を防ぐことはできません。

流産の原因の多くは染色体異常によるもの

不育症になる原因の多くに染色体異常が関係しています。

流産は妊娠全体の約10%〜15%で発生していますが、妊娠初期に起こった流産の約80%は染色体異常が原因によるものとされています。

胎児の染色体異常による流産は偶発的なもので避けることができないため、全ての妊娠に流産のリスクがあることを知っておかなければなりません。

また、染色体異常の発生頻度は加齢とともに増加するため、高齢の妊婦さんほど流産する確率も高くなります。実際に40代以上の妊婦さんは40%以上が流産を経験するといわれています。

染色体異常で引き起こされる胎児の疾患

染色体異常で引き起こされるのは流産だけではありません。

胎児の特定の染色体数が、本来あるべき数よりも1本多くなるトリソミーという状態では、ダウン症候群や13トリソミー、18トリソミーといった重い症状のある疾患が発生します。

正常な染色体が異常な染色体と誤って結合する転座という状態では、多くの場合が流産に繋がりますが、稀に全身各種臓器に奇形を有するエマヌエル症候群が発生することもあります。

染色体異常が妊婦さんにどのようなリスクをもたらすかは、産婦人科の先生からのアドバイスや遺伝カウンセリングなどを通して十分に理解しておくことをオススメします。

染色体異常は根本的な治療法がない

「染色体異常を治療できれば不育症予防もできるのでは?」と考える方もいますが、現代の医療では根本的な治療法がないとされています。

ですが、染色体異常を出生前に調べることはできます。

妊婦さんと胎児を傷つけることがない非侵襲的検査のNIPT(新型出生前診断)や、古くから染色体異常を確定する目的で実施されている絨毛検査、妊婦さんだけではなくご主人も対象となる夫婦染色体検査などがあります。

不育症検査では、流産絨毛染色体検査(POC)や夫婦染色体検査が用いられます。

流産絨毛染色体検査(POC)について

妊婦さんとベッドサイドで励ます夫とメモを取る医療職
偶発的流産の原因となる染色体異常を調べる検査の一つ、「流産絨毛染色体検査」の内容や注意点についてご説明します。

検査の内容

不育症のリスク因子を特定するために用いられる流産絨毛染色体検査は、流産した際に手術で子宮内の胎盤にある絨毛を採取し、培養をして染色体異常を調べる検査です。

絨毛にある染色体を4週間培養することで、染色体の数や形態を細かく調べることができ、染色体異常を持っているのが胎児か母親かを特定することができます。

染色体異常がみられなかった場合、母親側に何らかの原因がある可能性が高まり、追加の検査と治療を受けることが推奨されます。万が一、染色体異常がみられた場合は、偶然起こった流産とされて追加の検査は不要となります。

検査の注意点

流産絨毛染色体検査は保険適用外となりますので、流産手術の費用に加えて7万円前後の高額な費用が発生します。

また、染色体の数は正常だったものの、形態や構造に異常がみられるケースもあります。この場合は夫婦のいずれか、もしくは両方の染色体の構造に異常があると考えられ、夫婦染色体検査を受けることが推奨されます。

夫婦染色体異常検査について

夫婦
不育症のリスク因子特定には、まずは一次検査が行われ、その後にさらに細かくリスク因子を検査する特殊検査(選択検査)に進みます。

夫婦染色体検査の受検は必須ではありませんが、リスク因子をより詳しく調べたい場合は、流産絨毛染色体検査を経て、夫婦に染色体異常がある可能性が高まった場合などに受ける流れとなります。

検査の内容

白血球の染色体を調べるために注射器で血液を採取し、4週間程度経過を観察した後に結果が伝えられます。

万が一、陽性反応が出た際は、受精卵の着床前診断の受検が必要となります。着床前診断は、受精卵の時点での染色体を調べる必要があるため、体外受精で受精卵の細胞を採取して検査が行われます。

夫婦染色体検査を経て、夫婦のいずれかに染色体異常が見つかった場合でも、流産に至らず、無事に赤ちゃんを得られる可能性もあります。

夫婦染色体検査を受ける前には、「染色体異常とは何か」「妊娠と出産に向けてどのようなリスクがあり、どのような準備が必要になるか」など、専門的な情報が提供される遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

染色体異常は先天的な疾患であり、治療法がないため、自分が染色体異常を持っていると診断された場合に精神的なショックを受ける方もいます。そのため、遺伝カウンセリングで染色体異常に関する正しい情報を得ることはとても大事になります。

注意点

夫婦染色体検査という検査名ではありますが、どちらか片方のみが受けることもできます。ただし、できる限り夫婦で一緒に受けることが理想的です。

検査費用は一人あたり2万5千円〜3万円程度になり、夫婦で検査を受ける場合は5万円〜6万円くらいの負担が発生します。病気の治療ではなく、あくまでスクリーニング検査になるため保険は適用外となることを覚えておきましょう。

不育症になっても赤ちゃんを得ることを諦められない方はたくさんいます。染色体異常は我が子の誕生を望む夫婦にとってとても厄介な存在ですが、必ずしも流産に繋がるわけではありませんので、遺伝カウンセリングを積極的に受けて正しい知識を得ることをオススメします。

まとめ

不育症の原因になる染色体異常、そして不育症のリスク因子を特定させる染色体検査などをご紹介しました。

反復流産、習慣流産を含めて不育症と呼ばれていますが、その多くが染色体異常によって発生しています。

染色体異常は、胎児側にある場合もあれば、夫婦のいずれかにある場合もあり、残念ながら治療法は見つかっていません。

ですが、流産絨毛染色体検査(POC)や夫婦染色体検査を受けて、染色体異常の有無を調べることは可能です。

胎児に染色体異常があった場合は偶発的流産とされて追加の検査は必要ありませんが、夫婦染色体検査で陽性反応が出た場合は、着床前診断を受ける必要があります。

不育症に繋がる染色体異常に対して、妊婦さんなら誰でも不安を抱くものですが、正しい知識を得た上で、妊娠と出産に向けた準備をすることがとても大事です。

染色体異常の専門的な知識を持つ、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーからアドバイスを受けられる遺伝カウンセリングは、大きな不安の解消に繋がるきっかけになります。

流産、そして不育症の原因になる染色体異常について詳しく知りたい方は、ぜひ、遺伝カウンセリングを受けてみてください。

また、ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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