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皆さんは多嚢胞性卵巣症候群をご存じですか?これは「たのうほうせいらんそうしょうこうぐん」と読みます。
この病気は卵子を作り出す卵巣・卵胞が本来の機能を発揮できないために生じるものなのですが、具体的にどのような仕組みで生じているのか、発症することで卵巣・卵胞・卵子はどのような状態になってしまうのかなど知らないという方も多いのではないでしょうか?
この記事では多嚢胞性卵巣症候群に関して、どのような症状であるのかを正常な卵子の生成過程を比べながらご説明するとともに、発症を予防するためにはどのような取り組みを行えばよいのかを原因と予防法の観点からまとめています。ぜひ最後までお読みください。
多嚢胞性卵巣症候群とは
「多嚢胞性卵巣症候群」とは、卵巣内でたくさんの卵胞の成熟が行われるとともに途中で成長が止まってしまい、その後、別の組織へと変化することなく卵巣内に留まってしまい、その後の卵子の生成過程(月経や排卵など)に障害を及ぼす症状のことを表しています。
どのような症状であるのかを知らないという方も多くいらっしゃるかと思いますが、多嚢胞性卵巣症候群を発症する女性の割合は20~30人に1人(6~8%)とされています。決して珍しい病気ではなく、ご自身が発症する可能性も十分に考えられるのです。
この病気が具体的にどのようなものであるのか、正常な卵子の生成過程と比較して見ていきたいと思います。
正常な卵子の作られ方
まず初めに、正常な卵子の作られ方を押さえていきましょう。
卵子は原始卵胞(げんしらんほう)と呼ばれる卵巣内にある細胞がもととなって作られています。この原始卵胞は女性がお母さんのお腹の中にいるときから作られており、出生後、新たに作られることはありません。そして、原始卵胞ひとつひとつの中に卵子が存在しています。
女性が思春期・生殖適齢期を迎えると、身体の成長に伴って女性ホルモンが分泌され始めて、排卵が行われるようになります。
脳の視床下部や下垂体から指令を受けて分泌された女性ホルモンの刺激によって、卵巣内にある数十個の原始卵胞が排卵に向けて成熟を始めます。原始卵胞は成熟に伴って徐々に大きくなっていき(原始卵胞の中にある卵子も大きくなっていきます)、一次卵胞、二次卵胞、成熟卵胞と成長します。そして、複数育っていた原始卵胞のうち、十分に成熟した成熟卵胞のみが中にある卵子を排出します。
そして、排出され卵巣内を漂っている卵子は卵管采(らんかんさい:卵管の先端にあるイソギンチャクのような構造をした器官)にキャッチされ、卵管へと移動していきます。卵子が卵胞から排出され、卵管へと移動する一連の体内作用を「排卵」と呼びます。
上記のようにして卵子が作られますが、排卵に至らなかった卵胞・卵子(途中まで成熟したもの)はその後「黄体」に変化していきます。この黄体は「黄体ホルモン(女性ホルモンの一種でプロゲステロンとも呼ばれます)」を作り出すもととなるもので、排卵周期の後半で活発に分泌されるようになります。妊娠した際に重要となるホルモンであり、仮に妊娠に至らなかった場合には排卵後から再び月経が訪れる約2週間をかけて黄体ホルモンは減少していきます。
多嚢胞性卵巣症候群を発症した卵巣
多嚢胞性卵巣症候群について冒頭でご説明しましたが、上記の正常な卵子の生成過程と比較すると、この症状は女性ホルモンの刺激を受けて成熟していた卵胞の成長が途中で止まり、更には黄体へと変化することなく卵巣内に留まってしまっている状態であることが分かります。
このように成長が止まり卵巣内に留まり続けている卵胞を「嚢胞(のうほう)」と呼びます。
卵胞の成長が途中で止まってしまうことで、排卵が行われず無月経(むげっけい:3か月以上に亘って月経がない症状)や稀発月経(きはつげっけい:月経周期が通常は25~30日程度であるのに対して、39日以上となる症状)が見られるようになり、これが不妊の原因ともなります。
多嚢胞性卵巣症候群を予防するために
多嚢胞性卵巣症候群がどのような症状であるのかをご理解いただいたところで、次に、この症状はどのようにすれば予防できるのかに関して説明していきます。
初めに多嚢胞性卵巣症候群の原因に関して、次に多嚢胞性卵巣症候群を疑うべき症状、最後に原因となっている要素を解消するための予防法という順番で見ていきましょう。
発症の原因
多嚢胞性卵巣症候群の原因には以下のものが挙げられます。
- 男性ホルモンの分泌過多
- 性腺刺激ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)のバランスの乱れ
- 遺伝や生活習慣・環境的要因
それぞれに関して見ていきましょう。
男性ホルモンの分泌過多
男性ホルモンには卵胞の発育を抑制する、卵胞を包む膜を厚くする作用があるため、男性ホルモンの分泌量が増大することで正常な排卵が行われにくくなり、多嚢胞性卵巣症候群を発症することがあります。
性腺刺激ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)のバランスの乱れ
卵子の形成や排卵を始めとした生殖機能に大きく関係しているホルモンが「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」です。
卵胞ホルモンは月経周期の初期における卵胞・卵子の育成に大きく関わっており、黄体ホルモンは卵子が受精した後の妊娠のための生殖器の準備に大きく関わっています。
これらのホルモンバランスが乱れることで多嚢胞性卵巣症候群が生じるとも考えられています。
遺伝や生活習慣・環境的要因
多嚢胞性卵巣症候群は特定の原因だけが関係しているということはなく、さまざまな要因が重なり合って生じていることが多いです。上記にて説明した、ホルモンの乱れなどはもちろん、女性自身の先天的な身体特徴や日頃の生活習慣・周囲の環境なども関係していることがあります。
一例として、上記で取り上げた「男性ホルモンの分泌過多」ですが、男性ホルモンの分泌が増加するのは、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きの低下が原因にあります。更には、インスリンの機能低下は高血糖状態が続くことで生じるということもあるため、結果的には多嚢胞性卵巣症候群の原因が糖分の摂り過ぎなど生活習慣にあるということもあるのです。
多嚢胞性卵巣症候群を疑うべき症状
上記にて取り上げた原因は、多嚢胞性卵巣症候群の原因となるだけでなく、女性の身体のさまざまな部分に影響をもたらします。
例えば、ホルモンバランスの乱れは月経周期を不安定にさせます。
黄体ホルモンの分泌量が増大している(妊娠に至らなかった後の減少が生じていない)場合には、月経が遅くなることがあります。黄体ホルモンは受精卵の着床のために子宮内膜を厚くさせる効果を持つとともに、黄体ホルモンの減少に伴って厚くなった子宮内膜の一部が剥がれ落ちていきます(剥がれ落ちた子宮内膜の一部が血液と混ざって排出されるのが経血です)。しかしながら、黄体ホルモンの分泌・減少以上が生じることで、子宮内膜が厚い状態を維持し続けるように作用してしまい月経周期が延長化します。一般に月経周期が35日以上となっている方は多嚢胞性卵巣症候群を疑う必要があります。
上記の症状に加えて、男性ホルモンの分泌増大はにきびの増加や、体毛の増加、体毛が濃くなる、声が低くなるといった、女性の男性化をもたらします。該当する症状がある場合には医療機関での診察なども検討してみてください。
予防策
多嚢胞性卵巣症候群の原因が分かったら、具体的にどのように原因を解消していけばいいのかを見ていきましょう。
おすすめの予防策には以下の取り組みが挙げられます。
- バランスのとれた食生活
- 適度な運動
どちらも健康的な身体づくりのための基本的な取り組みだといえますが、多嚢胞性卵巣症候群は生活習慣と結びつきの強い病気である分、生活習慣の改善が症状の解消をもたらすこともあります。
それぞれに関して詳しく見ていきましょう。
バランスのとれた食事
身体のすべての細胞が正常に作られるためには、必要となる栄養素が十分に摂取されていることが条件となります。
卵子生成、ホルモン分泌などに大きく関係している「生殖器官」の機能を維持する(老化させない)という観点から考えると、ビタミンエース(ビタミンA・C・E)といった「抗酸化作用」を持つ栄養素が含まれる食物を取り入れることで、生殖器官の機能を維持し、症状改善につながっていきます。
また、大豆などに含まれているイソフラボンは女性ホルモンと組織構造が似ていることから、女性ホルモンが有する機能を代替する効果を持ちます。毎日の朝食に1杯の豆乳、といったように日々の食事にぜひ取り入れてみてください。
適度な運動
多嚢胞性卵巣症候群の原因にはホルモンバランスの乱れがあるとご説明しましたが、更に深堀りすると、ホルモンバランスの乱れはストレスから生じているということがあります。そして、適度な運動はストレス軽減に効果があることが証明されています。
加えて、肥満であることがホルモンバランスを乱れさせているということもあります。肥満を解消させただけで、排卵周期が安定した、多嚢胞性卵巣症候群が改善したというケースも挙がっています。
ウォーキングやヨガなど、負荷の大きくない運動を生活の中に取り入れ、肥満解消・体重維持、ストレス解消を図ってみて下さい。
まとめ
ここまで、多嚢胞性卵巣症候群がどのような症状であるのかを、正常な卵子の生成過程と比較しながら見るとともに、多嚢胞性卵巣症候群が何を原因として発症してしまうのか、発症を予防するための取り組みに関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
現代女性は、昔と比べるとさまざまなストレス環境にさらされており、ホルモンバランスが乱れやすい状態にあります。加えて、生活習慣が乱れやすい要因も日々の生活の中にはたくさんあります。
このような社会背景もあいまって、多嚢胞性卵巣症候群は決して珍しい病気ではなくなってきているのだろうと考えられます。
この記事が読者の皆さんにとって、多嚢胞性卵巣症候群に関して理解を深めるきっかけになれば幸いです。
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