妊活と聞くと女性だけが頑張るというイメージが強いですが、男性側の協力が不可欠です。妊娠は二人の共同作業であり、女性だけが頑張っても上手くはいきません。性行為以外にも普段の生活を変えていくケースがたくさんあります。
妊活はご夫婦一緒に取り組むものだと認識してもらうために、男性が妊活でできることをまとめた記事を公開しています。ご夫婦一緒に読んでいただき、妊活に前向きに取り組んでもらえたら幸いです。
男性が妊活のためにできること
男性が妊活のためにできることは以下の7つです。
- ・食生活の改善
- ・亜鉛やコエンザイムQ10の摂取
- ・睡眠時間の確保
- ・ブルーライト対策
- ・適度な運動
- ・ストレス軽減
- ・座りっぱなしの解消
次の項から詳しく解説をしていきます。
食生活の改善
栄養バランスの偏った食事はコンディションの低下を招きます。とりわけ妊活中の男性は、日々の食生活が乱れていないか、振り返ってみるのが大切です。特に男性は妊活に重要とされるビタミンやミネラルが不足しがちです。普段のお食事から野菜を意識して摂るようにしてください。低糖質と高タンパクの「糖質制限」にしておくと精子の質や量が改善していきます。
男性は外食する機会が多いため気を付けるポイントがいくつかあるので紹介しておきます。
・単品をやめて定食にする
ランチは、そば、うどん、ラーメンなどの単品ものをやめ、主食+主菜+副菜が揃った定食ものに変更しましょう。おかずが多いものがおすすめです。
・フライドポテトをサラダに変える
ファストフードはカロリーが十分ですが、栄養が足りないメニューがあります。もしランチで食べるならばフライドポテトをサラダに変更して野菜を多く摂るようにしましょう。飲み物は糖分の多いものは避けて無糖のコーヒーや呼応茶にするのがベターです。
・お酒のつまみは、低カロリーのたんぱく質に
仕事の付き合いで飲む機会がある場合は、おつまみを低糖質、高たんぱく、低カロリーのものを意識して選ぶようにしてください。冷奴、ナッツ、枝豆、チーズ、お刺し身、焼き魚などがおすすめです。
・甘い飲み物はNG
仕事中に甘いものを飲む男性も多いのですが、砂糖の入った飲料は血糖値を急激に上昇させるのでNGです。無糖のものを選ぶようにしましょう。
・深夜ごはんはNG
仕事で帰宅が遅くなると夕ご飯も遅くなってしまいますが、深夜に食事を摂るのは避けてください。食べてすぐ寝てしまうと、食べたものは脂肪として蓄積されてしまい精子の質が落ちてしまいます。できるだけ寝る三時間前に済ませておきましょう。
亜鉛やコエンザイムQ10の摂取
葉酸は、食品に含まれているポリグルタミン酸型とサプリメントに含まれているモノグルタミン酸型の二種類があります。食品に含まれているポリグルタミン酸型の葉酸の吸収率は約50%と食事で摂る葉酸の量は不足しがちなため、サプリメントで補うことも大切です。その際、コエンザイムq10が入っているものを選ぶと吸収しやすくなります。
妊活中の男性に多く摂って欲しい栄養素が亜鉛です。亜鉛は男性の精子形成や前立腺の働き、精子の運動や活性化にも関係しており、「セックスミネラル」と呼ばれるほどです。亜鉛が多く含まれている食品となるとかき、かに(缶詰)、牛ヒレ肉、牛サーロイン、牛肩ロース、さば、さけ、あさり、カマンベールチーズ、パルメザンチーズ、カシューナッツ、アーモンド、煮干しなどです。亜鉛たっぷり食材を意識して、日々のメニューに加えて積極的に摂るようにしましょう。
睡眠時間の確保
2016年にアメリカで発表された論文によると、睡眠時間7~7.5時間の人と比べ、6.5時間以下と短い場合は精液量が4.6%、総精子数が25.7%低下するという結果が出たそうです。また、9時間以上と長い場合でも、精液量が21.5%、総精子数が39.4%低下したと報告されています。しかも、2018年には、精子の成熟率が睡眠時間7~7.5時間の人と比べ、6.5時間以下で30.3%、9時間以上では40.7%下がったという結果が出ています。
そのため妊活中の男性は、精子の質や働きを良くするためにも7時間から7.5時間の睡眠を確保するようにしてください。
ブルーライト対策
ブルーライトこそホルモンに影響を与えている可能性があるといわれています。因果関係はこれからデータで出てくるとは思いますが、はっきりしているのはブルーライトを浴びるとメラトニンの分泌が低下することです。
そうなると男性ホルモンの分泌に必要な睡眠の質は落ちてしまいます。しかもブルーライトは非常に強い力を持った光であるため、浴びる時間帯を間違えると、体内時計がくるってしまいホルモンバランスが崩れてしまう原因にもなるのです。対策としては下記の三つが有効です。
- ・朝と昼はブルーライトを含む光をしっかり浴びる、夜はブルーライトを避ける。
- ・寝る3~4時間前から照明を暗くする。
- ・パソコンやスマートフォンを使用する際はメガネやフィルターなどで出来るだけカットする。
適度な運動
妊活をする上で欠かせないのが適度な運動です。女性は子宮や卵巣の働きが良くなり、男性は精子をつくる能力がアップすることが期待できます。適度なペースで有酸素運動を習慣的に行うと炎症が起こりにくくなり、活性酸素と活性酸素を消去するバランスが整うことで精子にダメージを与える酸化ストレスが低くなり、精子の質が悪くなるのを防ぐと言われているのです。
1日に30-40分の有酸素運動を週に3回以上が目安です。ただ、普段運動をしていない人には習慣にするのだけでも大変ですのでエレベーターをやめて階段を使う、ひと駅前で降りて歩くなど、毎日ちょっとでも体を動かすことを心がけるところからスタートしてみましょう。
カップルで一緒に取り組めるウォーキングもおすすめです。
ストレス軽減
妊活のプレッシャーから勃起不全になる男性もいるほどストレスは妊活にとって良くありません。ストレス過多など精神的な負担は性欲や性行為に悪影響を与えるだけでなくテストステロンの分泌や精子の生成を低下させます。ストレスが健康的な生活や夫婦で取り組む妊活を邪魔しないように体や心のバランスを取るようにしましょう。
ストレスを解消させる方法としては好きなことをするのが一番です。たまに妊活のことを忘れて夫婦それぞれで趣味に打ち込んだり、一緒に運動したりして余計なストレスを残さないようにしてください。
座りっぱなしの解消
近年、男性の不妊が増えている理由の一つに「座っている時間が長くなっていること」も挙げられています。デスクワークの仕事をして帰宅後もずっとソファに座ってゲームをしたり、スマホをいじったりしている生活も珍しくありません。しかしながら、座りっぱなしの生活を続けていると、筋肉が凝ってしまい、精巣の血管が圧迫され、血流が悪くなってしまいます。そうなると、精巣に十分な血液が届かず、血液が流れにくくなり、精巣が温まりやすくなるのです。
精巣の血流が悪くなると、呼吸により生まれる「活性酸素」が精巣にたまりすぎて精子を攻撃します。また、精子は熱に弱いので精巣の温度が高いと作られなくなります。
だからこそ妊活中の男性はオフィスでもエレベーターを使わずに階段を使ったり、なるべく社内でも歩いたりして座りっぱなしになるのを避けてください。
不妊の原因の半数は男性にある
日本の不妊治療は婦人科を中心に行われており女性側に原因があるように思われがちです。しかし2017年に世界保健機関(WHO)が行った調査によると、不妊症のうち、男性のみに原因があるケースが24%、男女両方に原因がある場合が24%で、男性にも原因があるとされています。つまり、不妊カップルの約半数において男性側に原因があるのが判明しています。
(プライベートケアクリニック東京|男性不妊症とは より引用)
男性側の問題として挙げられるのが精子と性生活の2つです。詳細については次の項から詳しく解説をしていきます。
精子に問題がある場合
- ・造精機能障害(精子形成障害):精子がたくさん作れない
- ・精路通過障害:精子が通れない、でてこない
- ・副性器障害:睾丸以外の生殖機能に問題がある
精子の問題は主に3つが原因です。男性側が上記の症状を持っているときは性行為をしても妊娠するのは難しくなっております。
性生活に問題がある場合
性機能障害が性行為ができなくて不妊になっているケースもあります。
原因は肉体的な要因と心理的な要因の2つです。
肉体的な原因であれば医師の診察を受けて治療をすれば改善する可能性がありますが、心理的な要因は原因を取り除くまで性機能障害が回復することはありません。
例えば、妊活そのものがプレッシャーとなってしまい性行為ができなくなる場合もあります。
妊活前に男性がしておく事は?
続いては男性が妊活をするために準備しておくことをご紹介します。
やっておきたいことは以下の3つです。
- ・精液検査
- ・風疹(ふうしん)抗体検査
- ・パートナーとの話し合い
上記のことをしておくと妊活が進めやすくなります。
精液検査
精液検査は精液がどれくらい元気なのか調べる検査です。
精液量や精子の数、精子の運動率などを調べます。
どうして検査が必要なのかと言いますと、精子の数や運動量が低いと妊娠成立がしにくくなるからです。
量が少なくても妊娠するのが難しくなります。
WHO(世界保健機関)は、以下の基準に満たさない場合不妊症の可能性があると示唆しています。
===参考===
WHOの精液所見の基準値
液量:1.5ml以上
濃度:1500万/ml 運動率:40%
当院の精液所見の基準値
液量:2.0ml以上
濃度:2000万/ml
運動率:50%
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※参考サイト:はらメディカルクリニック|不妊症の原因について|不妊症の定義、男女別の原因を詳しく解説
風疹(ふうしん)抗体検査
風疹(ふうしん)とは、風疹ウイルスによって起こる感染症です。
もし妊娠している(20週)女性が風疹になってしまうと、先天性風しん症候群の赤ちゃんが生まれてくる可能性があります。
その結果、赤ちゃんの身体(目・耳・心臓など)や精神の発達に影響を及ぼす恐れがあるのです。
風疹ウイルスは強い感染力を持っているため妊婦以外の人もかからないことが対策となります。
まずは男性もいつ風疹の予防接種を受けたのか確認をしましょう。
2回予防接種を受けていたら99%の確率で防げると言われています。
因みに接種回数は、以下の通りです。
平成2年4月2日以降に生まれた人は2回、公費でワクチンを受ける機会がありましたが、昭和37年度から平成元年度に生まれた女性及び昭和54年度から平成元年度に生まれた男性は受けていても1回です。そして、昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回もその機会がなく、十分な免疫を持たない人達が蓄積していたものと考えられています。(厚生労働省|風しんについてより引用)
ただ風疹は、2回予防接種を受けていても時間の経過とともに免疫が徐々に弱まってくるため、風疹抗体検査を受けておくのがおすすめです。
※参考サイト:厚生労働省|風しんについて
パートナーとの話し合い
妊活を始める前にパートナーと目標を共有しておきましょう。
曖昧にしておくと妊活が上手くいかないときに喧嘩の原因になったり、夫婦仲が冷え込んだりして離婚に至る場合もあるからです。
また認識のズレをなくしておくと2人で同じ方向に向かいやすくなります。
妊活をするならば開始前に2人で話し合いをするのは必須だと思ってください。
男性不妊の検査と検査費用
精液検査の費用は医院によって大きく変わってきます。
精液検査だけを行う時は保険適用される医院があったり、不妊検査の一貫として夫婦で検査を受ける場合は保険適用外になったりするためです。
そのため精液検査を希望される方は、保険適用の有無を事前に調べておきましょう。
カフェインやアルコールは精子に影響する?
コーヒーやお酒は好きな男性もたくさんいるため普段から愛用している方も多いでしょう。果たして妊活でどういった影響を与えるのか解説していきます。
カフェインによる影響
カフェインは、神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と似ており、アデノシン受容体(アデノシンが本来 結合する部位)に結合して、アデノシンの働き(神経鎮静作用)を阻害し、神経を興奮させます。そのため過度に摂取をすると中枢神経系が過剰に刺激されてしまい様々な健康被害を招く恐れがあります。
また長期的な作用として、高血圧になる可能性が指摘されています。妊活のためにも健康のためには過剰摂取は控えるようにしましょう。
一日1~2杯程度ならば精子への影響を心配する必要はありませんのでお好きなタイミングで飲んでください。
アルコール摂取による影響
妊活にアルコール摂取が駄目だと言われる理由は、アルコールの分解が間に合わず、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇するためです。アセトアルデヒドは細胞傷害性が高いので、精巣にも悪影響が及ぼす恐れがあります。
しかしアルコールの分解作用は人それぞれ違います。いくらお酒を飲んでも酔わない人もいますし、一滴も飲めない方もいます。アルコール分解能の個人差が大きいため妊活中にアルコール摂取が厳禁だと断言できません。ビール1~2杯程度ならば飲んでも構わないでしょう。
ただし、連日の深酒や過度な飲酒は精子への影響のみならず、健康を害する恐れがあります。常識的な量に留めておいてください。
男性の妊活体験談
以前比べて男性の妊活は当たり前になってきましたけど、まだまだぴんとこない方も大勢います。
そこで、この章では妊活を経験した男性の体験談をご紹介します。
ご覧になってご自分もやったほうがいいのかどうかをお考えください。
40代男性
妊活を始めて2年経っても妊娠しなかったため、不妊治療専門施設の門を叩きました。原因不明で体外受精や顕微授精に進んでも結果が出ず、どの方向へ行けばいいのか、どれくらい時間やお金がかかるのか、まるで霧の中を歩いているようでした。転勤のため転院した先で男性不妊の診察を受けると、精子の質や量が悪く、原因は精索静脈瘤だと判明。男性であることを否定されたように感じましたが、妻側の体調や体質改善とともに自分もできることがあると考え、手術治療を選択。半年後から精液検査の結果が改善しました。そして、治療開始から7年半、自然妊娠で子どもを授かりました。この間、不安からの口論も含め、たくさん話をして、妊活は夫婦が同じ目標に向かって同じ熱量で取り組むことが大事だと実感しました。(妊活ながのより引用)
精子無力症・39歳男性
ある日、妻から子どもが欲しいので協力してほしいと言われたのです。そのとき妻は40歳を超えていたため、カウンセリングを受ける気持ちでクリニックの検査を受けたところ、年齢的に不妊治療が必要だと言われました。
妻からすれば時間がなかったのでしょう。不妊治療に必要なありとあらゆることをしようとしていたのですが、不妊治療を本格的に行うためには莫大な費用がかかるのではないかと思ったことや、妻の年齢的に障害のある子が生まれてくる可能性が高いと言われていること、そして、そもそも私自身は子どもがいなくても良いと思っていたことから、不妊治療に積極的に取り組むことができませんでした
そんなある日、とある経済誌のウェブサイトを何気なく見ていると、ショッキングな記事が目に入ったのです。その内容は、子作りや不妊治療に積極的に協力しなかった夫に対し、妻は、子どもを作ることができない年齢に達したとき、自分に子どもが授かれなかったのはこの人のせいだと強い憎しみを抱くようになり、報道等はされいないが忍傷沙汰にまでなったケースもある・・・という衝撃的なものでした。
(中略)
そうして不妊治療に取り組んだところ、半年もしないうちに待望の第一子が妊娠し、半年前に無事可愛い女の子が誕生しました。現在、第二子をどうしようか検討中です。(メンズ妊活体験談|妊活の残り時間が迫るなか ・・・「精子無力症」 を改善してラストチャンスで挙児を得ることが出来た。より引用)
ダイヤモンド☆ユカイさん
男性不妊の場合はまず男性の手術が必要で、精巣にメスを入れるわけだ。妻側の負担も大きくて、ホルモン注射をたくさん打つし、排卵日に向けて体のコンディションも整えないといけない。卵子を取り出すことも、受精卵を子宮に戻すこともすごく大変。
俺たち夫婦はそれに2回挑戦して、2回とも失敗したんだ。実際には2年間くらいのできごとだったけど、10年ぐらいやっている気分だったよ。「このまま人生が不妊治療で終わっちゃうんじゃないか?」と感じるくらい、日々追い詰められていった。肉体的な苦しみと精神的な苦しみ、そして今よりも治療にお金がかかっているから、金銭的な苦しみを味わうことになったね。
〈中略〉
でも妻の年齢が35歳に近づいた頃、妻から「もう一度だけ挑戦したいです。不妊治療のスペシャリストがいる北九州の病院に行って、最後の挑戦をさせてください」と言われた。不妊治療にまた挑戦するとなると、俺は再び精巣にメスを入れなきゃいけない。でも、俺より大変な思いをすることになる妻がそこまで言うならと、北九州の病院に向かった。その結果、なんと子どもを授かることができたんだ。本当に予想していないサプライズだったね。だから妻には感謝してるよ。本当にすごい人だって今でも思ってるよ。(Yahoo!NEWS「知っていれば授かる可能性が上がる」ダイアモンド☆ユカイが男性不妊治療の経験を発信する理由より引用)
まとめ
ここまで男性でもできる妊活について紹介をしてきましたが、人によっては難しいこともあるかもしれません。ただ、妊活は女性だけが頑張るのではなく、男性も一緒になって取り組んだ方が結果は出やすいのは確かです。
武田コンシューマーヘルスケア株式会社の調査では4人に1人が「パートナーと上手く妊活に取り組めていない」という結果が出ています。男性もできることに取り組むことが、“ふたりで一緒に妊活をしている”という意識の高まりにつながりますので、お互いに思いやりを持ちながら妊活に取り組んでください。