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妊娠の選択肢を広げる着床前診断(PGT)とは?検査費用やデメリットを徹底解説

妊娠や出産には一定のリスクが伴うため、さまざまな問題を考慮しなければなりません。例えば、遺伝子異常染色体異常などの問題があげられます。それらの問題を解消する方法の1つとして、本記事では着床前診断(PGT)について解説していきます。

着床前診断(PGT)とは、体外で受精させた胚を検査し、遺伝子や染色体に異常の可能性が低い胚だけを子宮に戻す医療行為のことです。この着床前診断は誰でも受けられる検査ではなく、一定の条件をクリアする必要があります。また、着床前診断には一部のデメリットも存在するため注意しましょう。

本記事では、着床前診断の基礎概要、受ける方法と流れ、メリット・デメリットについて解説します。着床前診断を深く理解することにより、妊娠に対する選択肢の幅が広がるはずです。

着床前診断(PGT)とは?

診断のために議論する医師たち

着床前診断(PGT)とは、体外で受精させた胚を検査し、遺伝子や染色体に異常の可能性が低い胚だけを子宮に戻す医療行為のことです。胚とは受精卵が何度も細胞分裂して成長したものを指します。この胚には2細胞期胚や4細胞期胚、胚盤胞といった複数の種類がありますが、もともとはすべて同じ受精卵です。

着床前診断は誰でも受けられる医療行為ではなく、遺伝子異常や染色体異常の可能性がある、流産を繰り返すなど、一定の条件を満たす必要があります。また、論理的問題や高度な技術を要する検査方法であることから、「日本産科婦人科学会」が着床前診断を厳しく管理しています。

そのため「日本産科婦人科学会」の認可を受けた施設であると同時に、「倫理委員会」から承認されていなければ検査を受けることができません。このように、着床前診断はすべての医療機関で受けられるわけではないため、検討している方は事前に各医療機関へ相談しましょう。

なお、世界で初めて行われた着床前診断による妊娠は1990年だとされています。その後に日本での臨床研究が開始され、2004年に初めて着床前診断の実施が日本で承認されました。2018年には臨床研究が終了し、医療行為として位置づけられました。

出生前診断との違い

遺伝子や染色体を調べる検査のなかには「出生前診断」という検査もあります。この出生前診断と着床前診断にはどのような違いがあるのでしょうか?

出生前診断は、おなかにいる赤ちゃんの遺伝子異常や染色体異常の可能性を調べる検査であり、妊娠中に検査が行われます。一方、着床前診断は妊娠前の胚に対して行う検査であるため、検査するタイミングが大きく異なります。

なお、広い意味では妊婦健診で行われる超音波検査や胎児心拍数モニタリングを用いた検査なども、この出生前診断に含まれます。出生前診断を行うことにより形態異常や染色体異常など、胎児の先天性疾患の可能性を事前に確認することが可能です。

着床前診断を受ける方法や流れ

患者に説明中の医師

着床前診断の基礎概要については理解できたでしょうか?続いて、着床前診断を受ける方法や流れについて解説します。

着床前診断は前提として、誰でも受けられる医療行為ではありません。着床前診断を受けるためには、夫婦の遺伝子や染色体の検査、複数の遺伝カウンセリング、「日本産科婦人科学会」からの承認など、さまざまな条件を満たす必要があります。つまり、限られた人だけが受けられる検査であり、受けるまでにはいくつかの承認が必要不可欠です。

着床前診断が行われるまでの流れは以下をご参照ください。なお、「日本産科婦人科学会」に申請してから承認されるまでには、約半年ほどの時間を要するとされています。

  1. 一般検査
  2. 遺伝カウンセリング(複数回)
  3. 遺伝子や染色体の確認検査
  4. 遺伝カウンセリング(セカンドオピニオン)
  5. 着床前診断の希望を再確認
  6. 各種検査
  7. 日本産科婦人科学会の検査
  8. 着床前診断の開始

これら着床前診断が行われる流れは、検査する医療機関によって異なる可能性があります。検査を希望する方は各医療機関に確認し、万全な状態で臨みましょう。

着床前診断を受けられる条件

着床前診断を受けるための条件を詳しく解説します。前提条件としては、夫婦が着床前診断を強く希望していることがあげられます。また、夫婦間で十分な合意を得られていることが前提となります。それらを踏まえた上で、下記いずれかの条件を満たす必要があります。

  • 夫婦のどちらかに遺伝子異常や染色体異常の可能性があり、重篤な病気が子供に伝わる可能性がある場合
  • 夫婦のどちらかの染色体異常が原因で流産を繰り返している場合

着床前診断を検討している方は、自身に当てはめて確認してみてください。

着床前診断のメリット・デメリット

ここまで、着床前診断を受ける方法や流れについてお話しました。この着床前診断にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?本項でメリット・デメリットを明確にし、着床前診断の理解をさらに深めましょう。

着床前診断のメリット

メリット

着床前診断のメリットは、流産の確率を低下させて妊娠率を向上させることです。染色体数に過不足がある胚「異数性胚」は、着床できる確率を低下させる作用があるとともに、流産の確率を増加させる要因となります。着床前診断によって「異数性胚」を除外して染色体数が適正な数の胚を移植することで、流産のリスクを低下させて妊娠率の向上が期待できます。

また、着床前診断で染色体数の適正化をすることにより、重篤な病気が遺伝するリスクを減少させることも可能です。ほかにも、妊娠までの時間を短縮できる、精神的負担を低下させる、人工妊娠中絶を防げるなど、さまざまなメリットがあげられます。

これらのメリットにより、遺伝子異常や染色体異常が原因で妊娠を諦めていた夫婦も選択肢の幅が広がり、妊娠や出産に望むことが可能となります。

着床前診断のデメリット

着床前診断を受けることによるデメリットもいくつか考えられます。

1つ目のデメリットとしては、費用が高額である点があげられます。着床前診断は一般的に100万円ほどの検査費用がかかるとされているため、金銭的に余裕がなければ受けられません。体外受精遺伝学的検査、遺伝カウンセリングなどの費用が重なることで高額となってしまうのです。また、いくつもの胚を検査するケースでは、その個数分の検査費用がかかるためさらに高額となる可能性があります。

その上、着床前診断は保険適用外であるため全額自己負担です。とはいえ、国からの助成金が出るケースもあるため、検討している方は各自治体に問い合わせてみてください。

2つ目のデメリットは検査の判定が不明確であるため、確実な検査結果がでないことです。着床前診断は、受精胚のほんの一部を採取して検査するため、受精胚の全体を反映していない可能性があり、精度は100%ではなく、偽陰性や偽陽性などの誤った判断をされる可能性があります。さらに、正しい判定が出たとしても流産が起こるリスクは0ではありません。着床前診断は歴史が浅いこともあり、胚盤胞を操作したことによる長期的リスクが不明確でもあるのです。

上記のような複数のデメリットがあげられるため、十分に考慮した上で着床前診断を検討しましょう。

着床前診断を受けられる医療機関

説明する医師と説明を受ける患者

着床前診断を受けるメリット・デメリットは理解できたかと思います。最後に、着床前診断を受けられる場所についてみていきましょう。

着床前診断を受けられる場所は、生殖医療についての実績が十分であり「日本産科婦人科学会」から認可されている医療機関に限られます。

なお、この着床前診断は2018年まで臨床研究という位置づけであったため、一般的な治療法ではありませんでした。しかし、その後は医療行為として扱われるようになり、実施できる医療機関が増加している傾向にあります。

まとめ

本記事では、着床前診断の基礎概要、検査を受ける方法と流れ、メリット・デメリットについて解説しました。

着床前診断(PGT)は体外で受精させた胚を検査し、遺伝子異常や染色体異常の可能性が低い胚だけを子宮に戻す医療行為です。誰でも受けられる検査ではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。また、検査を受ける流れとして、複数の遺伝カウンセリングのあと「日本産科婦人科学会」から承認されなければなりません。

検査を受けるまでの条件が難しいものの、流産の確率を低下させて妊娠率を向上させる、重篤な病気が遺伝するリスクを減少させるなど、着床前診断には決定的なメリットがあります。ぜひ本記事を参考にして着床前診断を理解し、妊娠における選択肢の幅を広げましょう。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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