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排卵から着床まで何日?妊娠までの流れを日数で図解|着床完了のサイン・しなかった時のサイン・気をつけることを医師が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

排卵から着床が始まるまでは6〜12日ほどで、無事に続いた妊娠の多くは排卵後8〜10日目に着床しています。着床が終わるのは受精からおよそ10〜12日後、妊娠週数でいうと生理予定日のころ(妊娠4週0日前後)です。ただし、着床したかどうかを体の症状で見分ける確かな方法はありません。この記事では、排卵・受精・胚盤胞・着床という妊娠までの流れを日数入りの図で示し、「着床完了のサイン」と言われる基礎体温・おりもの・下痢などの説がどこまで正しいのか、着床しなかったときに起きていること、この時期に気をつけることを、臨床遺伝専門医の立場から整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🥚 排卵・受精・胚盤胞・着床・妊娠成立
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 排卵から着床まで何日かかりますか?

A. 着床が始まるのは排卵後6〜12日で、無事に続いた妊娠の84%は8〜10日目でした。受精は排卵後およそ24時間以内に起こり、受精卵は5日目ごろに胚盤胞になって子宮内膜にもぐり込み始めます。着床が終わるのは受精からおよそ10〜12日後で、生理予定日のころにあたります。着床を体感で確かめることはできず、判定は生理予定日の1週間後以降に妊娠検査薬で行うのが確実です。

  • ➤妊娠までの流れ → 排卵→受精(当日)→卵割→胚盤胞(5日目)→着床開始(排卵後6〜12日)→着床完了
  • ➤着床完了のサイン → 基礎体温・おりもの・下痢などで判定できる確かなサインはない
  • ➤着床しなかったとき → 生理が来ること、高温期が終わることが目安。着床後すぐに終わる妊娠もある
  • ➤遺伝の視点 → 着床しない・化学流産の大きな原因は胚の染色体の数の異常で、年齢とともに増える

1. 着床とは?受精と妊娠成立の違い

着床とは、受精卵が育ってできた胚盤胞(はいばんほう)が子宮内膜に接着し、内膜の中へもぐり込んで母体とつながることをいいます。受精しただけではまだ妊娠は成立しておらず、着床して胚盤胞の外側の細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが出始めることで、はじめて母体の側から妊娠を確かめられるようになります。そのため医学的には、着床が「妊娠成立」の目安とされます。

受精卵は卵管の中を運ばれている間、母体の血液とはまだつながっていません。子宮内膜にもぐり込み、外側の細胞が内膜の血管に向かって入り込んでいくことで、酸素や栄養を母体から受け取れる状態になります。この外側の細胞は、のちに胎盤の一部になる細胞です。つまり着床は、受精卵が母体に支えられて育つ状態へ切り替わる節目です。

受精したかどうかを体の外から確かめる検査は、いまのところありません。受精卵のうちどれだけが着床前に終わっているのかも直接測れないため、はっきりした数字はわかっていません。

💡 用語解説:hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

hCGは、着床した胚の外側の細胞(栄養膜、のちの胎盤)がつくるホルモンです。卵巣にある黄体を支え、黄体ホルモン(プロゲステロン)が出続けるようにして、子宮内膜がはがれ落ちる(生理が来る)のを止める働きがあります。市販の妊娠検査薬や病院の妊娠反応は、尿や血液中のhCGを検出しています。詳しくはhCGの解説をご覧ください。

2. 妊娠までの流れ|排卵から着床までを日数入りの図で

妊娠までの流れは、排卵→受精→卵割→胚盤胞→着床開始→着床完了の順に進みます。下の図は、排卵日を0日目として、それぞれの出来事が起こるおおよその日数を示したものです。日数は、体外で育てた受精卵の観察[3]と、自然妊娠でhCGの出現日を調べた研究[1]をもとにした目安で、実際には人によって数日の前後があります。

排卵・受精0日目(排卵後24時間以内)
▶
2〜8細胞に分裂1〜3日目・卵管の中
▶
桑実胚4日目ごろ・子宮に到着
胚盤胞・孵化5〜6日目
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着床開始排卵後6〜12日(多くは8〜10日目)
▶
着床完了受精後およそ10〜12日

排卵:卵子の寿命は約24時間

卵巣から排卵された卵子が受精できるのは、排卵後およそ24時間以内と考えられています。卵子は卵巣の中で卵胞という袋に包まれて育ち、排卵の直前には卵胞が直径2cm前後まで大きくなります。ただし大きくなるのは卵胞で、中の卵子そのものは直径0.1mmほどの小さな細胞です。排卵された卵子は卵管の先端に取り込まれ、卵管膨大部という少し太くなった部分で精子を待ちます。

卵子が受精できる時間が短いことは、排卵日と性行為の時期を毎日記録した研究からもうかがえます。この研究では、妊娠が成立したのは排卵日を最終日とする6日間に性行為があった周期だけで、排卵日の翌日以降の性行為による妊娠は確認されませんでした[2]。「卵子の寿命は24時間」という表現は、こうしたデータを踏まえた目安です。排卵日の見当のつけ方については排卵日の計算方法で、卵子の受精能については卵子の寿命で詳しく解説しています。

性行為から受精まで:精子の寿命と受精のタイミング

精子は女性の体内で数日間受精できる状態を保つため、性行為の日と受精の日は必ずしも一致しません。先ほどの研究では、妊娠が成立しうる期間は「排卵日の5日前から排卵日まで」の6日間でした。性行為1回あたりの妊娠の確率は、排卵5日前で約10%、排卵日当日で約33%と、排卵日に近いほど高くなっていました[2]。

排卵の前に性行為があった場合、精子は子宮や卵管の中で排卵を待ち、卵子が出てきたところで受精します。そのため「性行為から何日で着床するか」は人によって大きく変わり、性行為の日ではなく排卵(受精)の日から数えるほうが正確です。精子の生存期間について詳しくは精子の寿命をご覧ください。

卵割から胚盤胞へ:受精卵が子宮へ移動する5日間

受精卵は卵管の中を運ばれながら分裂を繰り返し、5日目ごろに胚盤胞という形になります。受精卵の最初の分裂は卵割と呼ばれ、2細胞、4細胞、8細胞と細胞の数が増えていきますが、受精卵全体の大きさはほとんど変わりません。体外で育てた受精卵の観察では、4日目ごろに細胞どうしが密着して桑実胚(そうじつはい)になり、5日目に胚盤胞、6日目に外側の殻(透明帯)から抜け出す「孵化(ふか)」が起き、7日目ごろに子宮の壁に着床できる状態になるとされています[3]。

胚盤胞は、内側に集まった細胞のかたまり(内部細胞塊)と、外側を包む一層の細胞(栄養外胚葉)からできています。内部細胞塊は将来赤ちゃんの体になり、栄養外胚葉は胎盤などになります。卵管を通って子宮の中に入るのは、桑実胚から胚盤胞になるころで、受精からおよそ3〜4日後です。胚盤胞の詳しい構造と、体外受精での評価については胚盤胞の解説をご覧ください。

💡 用語解説:桑実胚(そうじつはい)

受精から4日目ごろの、細胞が十数個から30個ほどに増えて密着した段階の受精卵です。見た目が桑の実に似ていることから名づけられました。この時期に細胞どうしが強く接着する「コンパクション」が起き、次の胚盤胞の段階で内側と外側の細胞に役割が分かれていきます。

着床の開始と完了:hCGが出始めるまで

着床は、接着、侵入、埋没という段階を経て進み、始まりから終わりまで数日かかります。透明帯から抜け出した胚盤胞は、まず子宮内膜の表面にくっつき(接着)、次に外側の細胞が内膜の中へ入り込んでいきます(侵入)。やがて胚盤胞全体が内膜の中に埋まり、表面が閉じると着床が終わったことになります。完全に埋まるのは、受精からおよそ9〜12日後とされています。

着床が始まると、外側の細胞からhCGが分泌され、母体の尿中に出てくるようになります。妊娠を望む女性221人の尿を毎日調べた研究では、6週以上続いた妊娠でhCGが最初に検出されたのは排卵後6〜12日で、84%は8〜10日目でした[1]。この研究は「hCGが尿に出始めた日」を着床日とみなしています。

着床の準備は、排卵後に黄体から出る黄体ホルモンが子宮内膜を厚く柔らかい状態に変えることで整います。

妊娠週数に当てはめると何週?

妊娠週数は最終月経の開始日を0週0日として数えるため、着床が始まるのは妊娠3週の前半から半ば、終わるのは妊娠4週0日前後になります。月経周期が28日で14日目に排卵した場合を例にすると、次の表のようになります。受精した日を0週0日として数えるわけではない点に注意が必要です。

📅 排卵日を基準にした日数と妊娠週数(28日周期の例)

出来事 排卵日からの日数 妊娠週数の目安
最終月経の開始 排卵の14日前 0週0日
排卵・受精 0日目 2週0日
胚盤胞になる 5日目ごろ 2週5日ごろ
着床開始 6〜12日目(多くは8〜10日目) 2週6日〜3週5日(多くは3週1日〜3週3日)
着床完了 受精からおよそ10〜12日 3週後半〜4週0日前後
生理予定日 14日目 4週0日

※排卵が早い・遅い周期では、すべてが前後にずれます。着床開始日はWilcoxらの研究[1]による。

排卵が遅れた周期では、生理予定日になってもまだ着床していないことがあります。妊娠週数の数え方の詳細や、胚盤胞移植で妊娠した場合の計算方法は妊娠週数の数え方で、着床が終わったあとの時期の体と胎児の様子は妊娠4週の解説で説明しています。

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3. 着床まで何日?日数についてのよくある疑問

「着床まで何日」という疑問は、どの日を起点に数えるかで答えが変わります。質問ごとに、医学的に答えられる範囲をまとめます。最短の日数は排卵後6日目ですが[1]、これは少数です。

⏱️ 着床までの日数Q&A

質問 答え 補足
排卵から何日で着床する? 6〜12日。多くは8〜10日目 6週以上続いた妊娠の84%が8〜10日目[1]
受精から最短で何日? 最短で6日前後 排卵後6日目の着床は少数[1]
性行為から何日で着床する? およそ6〜17日と幅が大きい 精子が最長5日ほど排卵を待てるため[2]
着床は何日で完了する? 受精からおよそ10〜12日 内膜に完全に埋まるまでの目安
着床から何日で検査薬が陽性? 生理予定日1週間後の検査が確実 生理予定日当日では約10%がまだ着床前[4]

排卵から何日で着床しますか? 着床が始まるのは排卵後6〜12日で、無事に続いた妊娠の多くは8〜10日目です[1]。「排卵から5〜6日で着床する」と書かれた情報もありますが、5〜6日目は胚盤胞ができて殻から抜け出すころで、hCGが出始める着床はもう少しあとになります。

性行為してから何日で着床しますか? 性行為が排卵日の当日なら6〜12日後、排卵の5日前なら11〜17日後というように、性行為と排卵の間隔によって変わります。受精は排卵の日に起こるため、「排卵日から数えて何日か」で考えると見通しが立てやすくなります。

着床から何日で妊娠検査薬が陽性になりますか? 着床の時期には個人差があるため、生理予定日の当日に検査してもまだ反応しないことがあります。221人を追跡した研究では、生理予定日の初日の時点で、のちに臨床的に確認された妊娠の10%はまだ着床していませんでした。非常に感度の高い測定法を使っても、生理予定日の初日に妊娠を見つけられる割合は最大で90%、1週間後には97%と推計されています[4]。検査薬を使う時期については妊娠検査薬はいつから使えるかで詳しく説明しています。

体外受精で胚盤胞を移植した場合は? 5日目の胚盤胞を移植した場合は、移植した胚がすでに着床直前の段階にあるため、自然妊娠より短い日数で着床が始まります。移植から判定までのスケジュールは治療施設によって異なるため、胚盤胞移植後の着床スケジュールもあわせて確認してください。

着床の時期については、もう一つ知られているデータがあります。先ほどの研究では、排卵後9日目までに着床した妊娠のうち初期に終わったのは13%でしたが、10日目の着床では26%、11日目では52%、12日目以降では82%と、着床が遅いほど初期に終わる割合が高くなっていました[1]。ただしこれは、遅い着床と初期の流産が一緒に起こりやすいという関連を示したもので、遅く着床したことが流産の原因だとまでは言えません。また、自分の着床日を体感で知ることはできないため、この数字を一人ひとりの見通しに当てはめることもできません。

4. 着床完了のサインはある?基礎体温・おりもの・下痢の真偽

結論からいうと、着床したかどうかを体の症状で見分ける確かなサインはありません。基礎体温、おりもの、下痢、腹痛、眠気などがサインとして挙げられますが、多くは排卵後に増える黄体ホルモンの働きで説明できる変化で、妊娠していない周期の生理前にも同じように起こります。ここでは、よく挙げられる説を一つずつ整理します。

🔎 「着床完了のサイン」とされる変化の整理

言われていること 医学的に言えること 判定に使えるか
高温期が続く 黄体が保たれると高温が続く。妊娠の可能性を考える手がかりにはなる 生理予定日を過ぎても続くかが目安
着床時に体温が一時的に下がる 裏づける信頼できるデータは確認されていない 使えない
おりものの変化 黄体ホルモンの作用で生理前にも起こる 使えない
下痢・腹痛・眠気 黄体ホルモンの作用で生理前にも起こる 使えない
着床出血 着床そのものが出血を起こすことを支持しない前向き研究がある[5] 使えない

基礎体温:高温期が続くことの意味

基礎体温で妊娠の可能性を考える手がかりになるのは、「高温期が生理予定日を過ぎても続いているか」という点です。妊娠していなければ黄体は2週間ほどで働きを終えて体温が下がり、生理が始まります。着床してhCGが出ると黄体が保たれ、高温期が続きます。

一方で、「着床した日に体温が一時的に下がる(インプランテーションディップ)」という説は広く知られていますが、これを裏づける信頼できるデータは確認されていません。基礎体温は睡眠や測る時間のずれでも動くため、1日だけの上下から着床を読み取ることはできません。基礎体温の変化のパターンについては基礎体温の変化とグラフの見方で解説しています。

💡 用語解説:黄体ホルモン(プロゲステロン)

排卵後の卵巣にできる黄体から分泌されるホルモンで、子宮内膜を着床しやすい状態に整え、妊娠を保つ働きがあります。体温を上げる作用があるため、排卵後は基礎体温が高温期になります。腸の動きをゆるやかにしたり、眠気やむくみを起こしたりする作用もあり、生理前の体調の変化の一因になります。

おりもの:変化はあっても判別には使えない

排卵後から生理前にかけて、おりものの量や性状は黄体ホルモンの影響で変化しますが、その変化で着床したかどうかを判別することはできません。排卵期のおりものは透明で伸びがよく、排卵後はやや白っぽく粘りのある状態に変わるのが一般的です。

「着床すると水っぽいおりものが増える」といった説を裏づける信頼できるデータは確認されていません。かゆみや強いにおい、色の大きな変化があるときは、妊娠の有無にかかわらず感染症などの可能性があるため、婦人科での診察が必要です。妊娠超初期のおりものについては妊娠超初期のおりものでまとめています。

下痢・腹痛・眠気:体験談で多い声とその正体

「着床の時期に下痢をした」「眠くて仕方がなかった」という体験談は多く見られますが、これらは黄体ホルモンの作用で生理前にも起こる変化です。黄体ホルモンには腸の筋肉をゆるめる作用があり、便秘になる人もいれば、ホルモンの変化に伴って下痢や腹部の張りを感じる人もいます。眠気やだるさ、胸の張りも、排卵後の高温期によく見られます。

体験談は、妊娠がわかったあとに振り返って結びつけられたものが多く、同じ症状があって妊娠していなかった周期は話題になりにくいという偏りがあります。腹痛が強い、出血を伴う、痛みが続くといった場合は、着床とは別の原因を考えて受診してください。

着床出血・着床痛・受精後すぐの症状

「着床出血」は、着床のときに起こる少量の出血として広く知られていますが、着床そのものが出血の原因であることは確かめられていません。妊娠を望む女性を前向きに追跡した研究では、臨床的に確認された妊娠151例のうち、妊娠8週までに出血を記録したのは14例(9%)でした。出血は生理予定日のころに多く、着床した日に起こることはまれで、著者らは「着床が出血を起こすという仮説を支持する所見はなかった」と結論しています。出血があった14例のうち12例は出産に至っていました[5]。

つまり、妊娠のごく初期に少量の出血があることは珍しくなく、その多くはそのまま妊娠が続きますが、それが「着床の瞬間」に起きた出血かどうかはわかりません。反対に、出血がなかったからといって妊娠していないことにもなりません。出血の時期や量、生理との違いについては着床出血はいつ起こるかで詳しく解説しています。

「着床痛」と呼ばれるチクチクした痛みについても、着床によって痛みが生じることは医学的に証明されていません。受精直後の症状も、受精卵がまだ母体とつながっていない段階のため、受精そのものによるとは考えにくいものです。詳しくは着床痛と受精後すぐの症状の解説へ。妊娠超初期に見られる変化の全体像は妊娠超初期症状のチェックリストにまとめています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【サインを探すより、検査の時期を決めておく】

着床の前後にみられる体温やおりものなどの変化だけから、着床を見分ける確かな方法はありません。これらの変化は妊娠していない周期にも起こりうるため、着床判定の根拠にはできません。

一般用の妊娠検査薬は、製品の使用時期に従って検査します。生理予定日の1週間後から使用するタイプでは、その時期に検査し、陽性なら産婦人科で子宮内妊娠かどうかを確認します。

5. 着床しなかったときのサイン

着床しなかったことを示す特別なサインはなく、目安になるのは「生理が来ること」と「高温期が終わること」です。受精しなかった場合や、受精しても着床に至らなかった場合、黄体は2週間ほどで働きを終え、黄体ホルモンが減って子宮内膜がはがれ落ち、いつもどおりの生理が来ます。この場合、本人が受精したかどうかを知る方法はなく、体の変化もふだんの生理と変わりません。

着床したものの、ごく早い段階で妊娠が終わることもあります。尿中のhCGを毎日測った研究では、着床してhCGが検出された妊娠のうち31%が失われ、全体の22%は妊娠と気づかれる前、生理が来るころまでに終わっていました[6]。このように、hCGが検出されて妊娠反応が陽性となったものの、超音波で胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)が確認される前に妊娠が終わる状態は、一般に「化学流産(生化学的妊娠)」と呼ばれます。

化学流産は、市販の検査薬を早めに使った場合に気づかれることがあり、「生理が数日遅れて、陽性反応が出たあとに出血が来た」という形をとることが多いとされます。「生理が少し遅れて量が多めだった」というだけでは化学流産だったかどうかは判断できないため、振り返って自分を責める材料にしないでください。化学流産の症状や陽性反応が消えるまでの経過は化学流産の症状や原因で解説しています。

強い腹痛や出血、片側の下腹部の強い痛みがある場合は、子宮外妊娠などの可能性もあるため早めに受診してください。

6. 【遺伝の視点】ごく初期の妊娠喪失と胚の染色体異常

ごく初期を含む妊娠喪失では、胚・胎児の染色体の数の異常が重要な原因の一つです。米国産婦人科学会(ACOG)の診療指針は、臨床的に確認された妊娠初期流産のおよそ半数が胎児の染色体異常によるものだとしています[7]。一方、自然妊娠で「着床しなかった胚」そのものを直接調べることはできないため、着床不成立の原因割合を同じ数字で示すことはできません。

人の細胞には、父と母から1本ずつ受け継いだ23対・46本の染色体があります。卵子と精子をつくるときには、減数分裂という特別な細胞分裂で染色体の数が半分の23本になります。この分裂の途中で、本来分かれるべき染色体がうまく分かれないこと(染色体不分離)が起こると、染色体が1本多い、あるいは1本少ない卵子ができます。これが受精すると、染色体が3本ある(トリソミー)、1本しかない(モノソミー)といった染色体の数的異常(異数性)を持つ胚になります。こうした胚の多くは、途中で育つことができなくなります。

染色体の数の異常は、決してまれなものではありません。トリソミーやモノソミーの胚は少なくとも妊娠全体の10%を占め、生殖可能な年齢の終わりに近い女性では50%を超えることがあると報告されています。その原因となる分裂の誤りは、ほぼ常に卵子の側で起きています[8]。卵子の染色体異常の多くは、卵子ができる過程の最初の減数分裂(減数第一分裂)の誤りに由来することもわかっています[9]。

💡 用語解説:染色体不分離

減数分裂のときに、対になった染色体(または染色体の2本の分身)が正しく2つに分かれず、片方の細胞に両方が入ってしまう現象です。卵子は胎児期に減数分裂を始めたあと、排卵の直前まで何十年も途中の段階で止まっているため、年齢とともに染色体を正しく分ける仕組みが弱まり、不分離が起こりやすくなると考えられています。詳しくは染色体不分離の解説をご覧ください。

胚の染色体異常は、母体の年齢とともに増えます。体外受精で得られた胚盤胞1万5169個を調べた研究では、染色体の数に異常がある胚の割合は30歳前後で最も低く、年齢とともに上がり、43歳以上では8割を超えていました[10]。臨床的に確認された妊娠が初期に流産となる頻度も、20〜30歳では9〜17%ですが、35歳で20%、40歳で40%、45歳で80%と、年齢とともに高くなります[7]。年齢と卵子の染色体異常の関係は卵子で異数性が起こる理由と母体の加齢で詳しく解説しています。

ただし、胚の異数性の割合は体外受精を受けた人の胚を調べたデータで、自然妊娠をめざす一人ひとりの確率としてそのまま当てはめることはできません。

ここで重要なのは、化学流産を含むごく初期の妊娠喪失では胚の染色体異常が重要な原因となる一方、自然妊娠で着床しなかった個々の胚の原因を特定することは通常できないという点です。日常的な活動を着床不成立の原因とみなす根拠は乏しく、胚の染色体数は受精時に決まります。

流産を繰り返す場合は、夫婦の染色体の構造の変化(均衡型転座など)や子宮の形などが関わることもあり、検査と対応は不育症とはで、染色体との関係は不育症の原因になる染色体異常で解説しています。体外受精では、移植する前の胚の染色体の数を調べるPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)という検査もありますが、対象や効果は限られており、「受ければ着床する」という検査ではありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【着床しなかった理由を、自分の行動に探さないでほしい】

ごく初期の妊娠喪失では、胚の染色体異常が重要な原因の一つです。一方、自然妊娠で着床しなかった個々の胚について、その原因を後から特定することは通常できません。

卵子の染色体分配の誤りは生物学的に起こりうる現象で、その頻度は母体年齢と関連します。通常の日常生活上の行動だけを、胚の染色体異常の原因とみなすことはできません。

\ 染色体の数の異常は、妊娠中にNIPTで調べることもできます /

📅 NIPTを予約する

NIPT(新型出生前診断)とは | 妊娠検査薬はいつから使える?

7. 受精から着床までに気をつけること

受精から着床までの時期に特別な安静は必要なく、基本はふだんどおりに過ごしてかまいません。そのうえで、妊娠の可能性がある時期として意識しておきたいことを整理します。なお、妊娠がわかったあとの生活上の注意は妊娠初期に気をつけることで詳しく扱っています。

📝 受精から着床までの時期の過ごし方

項目 考え方
喫煙 妊娠を望む時期からやめることがすすめられる
飲酒 妊娠の可能性がある時期は控えるのが無難
薬・X線 受精後2週間ほどは「all or none」の時期とされるが例外もある。服用中の薬は自己判断で止めない[11]
葉酸 妊娠の1か月以上前から1日400μgを栄養補助食品でとることが推奨されている[12]
入浴・軽い運動・性行為 着床を妨げることを示す根拠は見当たらない
体を冷やさない・安静にする 着床を助けるという根拠は確認されていない

喫煙と飲酒 喫煙は妊娠を望む時期からやめることがすすめられます。飲酒も、妊娠中に安全といえる量はわかっていないため、妊娠の可能性がある時期は控えるのが無難です。

薬とX線(all or none) 受精から2週間ほど(妊娠4週前後まで)は、「all or none(全か無か)」の時期と呼ばれます。この時期に薬や放射線の影響を大きく受けた胚は着床できずに終わり、影響が小さければ胚の細胞が補い合って、その後は影響を残さずに育つと考えられています。一方で、この原則には例外があり、体の中に長く残る一部の薬などは時期を過ぎても影響する可能性があります[11]。持病の薬を自己判断でやめると母体の病状が悪化することもあるため、服用中の薬は主治医に確認するか、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」の相談窓口を利用してください。

💡 用語解説:all or none(全か無か)の法則

受精から約2週間の胚は、まだ体の器官をつくり始めておらず、細胞の一つひとつがほぼ同じ性質を持っています。この時期に強い影響を受けると胚全体が育たなくなり(全)、影響が一部の細胞にとどまれば、残りの細胞が補って正常に育つ(無)という考え方です。器官がつくられ始める妊娠4週以降は、薬の影響を最も受けやすい時期に入ります。

葉酸 葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管の異常(神経管閉鎖障害)のリスクを下げるために、妊娠前からとることがすすめられているビタミンです。厚生労働省は2000年に、妊娠を計画している女性に対して、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、食事に加えて栄養補助食品から1日400μgの葉酸をとるよう情報提供を求めています[12]。日本先天異常学会も、妊娠前4週から妊娠12週まで1日400μgの摂取を呼びかけています[13]。葉酸は着床率を上げるためのものではなく、神経管閉鎖障害を減らすためのものです。詳しくは葉酸サプリメントの効果をご覧ください。

入浴・運動・性行為と俗説 入浴や軽い運動、性行為が着床を妨げることを示す根拠は見当たりません。これは「安全が証明された」ではなく「避ける必要を示すデータがない」という意味です。「体を冷やすと着床しない」「安静にしたほうがよい」といった説も、支持するデータは確認されていません。

8. 妊娠がわかったら:受診の時期と出生前検査

生理予定日の1週間後以降に妊娠検査薬で陽性が出たら、妊娠5〜6週ごろを目安に産婦人科を受診してください。経腟超音波検査で子宮の中に胎嚢と卵黄嚢(らんおうのう)が見えるのは、一般に妊娠5〜6週のころです[7]。一方で、強い腹痛や多めの出血があるときは、時期にかかわらず早めに受診してください。

妊娠が確認されたあとは、妊婦健診を受けながら、赤ちゃんの染色体の数を調べる出生前検査を受けるかどうかを考える時期に入ります。NIPT(新型出生前診断)は、母体の血液に含まれる胎盤由来のDNAを調べ、21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体の数の異常を推定する検査です。検査でわかることとわからないこと、費用や時期についてはNIPT(新型出生前診断)とはで詳しく説明しています。

当院のNIPTは、妊娠6〜8週は臨床研究として、妊娠9週以降は通常の検査として受け付けています。検査を受けるかどうかは、ご本人とご家族が決めることです。着床から出産までの体と胎児の変化は、週数ごとに妊娠カレンダーでまとめています。

🏥 NIPT(新型出生前診断)をお考えの方へ

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医がNIPTの検査前後の説明と結果の説明を行っています。妊娠6〜8週は臨床研究として、妊娠9週以降は通常の検査としてご予約いただけます。検査でわかる範囲と限界を確認したうえでご予約ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 着床したかどうかわかる方法はありますか?

体の症状で着床を見分ける確かな方法はありません。着床するとhCGというホルモンが出始めるため、尿中のhCGを調べる妊娠検査薬で確認します。着床の時期には個人差があり、生理予定日の当日ではまだ反応しないことがあるため、生理予定日の1週間後以降に検査するのが確実です。

Q2. 着床の時期に避けたほうがよいことはありますか?

喫煙はやめ、飲酒は控えておくのが無難です。服用中の薬は自己判断でやめず、主治医に確認してください。一方、入浴や軽い運動、性行為が着床を妨げることを示す根拠は見当たらず、特別な安静も必要ありません。

Q3. 着床しやすくする方法はありますか?

自然妊娠で着床率を確実に上げる方法は確立されていません。着床不成立の原因を自然妊娠で個別に特定することは通常できません。胚の染色体異常はごく初期の妊娠喪失の重要な原因であり、日常的な活動によって着床率を確実に高められる方法は確立されていません。葉酸は神経管閉鎖障害のリスクを下げるためのもので、着床率を上げるためのものではありません。

Q4. 着床出血がなければ妊娠していないのですか?

いいえ。前向きの研究では、妊娠8週までに出血があったのは臨床的に確認された妊娠の9%で、着床した日に出血することはまれでした。着床が出血を起こすことを支持する所見も得られていません。出血がないことは、妊娠していないことを意味しません。

Q5. 年齢が高いと着床しにくいのですか?

年齢とともに卵子の染色体の数の異常が増えるため、着床しない、あるいは着床してもごく初期に妊娠が終わる割合は高くなります。体外受精の胚の研究では、染色体の数に異常がある胚の割合は30歳前後で最も低く、43歳以上では8割を超えていました。ただしこれは集団のデータで、一人ひとりの確率ではありません。

まとめ

妊娠までの流れは、排卵、受精、卵割、胚盤胞、着床の順に進みます。受精は排卵後およそ24時間以内に起こり、受精卵は5日目ごろに胚盤胞になって、排卵後6〜12日(多くは8〜10日目)に子宮内膜へ着床し始めます[1]。着床が終わるのは受精からおよそ10〜12日後で、妊娠週数では生理予定日のころにあたります。

基礎体温、おりもの、下痢などの変化で着床したかどうかを見分けることはできず、判定は生理予定日の1週間後以降の妊娠検査薬で行うのが確実です[4]。ごく初期の妊娠喪失では胚の染色体の数の異常が重要な原因で、その頻度は母体年齢と関連します[7][8]。妊娠がわかったら5〜6週ごろに産婦人科を受診してください。妊娠確認後の検査についてはNIPT(新型出生前診断)で解説しています。

参考文献

  • [1] Wilcox AJ, Baird DD, Weinberg CR. Time of implantation of the conceptus and loss of pregnancy. N Engl J Med. 1999;340(23):1796-1799. [PubMed 10362823]
  • [2] Wilcox AJ, Weinberg CR, Baird DD. Timing of sexual intercourse in relation to ovulation: effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. N Engl J Med. 1995;333(23):1517-1521. [DOI]
  • [3] Niakan KK, Han J, Pedersen RA, Simon C, Pera RA. Human pre-implantation embryo development. Development. 2012;139(5):829-841. [PMC3274351]
  • [4] Wilcox AJ, Baird DD, Dunson D, McChesney R, Weinberg CR. Natural limits of pregnancy testing in relation to the expected menstrual period. JAMA. 2001;286(14):1759-1761. [PubMed 11594902]
  • [5] Harville EW, Wilcox AJ, Baird DD, Weinberg CR. Vaginal bleeding in very early pregnancy. Hum Reprod. 2003;18(9):1944-1947. [PubMed 12923154]
  • [6] Wilcox AJ, Weinberg CR, O’Connor JF, et al. Incidence of early loss of pregnancy. N Engl J Med. 1988;319(4):189-194. [DOI]
  • [7] American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Practice Bulletin No. 200: Early pregnancy loss. Obstet Gynecol. 2018;132(5):e197-e207. [DOI]
  • [8] Nagaoka SI, Hassold TJ, Hunt PA. Human aneuploidy: mechanisms and new insights into an age-old problem. Nat Rev Genet. 2012;13(7):493-504. [PubMed 22705668]
  • [9] Hassold T, Hall H, Hunt P. The origin of human aneuploidy: where we have been, where we are going. Hum Mol Genet. 2007;16(Spec No 2):R203-R208. [DOI]
  • [10] Franasiak JM, Forman EJ, Hong KH, et al. The nature of aneuploidy with increasing age of the female partner: a review of 15,169 consecutive trophectoderm biopsies evaluated with comprehensive chromosomal screening. Fertil Steril. 2014;101(3):656-663.e1. [DOI]
  • [11] Critical Periods of Development. MotherToBaby (Organization of Teratology Information Specialists). [MotherToBaby]
  • [12] 厚生省(現・厚生労働省). 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について(平成12年12月28日). [厚生労働省]
  • [13] 日本先天異常学会. 葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう(改訂版:2018年3月27日). [日本先天異常学会]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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