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体外受精で双子を妊娠する確率は〇%!双胎妊娠になる仕組みとリスクを解説

体外受精で双子を妊娠しやすいという話は有名です。そして実際に体外受精が普及してからというもの、双子を妊娠する確率は格段に上がりました。

しかし、一方で双胎妊娠によると母胎が危険に晒されるリスクも高まるのです。

そこでこの記事では、体外受精に関する以下の内容について解説します。

  • ・体外受精の基礎知識
  • ・体外受精で双子ができる確率
  • ・双胎妊娠による母胎のリスク

これから体外受精を考えている方で、双子妊娠の可能性やそのリスクについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

体外受精を検討中の人が知っておくべき基礎知識

不妊治療中の方で体外受精は妊娠する確率を高める希望そのものです。

一方で体外受精には対象者がいたり、治療自体に苦痛を伴ったりします。

そこでこの章では、体外受精に関する基礎知識として、以下の4つの内容をお伝えします。

  • ・体外受精とは?
  • ・治療対象者
  • ・治療の流れ
  • ・治療費と保険・助成金

体外受精に関して詳しくない方でも簡単に理解できるように分かりやすく解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

 

体外受精とは?

体外受精(顕微受精)とは、受精(精子卵子が出会うこと)の過程のみを体外で行う治療のことです。受精が成立した受精卵はお母さんの子宮に戻され、その後は自然妊娠同様に妊婦として出産を迎えます。

体外受精は不妊治療で最も妊娠成果の高い治療法であり、現在出生数の16分の1が体外受精で妊娠・出産しているというデータもあるのです。

採卵は膣から針を刺して行われます。そして採卵した卵子を顕微鏡で確認しながら人工授精をします。受精が完了すると子宮内に戻し、着床まで待つという流れです。

通常の受精は精子が卵子と出会うまでに様々な関門があり、結果として受精に至らないケースも多くあります。一方で体外受精は精子と卵子が出会うまでの関門をカットし、受精が成立した受精卵を子宮に戻すため、妊娠率が格段に上がります。

※参考資料:日本産科婦人科学会/生殖補助医療(ART)

 

治療対象者

体外受精は、希望をすれば誰でも受けられる治療ではありません。基本的には母体内で受精が難しいと診断された方が対象者となります。

体外受精の治療対象者は、以下の通りです。

  • ・卵管性不妊
  • 子宮内膜症、重症排卵障害
  • ・受精障害
  • ・男性不妊
  • ・原因不明不妊症
  • ・不妊治療にて妊娠が見込めなかった場合

病気や卵子・精子の問題、原因不明の不妊症まで様々な状況に体外受精は適応しています。妊娠しないと夫婦だけで悩んでいても解決することはありません。勇気を持って専門機関へ体外受精の相談をしましょう。

※参考文献:日本産科婦人科学会/生殖補助医療(ART)

 

治療の流れ

体外受精の手順は大きく分けて以下の2つです。

  • ・採卵:女性の卵子を体外へ取り出す
  • ・胚移植:対外で受精させた受精卵を子宮に戻す

具体的な治療の進め方は、以下の通りです。

  • 1.排卵誘発
  • 2.採卵
  • 3.受精
  • 4.培養
  • 5.胚移植
  • 6.妊娠判定

専用のホルモン剤を注射して排卵を誘発し、採卵を行います。採卵は膣から針を刺して行うため、お母さんは痛みや苦痛を伴う処置となるでしょう。

採卵後は異常がないことが確認された精子と受精し、そのまま数日間、自然妊娠同様に受精卵が育とやすい環境で培養されます。

培養後、無事に細胞分裂して胚になった受精卵は、子宮内に戻す胚移植が行われます。子宮に戻った受精卵が子宮内膜で着床すると妊娠が成立となります。

胚移植から11日以降に採血を行い、hCGホルモンの分泌状況から妊娠判定をします。

※参考資料:はらメディカルクリニック/体外受精とは?対象者や治療方法・手順、成功率について

 

治療費と保険・助成金

厚生労働省によると、令和4年4月から体外受精も保険適応となりました。

ただし、以下の条件内で不妊治療が行われるのが条件になります。

  • ・治療開始時の年齢が43歳未満
  • ・治療開始時期が40歳未満で6回、40歳以上43歳未満で3回の回数制限あり

治療費は3割負担となります。治療費が高額なら月額上限(高額療養費制度)の利用も可能です。また、不妊治療費用は医療費控除の対象であるため、年度末の確定申告を行えば減税にもなります。

※参考資料:厚生労働省

体外受精で双胎妊娠・出産する確率

体外受精での妊娠は、双胎妊娠の確率が高いと言われています。体外受精を受ける以上、双胎妊娠の可能性はつきものです。

この章では、体外受精における双胎妊娠の確率やその理由について詳しく解説します。

 

双子を妊娠する確率

厚生労働省のデータによると、日本における多胎妊娠(双子もしくはそれ以上)は、2017年で9,900件あり、出産全体の1,04%を占めています。そして、自然妊娠に比べて体外受精の双子の妊娠率は2倍と言われています。

つまり、体外受精は多胎妊娠の可能性が非常に高いのです。不妊治療による経済的負担は大きく、双子の出産・育児は単純計算で2倍のお金がかかります。これら双子の可能性についても夫婦間で相談し、体外受精という選択をしましょう。

※参考資料
厚生労働省/平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業
厚生労働省/出生動向の多面的分析

 

体外受精で双子の妊娠率が高くなる理由

 

体外受精で双胎妊娠が高い理由は、複数の受精卵を子宮に胚移植するためです。

体外受精のような特殊治療は、保険適応であっても高額かつ心身の負担を考慮すると何度も受けるのは難しいでしょう。そこで、1回の体外受精治療で妊娠の確率を高めるために、複数の受精卵を移植します。

これら受精卵のうち、複数個が着床すると双子を妊娠します。二つの受精卵から双子を受精するため、二卵性双生児の妊娠率が高いことになります。

※参考資料:厚生労働省/多胎・減数手術について

一卵性・二卵性を妊娠する仕組み

おなかに双子の2回の超音波スキャンを持つ妊婦

一卵性とは、1つの受精卵が2つに分化してそれぞれ成長したタイプの双子です。遺伝情報はほぼ同じであるため、性別から見た目・血液型に至るまで似ているのが特徴です。

一方の二卵性とは、2つの受精卵がそれぞれ成長したタイプの双子になります。一卵性と違い遺伝情報が異なるため、性別や見た目は必ずしも似ている訳ではありません。

通常、1回の排卵で1つの卵子が排出されます。しかし二卵性双生児は、両方の卵巣から同時に排卵され、2つとも受精することです。

近年、不妊治療の普及とともに二卵性双生児の妊娠が増えています。体外受精では、妊娠率を高めるために複数の受精卵を子宮に戻します。これら受精卵が複数着床すると二卵性双生児を妊娠します。

また排卵誘発剤の投与で卵子が複数排卵されることや、体外受精で移植した胚(受精卵)が2つに分化して双子になるケースもあるのです。

※参考資料:大阪大学医学系研究科/ツインリサーチ

【母子別】双子妊娠によるリスク

不妊治療中のカップルにとって妊娠ができたなら、これ以上に嬉しいことはないでしょう。

双子を妊娠して喜ぶ方もいます。一方で双胎妊娠は単胎妊娠に比べて母胎にかかる負担が大きいことも知っておく必要があるでしょう。

そこでこの章では、双胎妊娠によるリスクをお母さんと胎児に分けて解説します。

妊娠はお腹で子どもを育てる命がけの行為です。妊娠によるリスクも十分理解した上で、妊娠生活を遅れるようになりましょう。

 

母親側のリスク

双子妊娠は喜ばしいことばかりではありません。10ヶ月に渡りお腹の中で胎児を育てる母親には様々なリスクが伴います。

具体的なリスクは、以下の通りです。

  • ・妊娠症状が重い
  • 妊娠糖尿病
  • 妊娠高血圧症候群
  • ・HELLP症候群
  • ・血栓症

つわりやお腹が張るなどの妊娠症状が重いことは容易に想像できます。また腰痛に悩まされる方もいます。ただし、多胎妊娠のすべての方で妊娠症状が重たい訳ではありません。

また妊娠中の糖尿病や高血圧、多臓器不全など生命の危険に晒されるHELLP症候群などのリスクもあります。例えば、妊娠糖尿病は胎児過剰発育や妊娠高血圧症のリスクを高めることも報告されています。

双子の妊娠・出産は母胎ともにハイリスクです。そのため欠かさず定期受診をしたり、重労働が伴う働き方を避けたりするなど、常にリスクを考慮した行動をしましょう。

※参考資料:国立生育医療研究センター/双胎妊娠のリスク

 

胎児側のリスク

双子妊娠はお腹の胎児にとっても大きなリスクになります。

具体的なリスクは、以下の通りです。

  • ・早産・流産
  • ・子宮内胎児発育遅延
  • ・胎児形態異常
  • ・子宮内胎児死亡

特に早産のリスクは単体妊娠(一人だけ妊娠すること)よりも高く、未熟児や低出生体重児、障害を伴う胎児の予後に関わる影響は様々です。

ただし近年の医療の発展により、在胎28週以上の出産であれば予後は比較的良好であると言われています。そして在胎28週未満の早産は全体の2.4%であり、そこまで高い訳ではありません。

※参考資料:国立生育医療研究センター/双胎妊娠のリスク

体外受精や双胎妊娠に関するよくある3つの質問

体外受精や双胎妊娠についてよくある質問として以下のようなものがあります。

質問①:流産後は双子を妊娠しやすいのは本当?

質問②:なぜ双子出産が増えているの?

質問③:双子妊娠で受けるべき検査はある?

これらの質問に対して医学的な根拠を持ってお答えします。

 

質問①:流産後は双子を妊娠しやすいのは本当?

流産後は双子を妊娠しやすいことに対する医学的根拠はありません。また、胎盤の基となる絨毛細胞を綺麗に除去しなければ、妊娠率の低下を招きます。

つまり、流産がきっかけで双子の妊娠率が高まることはありませんが、不適切な流産処置により妊娠率を低下させる恐れはあります。

妊娠率に影響を及ぼす要因としてよく例に上げられるのは、年齢です。年齢が高くなるにつれて卵子や精子は劣化し、妊娠率や先天性疾患などのリスクも高まることが分かっています。

 

質問②:なぜ双子出産が増えているの?

双子の出産が増えた理由と不妊治療の進歩は大きく関わっています。

例えば、排卵誘発剤を使用すると複数の卵子が排卵されやすくなります。体外受精は妊娠率を高めるために、複数の受精卵を子宮に移植(胚移植)します。体外受精で胚移植した複数の受精卵が無事に着床すると、一卵性もしくは二卵性双生児を妊娠します。

これら不妊治療の進歩により双子の妊娠・出産件数が高まっていると考えられるでしょう。

 

質問③:双子妊娠で受けるべき検査はある?

双子の妊娠が分かったらNIPT(新型出生前診断)という出生前診断を受けましょう。

NIPT(新型出生前診断)とは、胎児の先天性異常疾患について調べる検査です。妊娠10週目以降に母親の採血を行うことで検査ができます。

NIPTで分かる先天性異常疾患は、以下の通りです。

  • ダウン症候群21トリソミー
  • エドワーズ症候群(18トリソミー
  • パトー症候群13トリソミー)…etc

出生前診断は赤ちゃんの状態を知る有効な検査です。一方で予期せぬ結果が出た場合、様々な選択を迫られることも理解した上で受けましょう。またNIPTは確定診断ではないと知っておきましょう。確定診断をするには羊水検査が必要です。

※参考資料:公益社団法人 日本産科婦人科学会/ 「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)」指針改訂についての経緯・現状について

まとめ::双子妊娠のリスクを知った上で体外受精に挑戦しよう

双子の赤ちゃんとお母さんの手

体外受精で双子が妊娠しやすい根拠やリスクについて解説しました。

大切なことなので、要点を以下にまとめます。

  • ・体外受精とは受精過程のみを体外で行う治療
  • ・体外受精で双胎妊娠が多い理由は、複数個の胚移植を行うため
  • ・着床した1つの受精卵が分化したのが「一卵性」、2つの受精卵が着床したのを「二卵性」
  • ・双胎妊娠は母胎ともにリスクがある

体外受精は妊娠率を高める有効な治療の一つです。そして治療方法の関係上、双胎妊娠の確率が高いことも分かりましたね。

双胎妊娠は母胎ともに負担やリスクの高い妊娠でもあります。これらの内容を理解した上で体外受精に挑戦しましょう。

この記事が妊娠を望み体外受精に挑戦するカップルの後押しになれば嬉しいです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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