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胎児性アルコール症候群による先天性異常の可能性と喫煙やカフェインについて

妊娠したらキッパリお酒をやめられたという方もいれば、妊娠前の飲酒の習慣からなかなか抜け出せないという方もいます。しかし、とくに赤ちゃんの体の器官が作られる妊娠初期にお母さんが飲酒をしてしまうことで、生まれてくる赤ちゃんが胎児性アルコール症候群になってしまう恐れがあることをご存知ですか?
胎児性アルコール症候群は、生まれてきてすぐに現れる奇形などの先天性異常だけではなく、ADHDや成人してからの依存症リスクが高まるなど、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、胎児性アルコール症候群についてと、妊娠中の喫煙、カフェイン、服薬の影響についてご紹介します。妊娠中のアルコール摂取や喫煙、カフェインについて知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

胎児性アルコール症候群とは

胎児性アルコール症候群は、冒頭でお伝えしたようにさまざまな症状を引き起こす可能性があり、Fetal Alcohol Syndrome(FAS)と呼ばれることもあります。まずは、胎児性アルコール症候群について詳しくご紹介します。

先天性異常が起こる可能性

アルコール依存症の妊婦さんが生んだ赤ちゃんのうち、40%に胎児性アルコール症候群の赤ちゃんが出生すると言われています。胎児性アルコール症候群には、以下のような先天性異常が現れます。

・出生前、出生後の発育不全
・中枢神経系の障害
・特徴的な顔面の異常

上記の特徴がある赤ちゃんは、妊娠中のママが飲酒した事実を確認次第、胎児性アルコール症候群と診断されます。出生数1000人あたり0.1~2名いるとされていて、飲酒量は多ければ多いほど胎児性アルコール症候群の危険は増しますが、少ないからよいということでもありません。
特異的な顔つきや低体重などは、成長するとともに目立たなくなることも多いのですが、精神的問題であるADHDやうつ病などは、数年経ってから、もしくは成人してから明らかになるケースもあります。

どのようにアルコールが影響するか

ママがアルコールを摂取すると、アルコールは胃と小腸から吸収されて、血液に溶け込み全身へ拡散されます。その後肝臓で代謝されてアセトアルデヒドに変わり、無害化されるのですが、肝臓が代謝しきれないアルコールはそのまま血液内に残ってしまいます。
血液内に残ったアルコールやアセトアルデヒドは、胎盤を通じて赤ちゃんに酸素や栄養素とともに送られてしまいます。アルコールやアセトアルデヒドは、妊娠初期の胎児(胎芽)には器官の発生を阻害し、妊娠中期以降の胎児には発育を阻害する存在となります。ママがアルコールを摂取する行為は、赤ちゃんに無理やりお酒を飲ませているのと同じ状態になるのです。

アルコールの摂取量について

妊娠中にアルコールをどれくらい飲んでも大丈夫かということは、数値として確立されていません。1日のアルコール摂取量が15ml以下の場合は胎児に影響が少ないという報告もありますが、飲酒量が15ml以下だったら胎児は絶対に安心というわけではないので注意しましょう。
さらに、1日のアルコール摂取量が120ml以上になると、胎児アルコール性症候群の発生率は30~50%まで上がります。毎日大量のアルコールを摂取しないことはもちろん、少量のアルコールも胎児に影響を及ぼす可能性は否定できないため、妊娠したら一切アルコールは飲まないことが胎児性アルコール症候群の一番の予防であり、そうすることで100%予防できる疾患でもあります。

アルコールと流産の関係

妊娠中のママが飲酒すると、赤ちゃんが流産や死産になってしまう可能性があり、大きな影響を与えると考えられています。アメリカの研究では、妊娠5~10週にアルコールを飲む習慣がやめられずにお酒を飲んでいる妊婦さんは、流産のリスクが高くなるという結果が報告されています。
妊娠初期はただでさえ自然流産しやすい時期です。妊娠が発覚したらすぐにアルコールをやめることで、流産の危険性をすこしでも取り除くことができます。

胎児性アルコール症候群はいつわかる?時期・診断基準

では、お腹の赤ちゃんが胎児性アルコール症候群だとわかるのはどれくらいの時期なのでしょうか。診断基準についても解説していきます。
まず時期ですが、エコー写真からは赤ちゃんの発育状況はわかるものの、診断を確定することはできません。わかるのは出生後となってしまいます。生まれてから、顔つきや発達遅滞、中枢神経などの要素から診断されます。

■胎児性アルコール症候群の出生後に見られる特徴

該当箇所 特徴
顔つき 薄い上口唇、平坦な人中、平坦な顔面中央
発達遅滞 低体重、体重増加の遅れ
中枢神経障害 出生時の頭蓋の大きさの減小、小頭症・脳梁欠損などの脳の形態異常感音性難聴、協調運動障害など

参照:胎児性アルコール・スペクトラム障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

アルコールはいつからやめるべき?

お腹の赤ちゃんに悪影響を与えないために、いつからアルコールはやめるべきなのでしょうか。妊娠0〜4週の妊娠超初期では、アルコールによる胎児への影響はほとんどないと言われています。お母さんが接種したものは胎盤から赤ちゃんに届けられますが、胎盤は妊娠初期から作られています。厚生労働省では妊娠の可能性がある時点で飲酒は控えることを推奨しています。また、妊娠中はもちろん、授乳中も母乳を通じて赤ちゃんにアルコールが届いてしまいます。出産後も授乳している間はアルコールの接種を控えるようにしましょう。

どのような治療が行われるのか

残念ながら、胎児性アルコール症候群には治療方法が存在しません。そのため、妊娠期間中はアルコールを一切摂取しないという意思を強く持ち、予防に努める必要があります。幼児期に何も症状がなくても、徐々に胎児性アルコール症候群によるADHD、うつ病、依存症などが明らかになってきた場合は、それぞれの治療のために心療内科、小児精神科などでの受診が必要となります。
保育園、幼稚園、小学校などで先生と連携をとりながら、専門の施設を頼る機会も出てくることでしょう。症状そのものを治療することはできないので、子どもの症状に合わせて学習支援や養育環境を整えることが重要となります。

妊娠中の喫煙・カフェイン・服薬について

タバコ

妊娠中は、アルコールだけではなく喫煙やカフェインも胎児にとって悪影響だということは広く知られていますが、具体的にどのような影響があるのでしょうか?ここからは、妊娠中の喫煙やカフェイン、服薬の影響についてご紹介します。

喫煙の影響

喫煙は胎児に以下のような影響を与えます。

  • 早産
  • 流産
  • 低体重
  • 先天性奇形
  • 子宮外妊娠
  • 前置胎盤
  • 小児がん
  • 知能指数低下 など

妊娠中に喫煙することで、胎児に悪影響を与えてしまいますが、厚生労働省の調査によると、妊婦さんの喫煙率は5%ほどで、20人に1人は喫煙をやめられないという状況です。

タバコには数々の有害物質が含まれていて、その有害物質はもちろん胎児にとっても毒性があるものが含まれています。喫煙による早産のリスクは1.5倍、流産のリスクは2倍、常位胎盤剥離のリスクは1.6倍と言われていて、喫煙本数が多いほどこのリスクは高くなります。さらに心配なのは、無事出産したあとも喫煙の習慣をやめられない場合、乳児突然死症候群の発症率が上がることです。
両親揃って喫煙者だった場合はその可能性は一気に高まり、事故や窒息という事実がないにもかかわらず、赤ちゃんが寝ている間に突然死してしまう危険性があります。喫煙は胎児にとっても、生まれてきた赤ちゃんにとっても悪い影響を与えます。どうしても禁煙できないと悩む妊婦さんや家族の方は、禁煙外来を利用するなど、医学の力を借りてでも禁煙することをおすすめします。

カフェインの影響

妊娠中のカフェインはなるべく控えたほうがよいでしょう。一定以上のカフェインを摂取すると、胎児の発育を阻害してしまう可能性があります。カフェインは以下のような飲食物に含まれています。

  • コーヒー
  • 紅茶
  • 緑茶
  • コーラ
  • エナジードリンク
  • チョコレート など

カフェインを摂取すると胎盤から胎児の体の中に移行してしまいます。胎児はカフェインを排出できないので、そのまま体に蓄積することとなります。WHOが定めている摂取量は、コーヒーで1日3~4杯とされていますが、各国の基準はバラバラで、1日2~6杯までとさまざまです。どうしてもコーヒーをやめれられないという妊婦さんは、食後の1杯にとどめるなど、意識的にカフェインを減らすようにしましょう。最近はノンカフェインやカフェインが少ないコーヒーなども発売されているので、そういったものに切り替えるという選択もおすすめです。

服薬

妊婦さんは服薬にも気を付ける必要があります。妊娠週数ごとの薬による影響は以下のようになります。

  • 妊娠4週~7週頃…神経や心臓、消化器官が作られる時期、それらの器官に奇形を起こす可能性がある
  • 妊娠8週~16週頃…重要な器官の形成が終わっていない可能性があり、まだまだ奇形への心配がある時期
  • 妊娠17週以降…奇形の心配はなくなるが、服薬によって血管の収縮や臍帯の圧迫が起こり発育への影響が心配される時期

妊娠初期は胎児の重要な器官が作られる時期です。この時期に薬を服用することで、器官の形成に影響を及ぼす可能性があります。胎児の器官の形成が終わったあとも、飲む薬によっては胎盤を通って胎児の血液の中に入ってしまうことがあります。薬の種類や量に気を付けないと、奇形や発達障害の恐れが出てくるので、服薬には慎重になる必要があります。そのため、妊娠期間はすべての期間を通して、市販薬を医師の指示なく飲むことはやめましょう。
しかし、ママの体調が悪いのに我慢することも胎児にとって悪い影響を与えてしまうので、かかりつけ医にママの体調についてしっかり説明し、赤ちゃんに影響のない薬を処方してもらうことをおすすめします。

まとめ

胎児性アルコール症候群についてと、妊娠中の喫煙、カフェイン、服薬の影響についてご紹介しましたが、参考になりましたか?妊娠中はアルコールを摂取することにより、胎児に影響が出るということがわかっています。胎児性アルコール症候群は、奇形や発達の遅れが出るだけではなく、ADHDやうつ病などによって子どもを一生苦しめることになりかねません。喫煙も同様に胎児に悪い影響を与えるため、アルコールとたばこは妊娠が発覚したらやめるようにしましょう。
服薬やカフェインについては医師と相談しながら、赤ちゃんに影響を与えてしまわないよう注意しましょう。アルコールやたばこをどうしてもやめられないという方は、一人で悩むのではなく、医師に相談して禁酒、禁煙を目指すことも必要です。健康的な赤ちゃんを迎えられるよう、正しい知識をもち妊娠生活を過ごしましょう。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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