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35歳からの妊娠力|高齢になると妊娠しにくい、流産しやすい

先進国では女性の高学歴化とそれに伴う社会進出の影響で、晩婚化が進んでいます。特に大都市圏において晩婚化傾向が強い傾向で、今後もその傾向は進む方向にあると予想されます。
晩婚化は第1子を出産する初産年齢を押し上げており、晩婚化に伴い出生時年齢も上昇していて、お子さんが欲しいご夫婦やカップルの高齢化をもたらしています。高齢になり初産となると、生殖可能年齢の残り時間が少なくなるため、最終的には1組のカップルにおけるお子さんの数がが減少する、ということも社会としては人口減につながるため問題ですが、加齢による不妊症の増加につながることももう一つの問題です。
この記事では加齢と妊娠する能力(医学的には妊孕性といいます)の関係についてお伝えします。妊活中のかたも、妊活なんて考えていないかたも、こうした情報に触れ、知識をしっかりと持つことで人生設計の一助とすべく是非ご覧下さい。

女性が妊娠する確率とは?

世界各地の女性の年代別妊娠能力を1000人の既婚女性あたりの妊娠数で表したグラフ
このグラフはカップル1000組当たりの女性の年代別妊娠数を世界各地で比較したものです。どの地域であっても年齢が進むと妊娠率は下がっていることがわかると思います。

避妊していない女性が12カ月以内に妊娠する確率は、20代女性では95%以上ですが、35歳になると70%くらいまで低下します。
これまでに研究報告されてきた中では、世界のどの地域でも人種を問わず女性の妊娠率は20代前半でピークを迎え、年齢を重ねるとともに減少していくという事実が確認されています。

妊娠した女性が流産する確率とは?

日本産婦人科学会ART1¥2018 から年齢の増加とともに流産率が上がることを表すグラフ
このグラフは、不妊治療、医学的には生殖補助医療(ART)における女性の年代別の妊娠率、生きた赤ちゃんを得られた率(生産率)、流産率を表したもので、2018年のデータをもとに作られたものです。

妊娠後の流産率は、女性が年齢を重ねる加齢に伴って増加することが知られていますが、このグラフからもそれがうかがえると思います。

女性の加齢で流産が増える理由

女性の加齢で流産が増える理由はいくつか考えられています。

女性の加齢で流産が増える理由1.染色体異常が坤加

加齢により卵子側で染色体異常が坤加することが知られています。
加齢により染色体異常が増加する原因としては以下があげられます。

  • X線
  • 体内で酸化させる物質が産生されること
  • 外から摂取した有毒物質の影響

 

X線というと、皆さんは病院でレントゲン検査を受けなきゃ関係ないでしょ?と思うでしょうが、実は宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線が毎日地球には降り注いていますので、地球上の生物はX線を避けて地表で生活することは不可能なのです。X線の量は大体1年間で胸部レントゲン写真1枚程度なのでそう大きな量でははありません。しかし、毎日こうしたX線によるDNA障害を受けながら地上の生物は暮らしています。

また、酸化する体内物質は外界から取り込んだ病原体と戦うために必要ですので、これもゼロにはできないし、むしろ生物が生きていくためには非常に重要なものです。こうした酸化物質による影響を酸化ストレスと呼びます。

外界から摂取する有害物質もゼロにはできません。摂取する経路は呼吸、食事、皮膚を通して、の3つがありますが、いずれにしても有害物質がありすぎてどのように気を付けてもゼロにはできないし、現時点では大丈夫だと思われていても10年後には突然有害物質と判明するかもしれません。

これらの「加齢により染色体異常を増加させる原因」による影響は端的にいうとDNAに対する損傷なのです。
しかし、高等生物はDNAに損傷を受けてもそれを修復するシステムを持っているので、単純にこれらのすべてが蓄積されていくわけではありいません。ヒトの細胞が1日当たり受けるDNA損傷は1細胞当たり1~100万と言われていますDNA修復過程は非常に正確なのですが、やはり100万回に1回くらいの失敗をおこします。100万回に一度というと、ほとんどゼロに近いくらいのエラーなのですが、卵巣における卵子は女性が母体内にいる間に第一減数分裂の途中で細胞分裂を停止していて、卵子は生まれる前からずっとあり、同じ細胞周期で停止した状態なので、細胞分裂して新しい細胞に置き換わるkとがなく、ずっとこうしたエラーが蓄積されていくことが、女性の加齢と流産率の上昇の相関の原因と考えられています。
関連記事:

女性の加齢で流産が増える理由2.加齢による卵子の質の低下

卵子の質って何だろう?と思いますよね。
高齢になると、以下のような問題が起こることで、卵子の質が悪くなると言われています。

  • 第一極体の放出障害
  • 紡錘体の極間距離が短縮する
  • 染色体が断片化する
  • 減数分裂prophase 1が短縮する
  • 卵子の減数分裂がうまくいかず染色体がちゃんと別れることができず不分離により染色体の数的異常が起こる
  • 卵子細胞質でミトコンドリアの機能が低下してエネルギー不足になることで受精胚の発育が悪くなる
  • 卵子の染色体のテロメアと呼ばれる領域が短くなっているため受精したあとの発育が悪くなる
  • 卵子の細胞質でカルシウム振動が正常におこりにくくなるので受精したあとの発育が悪くなる

ご覧の通り、これらは染色体異数性の原因となったり、受精したあとの受精胚の発生(成長、発育)の妨げとなり、こうしたことが相まって女性の高齢化は流産の増加と密接な関係があります。

また、高齢女性でも若年女性から提供された卵子で受精する確率は良好なので、こうした事実も、女性の高齢化が卵子の質の劣化を招いて受精後の発育を悪くして流産率が高くなることを裏付けています。

年代別の女性の流産率とは?

数万単位の大規模な観察研究の結果からは、各年代の流産率は以下のようになっています。

女性の年齢 流産率 %
30歳未満 12%
30~34歳 15%
35~39歳 25%
40~44歳 51%
45歳以上 93%

この結果からは、流産率が年齢とともに急激に増えていくのがわかります。

まとめ

医学が進歩し、女性の高齢化と妊娠力(妊孕性)の低下、流産率の増加がダブルで女性の社会進出の進んだ晩婚化傾向の顕著な先進国で出生率が下がる原因をだいぶ解き明かしてくれています。
お子さんをのぞむなら、こうした現実も加味して対策をしたほうがよい、という事なのでしょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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