第1子がヌーナン症候群でした。次の子どもは大丈夫でしょうか?

みなさま。こんばんわ。

ミネルバクリニックは、遺伝診療として 地域で診療する 一時診療の全国に例を見ないクリニックです。
ですので、本当に重たい悩みを持った方々がご連絡をくださいます。

そういうご相談をご本人たちの個人情報を抜いて皆さんにお伝えします。
遺伝診療ってどんなことやってるのか、臨床遺伝専門医がどんな役割を果たしているのかがわからない人たちが殆どと思うからです。

ある日、電話とメールを頂きました。

「初めまして。先ほどお電話させていただいた者です。
第一子の妊娠が判明して喜んでいたのですが、妊娠初期にNT肥厚の指摘、中期から羊水過多、その後、胎児水腫が判明して緊急帝王切開で出産となりました。その後、胎児水腫、重症黄疸などの治療でNICUに入院いていたのですが、悲しいことに生後2ヶ月でこの世を旅立ちました。主治医には原因不明と言われていましたが、 その際に受けた遺伝子検査の結果からヌーナン症候群と判明しました。次の子供をもうける前に、親の遺伝子検査が必要でしょうか。」

その他いろいろ書かれてあったことはあるのですが、詳しい状況は割愛させていただきます。

このかたは、実は、悪性腫瘍の治療歴があります。

わたしががん薬物療法専門医というがんの専門医(全国で1200人くらいと相変わらず少ないです)と、臨床遺伝専門医を持っているの、偶然じゃないんですよ。
やっぱこういう悩みに誰かがちゃんとこたえなきゃいけない、という思いもあり、がんばって臨床遺伝専門医取りました。
現在、この2つの専門医を持っているのはやはり、仲田洋美だけです。
どちらも難関専門医なのでなかなか後に続く人がいないのがわたしの悩みです。

話を元に戻しましょう。

ヌーナン症候群は、一部当院でも出生前診断の対象として扱っています

基本的には新生突然変異でおこるものです。

さて。
ご心配の抗腫瘍薬の影響ですが。

女性か男性かで大きく変わります。
この場合は男性だったので、男性の話をしましょう。
ミネルバクリニックでは院長ががん薬物療法専門医も持っているため、「昔抗がん剤による治療をしたんだけど」という出生前診断希望の患者さんが結構います。

細胞障害性抗腫瘍薬を投与した場合(大体の治療で使われる薬です)には、殺細胞性の薬は大体細胞分裂の時に効果を発揮するのですが。精子をつくる精母細胞は非常に活発に分裂をするため、殺細胞性の薬剤の影響を最も受けやすく、投与後は無精子症なってしまうことがあります。治療を終了すると数年後して精子形成が回復する例もありますが、殺細胞性の薬剤の中でもアルキル化剤やプラチナ製剤を投与された場合、精母細胞が極端に減ってしまうため、無精子症からの回復は非常に困難です。

この方の場合は、精子形成能力が回復したようですね。

さて。
それでは、このヌーナン症候群がこの抗がん剤治療の影響を受けておこったものなのかどうか、ということが気になりますよね。

わたしは、お電話でお話ししました。

まずは、ヌーナン症候群は殆どがde novoといわれる新生突然変異なので、今回そうだったからといってご両親の遺伝子検査をする必要性はあまり感じない、という意見を述べました。
もちろん、わたしは自信がないので、複数いるわたしの指導医にちゃんと相談しています。指導医たちは遺伝業界の重鎮です。

どうして自信がないかというと。
大学病院とかにいたら、常にいろんな医者とディスカッションできますよね。
開業医になったわたしにその環境がないので、独善的になっていないか、というチェックは欠かさずせねばなりません。

だから、少しでも悩んだらいつも、お師匠たちを巻き込んでいます。
ミネルバクリニックは先進的な取り組みばかりしているので、そうやって学問的に支えてくれえる師匠(医学部教授ともいう)たちは大変ありがたいです。

で。いろいろちゃんと調べて、師匠の意見も聞いて、自信ができたころ電話で返答したんです。

わたしはこう返答しました。

精子をつくる大元の細胞の該当の遺伝子に異常がある可能性は否定できないが、もしそうだとしても、精母細胞といってもいくつかのクローンがあるため、どの精子も等しくその異常があるということではないと考えられるし、結局は卵子に到達して受精する該当精子が正常か異常かという話にいなるのであるが、次も同じことが起こる可能性は極めて低いと考えられる。

そして、もしも次にお子さんを授かったら、遠くからミネルバクリニックに来てくれるって言うことになりました。

次もまた同じことが起こったら耐えられないです。子供を失うって本当に辛い。わたしも36週6日で死産したのでその辛さはよくわかる。

そして。
こういう悲しい思いをした人たちが、悲しみを乗り越えて、またお子さんを持ちたい、と思えるようにその背中をそっと押す。

わたしはそういう仕事をしている自分を最近ではちょっと誇らしく思っています。

まだまだ全然師匠たちにはかないませんが。
いつか日本一の臨床遺伝専門医になってやる、という闘志を燃やしています(笑)

こうした妊娠出産で傷ついた人たちが、悩みを寄せてくれる。

これからも、いろんな人たちの駆け込み寺的な存在でありたいと思います。

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