InstagramInstagram

ターナー症候群とは?特徴や特有の症状、治療方法を解説

ターナー症候群という病気をご存知でしょうか?この疾患は女児に発生し、お母さんのお腹にいるときに起こることが多い特殊な病気です。後天的には発症しません。染色体異常は根本的な治療法がないと言われていますが、ターナー症候群は治療次第で症状を軽くすることができ、学力や寿命も健常者と変わらないといわれています。
この記事では、染色体異常に分類される「ターナー症候群」に焦点を当て、解説していきます。最後にはターナー症候群の検査についても紹介していますので、参考にしてください。

ターナー症候群の概念

染色体異常に分類される「ターナー症候群」は、細胞核内に存在している性染色体に関する異常です。性染色体は「X」と「Y」という2種類の染色体の組み合わせで赤ちゃんの性別を決める役割があり、XYの組み合わせで男児となり、XXの組み合わせで女児となります。

ターナー症候群は女児に起こる染色体異常で、本来XXの組み合わせになるはずが1本のX染色体の一部、または全部が欠失している状態となります。
この状態は「モノソミーX」や「45,X」とも呼ばれ、ターナー症候群を持つ患者の約50%を占めています。
残りの50%は「モザイク型ターナー症候群」と呼ばれ、細胞分裂の過程で突然変異が起こっていくつかの細胞にX染色体の完全なる複製を2個持っている状態を指します。

ターナー症候群にみられる身体的特徴や症状

ターナー症候群の図

ターナー症候群を患って生まれた女児は生まれた時から低身長という特徴があります。発育が通常よりも遅いため身長は伸び悩み、治療をしないまま大人になった時の身長は138cm前後になるといわれています。

低身長以外の身体的特徴は以下のような例が挙げられます。

首から肩にかけて皮膚がたるむ「翼状頚」
肘が外に曲がる「外反肘」
首の後ろの髪の毛の生え際が低い
手と足の甲が浮腫んでいる

また、思春期になると卵巣機能が弱いことが原因で現れる特徴もあります。
ターナー症候群の女児は上手く女性ホルモンを作れないため、思春期に乳房が膨らんだり月経が始まったりするような女性特有の変化が起こらないことがあります。起こったとしても乳房の成長のみなど不完全であることが多いです。

身体的な特徴だけではなく知的面でも特有の症状がみられます。性格は真面目になりやすく、図形を扱う数学や体を動かす体育が苦手などの特徴がありますが、学習によって克服することもできます。
ただし、一部の女児には知的障害がみられることもあり、知能指数に合わせた学習が必要になるケースもあります。

ターナー症候群の合併症

ターナー症候群2

子どもがターナー症候群を発症した際に、注意するべきなのは合併症です。先ほど紹介した特徴や症状は非常にわかりやすいものであり、適切に対応すれば生活に大きな影響が及ぶことはありません。
しかし、合併症については存在を知らないと放置してしまい、大きな問題に発展する可能性があります。合併症の内容によっては命の危険もあるので、どのような合併症があるのかしっかり理解しておきましょう。

心臓や大血管の問題

ターナー症候群を発症している約20%の人が生まれつき心臓や大血管に問題を抱えています。心臓からは血管が伸びているのですが、その血管が途中で一部細くなっていたり、定型的ではない大動脈弁が多かったりします。
また、腎臓の形態が通常と異なる場合もあるため、ターナー症候群と判明した際には超音波検査で異常がないかを確認することが多いです。特に心臓の血管が細くなっている大動脈縮窄については、心不全などを引き起こす原因にもなります。赤ちゃんの命に大きな影響を与えるのは間違いないので、適切な治療を行わなくてはいけません。

難聴

ターナー症候群では中耳炎になりやすいといわれています。中耳炎は一時的に発症しても治療をすれば落ち着いていくのですが、それが繰り返されると難聴を引き起こす可能性があります。中耳炎は乳幼児期から小児期にかけて起こることが多いので、子供が聞こえづらそうにしていないかを注意しなくてはいけません。

不妊

成人になると肥満や糖尿病、甲状腺ホルモン分泌低下、骨粗鬆症などの合併症が出てくる場合があります。これらの合併症は人によって出てくるかどうかは異なり、治療によって防ぐことも可能です。
しかし、ターナー症候群の99%以上に共通している症状である不妊は、現在の治療では治ることはほとんどありません。ターナー症候群の女性が妊娠することはほとんどないと考えておいてください。

ターナー症候群の治療方法

ターナー症候群は染色体の異常によって引き起こされる症状のため、根本的な解決に至る治療方法はありません。理由として、染色体そのものを変化させることはできないためです。
そのため、ターナー症候群の治療というのは、先ほど紹介したそれぞれの症状に対して対処療法として行うのが一般的です。

成長ホルモン療法

低身長に対しては、ホルモン注射を行うことで対処を行います。ホルモン注射を行った成人ターナー症候群の平均身長は約145cmとなっており、ホルモン注射を行わなかった場合と比べて7cmほど高くなっています。

エストロゲン療法

二次性徴が現れないことに対しては、女性ホルモンの投与を行うことで対処が可能です。10歳〜14歳頃から投与を開始して、段階的に女性ホルモンの量を増やしていきます。思春期以降の年齢になった際に、月に1回程度定期的な月経がくるようにする治療方法です。
他にも肥満や糖尿病などに関しては、それぞれに適した治療を行うことで症状を緩和させることが可能です。ホルモンの分泌に関しては、しっかりと配慮をしなくてはいけません。投与する量についても徹底した管理が必要になります。そのため、長期にわたって管理をしてくれる病院に相談をするのが大切です。
定期的に病院に通わなくてはいけないため、大変な病気ではありますが、治療を行えば他の女性と同じように生活をすることが可能です。合併症次第では命に危険が及ぶ可能性もあるので、根気よく治療を進めていくことが大切です。

ターナー症候群の検査方法

染色体異常は受精卵が誕生した時点で存在するもので、赤ちゃんが生まれる前に検査をして染色体異常症を調べることもできます。ターナー症候群を持っているかどうかは、出生前診断のひとつである「絨毛検査」、または「羊水検査」で調べることができます。
注意しなければならないのが、どちらも侵襲的検査で流産のリスクを伴うということです。
絨毛検査の場合は100人に1人、羊水検査の場合は1,000人に3人という割合で胎児を失ってしまうリスクが生じます。しかし、検査精度は限りなく100%に近いため、ターナー症候群の有無をほぼ確定させることが可能です。
侵襲的検査は、一般的にリスクゼロのスクリーニング検査を受けて陽性反応が出てから受けることが推奨されています。まずは妊娠10週目から実施されている染色体検査のNIPTを受検し、ダウン症候群の有無などを先に調べておくのが理想です。

【NIPT:染色体異常の検査項目】
・21トリソミー
・18トリソミー
・13トリソミー

NIPTは母親の血液検査のみで検査結果が出るため、母体と胎児ともに安全が保証されています。なおかつ上記の染色体異常の有無を100%に近い確率で調べることが可能です。
ターナー症候群を持つ可能性を調べたい場合は、まずはNIPTを受検し、発生頻度がより高いダウン症候群などの染色体異常症の有無を調べることをおすすめします。

新型出生前診断「NIPT」とは?

「NIPT」は、妊婦さんの血液検査のみでダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーの有無を調べられる母体と胎児の安全が保証された出生前診断です。母体血漿中に浮遊するセルフリーDNAの断片を分析することで、感度99%・特異度99%で染色体異常の有無を調べることができます。
ターナー症候群は検査項目に含まれていませんが、ターナー症候群よりも発生頻度が高い染色体異常3項目を同時に検査できるのは魅力的です。NIPTで陰性反応が出た場合はほぼ100%の確率で染色体異常を持っていないことになりますが、陽性反応が出てしまった場合は羊水検査を受けて染色体異常の有無を確定させる流れとなります。
いきなりリスクのある絨毛検査や羊水検査から受けることは推奨されていないため、妊娠10週頃から実施されているNIPTから受検することをおすすめします。(*2)
*2 ミネルバクリニックでは妊娠6週から対応しております。ご相談ください。

【まとめ】ターナー症候群は適切な治療を受けることが大切

ターナー症候群

ターナー症候群は染色体の異常が原因となって起こる疾患であり、根本的な治療を行うことはできません。ターナー症候群と診断されたら、一生ターナー症候群と付き合っていく必要があります。
両親はつらい部分はあると思いますが、子どもが健康に育つことができるよう、しっかりとサポートをしていくことが大切です。特に心臓などの問題による命の危険には注意してください。赤ちゃんにいろいろな治療をさせるのは心が痛むかもしれませんが、長く健康に生きるためには必要なことです。
ターナー症候群を発症すると寿命が短いという考えがありますが、それは治療を受けなかった場合に限ります。治療を受けなければ合併症などの影響で短命になってしまう可能性はありますが、定期的に治療を続けていれば他の女性と同じくらいの長さを生きることができます。
また、身体面で不調が出る場合もありますが、治療を続けていれば介護や看護を必要とすることはありません。ターナー症候群の子供に関して悩みを抱えている場合は、医師の方に相談をしてみてください。ターナー症候群との向き合い方を知るだけでも気持ちが楽になります。適切な治療を継続しなければいけない病気ではありますが、人間らしく生活することは可能です。明るい未来を目指して、治療に取り組んでいきましょう。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

プロフィール

さらに詳しいプロフィールはこちら

院長アイコン

ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事